先回と同じ、Y・Sさんの随筆を紹介します。月例冊子5月号に載った作品です。
【 なんだかなあ Y.S
このところの一か月余り、気持ちが落ち込んでいる。
もちろん東北大震災という災害が大きな理由でもあるのだが、個人的にはその震災の前日に怪我をして、いまだに不自由な生活を強いられていることもある。
落馬による怪我だから、世間がこんな大変な時期にとても大きな声では言えない。が、とにかく今だに肩、腕が不自由で痛いのだから始末が悪い。一週間もすれば治るだろうとたかをくくっていただけに、一カ月経っても思うように日常生活ができないことがつくづく情けない。次第に体が硬くこわばってきて、このまま治らないのではと不安にかられる。
主治医に「MRI検査で肩の腱の傷を確認をしてからリハビリを考えよう」と言われた。ええっ! 私は閉所恐怖症。あんな狭いカマドのような所へ入って三十分以上もじっとしているなんて、考えただけでも耐えられそうにない。
「しかたない。じゃ、関節に注射をして薬を流す方法で検査をしよう。だが、これはかなり痛いよ」医師はきっぱりと言い放った。困惑顔のまま主治医の顔を見つめている私に「痛いか、狭いか、さあどっち?」と迫る。そんなこと言われても選べない。
なお黙っている私に主治医はMRI検査の手続きを始めた。やれるところまでやってみよう、そんな感じだ。
後日、検査技師に時間短縮のうえに絶えず声掛けをしてもらって、汗びっしょりで検査を終えた。結果は鍵盤損傷がひどいのでしばらくは安静に動かさないことだそうだ。動かさないので肩凝りはひどくなるばかり。頭痛まで引き起こす。夜、寝ていても寝返りもできずに痛みで目が覚める。寝不足でボーとなり、苛立つことが増えた。必然的に家事もなおざりになる。
「体調が悪いときは無理しなくていいよ」家族は皆、優しくそう言ってくれる。
それだけ? 違うだろう! そうじゃないだろう? その後に続く言葉は……
夫や子どもたちは、あくまでも炊事、掃除、洗濯を、私に無理をしない程度にやらせる気だ。「家族みんな交替で家事を変わるよ」僅かでもそういうことを期待した私が患かだっ。主婦は死ぬか、寝たきりにでもならないと休ませてもらえないのか。ああ、無情。
私にしたって、いい年をして趣味の乗馬で勝手にした怪我。あまり偉そうにはいえない。負い目がある。毎日、なおざりの掃除で汚れが目だつ部屋に、はかどらない家事。思うように動かない体にイライラがつのる。しかたない。この上は体がよくなるまで何事にも目をつぶろう。そう腹をくくった。
休んでいるあいだの乗馬の月謝分、今日、そっくり日赤に寄付してきた。】
【 なんだかなあ Y.S
このところの一か月余り、気持ちが落ち込んでいる。
もちろん東北大震災という災害が大きな理由でもあるのだが、個人的にはその震災の前日に怪我をして、いまだに不自由な生活を強いられていることもある。
落馬による怪我だから、世間がこんな大変な時期にとても大きな声では言えない。が、とにかく今だに肩、腕が不自由で痛いのだから始末が悪い。一週間もすれば治るだろうとたかをくくっていただけに、一カ月経っても思うように日常生活ができないことがつくづく情けない。次第に体が硬くこわばってきて、このまま治らないのではと不安にかられる。
主治医に「MRI検査で肩の腱の傷を確認をしてからリハビリを考えよう」と言われた。ええっ! 私は閉所恐怖症。あんな狭いカマドのような所へ入って三十分以上もじっとしているなんて、考えただけでも耐えられそうにない。
「しかたない。じゃ、関節に注射をして薬を流す方法で検査をしよう。だが、これはかなり痛いよ」医師はきっぱりと言い放った。困惑顔のまま主治医の顔を見つめている私に「痛いか、狭いか、さあどっち?」と迫る。そんなこと言われても選べない。
なお黙っている私に主治医はMRI検査の手続きを始めた。やれるところまでやってみよう、そんな感じだ。
後日、検査技師に時間短縮のうえに絶えず声掛けをしてもらって、汗びっしょりで検査を終えた。結果は鍵盤損傷がひどいのでしばらくは安静に動かさないことだそうだ。動かさないので肩凝りはひどくなるばかり。頭痛まで引き起こす。夜、寝ていても寝返りもできずに痛みで目が覚める。寝不足でボーとなり、苛立つことが増えた。必然的に家事もなおざりになる。
「体調が悪いときは無理しなくていいよ」家族は皆、優しくそう言ってくれる。
それだけ? 違うだろう! そうじゃないだろう? その後に続く言葉は……
夫や子どもたちは、あくまでも炊事、掃除、洗濯を、私に無理をしない程度にやらせる気だ。「家族みんな交替で家事を変わるよ」僅かでもそういうことを期待した私が患かだっ。主婦は死ぬか、寝たきりにでもならないと休ませてもらえないのか。ああ、無情。
私にしたって、いい年をして趣味の乗馬で勝手にした怪我。あまり偉そうにはいえない。負い目がある。毎日、なおざりの掃除で汚れが目だつ部屋に、はかどらない家事。思うように動かない体にイライラがつのる。しかたない。この上は体がよくなるまで何事にも目をつぶろう。そう腹をくくった。
休んでいるあいだの乗馬の月謝分、今日、そっくり日赤に寄付してきた。】
頭にとっては想定外。
体は信号を送っていても。
頭がうけつけない。
そこでこういうことになって・・・