アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

19750926「私の基地騒音反対闘争」竹内伊知

2024年06月12日 | 小松基地関係資料
 2004年6月6日の第7次小松基地爆音訴訟傍聴後、「10/4協定」の交渉過程を整理していて、下記の投稿を見つけました。「10/4協定」締結一週間前のもので、基地問題を公害問題に切り縮めてはいますが、北海道の寿都町、神恵内村や佐賀県の玄海町のように、お金のために「核ごみ文献調査」に応じるような、今日の行政の長には見られない誠実さが表れています。

(『地方行政』時事通信 1975年9月26・29日)
「私の基地騒音反対闘争」竹内伊知 石川県小松市長

 十五年の基地の歴史を持つ小松市に、騒音公害が際立って大きく取り上げられたのは、昨年八月、防衛庁側から新機種F4EJファントム配備の申し入れに端を発している。昭和三十四(1959)年のF86F、三十八(1963)年のF104J配備の時は、激しい反対運動はあったものの、イデオロギー闘争の域を脱し得ず、そのため圧倒的多数を擁する保守党側議員によって、文字通り強行採決が繰り返されて終わった。

 その後、法令も数回改正され、防衛庁側もそれなりに、障害防止や民生安定対策として、公共施設に対する防音補助や、一部地域の希望立ち退き、あるいは周辺道路整備や放送施設、学習等供用施設など、ある意味では相当多彩にわたる施策がおこなわれてきたことも事実である。
 しかし十五年間の歴史の変遷は、「権利と要求の時代」という言葉に象徴されるように、住民は激しい騒音への不満を年ごとに高め、不満爆発の発火点ギリギリの状態にあったわけである。

 このような切迫感のなかでの新機種配備計画であるから、当然被害地住民と防衛庁側の思惑とは激突せざるを得ないのである。基地を持つ自治体の悩みは、幾つもあるが、何よりも難しく、かつ行政上にも諸々のマイナス作用を及ぼしている最大原因は、わが国の国防に関するコンセンサスがなされていないことだ。そのため住民としての対処に先行して、党派的イデオロギー的対立が激化してしまう。
 このことを住民の側から見ると、騒音や安全に対する態度表明でも、必ず党派的に色分けされて、ために民主的な要求すらためらう雰囲気がかもし出され、ひいては、要求なきところに政策なしで、矛盾解決の機会をとらえられなかったという面も見逃せない。

 このような状況を踏まえて、私の就任以来一貫してとった態度は、基地問題を思想的党派的にはとらえない、市民の生活環境擁護という一点に絞って対処すると訴えてきたわけだ。あえて言えば民主的要求としての、人権擁護、公害排除という範囲以外に出ないことを主張し続けたわけだ。このことの功罪は、結果を見た後に批判をいただくとして、現況ではこの考え方は市民、とくに被害地住民からは支持されてきたし、市議会側も、臨時議会で意見書という形で、これを実質的に承認されたのは、一応の成果であったと考えている。

 二つ目の問題は、従来から基地問題に限って、中間自治体としての県を通さず、防衛省との直接折衝で進められてきた慣習についてである。これは県側からすれば、党派対立の原因ともなる基地問題を、県政のなかに持ち込みたくないという思惑も働いたであろうが、そのことよりも所在自治体側や防衛庁側も、県の役割、任務についての認識を欠いた面の反省もこの際、必要なことと考える。
 基地と地域住民の共存のためには、現行法令、制度は極めて矛盾や不備が多いことは衆目の一致するところである。だがこれが是正には、国防への国民的意思統一が図られていない情勢のなかでは、強大な民主的な力と運動が必要であり、このためにも従来の基地所在市町村だけの連携にとどまらず府県を一体とした大きな政治勢力の結集が急務であると考える。
 法令不備の矛盾の最大のものは、騒音源が自衛隊機であること、つまり国が公害の原因者であることが自明の理でありながら、公害基本法でいう原因者負担の原則を認めず、補助、助成の形で、お恵み的に交付されているという問題だ。

 去る第七二通常国会で、成立した「防衛施設周辺の生活環境整備等に関する法律」では、従来の不備をある程度解消しうるよう改正されたが、この新法といえども先に指摘した原因者としての規定と原因者負担の原則が確立されていないことが致命的欠陥である点に変わりはない。
 新法の内容に関する詳細な批判を省くのは、内容の具体的批判の結果が(所在市町村連の陳情など)今度の新法であるから、詳細批判は、またまた基本原則をなおざりにした小手先細工に終わることを恐れるからだ。

 結論として、小松基地に新機種配備計画が出されたこの機会にこそ、過去の苦々しい体験に照らして、一挙に懸案の諸問題の解決を図ろうとするのが、被害住民の統一された意思なのである。
 そしてこれが解決への基本は、先に私どもから防衛庁側へ示した三原則、つまり、
(一)国が騒音公害の原因者であることを確認すること
(二)公害対策基本法の精神に基づき、原因者負担の原則を確立すること
(三)環境庁の示した空港周辺環境保全基準を確実に順守すること(第二種Bとしての格付けを前提)、

という極めて当たり前のことを国側に承認させようとするものなのだ。
 ただこの場合に大切な私どもの理念として、具体的問題の対処に際して、便乗的利得を得ようとは考えないということだ。成長時代の価値観、つまり金さえあれば、設備さえよくなれば効果ありとする風潮、国に金をより多く出させることが地方政治家の手腕であるがごときはぬぐいさらなければならない。住み良い町づくりは、他人の恩恵やアブク銭によってはつくられるものではない。

 堕民養成や、欲望の拡大再生産にのみ資する道を封じて、文字どおり、自力更生、自らの汗と労苦の積み重ねこそが、真の町づくりであることの理念に徹する機会ともしなければならない。ともあれ、要求することがきわめて当然の要求である限り、厳正確実な誓約を求めることには厳しく対処していくつもりだ。


        


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