土木技術者が撮った中南米の「光りと影」の写真 及び 他国風情

 約22年間の中南米赴任中に土木技術者の視点から撮った写真。開通前のパナマ運河に架かる第二アメリカ橋は圧巻 & 他国事情

モーゼ終焉の地ネボ山&死海

2009-12-24 15:37:30 | ヨルダン
 メリー クリスマス, Merry Christmas & Feliz Navidad

 アンマン市から南西(イスラエル側)に車で約1時間の所にある標高約800mのネボ山、そこはヨルダン渓谷一帯、死海、エリコやエルサレムを見渡すことができるユダヤ教、キリスト教にとっては重要な山であります。聖書によればヤハウエ(旧約聖書の唯一絶対神)が死を目前にしたモーゼに、このネボ山に登りユダヤ人の「約束の地」=「カナン」=「現在のイスラエル国及びパレスチナ自治区」を一目見るように語りかけたと言います。またモーゼは死後この地に埋葬されたとも言います。モーゼの死を後世に伝える十字架や墓のあった場所にはA.D.4世紀には修道院が建てられ、現在のフランシスコ修道会の教会内部にその遺構が残されております。今日でもその調査及び発掘作業が行われており立入禁止になっています。(2009年11月現在)
 写真はネボ山のモーゼ終焉の地の遺構がある教会への参道です。



 ネボ山に登る道路から土漠の中に茂る緑地帯を見ております。



 そうですオリーブの木です。



 土漠の中に断続して植栽されています。



 一枚目の写真の参道の奥に見える記念碑です。モーゼの記念碑と勘違いしますが2,000年に前ローマ法王ヨハネ・パブロ・Ⅱ世が参拝された時に造られた記念碑です。



 参道を挟んで上記の向かい側にモーゼの記念碑があります。石碑の文字のSIYAGHAとは修道院の意味です。



 こちらはTHE ABU BADDと書いた銘石が横にあり「かつてはKUFER ABU BADDとして知られたFAISALIYAHの古都にあるビザンチン式修道院の扉に取り付けられていたRolling Stone」と書いてあります。 クリスチャン信者のみが分かるのでしょうか? 現地で購入した観光ブックにも、その意味は記されていません。観光客に疑問をかもし出しているのかもしれませんが、もっと分かり易い表現であればと思います。ここは入場料を1JD(150円)徴収されます。規模が小さいのと聖域ですので喜捨の意味合いで発掘調査費に当てていると考えます。



 上記 THE ABU BADD の銘石です。


 最寄の都市マタバはここから約10km東に位置します。ここには写真のようなモザイクのタイルや絵画等が数多く残っております。古のローマ道路の交易によりギリシャやアラビア文字で書かれた絵画もあります。もともとはこのモザイクタイルは教会の内部に飾ってありましたが現在発掘作業中の為、教会敷地の外に仮設の小屋を建てて、その中に復元されていました。



 この写真こそ、神がモーゼに示された「約束の地」です。死海、エルサレム、エリコやヨルダン渓谷一帯が一望できます。遠くにかすんで見えるのがパレスチナ高原です。



 上の写真の背後に現在発掘調査中の修道院の遺構があり、蛇を巻きつけたモーゼの杖(大蛇をモーゼが退治した伝説に由来する)を形どった十字架の位置も仮設フェンスに囲まれて立入禁止です。



 フランシスコ修道会の教会の遺構です。西側から撮っています。



 同上。東側から撮っています。



 同上。



 ネボ山の北側の斜面です。「アイン・モーサ」と言われ、ペトラ遺跡でも紹介しましたモーゼが岩に杖を突き刺し泉が湧き出した場所です。オリーブが植生しておりました。



 ネボ山を西側に下りるとそこは「死海」です。北部シリア国から流入するヨルダン川やヨルダン渓谷から流入するその他の河川は死海で滞留し流出はしません。死海の水は塩分と鉱分濃度が非常に高く、植物や動物は棲息しませんが、治療効果の期待できる鉱泉水があるため、そのための施設はあります。また塩分濃度が高いので「かなづち」の人でも楽に海面に浮き読書が可能です。死海の海面水位(海面上で)-400mと地球上での最低位地です。ここは大地溝帯がありヨルダン川一帯は大渓谷になっております。ゆえにネボ山との標高差は1,200mになります。対岸のパレスチナ自治区の山々も同様だと思います。(下記している様に死海上方にガスがかかりはっきりは確認できません。)



 死海を大写ししました。流出する川がないため、滞留した河川水は太陽熱により蒸発し(塩分と鉱物分は残留)、このようにガスが掛かって対岸のパレスチナ自治区の高原も薄っすらしか見れません。本当に蛇足ですが、ここは「視界不良」でした。



 ヨルダン川はイスラエル国やシリア国及び特にヨルダン国にとっては重要な水資源です。ヨルダン国は幾度もの中東戦争によるパレスチナ難民やイラクからの戦争避難民を受け入れていますので水量確保の問題は深刻です。それに加えヨルダン渓谷沿いは以前から農業も栄えており、流入する水が減少し死海の水は減少しつつあります。この写真の海岸の塩跡で分かるように1m以上は低下しております。この状態が続くと、それこそ死界をさ迷うのは明白です。近年、経済開発機構(OECD)における開発援助委員会(DAC)各国においてこの水資源不足=生活用水不足(主に飲料水)による対策が施工されております。地球の環境を守りながら一方で経済成長を成し遂げられるような対策が望まれております。大国の一人勝ちは許容されない地球環境になることを願っておりますし、それが人(人類の一員)としての優しさだと感じます。
 再度、メリー クリスマス。