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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

圧倒的な名演! セバスティアン・ヴァイグレ、読響、 ベルグ 歌劇<ヴォツェック>

2025-03-16 08:30:43 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私にとっては、今年前半の目玉演奏会の一つ。もともと題名役をゲルネが出演ということで購入したのだが、数カ月前にキーンリーサイドが代役というお知らせがあり、がっかりどころか逆に狂喜。ロンドン在住時にキーンリーサイドは最も印象的だったイギリス人歌手の一人であり、今でもロイヤルオペラでのマクベスは記憶に深く刻まれている。まさかその彼のヴォツェックが聴けるとは・・・

公演は事前の期待を更に上回るものであった。物語は救いようのない悲惨なものだが、キーンリーサイドはもちろんのこと、外国・日本人による歌唱陣、合唱、読響と各出演者がヴァイグレの棒のもと完璧な仕事をして、圧倒的な名演となった。

久しぶりに見るキーンリーサイドは流石に年齢を重ねた感はあるけども、相変わらずの格好良さ。第1幕前半とかは、精神病を患ったヴォツェックとしてはちょっとスマートすぎないかとの気もしなくもなかったが、劇が進むにつれて狂度が重くなっていくヴォツェックを表情、所作で見事に演じ、演奏会方式ながら歌唱だけでなく演技でも深みある人物像を表現していた。彫と深みあふれるバリトンの表情の豊かさ、美しさは相変わらずで、身体に沁み入る。

そして不貞の妻マリー役のオークスのソプラノはホールを揺るがすような声量。大きいだけでなく、マリーの揺れる女心を丁寧に歌い上げる。高音の緊張感は背筋がぞくぞくする迫力だった。

その他の歌手陣も外国人、日本人ともに、それぞれ存在感が十分ある歌唱。これだけの歌手陣とレベル感はなかなか出会えないと感嘆しきりだった。

舞台後方のP席に陣取った新国立劇場合唱団、フィナーレで舞台前方に現れたTOKYO FM 少年合唱団ともに美しいハーモニーを披露してくれた。

ヴァイグレの手腕なのだろう。読響も豪華歌手陣に全く引けを取らない。かといって目立ちすぎることもなく、歌・合唱とのバランスが見事。ヴァイオリンやチェロのなどの弦のソロや木管の調べなど感泣ものの美しさもあれば、響き渡る金管やこの救いようのない物語を更に悲惨さを加えるような重々しい合奏など、目まぐるしい変幻変化を見せた。ちょっと私の席(9列目)からでは、管楽器奏者を見渡せなかったのは残念。

終演後、大拍手がホール一杯に響き渡る。圧倒的な名演に触れて、我を忘れて、私も手が痛くなるほど拍手を寄せた。隣席の男性は私の右耳が壊れんばかりに「ブラボー」を連発。感動と興奮に包まれたサントリーホールだった。

 

(余談1)今回は単券でS席購入したが、やはり値段に相応しい音の聞こえようで、素晴らしい音楽体験だった。普段のN響、都響は定期会員のシリーズ券なので席は最安ランク。ご贔屓オケの演奏会は最安でそれなりに、非会員の演奏会は上席で満喫というのも、本末転倒の複雑な気分。N響、都響の会員にランクアップサービスとかあれば嬉しいのだが・・・

(余談2)なぜか上演中の途中退席の方が多く、私の視野に入る範囲で5名ほど。私の直前の列ではお二方が出られた。途中休憩なしということを知らずに来られたのかな?

第646回定期演奏会

2025 3.12〈水〉 19:00  サントリーホール

指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
ヴォツェック=サイモン・キーンリーサイド(バリトン)
鼓手長=ベンヤミン・ブルンス(テノール)
アンドレス=伊藤達人(テノール)
大尉=イェルク・シュナイダー(テノール)
医者=ファルク・シュトルックマン(バス)
マリー=アリソン・オークス(ソプラノ)
第一の徒弟職人=加藤宏隆(バス) 
第二の徒弟職人=萩原潤(バリトン) 
白痴=大槻孝志(テノール)
マルグレート=杉山由紀(メゾ・ソプラノ)

合唱= 新国立劇場合唱団
TOKYO FM 少年合唱団
音楽総合助手・合唱指揮= 冨平恭平

ベルク:歌劇「ヴォツェック」作品7(演奏会形式)

 

Subscription Concerts No. 646

Wednesday, 12 March 2025, 19:00 Suntory Hall

Conductor= SEBASTIAN WEIGLE

Wozzeck= Sir Simon Keenlyside
Tambourmajor= Benjamin Bruns
Andres= Tatsundo Ito
Hauptmann= Jörg Schneider
Doktor= Falk Struckmann
1. Handwerksbursche= Hirotaka Kato
2. Handwerksbursche= Jun Hagiwara
Der Narr= Takashi Otsuki
Marie= Allison Oakes
Margret= Yuki Sugiyama

Chorus= New National Theatre Chorus
TOKYO FM Boys Choir
Musical Assistant & Chorus Master= Kyohei Tomihira
*Part of the cast has been changed from the initially scheduled cast.

BERG: Wozzeck, op. 7 (Concert style)


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