アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

20211119 志賀原発現地調査は「通過儀礼」か

2021年11月19日 | 原発(志賀原発)
志賀原発現地調査は「通過儀礼」か

 11月18日、原子力規制委員会は志賀原発敷地内にある断層の現地調査をおこなった(注)。規制委員会では東日本大震災後に制定された「新規制基準」(主として地震や津波対策)に基づいて、志賀原発敷地内・周辺の断層が活断層かどうかをめぐって、やりとりがおこなわれてきた。

 1号機の設置時には、タービン建屋直下に地層のズレを認めたものの、北陸電力は「断層ではなく浸食作用でできたもの」と説明し、国(通産省)も追随し認可した。その調査はかなりずさんで、黒田和男(通産省地質調査所)さんは「通産省が専門家会議に手配した敷地内の現地調査は半日程度で、岩盤を詳しく確認できなかった」(『北陸中日新聞』2013年1月19日)と話している。

 しかし、東日本大震災後に、渡辺満久(東洋大)さんや立石雅昭(新潟大)さんが現地調査をおこなったところ、富来川南岸断層が活断層である可能性を指摘し、2012年に旧原子力安全・保安院は原子力建屋直下に活断層(S1)の可能性を指摘し、2014年2月規制委員会の有識者調査団も同様の判断をしている。北電は1号機タービン建屋直下のズレを断層であると渋々認めたが、活断層ではないと主張して、いまに至っている。

 規制委員会発足(2012年)後、志賀原発関係で24回(規制委員会16回、有識者会議8回)の会合を開いてきたが、北電はデータや資料を求められても出し渋り、去る10月14日ようやく現地調査を決定した。今回の現地調査は2号機の原子炉建屋の真下を通る断層(S4)を含む敷地内にある10本の断層が活断層か否かをめぐっておこなわれている。

 規制委員会は原発推進政策をすすめる日本政府の一機関であり、今回の現地調査は志賀原発再稼働にゴーサインを贈るための通過儀礼にすぎないだろう。志賀原発敷地内には活断層が走っていることは周知の事実でありながら、北電の「お話」に耳を傾け、議論を尽くしているかのように仮装し、最後の詰めのために現地調査をおこなっているに過ぎない。原発廃炉の力は市民のなかにこそある

(注)現地調査の要綱と資料は規制委員会のHPに掲載されている。
     https://www2.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tekigousei/power_plants/200000378.html

 

規制委員会の議論切り抜き帳(主として『北陸中日新聞』)
19870126 北電―通商産業省に1号機原子炉設置許可申請提出―原発敷地内のズレを「浸食作用で生じた」もので「活断層ではない」と説明し、国も活断層ではないと認めていた。
198705~06 安全審査に伴う現地調査を実施―1号機直下の地層にズレがあることを確認した。2013年1月、黒田和男(通産省地質調査所)は「通産省が専門家会議に手配した敷地内の現地調査は半日程度で、岩盤を詳しく確認できなかった」と述べている(『北陸中日新聞』2013.1.19)
19881200 1号機差し止め提訴→2000年敗訴確定。
19990618 1号機臨界事故→隠蔽→7年9カ月後の2007年3月発覚。
19990800 2号機差し止め提訴→2006年地裁勝訴→2010年敗訴確定。
20070325 輪島市南西沖40キロで能登半島地震(震度6)―志賀原発2号機の原子炉建屋内で水銀灯2個が使用済み燃料貯蔵プールに落下。2号機タービン建屋床面のコンクリート、1号機の配管モルタルの一部がはがれた。
20110311 東日本大震災―福島第1原発メルトダウン
20120500 渡辺満久(東洋大)―富来川南岸断層が活断層の可能性を指摘。
20120626 1・2号機廃炉訴訟提訴→金沢地裁で係争中。
20120717 原子力安全・保安院専門家会議―S1断層が活断層の可能性指摘→北電に再調査指示(18日)
20120919 原子力規制委員会が発足
20130118 立石雅昭(新潟大)―富来川南岸断層は活断層だという調査結果を提出する。
20130606 北電は「S1断層は活断層ではない」とする報告書を規制委員会に提出。
201309末 立石雅昭(新潟大)―富来川南岸断層は活断層だという調査結果を提出した。
20131219 北陸電力最終報告書を提出
20140205 規制委員会―有識者調査団(5人)を決め、2月22日、23日に現地調査をおこなう。
20140222 有識者調査団―1号機原子炉建屋直下のS1断層調査。
20140323 有識者調査団―福浦断層は活断層。
20140324 規制委員会―第1回会合。「活断層ではない」と判断できない→北電追加調査
20140711 規制委員会―有識者による第2回評価会合。北電は敷地内の断層は活断層ではないと主張。有識者はデータ不足を指摘した。北電はS2とS6の連続性を認めた。
20140826 規制委員会(第1回)―北電に準備不足を指摘。
20140902 規制委員会―「安全対策の規定を満たしていない」と再検討を要求した。
20150717 規制委員会―「敷地内にある2本の断層は活断層との疑いを否定できない」という評価書案を提示した。
20151120 規制委員会―有識者が「評価書案」をピアレビュー(査読)→活断層の疑いは否定できない
20160303 規制委員会―有識者による評価会(第8回)で、敷地内断層は活断層と最終判断。北電は「参考意見に過ぎない」。
20160427 規制委員会―有識者調査団がまとめた評価書を受理した。
20160610 規制委員会(2014年9月以来1年9カ月ぶり)―北電から敷地内断層の説明を受けた。北電はS2・S6、S4、S1を主要断層と定義。「2号機下の2本は動くことはない」「S1は震源にはならない」と主張。規制委員会は詳細なデータを要求。
20160928 2号機の原子力建屋に6・6トンの雨水が流入し漏電。
20161024 規制庁―北電に雨水対策を求める。
20170208 規制委員会―雨水対策を指示(昨年9月雨水6・6トン流入、志賀原発の水侵入未対策=1号機58カ所、2号機37カ所、合計95カ所)
20170310 規制委員会―北電は断層を3本(S2・S6+海岸部の2本)に絞ると主張したが、規制委員会は認めず、8本の確認を要求
20170624 規制委員会―北電は8月をめどに追加調査方針→40カ所ほどのボーリング調査で選び直す。規制委員会は敷地周辺の地質調査を指示。
20171122 規制委員会―北電は断層問題と適合審査の並行を主張。規制委員会は断層の議論には時間がかかると。
20180302 規制委員会―北電は昨年の会合で選んだ3本に2本を加えて合計5本(S2・S6、K2、K3+S4、S1)を提示。
20180706 規制委員会―北電は敷地内外の5本の断層のデータを提出し、活断層ではないと主張。委員からデータ不足、根拠不十分と指摘。
20180921 規制委員会―北電が提出した資料が不備のため進まず、次回以降に持ち越した。規制委員会はこれまでの5本に2本追加する必要ありとの見解。(原発敷地内には断層が21本あり)。北電は陸地の3本を評価すれば他の陸地の断層の評価に代用できると主張。規制委員会は「論理的飛躍」「客観性を欠く」、データの誤記載や文献の引用がないと北電を批判。
20190618 志賀原発廃炉株主訴訟提訴。
20190118 規制委員会―北電は陸地+海岸部の8本の断層を提示。規制委員会は海岸部の2本の断層はデータ不備と指摘。
20190614 規制委員会―北電は陸地内の断層6本について9月に説明する、ボーリング調査は8月に終了する。北電は①富来川南岸断層、②兜岩沖断層、③碁盤島沖断層、④福浦断層については、来年(2020年)1月に説明する。
20191025 規制委員会―北電は敷地内断層6本は活動性なしと主張。
20200314 規制委員会―北電は評価断層として海岸部の3本を提案。規制委員会は3本を了承しつつ他の断層の再検討を要求。次回は選定済みの9本を先行的に議論する。従来の岩場の11本に新たに取水路沿いの10本を加えることを確認。この内K2、K3、K14を評価対象に選定。規制委員会は他の断層の再検討を要求。
20200710 規制委員会(12回目)―本格的な議論に入った。北電は断層6本の8カ所で観察実施→12~13万年前以降の活動は認められないと主張。規制委員会は北電に論理構成の見直し、調査の手法改善を要求した。
20201002 規制委員会―断層の選定(10本)終了。
20210115 規制委員会―志賀2号機の適合性審査。北電は敷地内10本(S1~8、K2、K3、K14、K18)の断層は活動性なしと説明。規制委員会は「証拠や方向性、手法は評価できる」→データのさらなる補充・整理を、現地調査必要。
20210514 規制委員会(15回目)―原発半径5キロに分布する福浦断層など4本について「活動性が否定できない」と説明。(会合は2016年6月から15回目)
20211014 規制委員会(16回目)―規制委員会は11月にも2号機敷地内断層(敷地内と半径5キロ程度の断層)の現地調査をおこなう。北電は敷地周辺の断層のうち4本を活断層と認めて、原発の耐震設計を終えている。今後は半径5キロ以遠の断層の審査、地震動と津波の影響についての議論へ。
20211118~19 規制委員会―志賀原発敷地内断層・福浦断層の現地調査
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 20211230 志賀原発トラブル... | トップ | 20211120 日本海域での敵基... »
最新の画像もっと見る

原発(志賀原発)」カテゴリの最新記事