掛井酒店

純米酒(日本酒)の話題を中心に、ドイツビールやワインなどの入荷情報、日々の出来事を発信します。

天寶一・冷やおろし?

2009-09-05 11:55:58 | 日本酒
本日は、広島県福山市神辺の蔵元「天寶一 五百万石純米 秋上り冷詰」冷やおろしのご紹介ですが、その前に少々・・・・・。
この次期、多くの蔵元さんから「冷やおろし」と呼ばれるお酒が出荷されます。
基本的に「冷やおろし」は、春に醸されたお酒を、一端熱殺菌(火入れ)をし夏を越し程よく熟成をさせ、その後通常は、出荷前にもう一度火当てをするのですが、それをせず最初の1回の火入れの常態で秋頃に出荷されるお酒です。(年々出荷の日程が早く成っているのは、熟成期間が短くなり苦慮する事では有りますが・・・)いわば、蔵元から言えば冷やおろしのお酒としては「現在、自社のお酒は理想的な熟成状態に成っていますよ・・・」というより「今のところ夏を越してこんな感じの熟成具合に成っています」という感じでしょうか・・・。
そういった事からも、当然の事ながら「冷やおろし」の商品については、蔵元によって熟成の具合にばらつきが有ります。要因としては、各社火入れのタイミング・保存熟成させる環境(温度態など)や酒質などなど・・・によって、かなり硬めの味わいのものから、程よく味わいが出始めたような酒まで熟成具合が異なります。
蔵元によっては「弊社のお酒は、十分な熟成期間が欲しいので・・・・」と冷やおろしの商品をお出しにならない蔵元様も当然多々いらっしゃいます。(冷やおろしを出さない要因は必ずしもそれだけでは有りませんが・・・)中には面白いところで「冷やおろし二夏越し」などという2年近くの熟成期間を経た商品なども有ります(近々入荷予定)
夏にも当ブログで書いた通り、お酒自体に「この季節だからこのお酒・・・」などというのは余り意味がないと私自身は思っています。
個人的な見解を述べさせて頂くと、基本的に「いつの季節にも美味しく飲める」というのが理想でだと思っていて、春先だから・夏だから・秋だから・冬だからこんな酒・・・などというのもは、蔵元の営業戦略の一つとして有る話ですが、といって当店の立場からすると必ずしも「秋だから・・」といって追っかけていって「冷やおろしばかり、力を入れる」という訳ではありません。
ただその時にしか出ないスペックで有ったり、今後熟成の楽しみなものに関しては仕入れますし、紹介も致します。ですから私の中では、余り「冷やおろし」というお酒の観念はなく、ましてや好いとか悪いとかという訳ではなく、普通に20BY(平成20年度醸造酒)の商品という事でしかありません。

そういった訳で大変遅くなったのですが、本題のお酒紹介です。(だれぞの落語のように思いっきり枕が長く成ってしまいました。)今回これだけ「冷やおろし」の話をしたからには、この企画の商品(私には普通の20BY・・・・・ひつこいのお酒のご紹介です。
「天寶一 五百万石純米 秋上り冷詰」原料米:五百万石(福井県産) 精米歩合:60% 日本酒度:+11.0 酸度:1.8 使用酵母:9号 アルコール度:15.8
1800ml=価格2,625円
720ml=1,313円


今回の、この商品以外に「天寶一」さんでは原料米に五百万石を使用している種類はなく、やはり他の商品と比べても独特の個性を持っています。
今の熟成状態はまだ硬めで、常温で飲むとシャープで軽快さは有るものの味の奥行きや膨らみといった立体感に少し欠ける様な気がしました。しかし一度55度位お燗にすると、あららら・・・・・多少の若さはいがめないものの、常温の時とは全く印象が違い、味に奥行きが出て、渋・苦味は突出しておらず、柔らかな旨味とほんのりと米の甘味を感じます。65度位に温度を上げると柔らかな印象は影を潜め、旨味と酸味も程よくキリットした印象に変わります。燗冷ましも、とてもとても旨味が出て来て後キレの酸もよく、個人的にこの状態が一番バランス良く感じました。今の状態では燗酒の方が圧倒的に味の伸び幅が有りボロ勝です。当然熟成と伴に味わいは徐々に乗ってくる事と思われます。
先にご紹介した商品では有りませんが、二年越しの冷やおろしに成るとどうなる事かと期待を持たせます。出来る事なら、紅葉のラベルで秋仕様ラベルにせず、通常ラベルで出荷してい頂ければ、熟成の状況を見計らってどうどうと店頭に並べる事も出来るのですが・・・・・それが春だろうが冬であろうが(でもどうどうと並べちゃうかも・・・
酒販店として、今の状態で秋限定として売り切ってしまうのはいかがなものかと・・・・。蔵元も現段階で商品完売のようですし