フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

屋根裏に誰かいるんですよ

2010年12月12日 20時18分04秒 | 日記


久し振りに読んだら、もっと読みたいぞ熱がスパーク。近くの本屋で春日武彦の本を買い漁ってきました。

春日センセの魅力は「世の中灰色だし、分からないことは分からない。不条理なことは不条理」という視点がはっきりしていることね。春日先生の名著「はじめての精神科」なんか読んでも、「今から死にます、という電話への応対はどうしたらよいか?」という問いに「こういう風に答えよ、などという回答例はない」とはっきり言っちゃってますし。
ただし、本来この手の対応ってのはそういうもんで、相談者のキャラクター、その時のシチュエーション等によって変わってくるのは当たり前の話で、それこそマニュアルなんかに沿って出来る事じゃないのよ。だからそれをはっきり言われると逆に安心するもんなんですな。
ぬたりも昔その手の仕事してた時に(なお、ぬたりは医師でもないし看護師でもない)そういう「今から死にます」という電話に対応したことはあるが、なだめすかし等を駆使して、最後は
「聞いて貰いたいことがあるなら、『死にたい』とかじゃなく『私は○○を相談したい』と言わなきゃダメでしょうが!」
と説教しましたもの。
ま、そこに至るまでに2時間かかりましたが。
いずれにせよ、その時は春日センセの本を読んだおかげで堂々と対応できたことは確か。実際その方自殺とかしなかったですし。つーか、後日当該人物の電話応対した精神科医が同じように説教してたのは苦笑したけども。
勿論ぬたりも説教することが正解だとは毛頭思っていない。人によっては不用意に用いればホントに自殺されかねないからね。ケースバイケースだよなあ。

そんな具合に精神医療に関して、一時期ぬたりが仕事として携わってた際に、春日センセの著作は業務遂行に非常に役に立った。あの時に学んだ精神医療関係の知識や経験はぬたりの人生の大きな財産になったし、貴重な経験をさせて貰ったと今でも思っている。

ま、もうあのセクションに戻りたいとは思わないけども(おい)
夜勤とかあってマジで体壊しかけたんだから。

ま、おにゅうのパソコンのセットアップの合間に読むことにしましょう。

ああ、それからすごく面白かった引用文章を紹介。
原著は翻訳ミステリ「焦熱の裁き」。「医療者心得帳」に引用する本じゃないよね。
セリフはアルコール中毒の牧師がスコッチ片手に語る言葉。

たぶん全能の神がたった一つ知らないのは、全能ではないということがどういうものかということだろう。考えてもみろ、神は不死だから、死についてはなにも知らないのは明らかだ。神には欠点がないので、欠点や誘惑、欲望、貪欲、自責の念、猜疑心を持つというのがいったいどういうことなのか想像できない。神は万人に愛されているので、孤独や失望、怒りといった感情をまったく理解できない。神には天地を創造するだけの力があるので、当然ながら弱いというのが本当はどういうことなのかわからない。簡単に言えば、神は人間らしさというものがどういうものなのかわからないんだ。
それがわれわれの仕事なんだ。無能なうえにちっぽけで、不道徳なうえに冷笑的で、限りある生命を持つことが。われわれは神の知識にブラックホールが一つあることを神に教えてやるのさ。神はわれわれを止めることも、われわれを救うことも、われわれの苦痛を消し去ることもないんだ。ナット(主人公の名)、一分一秒だってね。われわれは神の目の前で傷つき苦しんで、神に傷つき苦しむということがどういうものなのかを教えるんだ。神は自分でそれができないからね。


こんなシニカルな文章を引っ張り出してくる春日センセはやっぱり素敵。
コメント
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