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スティグリッツ国連報告・要約 3  文科系

2015年01月20日 12時49分12秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今回は、『第1章はじめに』の『第2節 危機への多様な対応』を要約をする。この節は4つのセクションに分かれ、それぞれの題名は、こうである。
①機関による危機への対応
②危機への政策対応
③世界的な危機には世界的な対応が求められる
④いくつかの基本的原則 

 この4セクションそれぞれについて、抜粋、要約を行っていく。

①機関による危機への対応

 初めに、各国当面の景気刺激策とともに、危機を起こしたその原因を取り除いていく長期的変革も急を要するとした上で、こう述べていく。
『強力な政治勢力が活動しており、現行の取極めから、或いは最近の変更から利益を得ている勢力が根本的変革に抵抗してくるであろう。しかし、これらの利益を許すことは危機の再発をもたらすことになる。これも、1997-1998年のアジア通貨危機から学んだ教訓である。そこでは比較的早く景気回復ができたために、金融システムがそのまま残されてしまった。そしてそれが今回の危機の舞台になったのである』
 次いで、『(G20などではなく)世界の全ての国によって……
つまりG192』が強調され、国連の下の早急な長期的変革が呼びかけられている。

②危機への政策対応

『危機に対し持続可能な形で対応して行くためには、危機を分析してその要素を特定し、なぜこれほど早く世界中に拡がったのか、その理由を特定していく必要がある。そこにはミクロ・マクロ双方での政策的誤りがあった。緩慢な通貨政策、不適切な規制、弛緩した監督、これらが相互に作用し合って金融の不安定がつくり出された』
『世界的レベルでは、いくつかの国際金融機関は金融部門の規制緩和や資本市場の自由化といった、今では危機をつくり出し拡散した原因と認識されている政策を、今尚勧告している』
『不適切な金融規制の原因の一部には市場メカニズムの限界について不適切な理解があった。経済学者のはやり言葉で、「市場の失敗」と呼ばれているものである。「市場の失敗」はいろいろなマーケットで起こるが、金融市場での失敗は特に重要で、一旦、実体経済活動に影響が及ぶと不釣り合いなほどに大きな影響を与えることになる』
『今回の危機は、経済政策や金融規制を越えたところにある問題を反映している。それは、市場機能について理解するに当たって幅広い誤りにさらされていたことにある。「自由な市場は、自分自身ですばやく軌道修正ができ、かつ効率的である」という信念が広く信じられていた。
 このことは、IMFや世界銀行、地域開発銀行、そしてWTO等の国際金融機関により今日支持されている政策を見直す必要があることを示唆している。また、これらの前提に基づく多くの国際的取極めについても同様である』

③世界的な危機には世界的な対応が求められる

 このようなことが述べられている。
 大国の金融市場の失敗が、世界や特に中小国の実体経済と雇用とを損なったこと。その大国に対しては経済政策調整の努力がされず、中小国の資金の流れをよどませる調整になってしまったこと。G-20が率先して保護主義的政策に走って、危機からの回復の妨げになっていること。大国の競争的通貨切り下げ、関税、補助金などには、途上国は全く太刀打ちできないこと。ここから、こんなことが強調される。
『危機の原因となった国際的格差を拡大するリスクがある』
『発展途上国の銀行システムを救済し、貿易与信を含む信用を供与し、社会保障を強めるための資金が供与される必要がある』 
『発展途上国を支援するために国際金融機関からしばしば課せられるコンディショナリティーは非生産的である』
 これらの指摘の最後は、『国際経済機関のガバナンスの変革』で結ばれている。

(『④いくつかの基本的原則』に、続く)

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深刻! (文科系)
2015-01-20 14:42:54
 大変苦労してこの報告の要約をしているが、その作業をすればするほど、いつもこんな疑問が浮かんで来る。
『スティグリッツたちがこれだけ苦労してまとめたものが、今はもう無視されているのではないか!? つまり、国連そのものが無視されているのではないか!?』
 何よりも日米など大国ではもう、リーマンショックのことが話題にもなっていない。アメリカの5大投資銀行が全部潰れた大事件なのに。世界の途上国を困窮させ尽くして、世界の需要を奪った大事件でもあるのに。それどころか、「あの被害の影響など皆無」という雰囲気の下、大国が世界に対してやりたい放題という感じがしている。
 軍事や戦争政策も含めた大国保護主義的で変な「有効需要創出」ばかりが感じられてならないのである。ウクライナとロシア。イスラム国。キューバ、ベネズエラもやがて荒らされるに違いない。石油値下げは、一種の新たな世界支配巻き直しの高等戦略に基づくものではないかなどとも、思ってみたくなる。
 この世界、きな臭い事件がまだまだ激しくなるなと、そんな感じがする。アラブの春以外では案外話題になっていないが、アラブや世界の食糧問題も凄く深刻なのではないか。そしてまた、行く所までとことん行ってしまうというような、実に深刻な気分になっている。

 要は、大国の(経済的)横暴と世界の地獄化との悪循環を感じる。その果てには、日本も10年もしないうちに戦争をすることになるのだろうなどとも。

 アラブの春、ウクライナ、イスラム国、石油値下げなどなど、全てがなにか、「不自然」なのである。そして、この不自然さの背景がリーマンショックにあったのではないかということだ。つまり、リーマンショックの大国流の「解決方向」と。なにしろ「百年に一度の大経済事件」であったのは確かなのだから。
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Unknown (Unknown)
2015-01-21 18:42:11
ダラダラ長いので、早目に突っ込んでおくと、スティグリッツは、アベノミクスに対して、「実施しないほうが将来的なリスクになる」とコメント。
難しい事は、知った上で、支持派では?
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お応え (文科系)
2015-01-21 23:00:51
 この質問には、まともに応えます。
 スティグリッツが中心になって書いた長文を読んだのだから、この長文自身の骨子は分かるつもりだ。彼個人としてはこの文章で、世界から集まった経済学者たちの右にも左にもいろいろ妥協した点もあるのだろうが。例えば日本からは榊原英輔が20名の委員の一人になっているが、この二人の経済学も相当異なるはずだ。
 ともあれ、スティグリッツがアベノミクスにこう言うだろうことは分かる。
①当面の金融緩和には賛成。
②当面の公共事業出動にも賛成。
③3本目のさらなる規制緩和には是々非々のはずだが、反対する事項の方が多いと思う。
④ついでに、内閣が企業の内部留保をもう少し吐き出せとか、賃金を上げよとか言っていることについては、大いに賛成するだろう。
⑤さらについでに、スティグリッツの世界経済根本改善のための批判焦点は日本にはなくアメリカにある。日本金融資本もその同伴者として厳しい目で見ているとは思うが。
⑤併せて、この国連報告の眼目は長期的根本的変革によって『国際金融(が世界を食い物にしてきた)横暴の再爆発・世界大困窮。そして、またしても税金投入救済』の再来を抑えることにあるのであって、そのための当面の目標が世界に有効需要をつくり出すこと、先進国こそそれを率先してやらねばならないことを言っているに過ぎない。アベノミクスにはこの前者の視点は皆無であると、強く主張しておきたい。

 つまり、ほんの小手先は一緒だが、長期的根本的変革目標は似ても似つかぬものという事です。
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