その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

日本最東端 納沙布岬へ:2024年夏 道東旅行(3)

2024-08-04 09:05:46 | 旅行 日本

根室駅を降りて、その閑散とした駅前には驚きは隠せませんでしたが、まずは腹ごしらえ。

釧路出身の友人から「根室行ったらエスカロップを食べてみてください」とお勧めされたので、紹介された駅前の昭和の喫茶店風のニューモンブランという店に入りました。店内もソファや照明器具など昭和のレトロな雰囲気が満載です。さっそくエスカロップを頼みます。

名前の由来を初め、エスカロップが根室の名物なのかは全く分からないのですが(その友人によると、根室は漁港として栄えたので寄港する外国人が多く西洋料理が盛んになったとのこと)、出てきた一品は、昭和のデパートの最上階のお好み食堂を思い出させる一皿料理。日の丸の旗を立ててもいいかも。バターライスの上にポークカツが乗っかり、さらにデミグラスソースがかかっています。さてさて、どんなお味かと食してみたら、バターの香りが漂いつつ、思いのほかさっぱりしていて、ポークカツやソースとの相性も良く、とっても美味しい。「根室と言えば漁港だから海鮮料理だろ」という私の思い込みを完全払しょくしてくれるものでした。

【納沙布岬】

お腹一杯になったところで、車を借りて、4時間の根室観光をスタート。まずは、日本最東端の岬、納沙布岬を目指します。根室駅から約20キロ。20分程度で到着。朝出た釧路の曇り、雨の天気が信じられない様な青天でのドライブは爽快そのものです。

天気が良いので、持参した双眼鏡を覗くと、北方領土の歯舞群島が良く見えます。3.7km先に貝殻灯台という灯台が海上に立っているのが見えますが、そこはロシアの経済水域とのこと。更に奥に見える島(貝殻島?)にはロシアの建物・設備もはっきりと見えます。領土問題のまさにフロントであることを実感し、長閑な天気や環境とは真逆の緊張感も感じざるをえません。

岬には、北方領土返還を求める多くの碑が設置されています。また、独立行政法人北方領土問題対策協会が運営している「北方館」・「望郷の家」や「根室市北方領土資料館」などがあり、資料を通じて北方領土の歴史的経緯が学べるようになっています。ちょっと政治色が強いところもあり、苦手な人はいるかもしれませんが。


(根室市北方領土資料館では「最東端出発・訪問・到達証明書」が貰えます)

 

【チャシ跡(アイヌ民族の砦跡)群】

1時間ほど、滞在した後は、続いて根室半島チャシ跡群へ。海岸の見通しの良い場所にアイヌの城跡で根室市内には32ヶ所現存していているとのこと。根室市内のチャシ跡が築かれた正確な年代は不明なものの、16~18世紀頃とされてるようです(根室市観光協会HP)。国指定史跡でもあり、日本百名城の一つです。

ヲンネモトチャシ跡とノツカマフ1・2号チャシ跡を見学。跡そのものは大きなものでないですが、ここに砦を築いたアイヌの人たちの社会や生活を自由に想像するのは何とも楽しいです。


(ヲンネモトチャシ跡)


(ノツカマフ1・2号チャシ跡)


(ノツカマフ1・2号チャシ跡)

(ノツカマフ1・2号チャシ跡)


(ノツカマフ1・2号チャシ跡)

目前に青い海が広がり、抜けるような青空、そして風になびく草原。まさに場所は違えど、

「夏草や兵どもが夢の跡」

(つづく)

 


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憧れの花咲線に乗る:2024年夏 道東旅行(2)

2024-08-02 07:32:24 | 旅行 日本

いよいよ、今回の主要目的のひとつ花咲線の鉄旅です。

日本最東路線のこの列車に乗るのは、鉄道好きの私(いわゆる「鉄」には程遠いですが)には憧れの一つ。この日の釧路~根室の片道2時間半、往復5時間の乗車体験を楽しみにしてきました。胸躍らせて、8時21分発に乗るべく釧路駅へ。

なんと1両編成。しかも、列車の側面には「ルパン三世」のキャラクターたちがプリントされています。どうやら、路線途中の浜中駅が「ルパン三世」の原作者モンキーパンチの故郷と言うことで、ルパンを使った村おこしの一環のようです。いいじゃないですか~。

 

【往路:釧路~根室】

社内の座席は8割ほど一杯で、ぱっと見、観光客が7割弱といったところでしょうか。本格的なビデオ器具とマイク一式を持った若者もいます。北海道旅行中とお見受けするシニアご夫婦やアジアからの若者旅行者など、いろんな取り合わせ。私のようなソロ旅行者の方が多いですね。

海側となる進行方向右サイドの席はすでに埋まっていたので、左サイドの窓側席を確保。有難かったのは、シートが思いのほか大きくてクッションもよく効いていること。中央本線の各駅停車のボックス席シートよりも格段に心地よいです。

釧路の市街地を抜けると林の中を走ります。時折、昨夕の列車と同様、汽笛が鳴りスピードが急に落ちるので、鹿がウロウロしているようです。窓側座席は確保しているものの、運転手さんの斜め背後から、どこまでも続く線路と前方景色を見ながら乗っているのが楽しく、童心に返って景色を追いました。この日、朝から小雨模様なのが残念です。

厚岸(あっけし)に近づくと、いよいよ海が右手に見えてきました。浜辺では多くの人が出て、昆布干しのため昆布を広げる作業をしていました。潮の香りと昆布の匂いが車内にも強烈に入り込んできます。

厚岸駅で団体旅行と思しきシニア層のグループが乗車。どうも観光バスと鉄道旅行を組み合わせた道東周遊プランの様子。駅を発って彼らが乗ってきた理由が分かりました。右手に海と別寒辺牛湿原が見渡せる絶景ポイントに入るのです。運転手さんもここが見せ場とばかりに列車のスピードを落として、お客さんサービス。小雨の暗めの空なのでいささか残念ですが、湿原の脇を走る鉄道に乗っているのは、さながら湿原の上を走っているような感覚です。

東へ東へと向かいながら、段々と雲が薄くなり、薄日も差すようになってきました。陽の光を受け始めると、風景の表情が瞬く間に変わって、輝きを増していくのが驚きです。落石海岸沿いでは、風力発電用の大きな風車が所々立っていているのは、単に旅行目的の観点からすると、ちょっと周囲の風景と不釣り合いでやや興ざめなところはありますが、これは我儘と言うものでしょう。。




根室に近づくにつれて、人や家の気配がしてきます。そして、2時間半の鉄旅もあっという間に終了し、終点。到着は10時53分。フォームに降りて、駅を見渡します。この先は線路無し、本当の意味でのターミナル駅に何とも風情を感じるのは私だけでしょうか。「日本最東端有人の駅」とあるプレートを見て首を傾げていたのですが、最東端の駅は手前の東根室ということを知りました。

さあ、戻りの列車を16時8分発に定め、5時間の根室観光にでます。

(根室観光については次エントリーで)

 

【復路:根室~釧路】

復路は往路のリベンジで海側シートをゲット。この晴天なら午前中よりも更に良い車窓が期待できます。レンタカーを返却したので、もう車に乗ることも無いので復路は呑み鉄です。



さあ、復路のスタート。まずは、隣駅の東釧路で最東端の印を確認。

駅名は忘れましたが、根室駅の近隣の駅でも駅周辺に蝦夷鹿が普通にいます。奈良のようです。

快晴だった根室でしたが、復路も西に向かうにつれ、雲が暑さを増し、厚岸では小雨となりました。まあ、それでもビールをちびちびやりながら車窓を追うのは最高です。ホテルから鞄に文庫本を2冊忍ばせてましたが、結局1冊も触ることすらありませんでした。




復路でのアクシデントと言えば、厚岸付近と上尾幌近辺で列車が鹿と2回衝突したこと。都度、運転手さんが車両を止め、衝突した鹿の除去、車両確認をしたうえで、出発となります。各回10分は止まっていますので、必然的に列車の運行も遅れます。幸運にも、私は衝突の現場には立ち会わずに済みましたが、車両の直前を横切る鹿を何頭か目撃しましたので、動きの予測がつきにくく、集団で異動している鹿を避けるのがいかに難しいかが実感として理解できました。鹿も可哀そうですが、運転手さんの技術もメンタルも本当に大変なことで、頭が下がります。

20分近く遅れて、釧路には19時前に到着。最後、若い運転手さんに「おつかれさまでした」と一声かけてましたが、やはり同じことを思ったご婦人も「大変ですね。ありがとうございました」と声をかけていらっしゃいました。


(19時前の釧路川)

林、海岸、湿原、平原と次々に表情を変える車窓、ディーゼル車独特の乗車感覚、のんびりとした空間。これらを味わえる花咲線の鉄旅は強くお勧めできます。

(2日目)


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