その女性は階段を降りてきた。
中ほどの踊り場でもう一段階段があると思い込んだのか、急に踏み違えたように足をひねった。
スローモーションのように横に倒れながら、ずり落ちる体をわきを使ってなんとか手すりにつかまり踏みとどまった。
ちょうどリンボーダンスのもう限界のような格好で。
僕はホッとした。
そこにてすりがなければ、血を見るようなことになったかもしれない。
何かが起きてから対処することよりも、何かを未然に防ぐ。そのほうがずっと評価されるべき存在だし、経済的にも理にかなっている。
しかし、未然に防ぐだけになかなかその有難さは実感できないものでもある。