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米経済の崩壊、世界の多極化②の三・・・・・田中宇の国際ニュース解説

2008年10月14日 13時06分28秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
▼米利下げでインフレと原油高騰が再燃する

 連銀による利下げはむしろ、悪影響の方が大きくなる。その一つはインフレの激化である。金融危機によって、すでにドルの信用は潜在的に大きく失われており、利下げは世界的なインフレを悪化させる。インフレの再燃は、原油や金などの相場の再上昇を招く。米経済が不況になると石油消費が減るので原油安だとの予測も出ているが、私はむしろ、利下げによるインフレから来る原油再高騰の可能性の方が大きいと考える。(関連記事)

 利下げはまた、ドル為替の急落の懸念を拡大させる。今は欧州の銀行が潰れているのでユーロ安ドル高だが、この傾向はおそらく長続きしない。中国政府の専門家である巴曙松(Ba Shusong、国務院発展研究中心)は、米政府が利下げしたらドルが急落するかもしれないので、その時に人民元が連動して下落しないよう、中国政府は人民元の為替管理を緩やかにしておくべきだとの主張を、中国の経済専門紙に載せている。(関連記事)

 中国人民元は、ドルに対する疑似ペッグを維持しているが、ドルが急落した場合、これを断ち切らざるを得なくなる。中国が疑似ペッグをやめる時は、中国が経済的な対米依存を減らすときでもある。従来の中国は、対米輸出で国内産業を成長させ、その対価として輸出代金で米国債を買い、人民元の対ドル疑似ペッグを続けてきた(中国は米から非難され05年にペッグを形だけやめて疑似ペッグにした)。しかし今、米の消費は減り、中国企業は対米輸出ではなく、内需や、他のBRIC諸国などへの輸出で儲けるようになった。米政府は財政破綻の懸念が増し、巨額の米国債を保有し続けることも危なくなった。

 今後ドルが下落したら、中国は人民元の対ドル疑似ペッグをやめて対ドル為替の大幅上昇を容認し、その代わり米国債の買い増しもせず売り逃げを目指し、米の財政破綻を看過するようになる。通貨をドルペッグしているサウジアラビアなど中東アラブ産油国(GCC6カ国)も、中国と同じ方向の動きをするだろう。

 米言論界では「米金融界の救済にはあと5000億ドルぐらい必要だが、この分を中国に米国再追加購入させ、出してもらおう」との提案が出ている。もし他の分野、たとえば軍事や政治の分野で、これまで中国を困らせてきた問題について、中国に有利な施策を米政府が採り出すなら、それと交換条件で、中国が米国債を追加購入して米政府を助けるという展開があり得るかもしれない。(関連記事)

▼米を救済しうる中国を激怒させる自滅策

 しかし今、米政府が政治軍事分野で行っていることは、むしろ中国を激怒させることである。米政府は10月3日、2001年に米議会で決定されながら7年間も凍結されてきた、台湾への65億ドルの兵器売却(パトリオット迎撃ミサイル、F16戦闘機修理部品など)を実施すると、唐突に発表した。(関連記事)

 これは米政界内の事情としてみると、同時期に決まったインドへの原子力技術の供与と同様、ブッシュ政権の任期中に兵器や核関連の商談をまとめさせようと軍事産業が米政界に圧力をかけた成果なのだろう。台湾への兵器売却は、中国側に対する若干の配慮もなされ、総額は予定(120億ドル)の半分にとどめられ、台湾側が強く求めていた潜水艦は含まれなかった。(関連記事)

 しかし中国政府は、この売却決定に激怒し、ここ何年か続けられていた米中の軍事交流(米中間の軍事ホットラインの新設計画など)をキャンセルすると米政府に通告してきた。(関連記事)

 米中関係は、ここ数年しだいに好転し、米から台湾への兵器売却についても、今年7月に米軍のキーティング太平洋軍司令官が「台湾海峡で戦争が起きる懸念は非常に低い(ので台湾には兵器を売らなくても良い)」と不売を示唆していた。中国政府はおそらく、米中関係が中国の優勢の中で好転しているので、米が台湾に兵器を売ることもないと考えていただろう。そんな中で、唐突に米政府が台湾への兵器売却を発表したので、中国政府は米政府に対する信頼が一気に崩れた。(関連記事)

 こんな風に面子を潰されても、まだ中国政府が米政府を助けるため高リスクの米国債を買い増すかどうか。中国の指導者は、表向きは反米的な言動をとらず、露骨に反米的なロシアの指導者とは全く趣が異なるが、中露を中心に作るユーラシアの安保組織「上海協力機構」では、米の単独覇権主義は世界にとって危険なものであり、世界の安定化には、中露などが欧米とは別の地域安定勢力(覇権国)として存在する多極的な国際政治体制が必要だとのコンセンサスがある。(関連記事)

 おそらく中国政府の中枢では、米政府を助けて従来の米単独覇権体制の維持に協力するか、米を助けずロシアと組んで米覇権崩壊後の多極的な世界体制作りに協力するか、どちらの道を採るか、議論が続けられている(もう結論が出ているのかもしれないが、外からはわからない)。そんな微妙な時期に、唐突な台湾への兵器売却を発表して中国を激怒させるとは、ブッシュ政権のやり方は、いつもながら自滅的であり、隠れ多極主義的である。




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丸写しはちょっと? (文科系)
2008-10-13 01:10:13
確認してみましたが、この3連載は、田中氏のニュースの丸写しでしょう?
こういうのはいけないと思います。
「こういう内容が書いてあるから、興味がある方はこのアドレスへどうぞ」ならばまだしも、そういうものではないし。

まず、紹介者であるネット虫さんが、この内容に責任が持てるというものでもない。例えば誰かが、こういう質問をしたらどうお答えになるのでしょうか。
「田中氏が主張し続けている『多極主義者』とは、『結果としてそういった方向になる。もしくは、その要素が極めて多い』ということ、その程度じゃないかなー? それを、全て目的意識的にそうしていると見たら、その人のそれと矛盾する行動があっても見ないことになる。また、アメリカの他の重要人物がそれと矛盾する行為を大いにやっていても、それもやはり軽視することになるのでは?」
この質問に対して、外っておくか、「田中氏はこう述べているから、これが正解」というのかどちらかでしょう。ご自分で書かれた投稿ならば、外ってはおけないはず。外っておいたら無責任ということにもなりますから。

また、みんながこういう「丸写し紹介」をやり始めたら、このブログが「丸写しブログだ」と言われることになりますね。常連の僕としては、これは不本意です。

以上の理由から、丸写し投稿には反対です。「それは、各人の自由」ということでもないと思います。



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やはり (落石)
2008-10-13 10:01:52
丸写しはやめましょう。
私もよく丸写しに近いことをしますが。
ひとことでも投稿者の意見がなくては
いけないと思います。

まさか、全文に賛同じゃないでしょう?

私は田中宇さんの隠れ○○主義という
考えには?を抱いています。
分かりやすい喩えとしてなら
分かりますが・・・



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