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凄まじい米医療制度 その2 凄まじい貧困   文科系

2013年12月08日 08時09分54秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 ここも前書きだが、昨日の拙稿「その1 前書き」を必ずお読みいただきたい。でないと、以下に書いてあることが「いい加減なこと」と思われる可能性がある。そういう信用問題が出てくるような凄まじい内容なので、だからこそ前書きを付けた訳なのでして。

 米医療貧困の初めは、乳幼児死亡率を見てみよう。エマニュエル・トッドというフランスの学者がその国の乳幼児死亡率こそ国の生活程度を現す象徴的数字であるという議論を起こしている、そういう数字だ。
 この国の乳幼児死亡率が増加に転化したのは2002年から。その年のアメリカは年間乳幼児1000人に付き死亡率6.3人と先進国で最も悪い数字で、世界順位で見ると43番目とあった。ちなみに1番はシンガポールの2.29人、日本は第4番目で3.9人である。

 医療保険掛け金や医療費の高さがまた、凄まじい。2000年過ぎから4年間毎年2桁%アップを続けた保険料金は2006年時点で、標準4人家族で11,500ドル。あまりにも高すぎて負担分を払えない経営者、企業が多いので、この年に国内全企業で保険を提供しているのは63%にすぎなかった。従業員25人以下の会社は、保険に入らなくとも良いという制度があるらしい。「保険料金と医療費とを合わせて家計の10%を越える家庭・人口数」という資料があった。1996年には1170万人であったこの数字は、2006年には4,880万人になっている。なお、アメリカの保険は後述福祉対象の二つを除いてはすべて民間保険であり、州によって保険料も、医療費もかなり差があるとのことだ。
 こうして無保険者が増えて、2007年1月で4,700万人、うち900万人が子どもである。無保険者と言っても、日本の概念で考えてはいけない。生活保護のような人には後に見るメディケイドがあるのであり、一定収入があって民間保険に入らない(入れない)人なのだ。この900万人の子どもが病気になったらどうするのだろう。ちょっと入院する病気でも百万円を軽く超えてしまう医療費なのである。冒頭の乳幼児死亡率の高さは、こんなことも原因なのだろう。なお、アメリカの人口は3億超、5,000万人というのがどれだけ多い数字か、ご想像願いたい。さらに、4700万人というこの無保険者の数字は、2010年には5200万人になるだろうと予測されている。ちなみに、前回お断りしたように、この本「貧困大国アメリカ」が書かれたのが2008年である。

 医療費を見てみよう。盲腸手術入院での2000年度世界都市別総費用ランキングというのがあった。その1位から4位までがアメリカの大都市だ。1位のニューヨークが243万円、4位のボストンが169万円である。5位が香港の152万円、6位がロンドンの114万円とあった。なおここで特筆すべきことが、入院日数。アメリカは盲腸入院はたった1日ということになっている。香港は4日、ロンドンは5日だ。なお、2007年時点での日本の盲腸手術総費用が書いてあった。4~5日入院でも30万円を超えることは先ず無いということだ。ちなみにアメリカでは一般的にも入院費用が信じられないほど高い。1日の出産入院費用だけで4,000~8,000ドル、出産費用総額は150万円ほどとあった。医療費が全米1位と最も高いニューヨークなどでは、一泊の部屋代だけで2,000~3,000ドルという。よって、出産などは日帰りである。無保険者はもちろんそう希望するが、保険のある人もそうなのだ。他の病気でも入院日数はどんどん短縮されている。脳卒中入院は平均7日を切ったそうだ。ちなみに脳卒中の総費用は1日100万円ほどかかるということ。心筋梗塞は4日、乳癌手術は2日である。これら全て医療保険会社が暗黙の内に決めてきたことなのである。これに従わない病院は先ず潰れる。その凄まじい病院閉鎖の状況はこうだ。請求額の多い病院は保険リストから外されるのである。1983年から1996年にかけて、病院数が5,843から5,160へと減った。13年で実に9分の1が閉鎖なのである。これにともなって病床数も減り、120万床から86万床になった。それでも全米ベッド平均稼働率は62%とあった。

 なお、アメリカの福祉医療はこうなっている。低所得者医療扶助と訳されるメディケイドが5,340万人、高齢者医療保険制度(メディケア)が4,230万人、いずれも05年の数字だ。大不況の煽りを受けて激増しているのが低所得者扶助。2000年からの5年間で50.4%の急増ぶりである。これが、この費用の半額を出すことになっている州政府予算をもの凄く圧迫しているという。このままでは全米自治体財政の9割が5年以内に破綻すると言われるのは、こういう事情も関わっている。
『2011年1月、共和党のリチャード・リオーダン元ロサンゼルス市長は、テレビ番組のインタビューでこう警告した。
「このままでは全米の自治体の九割は五年以内に破綻する」』(この文章は、前掲「(株)貧困大国アメリカ」2013年6月発刊、の中にあったものだ)

 全額政府負担の高齢者保険では、慢性病医薬が自己負担になっているという問題がある。心臓病、糖尿病関連などの常用薬が自己負担って、これらは病気ではないとか「自己管理の不足」ということなのだろうかと、不謹慎だが笑えてきた。

 なお、アメリカの民間保険会社のことであるが、全米294市のうち166市は1社が州の50%以上のシェアと、独占状況にあるということだ。

(その3の「この背景・構造」に、続く)

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