福島第1原発事故による生物への影響
4月に、当ブログ(福島原発事故と昆虫の被曝)で大瀧研究所(琉球大学)によるヤマトシジミの研究について報告したが、その後新聞やインターネット上に、福島原発事故由来の放射能による生物(稲、ツバメの巣、モミの木、ワタムシ、ウグイス、ニホンザル)への影響についての研究が公表されている。
稲の遺伝子に異変―ランディープ・ラクワール(筑波大大学院生命環境科学研究科教授)
ラクワール教授は「飯舘村での低レベルガンマ線照射に伴う稲の遺伝子発現の観察」というテーマで研究成果を発表した。
つくば市内の研究所で育てた稲の苗を、福島第一原発から約40キロメートルに位置する飯舘村内の試験農場に持ち込んだうえで、放射線の外部被曝にさらされる屋外に置いた。そして生長が進んでいる根本から3番目の葉をサンプルとして採取し、ドライアイスを用いて冷凍保管したうえで、つくばに持ち帰った。
ラクワール教授によれば、「飯舘村の試験農場に到着してから6時間後に採取したサンプルではDNA損傷修復関連の遺伝子に、72時間後ではストレス・防護反応関連の遺伝子に変化が認められた」としている。(2013年4月3日「東洋経済」より要約)
ニホンザルの白血球数が減少―羽山伸一(日本獣医生命科学大学教授)
羽山教授による「福島県の野生二ホンザルにおける放射性セシウムの被ばく状況と健康影響」によれば、福島市内(福島第一原発から約60キロメートル)には、約3000頭近くのニホンザルが生息しており、農作物被害対策のために個体数調整で捕獲されたサルを用いて、筋肉に蓄積されているセシウムの量を継続的に調査している。
2011年4月から13年2月にかけて福島市内で捕獲された396頭のサルと、青森県で2012年に捕獲された29頭を比較すると、土壌中のセシウムの量と筋肉中のセシウム濃度の関係は、土壌汚染レベルが高いところほど、体内のセシウム蓄積レベルも高い傾向がある。また、木の皮や芽を食べることが多く、土壌の舞い上がりが多い冬期に、体内の濃度が上昇している。なお、青森県のサルからはセシウムは検出されなかった。
避難指示区域にならなかった福島市内のサルについては、外部被ばくは年間数ミリシーベルト程度の積算線量にとどまるうえ、内部被曝量も10ミリグレイ程度にとどまるにもかかわらず、ニホンザルの正常範囲より白血球数、赤血球数とも減少しており、白血球は大幅に減少していた。
2011年3月の原発事故以降に生まれた子どものサル(0~1歳)では、汚染レベルと相関するように白血球の数が減っている。造血機能への影響が出ているのではないか。(2013年4月3日「東洋経済」より要約)
ウグイスに「おでき」―石田健准教授(東京大学大学院農学生命科学研究科)
2011年8月に福島県阿武隈高地の中でも特に放射線量が高く、「帰還困難区域」に指定された浪江町赤宇木地区(福島第一原発から約25キロメートル)で、野生のウグイス4羽を捕獲したところ、うち1羽から見たこともないおできが見つかり、血液原虫も寄生していた。また、捕獲したウグイスの羽毛を持ち帰って放射線量を測定したところ、セシウム134と137を合わせて最高で約53万ベクレル/キロもの汚染が判明した。(2013年4月3日「東洋経済」より要約)
福島のモミの木に異変―放射線医学総合研究所
東京電力福島第一原発事故によって帰還困難区域に指定された福島県内の山林で、幹が上に伸びていないモミの木が見つかった。空間線量が高いと、伸びない木が多い傾向があった。「放射線が原因か不明だが、可能性の一つ」と説明している。
2015年1月、福島第一原発から3.5キロの大熊町(毎時33.9マイクロシーベルト)、8.5キロと15キロの浪江町の2カ所(同19.6と同6.85)と放射線の影響が少ないとみられる茨城県北茨城市(同0.13)のモミと比べた。
モミは毎年、幹を上に伸ばし、横に2本程度の枝を出す。チームは幹の欠損などを「形態変化」ととらえ、それぞれの場所で100~200本を調べた。空間線量が最も高い大熊町で9割以上が変化、浪江町では4割強、3割弱と変化率が減少するものの、北茨城市でも1割弱で変化があったという。(2015年8月29日「朝日新聞」より要約)
ツバメの巣からセシウム―山階鳥類研究所
2011年中に、北海道から九州にわたる21都道府県から197個のツバメの巣を集めた。福島第1原発から370キロ圏内の13都県の150個の巣から原発事故由来のセシウムが検出された。福島県内で集めた92個の巣全てから放射性セシウムを検出した。平均濃度は7502ベクレル/キロで、最大で9万ベクレルだった。
ツバメは泥や藁を使って巣を作るため、巣近くの土壌汚染を反映した。(2015年5月27日「北陸中日」より要約)
福島のワタムシ―秋元信一(北海道大学教授)
ワタムシは体長約3~4ミリで羽があり、複数の植物に寄生する。2012年6月、福島第1原発から北西約32キロにある福島県川俣町山木屋地区で採取したアブラムシの仲間ヨスジワタムシ(約200匹)の個体約1割に触角の一部が欠損していた。奇形の発生率は通常1%未満である。
原発事故後1年間の山木屋地区の積算放射線量は9.2~42.5ミリシーベルトであった。(2014年3月21日「北海道新聞」より要約)
4月に、当ブログ(福島原発事故と昆虫の被曝)で大瀧研究所(琉球大学)によるヤマトシジミの研究について報告したが、その後新聞やインターネット上に、福島原発事故由来の放射能による生物(稲、ツバメの巣、モミの木、ワタムシ、ウグイス、ニホンザル)への影響についての研究が公表されている。
稲の遺伝子に異変―ランディープ・ラクワール(筑波大大学院生命環境科学研究科教授)
ラクワール教授は「飯舘村での低レベルガンマ線照射に伴う稲の遺伝子発現の観察」というテーマで研究成果を発表した。
つくば市内の研究所で育てた稲の苗を、福島第一原発から約40キロメートルに位置する飯舘村内の試験農場に持ち込んだうえで、放射線の外部被曝にさらされる屋外に置いた。そして生長が進んでいる根本から3番目の葉をサンプルとして採取し、ドライアイスを用いて冷凍保管したうえで、つくばに持ち帰った。
ラクワール教授によれば、「飯舘村の試験農場に到着してから6時間後に採取したサンプルではDNA損傷修復関連の遺伝子に、72時間後ではストレス・防護反応関連の遺伝子に変化が認められた」としている。(2013年4月3日「東洋経済」より要約)
ニホンザルの白血球数が減少―羽山伸一(日本獣医生命科学大学教授)
羽山教授による「福島県の野生二ホンザルにおける放射性セシウムの被ばく状況と健康影響」によれば、福島市内(福島第一原発から約60キロメートル)には、約3000頭近くのニホンザルが生息しており、農作物被害対策のために個体数調整で捕獲されたサルを用いて、筋肉に蓄積されているセシウムの量を継続的に調査している。
2011年4月から13年2月にかけて福島市内で捕獲された396頭のサルと、青森県で2012年に捕獲された29頭を比較すると、土壌中のセシウムの量と筋肉中のセシウム濃度の関係は、土壌汚染レベルが高いところほど、体内のセシウム蓄積レベルも高い傾向がある。また、木の皮や芽を食べることが多く、土壌の舞い上がりが多い冬期に、体内の濃度が上昇している。なお、青森県のサルからはセシウムは検出されなかった。
避難指示区域にならなかった福島市内のサルについては、外部被ばくは年間数ミリシーベルト程度の積算線量にとどまるうえ、内部被曝量も10ミリグレイ程度にとどまるにもかかわらず、ニホンザルの正常範囲より白血球数、赤血球数とも減少しており、白血球は大幅に減少していた。
2011年3月の原発事故以降に生まれた子どものサル(0~1歳)では、汚染レベルと相関するように白血球の数が減っている。造血機能への影響が出ているのではないか。(2013年4月3日「東洋経済」より要約)
ウグイスに「おでき」―石田健准教授(東京大学大学院農学生命科学研究科)
2011年8月に福島県阿武隈高地の中でも特に放射線量が高く、「帰還困難区域」に指定された浪江町赤宇木地区(福島第一原発から約25キロメートル)で、野生のウグイス4羽を捕獲したところ、うち1羽から見たこともないおできが見つかり、血液原虫も寄生していた。また、捕獲したウグイスの羽毛を持ち帰って放射線量を測定したところ、セシウム134と137を合わせて最高で約53万ベクレル/キロもの汚染が判明した。(2013年4月3日「東洋経済」より要約)
福島のモミの木に異変―放射線医学総合研究所
東京電力福島第一原発事故によって帰還困難区域に指定された福島県内の山林で、幹が上に伸びていないモミの木が見つかった。空間線量が高いと、伸びない木が多い傾向があった。「放射線が原因か不明だが、可能性の一つ」と説明している。
2015年1月、福島第一原発から3.5キロの大熊町(毎時33.9マイクロシーベルト)、8.5キロと15キロの浪江町の2カ所(同19.6と同6.85)と放射線の影響が少ないとみられる茨城県北茨城市(同0.13)のモミと比べた。
モミは毎年、幹を上に伸ばし、横に2本程度の枝を出す。チームは幹の欠損などを「形態変化」ととらえ、それぞれの場所で100~200本を調べた。空間線量が最も高い大熊町で9割以上が変化、浪江町では4割強、3割弱と変化率が減少するものの、北茨城市でも1割弱で変化があったという。(2015年8月29日「朝日新聞」より要約)
ツバメの巣からセシウム―山階鳥類研究所
2011年中に、北海道から九州にわたる21都道府県から197個のツバメの巣を集めた。福島第1原発から370キロ圏内の13都県の150個の巣から原発事故由来のセシウムが検出された。福島県内で集めた92個の巣全てから放射性セシウムを検出した。平均濃度は7502ベクレル/キロで、最大で9万ベクレルだった。
ツバメは泥や藁を使って巣を作るため、巣近くの土壌汚染を反映した。(2015年5月27日「北陸中日」より要約)
福島のワタムシ―秋元信一(北海道大学教授)
ワタムシは体長約3~4ミリで羽があり、複数の植物に寄生する。2012年6月、福島第1原発から北西約32キロにある福島県川俣町山木屋地区で採取したアブラムシの仲間ヨスジワタムシ(約200匹)の個体約1割に触角の一部が欠損していた。奇形の発生率は通常1%未満である。
原発事故後1年間の山木屋地区の積算放射線量は9.2~42.5ミリシーベルトであった。(2014年3月21日「北海道新聞」より要約)