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この本、是非読んで!  文科系

2007年05月21日 13時09分33秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
この著作を読むとこんなことが分かります。僕自身の自戒をも込めて以下を訴えるものです。

現在の日本政治に対してこういう批判は常に聞いてきました。
「元々サッチャー、レーガンに端を発する新自由主義経済なのだし、アメリカ格差社会を追いかけてきたのだから、日本は悪いに決まっている」
「グローバリズムの下、小泉の構造改革、規制緩和。さらに悪化は当然でしょう。何をいまさら」
そしてこう語る人もここの読者には存在するかも知れません。
「資本主義ってそんなもの。だから我々は厳しく批判してきたのに、やっと分かったの?」
さて、これらの言葉がどれだけ皮相で、「日本の現実を実は美化している」だけのものであるかを、この本は教えてくれます。何か抽象的な言葉に置き換えて批判した気になるのとこの本のようなやり方とは、万人に対する説得力という点で全く違うということです。
日本が先進国の中で最悪クラスの、最新の大事な数字をふんだんに上げている。抽象的な言葉による批判ならば、その言葉の理解も学識の程度によりぼんやりとするし、それへの反対とか賛成とかに意見も分かれるでしょう。が、重要事項での最新の最悪数字には解釈の余地がない。しかもそれが、予想以上に本当に悪い。

例えば、「公的教育支出の各国GDP比較で、日本はアメリカよりこれだけ悪く、最悪のギリシャに近い」とOECD(経済協力開発機構)調査の各国数字を上げて語る。これは、近代国家の中では「機会の不公平」が最も酷く、貧乏人に最もチャンスが少ない国ということのはずです。
かくて、身近な所でも次のように「貧富の世襲、階層固定」現象が起こる理由が、最も深く分かる。僕の連れ合い(母子家庭、5人兄弟姉妹の長女)の側の甥姪はニート、フリーターも多く、適齢期以上6人全員未婚であり、僕の方(両親とも全国区の最難関大学出。父は明治生まれの大学院卒相当で、兄弟姉妹4人の次男)の甥姪は国公立大学大学院卒とか医者2人とかで、既婚7割。うち、女にも経済力があるから女2人を含めて離婚が3人。なお、僕の父母も僕の連れ合いも、田舎の貧しい境遇から自分で最高学歴まではい上がった人です。こういう人はもう、なかなか出にくくなっているはず。これが「階層固定」、「貧富の世襲」ということ。

同じくOECD国際比較で「税と社会保障による再分配効果ジニ係数(本書に説明がついています)では、日本の倍以上がイタリア、オーストラリア、オランダなど無数にあり、アメリカでさえ日本の1・5倍ほど」とこう語れば、日本の再チャレンジなどのセイフティーネットが全く駄目なのは自明。つまり、貧者が極端に放置されているということです。

また、時間当たり最低賃金がこれほど低く、最低賃金のフルタイマー賃金平均への比率はアメリカはおろか、スペインよりも悪く、最低賃金以下の労働者比率はフランスに次いで最悪(フランスは多分、例の「移民問題」)といえば、「結果の不平等」がこの上なく放置された国ということです。
(陰の声です。ちなみに、なのに昨20日の最低賃金をめぐる毎日新聞のある記事には驚きました。「内閣府規制改革会議の意見書で、最低賃金アップには反対方向」なのだそうです。その「理屈」がふるっている。平たく言えば「最低賃金アップや労働時間上限規制をやると、最も無能な者を経営者が雇いたがらなくなる。無能な者に門戸を開くために最低賃金は上げず、際限なく働ける方がよい」ですって?この理屈って理解できます?だれが言い出すのか、いやはや、なんとも!!小泉が、こんな理屈ばっか真に受けて頑張った成果こそ、この本で表現された実態ということなのでしょうね。)


みなさん、どうかこの本を読んでみてください。700円。多少苦労はしても、読みがいがある本で、理解もできると思います。
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3 コメント

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争点は「格差解消」だ。 (いらち)
2007-05-21 23:11:56
 安倍が、参院選の争点を「改憲」に持って行きたいのは 見え見えだ。

 「美しい国」「普通の国」が争点ではない。

 「食える国」「生活できる国」が争点だ。

 小泉の時のように誤魔化されまい!!!

 戦後レジュームなどという横文字に惑わされるな。
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早速読みます。 (千里眼)
2007-05-22 12:42:57
 「なのに昨20日の最低賃金をめぐる毎日新聞のある記事には驚きました」。この記事の内容が本当のことだろうか、と疑いました。あまりにもひどい内容なので。ところが、昨晩おそくのBSニュースで、同じ内容の報道をしていました。賃金に見合う生産性をあげれない労働者を雇用できるようにするためにも、最低賃金を上げるべきではない、というのです。とすると、そうした低い生産性しか保てない企業経営をやっている経営者の経営能力の不足は問題にならないのでしょうか。
 
 それはさておき、日本経済・社会にかかわるさまざまな統計数値を、私も求めていました。この本がその要望に答えてくれるとのことなので、早速購入します。

 それ以外にも、今私の知りたい数値があります。現在の生活の満足度、将来の生活に対する不安度の調査数値の各国比較です。もしお知りの方、ございましたら教えてください。 
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コメント、有り難う (文科系)
2007-05-22 21:09:43
コメント、有り難う。

まず、いらちさん
「『食える国』『生活できる国』が争点だ」は、多分違うと思う。
日本よりも食えない国が世界には圧倒的に多いと知識人や今の40歳以下の大学卒の若者は知っているし、文字通りの「食える」ということが人々の要求ではないはず。だからこのスローガンはみんなの「気分」に合わないと思う。ただし、「最低賃金を上げよ。世界の先進国の中で日本の最低賃金は最悪だ」と、事実に基づいて説得できるならば勝てるはずだが、やはり一朝一夕ではこういう説得は難しいのではないか。
ここに言う僕の理屈が分からなくて、旧左翼は敗北を重ねてきたのだと思う。古いのだ。だから、説得資料も何を集めたらよいのかが、分かっていない。


千里眼さん
酷い「理屈」でしょう? こんなのは簡単に論駁できる。最低賃金をせめて世界の先進国の平均並にすれば、今でも世界有数に多い最低賃金より低い人々が、今の最低賃金ほどで雇われますよってね。貧しい人を思いやるふりして、全てを切って捨てる理屈!なんて冷淡な奴らが委員をしていることなのでしょう!あきれかえって、ため息も出ない。

この本を読んだら、ここに何か書いてください。
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