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イラク戦争と国連  文科系

2016年07月07日 16時03分36秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 イラク戦争開戦前後に国連でどういう論争があったか。そこを振り返っておきたい。次に、この時のアメリカが従来表明してきた国連への立場を大幅に変えたということも観てみたい。近年の日本マスコミからはアメリカ政府の声、立場は大量に発信されるが国連のことはなかなか論じられないと感じてきたので、強調したいことだ。
 以下の出典は、「国連とアメリカ」(最上敏樹・国際基督教大学教授 2005年刊)である。

開戦時の国連総会の立場

『「私たちはいまや大きな岐路に立たされています。国連が創設された1945年にまさるとも劣らない、決定的な瞬間かも知れないのです」
 2003年9月23日、第58回国連総会開会日の冒頭演説で、アナン事務総長はそう述べた。その年の3月にイラクで戦争を始めたアメリカを、名指しではなかったものの厳しく批判した直後である』

『「今日に至るまで、国際の平和と安全に対する幅広い脅威と戦い、自衛を超えた武力行使をすると決める際には、唯一国連だけが与えることの出来る正当性を得なければならないという理解でやってきました」。にもかかわらず、先制攻撃の権利といった根拠で武力を行使する国が現れた──。
 それは「いかに不完全であれ、過去58年間、世界の平和と安定のために頼りにされてきた大原則に根底から挑戦するものなのです」と彼は言う。つまり、「単独主義的で無法な武力行使の先例を作ってしまうもの」なのだと言うのである。アメリカにとっては厳しい批判だが、総会議場は長い拍手に包まれた』

『この事務総長は次第にアメリカに嫌われるようになっていた。特に対イラク戦争への否定的な反応に対してである。開戦時にもあの戦争が国連憲章に合致しない(つまり「国際法違反」ということである)と明言したし、イラクの復興になかなか国連を関与させないアメリカのやり方も批判した。(中略) 機構の原理原則はあくまでも多国間主義なのだから、単独行動主義を阻止することは、むしろ事務総長の(正確には「国連のあらゆる部署の」)責務になるからである。実際、加盟国の単独行動主義にこれほど正面から向き合うことになる事務総長は、これまで例を見なかった』
   
殺されたケネディ大統領の国連観

 以下は、同上書から抜粋したケネディ大統領の国連演説である。1961年9月25日、第16回国連総会におけるものだ。なお、彼が暗殺されたのはこの演説の2年後のことである。

『戦争にとって代わる唯一の方法は国連を発展させることです。・・・・・・国連はこのあと発展し、われわれの時代の課題に応えることになるかもしれないし、あるいは、影響力も実力も尊敬も失い、風と共に消えるかもしれない。だが、もし国連を死なせることになったら──その活力を弱め、力をそぎ落とすことになったら──われわれ自身の未来から一切の希望を奪うに等しいのであります』


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2 コメント

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まさかアナンを持ち出すとはね… (1970)
2016-07-07 22:46:36
目を疑ったんだけど。
つい最近名無しさんがルワンダ虐殺について少し触れてたね。
1994年4月ルワンダで民族浄化というおぞましい虐殺が起きた。
たった100日間で80万人~100万人が犠牲になった。
犠牲者は国連に見殺しにされた。
現地PKO司令官からの増兵要請を断り逆に削減。2000人の子供が避難した学校を警護するPKOに退去命令を下し、虐殺後退官したPKO司令官にベルギー政府がルワンダ虐殺の詳細の証言を求めたとき、その証言を禁じた。
これら全てを行ったのが当時国連事務次長の職にあったアナン。
そして、イラク戦争開戦前、大量破壊兵器の開発を禁じられ経済制裁を受けていたイラクには、国民の飢餓を防ぐ為に国連の委託会社の監視下で石油と食料を交換する『オイル・フォー・フード』という仕組みがあった。この国連から委託を受けていたスイスの会社にアナンの息子が勤務、多額の給与を2004年迄貰い続け大問題になった。
ついでに、アメリカがイラク開戦前拒否権を使ってでも国連の介入を避けたのは、ルワンダ虐殺以来の不信感もあったと言われている。
で、要するにアナンに関しての評価は、ただの反米。そしてルワンダ虐殺の当事者。
今の事務総長もそうだが、殆どの事務総長はおそろしく使えない。そして評価、信用も限りなく低い。
ま、制度疲労を起こしている国連を象徴した人物かもしれないね。
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ルワンダ (文科系)
2016-07-08 07:06:58
『他方でアメリカには、ガリ事務総長が「十分に武断的でない」ことへの批判もあった。とりわけそれは、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争において、NATOが空爆を行うことに慎重であったことを指している。1994年、ルワンダで大虐殺が起きたときにも同様だったが、ソマリアでの失敗もあり、いつしか彼は武断派ではなくなっていたのだろう。しかしそのことが逆に、アメリカ政府筋の彼に対する評価を押し下げたという』
(最上敏樹・国際基督教大学教授著「国連とアメリカ」2005年3月刊、より)

 なお、アナン氏への批判にも、同上書に回答が納めてあります。その転載は、先程、8日エントリーへの拙コメントとしてご紹介してあります。
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