歴代日本人サッカー選手で「格」としての世界的名選手といえば、中田英寿、香川真司そして岡崎慎司が上げられるのは間違いない。長谷部誠が前二者をそう語っているのは、二人の全盛時所属リーグ、チームの世界的「格」に目を付けてのことだ。これで言えば、近年世界1のリーグであるイングランド・プレミア優勝チームの先発レギュラーという実績を持つ岡崎慎司も当然これに加えられるはずだ。以下のことは今日、19年5月31日のエントリー「明日未明、CL異例の決勝」にこんなコメントを付けたことから思いついて書くもの。というのは、この古いエントリーが、ここのベスト10に入ってきたからである。この機会に、サッカーの世界的名監督と日本人選手との出会いなどのことをちょっと書いてみたい。
上記の古いエントリーでは、クロップ、グァルディオラ、ポテチーノという世界的名監督三本指を上げているが、その後ト-マス・トゥヘルという監督がこれに連なってきた。ドイツ・チームでクロップの後を追うように台頭して、パリサンジェルマンではCL準優勝、そこからイングランドのチェルシーに移ってCL優勝って、同じドイツのクロップが辿った道そのものである。
このトゥヘルこそ、岡崎慎司をドイツで育てた監督である。マインツで13年に岡崎を取り、確か2年連続二桁得点を上げる名選手にした。岡崎のこの実績が、すぐにイングランド・レスターの目にとまって、あの「レスター奇跡のプレミア優勝・その先発レギュラー」に繋がったのである。岡崎のこれだけの実績は、中田英寿、香川真司と優に同等のものだということだ。岡崎は特に、日本人名選手が多かった中盤と違ってFWの選手だから凄い実績になる。プレスに走れるスプリント回数という彼の最大特徴が「プレスの時代」に合致したというのは間違いないが、それも含めて世界的選手に成りおおせたわけだ。ここで脱線だが、この岡崎よりもはるかに多くスプリントができるのが、スコットランドに行った前田大然。正式なスプリントの定義は、時速24キロ以上で1秒以上走った1ゲームの回数というもの、前田はこれがちょっと走れる選手の倍を越えるのである。「彼の駆け足が普通の選手のスプリント」と、そんな選手ははたして今後どんなことができるのだろう。とても、楽しみだ。
このクロップとトゥヘルの活躍こそが、ドイツサッカー近年の世界的地位を高めたと言える。ちなみに、今をときめくジョゼップ・グァルディオラは、バルセロナの監督の後ドイツ・バイエルンの監督になった。これは、クロップが創り上げたものをバイエルンがまるまる模倣してCLを獲ったゲーゲンプレスを学ぶためといっても過言ではないはずだ。
さて、このドイツ台頭の経過にこういう日本人選手との関係があるというのが、僕にはとても興味深かった。香川を世界に知らしめたのがクロップで、岡崎をイングランドにまで押し上げたのがトゥヘルと。
まず、ドルトムントで香川をエースにまで育て上げたクロップが、当時世界最強チームであったファーガソン・マンUへと巣立っていった香川との別れ際に、こんな涙を流したのは有名な話だ。
「香川にはいて欲しいが、彼の小さい時からの憧れ・プレミアの最強チームに誘われたのだから、泣けるけど仕方ない」
マインツ岡崎の監督であったトゥヘルも今やチェルシーでCL優勝の実績を上げている。岡崎が彼のことをどう語るかを一度聞いてみたい気がする。世界的名監督になる前のトゥヘルのどこが優れていたかなどを。これは、ダゾーン・サッカー番組「やべっち」に是非要望したかったことである。香川と岡崎を呼んで、こんな事を語らせる。
「若きクロップとトゥヘル、それぞれどんな監督であったか?」
サッカーを個人技術で観る日本の伝統からではないかと考えていた。これも一つの見方であろうが、サッカーは野球と違って組織で戦うスポーツ。組織が分からなければサッカーの強さは分からない。例えば、岡崎と久保とを比べてみよう。個人技術で言えば問題外で久保。なんせ上手いのだから。が、サッカー選手としての実績から言えば久保は岡崎に永遠に勝てないと思う。それは、現代の強い組織に使える選手かどうかということなのだ。
サッカーは組織を勉強しよう。でないとこの強さは永遠に分からないはずだ。