アメリカの二つの銀行が破綻した。シリコンバレー銀行と、ニューヨーク拠点のシグネチャー銀行だ。リーマンショック以来の大型銀行倒産ということから、放置すれば必ず起こる連鎖倒産を恐れた米政府が、いち早く二銀行の預金全額保護を決めている。
しかしながら、債券投資が多い銀行において長期金利の上昇から含み損が生まれているという構造は、他の銀行にも観られることなのだ。例えば、こんな数字を上げているニュースもあった。
『米銀全体で抱える債券の含み損は2022年末時点で約6,200億ドルと1年前の約80億ドルから急拡大した』
他のどの銀行が、こういう債券含み損を多く抱えているのか? また、欧米や日本の銀行も米国債を持っているところは多く、リーマン・ショックと同じで他国への波及が恐れられている。つまり、米の銀行全体への信用不安から、さらに、世界規模の信用不安、疑心暗鬼が広がるリスクがあると観られているのである。
13日に日銀が投資信託を701億円も買うほどに日本の株が下がったのも、この銀行破綻の影響であるのは明らかだろう。同時にまた、「中央銀行は政府の子会社」などという最近の「学説」がこの破綻の背景になっているというのも、もはや証明されたようなものではないか。
こんなアメリカの状況を見ると、植田新日銀総裁に委ねられたアベノミクス清算も大変な危険をはらんでいることになる。政府、日銀ぐるみで無理無理高くしてきた日本株への世界的かつ大規模な空売りも含めて。今やアメリカも、この負債をいかに他国に転嫁しようかと死に物狂いに打って出ることだろうし。
なお、中国の米国債売りが続いていて、13年ぶりほどの少保有高になっていることもこの事件の原因の一つになっているだろう。例えばG7国ならこんなことはできないのだろうが・・・。