土木技術者が撮った中南米の「光りと影」の写真 及び 他国風情

 約22年間の中南米赴任中に土木技術者の視点から撮った写真。開通前のパナマ運河に架かる第二アメリカ橋は圧巻 & 他国事情

斑岩の「それから」の走跡(漱石?)

2008-09-30 01:23:36 | アルゼンチン(パタゴニア地方)
 原石山から切り出され形状毎に選別、荒削りした斑岩はプエルトマドリンの加工場のストックヤードに(ほぼ後楽園球場の面積)色別(赤、紫、灰色の3色)に仮置き(保存)されます。ここ加工場にて顧客の注文のサイズに合わせ製品にされます。また、カットされた破片も商品になります。その後、製品化された斑岩は害虫駆除の消毒を施し、木製の枠の中に詰められて、大型トラクター牽引トレーラートラックに積み込まれます。おおよそ木箱1箱の重量は厚さ25mmx縦25cmx横25cm(斑岩製品1枚)約1.7tonあります。大型トレーラートラックには現地の道路や橋梁の耐重等々の状況を考慮し約17ton=木箱10ヶ程度積みます。(20ton以内に収める)このトラックはコンボイ(2,3台の軍団)で冬場はアンデス山脈が積雪で通行不可能となるのでブエノスアイレス→大西洋→カリブ海→パナマ運河→太平洋経由日本です。夏場はアンデス山脈を越えてチリ→太平洋日本となります。私が訪れたのは冬場でコンボイはブエノスアイレスまで約1,400kmを2日掛けて港に到着し、乙仲にてコンテナ詰めされ、通関→船舶へ積込み(アジア行きは一定の積荷の量になるまで待ち他の物と混載される)→出航となります。コンテナは20フィート(約6m)と40フィート(約12m)の2種類が、港での積み下ろしの利便性を考慮され世界中で統一化されております。中南米の大きな港は軍港も兼ねていますので立入禁止ですが、滞在期間が長ければ乙仲を通して港湾局から立入許可証明書をもらい空港と同様なイミグレーション検査及び通関をし(ここは指の甲を登録しチェックし赤外線カメラで手荷物検査)クライアントとして中に入ることは許可されました。(多分例外もしくわテロの危険を感じさせない温和な顔立ちだったのでしょう?or他の理由?)さあーこれから約1ヶ月半の長ーい船旅の始まりです。とにかく航海の無事をお祈りするのみです。








斑岩の原石山は何処?

2008-09-25 14:44:27 | アルゼンチン(パタゴニア地方)
 パンパ(不毛の大平原)の何処までも一直線に続く道路をプエルトマドリン市からアンデス山脈方面に約100km強、行った所に、あちこちと小さな丘(山ではない)が散在してきました。一見すると表面は雑草で覆われていますが、この下にアルゼンチン斑岩の原石が横たわっております。アンデス山脈はもっと西側にありますが、北と南側は見渡す限りの地平線です。なんたる広範囲な場所に原石山があるのでしょうか。想像すらつきません。この面積からすると、気の遠くなる位の量の斑岩がこの大地の下に埋っていると考えられます。何もない不毛の地にある鉱物が、丸の内の敷石になろうとは神のお導き以外には想像はつきません。さて原石山は露天掘りで、原石は重力にて自然落下させていると形容するのが率直な感想です。今にも上から落ちそうで近づき難いのですが、落ちてきた岩石をホイールローダー(石をすくうタイヤ付の機械)で拾い上げ、すぐ脇の石の形状選別場へ運び、そこで多数の現地労働者が形状毎に選別をしておりました。また、アームの長いバックホー(掘削する機械)で石を強制的に落としておりました。日本なら即刻作業中止ですが、ここまで労働基準監督署員は来ないのでしょう or 寒くて行きたくないのでしょう or この方法がここでは最適な方法なのでしょう 又は ここに監督署が存在しないのでしょう。彼ら労働者はこの寒いパタゴニアの原石山のコンテナ宿舎で暮らしております。なんと彼らの多くはボリビアの4,000m超の寒いアンデス山脈の鉱山の閉鎖に伴い、ここに移って来た採掘のプロ達だったのです。斑岩の一般的な仕様(使用)は厚さが25~35mm、幅は25*25cmの正方形です。それに合わせ選別したものを、プエルトマドリンの工場に30ton大型トラックで運びます。冒頭の道路は斑岩搬出用の道路だったのです。斑岩は火成岩なので火山地帯ならどこでもあります。もちろん日本にもです。
ここパタゴニアの何処までも無限の大地や自然の壮大さ見ていると、ひととき文明の時間を忘れさせてくれます。






東京のど真ん中の敷石はアルゼンチン国パタゴニア地方産の自然石

2008-09-23 18:55:12 | アルゼンチン(パタゴニア地方)
 有楽町晴海通り沿いに昨年9月1日にオープンしたペニンシュラホテル東京の前の 丸の内仲通りを 晴海通りから丸ビル方向までの区間の歩、車道に日本のほぼ対せき点に位置する標題のパタゴニア産の斑岩(火成岩の一種)が使用されています。パタゴニア地方はチリとアルゼンチンの両国に跨っており南緯40度以南の地域を呼び、面積は約110万k㎡で日本の約3倍にあたります。日本からは飛行機内で約29時間過ごし、待機時間を入れると約37時間掛けて(正味=一日はブエノスアイレスで1泊しなければなりません。)、たどり着いたのがここパタゴニア地方の斑岩産出地の最寄空港トレレウです。チリ国側のパタゴニア地方はフィヨルド等の自然が複雑に入り組み観光地として有名ですが、こちらアルゼンチン側はパンパ(大平原)で不毛の大地です。更に南方向に行けば氷河地帯やマゼラン海峡を越えて地球最南端で南極観光への拠点地ウシュアイア市があります。他方、ここトレレウから北に約70km行った所に、クジラ、シャチ、ペンギン、ゾウアザラシやオタリアが生息しているバルデス半島があります。時期により見られる動物は異なりますが、ゾウアザラシやオタリアは1年中見られます。そのバルデス半島観光の拠点地の都市プエルトマドリンがアルゼンチン斑岩の原石山(石切場)の最寄の都市で、ここに多くの斑岩の生産工場があります。街の歩道の敷石はハート型や様々な形をあしらい歩く人の心を癒しております。日本でも自然石を見るとアスファルトやコンクリート舗装とは違い親しみや安らぎを感じ心が和やかになってきます。写真はトレレウ空港の到着口でここトレレウ近辺に恐竜の骨や卵の化石が発見され、それらの展示博物館もあるそうです。次回からはパタゴニア紀行です。

標高6,000m超級の山麓に架かる橋?

2008-09-18 22:56:50 | ボリビア(1st)
 経済急成長中の楽園の街サンタクルスを後に再びアンデスに戻ってきました。ここはボリビア国の6,000m超級の万年雪を冠した麓で、最貧国の中での最貧市がありその中で最貧の村があります。=ゆえにどうしようもないボロボロの貧困です。周囲に連座する高山からの雪解け水が1年中ありますが、その水を引いて農業用水にする資金がないので農作物の生産は滞っております。ジャガイモは高地の荒地でもどこでも収穫可能ですが、ここは世界でも珍しい野菜(?)キヌア(白い薄い種子)を作っております。現地の人は寒い高地で熱いスープの中に栄養価の高いこのキヌアを入れて暖をとります。さて、この川の川幅は約150mで何やら近代的な構造物があります。10月から3月が雨季で、年600mmの大半がこの時期に降り、この構造物の上を沢山の土石を伴い轟々と流れます。写真はこの構造物の竣工1年後の乾季に撮った写真ですが、元の姿は見受けられません。設計のミスではありません。そういう風に設計されたこの構造物を「潜水橋」と言います。ドリームカムトウルーの♪で「晴れたらいいね」 と言う歌があります。その歌詞のなかに出てきます。雨が降ると橋が水の中に潜るのでこの名がついております。大型車が1台通れる幅で車道の横に75cm嵩上げされた歩道があります。毎年ここに堆積した土石は撤去され維持されます。雨季には毎年この状態になるのです。この工事は本邦の無償資金協力援助で造られたODAで、限られた予算で最大の効果が現れるように造られております。この橋の建設によりいままで雨季に約13kmの迂回が無くなり対岸の村との交流が容易になり、また、新たに取水口とそこから用水路を新設、農作物生産面積の拡大、それに合わせ最寄の市までアクセス道路を建設し流通時間の短縮を図り、より多くの生産物を遠くまで送れるようになってきました。このプロジェクト(PJ)は同国で最初のパイロットPJであり、この成功体験が継承されて、多くの貧困の村が僅かでも豊かになり、一定の生計が可能になる事を願っております。何も無い村でしたが太陽は燦燦と輝いておりました。

ボリビア国の楽園サンタクルス市

2008-09-16 21:18:02 | ボリビア(1st)
 ボリビア国の第二の都市サンタクルス市は標高約3,700mのラパス市とは異なり、標高約400mのサンタクルス州(日本とほぼ同じ面積)の州都であり、年平均気温24℃の熱帯平原地帯です。この国は①ラパス市があるアンデス山脈の高山地帯②標高約2,500mのコチャバンバ市がある渓谷地帯③ここサンタクルス市のある平原地帯の3階建ての国と称せられています。標高が低いここは農業や炭化水素系資源があり、年々,高山地帯や地方からの貧困者が移住し始め、商業の中心地となっております。ブラジルの湿原地帯パンタナル地域やブラジル各地へは、ここから2両編成で4速ギアのディーゼル列車(最高クラス列車で確かプルマンと呼びます。所謂 光やこだまと同様な呼称です)で行きます。住みやすい気候で街を少し行くと緑豊かな田園地帯が広がります。ここには約50年前には九州出身者と沖縄出身者で構成された2つの移住地があり、今は(入植時は大変苦労されたと聞いております)ボリビアの食料や経済を担っております。街は9月24日広場(Plaza 24 de Septiembre)を中心に環状型に道路を形成しながら拡大し続けています。一枚目の写真は9月24日中央広場にそびえる大聖堂です。二枚目の写真は何だと思います?
ここボリビアはクーデタでめまぐるしく政権が変わり、南米の最貧国となり、他国のODA等の有償融資により、経済開発援助が行われたにも関らず、債務返還能力なしのレッテルを貼られたHIPC(重債務貧困国)で、その最上級=拡大HIPCイニシアティブ(重債務貧困国で債務の100%削減を供与できる国=2001年に適用)と言うナマケモノになりました。前振りが長くなりました。
 近年はサンタクルス州やその南部での炭化水素資源の産出等々により、経済は前向き傾向にあります。そのせいかどうかは分かりませんが、このナマケモノ動物はここの公園を追い出され?可哀相な気もしますが、檻のある監視員(IMFではありません)付きの動物園に移動したと聞いております。2004年はIMFとの合意の上財政赤字の削減をしたと聞きおよんでおります。今後の発展を大いに期待しております。何処かの先進国とは違い、何しろ鉱物や炭化水素系資源は無尽蔵にあるのですから・・・。




世界一高所?のゴルフ場の名物ホール

2008-09-12 01:32:49 | ボリビア(1st)
 ここラパスには唯一の18ホールを持つ立派なゴルフ場があります。標高3,000m以上なので空気が薄くその抵抗が少ない為、飛距離は出るのが理論です。が、それはプロ並の腕を持つ人の特権の様な感じがしています。私も海外生活が長く楽しみのひとつは安価にプレー出来るゴルフです。ここは友人が会員なのでビジター料金30US$でプレーを出来ます。(プラスキャディフィーは必要です)さてそれなりのゴルフ歴がある私には、余り空気抵抗の恩恵が無いように感じています。多分に(自発的or癖?)にフックやスライスを打てるゴルファーには負の作用が働きボールにキレが無くなるのではないかと言い訳をしております。またコース設計も難しく設定されており、例えば、10m位のユーカリの林の間を通さなければならないホール、人口の池を沢山取り入れたホール、谷越えホール、ティーグラウンドから前の視界が見えないホール、打ち上げや打ち下ろしホール、さながら砲台グリーンで乗らなければ奈落の底に落ちる傾斜の急なホール、右が林で左はOBの10m位の範囲内でティーショットを強いられるホールとか本当に各ホールとも素晴らしく良く考えられたコース設計で技術者の知恵を吹き込んで造ったコースと感心します。さて、このゴルフ場でも特に目玉の名物ホールがこの写真のホールです。通称「月の谷ホール」と呼びます。100ヤードチョットのショートホールですが、グリーン前には高さ約2.5mの深いバンカーがあり、左と後ろ側は奈落の谷で右は林です。バンカー側に傾斜したグリーンとティーグラウンドとの間は月のクレーターを思わせる奈落の谷があります。(奈落と書いたのは深さが20mから40mはある鋭角な窪みで、しかも狭隘でここに打込むとボールを拾いには決していけません。)ゆえに、兎に角onしなければトリプルボギー以上は覚悟の上でのショットになります。前方にイリマニ山を見ながらの素晴らしいホールです。会員も制限しており一人でプレーされている方も見受けられます。ゴルフ場を一人で回れるとはここで初めて知りました。「うらやましい」の他に形容する言葉がありません。ここでは4人一組で回す慣習はありません。何だか彼の国の慌しさがが可哀相な気持ちになってきます。
それはさておき、ここラパスのゴルファーは高所にも関係なく素晴らしい実力の持ち主の方々ばかりです。コースレイアウトのお蔭と安価でプレイできる回数の賜物と考えています。彼の国もせめて安価に回せてもらえば腕前は上がると思いますが???。

世界最高所の首都ラパス(No.2)

2008-09-11 01:01:32 | ボリビア(1st)
 標高4,000m超のエルアルト空港からラパス市内に入りました。逗留した4星級ホテルの7階から撮ったイリマニ山とラパス市の高層ビル群です。ホテルはここボリビアに居住する友人に依頼して通常の半額の値段になりました。彼らはここに居住して会社を設立しているためコーポレート価格になります。世界各国どこでもホテルの値段はその国の物価に比べはるかに高く、ここボリビアでは一般労働者の約1ヶ月分の給料 or それ以上に匹敵します。ところが過去にはホテルのセキュリティーはお粗末でフロントのセーフティボックスに預けたお札が1枚抜き取られるのは常習でした。その為に何を預けるのかいちいち記述して預けなければなりません。私の友人で預けたものの内、財布のみ盗られた人もいます。それでもホテルは謝罪ひとつするわけではなく、責任回避をし非は100%の確率で認めないのが常です。地方都市では必ず何を預けるか明記する必要があります。プライバシーを見られる様で良い気持ちはしませんが必要条件です。最近は客のクレーム多発で改善され、4星級以上のホテルは部屋の中に暗証番号登録するセーフティボックスが設置されるようになりました。カメラやCDプレーヤー等ロビーに忘れたらまず出てこないことは覚悟しなければならないでしょう。これら盗品はエルアルト市の露店市(通称泥棒市)に行けば本人の名前入りのままで売られているそうです。またスリやヒッタクリの手口は鮮やかで、盗られた本人も天晴れだと感じる程、見事な技です。ドネーションしたと思えるほどのその手際に怒りを忘れ苦笑します。日本でも「浜の真砂は尽きるとも世に・・・・・」と言う伝えがあります。やはりそうなのでしょう。話が逸れてきました。
このホテルの場所がすり鉢形状の底の部分にあたり大半が高層ビルです。またイリマニ山側の更に低い場所(=更に空気の濃いところ)に超高級住宅街も存在します。左サイドに見える橋は他国の有償融資によるパープ型の斜張橋です。イリマニ山と青い空と調和し絵になる光景です。夜には南十字星や銀河が見られる 良い所です。

世界最高所の首都ラパス市

2008-09-09 18:13:01 | ボリビア(1st)
 世界最高所にある首都ラパス市です。(憲法上の首都はスクレ市)この写真は4、000m超の飛行場のあるエルアルト市から見たすり鉢形状の下方にあるラパス市を撮ったものです。後方に見える雪を冠した山は標高6,402mのボリビア富士とも言われている(在住日本人の間で)イリマニ山です。ラパス市の標高は3,650mで富士山とは約130mしか違いません。(≒富士山の高さです)すり鉢の斜面には日干しレンガ(ここではアドベと呼びます)で造られた家に、貧しい人々が斜面に張り付く様に暮らし、空気の濃い下の方は富裕な人々が暮らしています。下方には20階~30階建のビルが林立し、ここ4,000m超のエルアルト市の空気の薄い所は、鉱山閉鎖に伴う失職者や地方から貧困な人たちが、首都ラパスに職を探しに違法に住み着いています。エルアルト市は先に公開しましたチリの天文台同様な大平原ですが、一方ラパス市はすり鉢の底なので土地が限られ、建物は高層化しているのです。高層化の点では、どこかの国の首都も土地が限られ高層化しているのと近似している様に感じます。ここラパス市は何でも世界一高所で名を売っております。たとえば、世界一高所の5星ホテル、ゴルフ場、国際サッカー協会公認のサッカー場等々。でも神様はちゃんと平等に、きれいな空とジャガイモやとうもろこし等々、自給自足できる種だけは与えてくれ、小生が知っているアフリカとは違い、人々は貧困ですがなぜか毎日陽気です。毎晩、路地でフォルクローレ(フォークソング)を歌い踊り、とうもろこしで作った焼酎(チーチャと言います)を飲みながら、楽しんでいます。何でも手に入り、時間通りに暮す経済豊かな国と、何も無いが自然の流れに合わせ肩寄せて暮らしてる貧国、どちらの生き方が人間として豊、かを考えさせられます。