OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

???だったディランとの出会い

2009-12-21 12:08:20 | Singer Song Writer

風に吹かれて / Bob Dylan (Columbia / 日本コロムビア)

ボブ・ディランという名前を知ったのは何時だったろう?

そう思うと、それはモダンフォークのポップス的グループとしては最高峰だったピーター・ポール&マリー=PPMか、それともザ・バーズだったか、何れにしても私にとっては、そのあたりに突き当たるわけですが、現在は神格化されているボブ・ディランにしても、私の世代で決定的に大きな存在になったのは1970年代に入ってからじゃないでしょうか。

と、いうのも、ボブ・ディランはプロテストソングで注目され、フォークロックという革新的なスタイルを打ち出した1960年代中頃の全盛期に、自ら乗っていたバイクで事故って大怪我! それが1966年7月末のことで以降、2年近くの逼塞状態となり、その間にはレコーディングや新作アルバムの発表はありましたが、賛否両論の嵐の中、以前のような積極的な活動は滞りがちに……。

ですから、ちょうど私が洋楽にどっぷりの少年時代には、リアルタイムでボブ・ディランを聴いていたなんてことはなく、大好きだったザ・バーズが演じたボブ・ディランの楽曲、あるいはPPMスタイルのギターを練習する過程で聴いた名曲の数々に接していたに過ぎません。

つまり本家のボブ・ディランを聴くことは無かったといって過言ではないのです。もちろんラジオから流れていた「Like A Rolling Stone」や「I Want You」といったフォークロックの大ヒット曲は耳にしていたのですが、私にとってはイマイチどころか、???の気分が濃厚でした。

何よりミョウチキリンに思えたのは、あの曲メロを外して語るような、ブッキラボウな歌い方で、これは後に知ったところによれば、つまりは伝承歌やブルースにおける黒人の歌唱法から影響されたという、白人にとっては意図的な物真似手法だったわけですが、個人的には馴染めなかったですねぇ……

それが1970年前後になると、ボブ・ディランという名前がラジオの洋楽番組や音楽雑誌等々で頻繁に取り上げられるようになり、折しもビートルズとの交流とか、ザ・バンドを従えてのライプステージへの復活登場が強い印象になっていました。

そこで私も一念発起、ボブ・ディランを真剣に聴いてみようと決意はしたものの、先立つ家経済的な問題は大きく、結局は掲載したシングル盤を隣の町医者に出入りしていた若い先生から永久貸与されたというのが初ディラン♪♪~♪

ちなみに以前も書きましたが、この若い先生はフォークソングが大好きで、私にギターの弾き方を教えてくれた師匠でもありますから、ディランについて教えを請うた時の喜び方は尋常では無く、忽ち私に、このシングル盤を与えてくれたのです。

さて、肝心の「風に吹かれて / Blowin' The Wind」はボブ・ディランのオリジナル曲の中では、最も有名なものだと思います。メロディは某有名伝承歌からのパクリとされていますが、歌詞の内容は虚無と熱意に溢れたものですから、前述したPPMのカパーバージョンが永遠のヒット曲になったのも当然だったと思います。

しかし肝心のボブ・ディランのバージョンは1963年5月に発売されながら、ヒットチャートに入ることはありませんでした。

まあ、このあたりはPPMのポップなフィーリングとは正反対の、エグ味の強い歌い方ですから、既に述べたようにサイケおやじにも良さは理解出来ませんでした。しかし妙な説得力というか、ボーカルそのものの強い存在意義は強く感じられましたですねぇ。

ということで、いよいよ私が最初に買ったボブ・ディランのレコードは、昭和46(1971)年当時の新譜として発売されたLP「新しい夜明け / New Morning」でしたが、それについては次の機会に譲りたいと思います。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

渚ゆう子に惑わされ

2009-12-20 11:08:22 | 歌謡曲

Yuko Nagisa / 渚ゆう子 (東芝)

おやじバンドに女性ボーカリストが参加することになり、演目はベンチャーズ歌謡をやろう! と決定したところで、メンバーが持参したのが、本日ご紹介のコンパクト盤です。

 A-1 京都慕情
 A-2 二人の大阪
 B-1 京都の恋
 B-2 夏の日の想い出

上記収録曲は説明不要、渚ゆう子が代表曲「京都の恋」と「京都慕情」の二連発ヒットシングル盤を素直に入れたものですが、特筆すべきはジャケットの素晴らしさでしょう。

これを見た瞬間、サイケおやじは彼女の素敵なエロキューションに完全降伏♪♪~♪

ストッキングに包まれた爪先から踵の力の入り具合とか、膝のくずし方、強く妄想されられる太股の裏側や胸のふくらみ♪♪~♪

そして何よりもエグイほど思わせぶりな彼女の表情と手の仕草♪♪~♪

あぁ、もし家に帰って、彼女のような人がいたら、どうしょう……。

なんて戸惑ってしまいそうでしたから、サイケおやじは迷わず、ジャケットの写真を撮らせていただきました♪♪~♪

肝心のバンドの練習は「京都慕情」に決定し、女性ボーカルといっても既におばちゃんですが、とにかくその熟女のお色気を完全にバックアップするべく、奮闘していく所存です。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今日は12月の雨

2009-12-19 10:50:12 | Singer Song Writer

12月の雨 / 荒井由美 (東芝)

と、タイトルを書きながら、久々に舞い戻った以前の赴任地、雪国は大雪でござんす。しかし、いままでが冬とは思えぬ暖かさだったし、本来はこれが当然という季節なんですよね。

まあ、それはそれとして、本日ご紹介のシングル盤はユーミンが未だブレイクする前の昭和49(1974)年10月に発売した1枚で、歴史的には2枚目のアルバムとなった傑作「ミスリム」からのカットでした。

既に「ひこうき雲」のところでも述べたように、私がユーミンの魅力に惹きつけられたのが同年9月でしたから、これは私にとってはピカピカの新曲♪♪~♪

ちなみに妹は私よりも先にユーミンの虜になっていて、本来は私に所有権があるはずのLP「ひこうき雲」を連日聴いていた事実も既に述べたとおりですが、ユーミンにしても実は「12月の雨」を出す以前の4月、3枚目のシングルとして「やさしさに包まれたならc/w魔法の鏡」を発表しており、妹はそれも確実にゲットして、私に聞かせてくれていました。

ちなみに2枚目のシングル盤は昭和48(1973)年11月に発売された「きっと言えるc/wひこうき雲」で、両面ともアルバム「ひこうき雲」収録のバージョンと同じだと思われます。

ですから本来ならば、この「12月の雨」と同時期に発売のLP「ミスリム」も買うはずだったようですが、もちろんそこには経済的な事情がありましたから、兄としてはシングル盤を買って良い顔をしよう! というセコイ計算と、実は、これもまた、シングルバージョンではないか? という希望的観測があったのです。

なにしろデビューシングル盤の「返事はいらないc/w空と海の輝きにむけて」も、また前述した「やさしさに包まれたならc/w魔法の鏡」も、結果的にアルバムバージョンとは異なっていましたからねぇ。

ところが現実は厳しく、これはアルバムに収録バージョンと基本的には同じものでした。

しかし、それにしても楽曲の素晴らしさは言うまでもありません。

ピアノがメインのシンプルにしてキャッチーなイントロから、ミディアムテンポで実にメロディアスな曲メロの連なり、せつなくも甘い胸キュンな歌詞♪♪~♪

雨が降っている12月の冬の朝、ベッド中でウトウトしている彼女が想うのは、自分を捨てていった男への未練……。

あぁ、これは完全にそれまでの歌謡フォーク等々で歌われいた「私小説」と同じなんですよねぇ。しかし、明らかに歌と演奏から感じられる雰囲気は、それとは無縁の世界というか、従来の歌謡フォークがモノクロならば、ユーミンの世界はカラーという感じです。

しかも、雨音に気づいて目が覚めるまで寝ていられるという、有閑な環境……。

遅く起きた朝であるはずなのに、まだペッドの中でウトウトしても許されるという……。

これは全く大学生の生活でもありますが、別に午前中の講義へ出席する真面目さとは無縁ですし、つまり総合レジャーセンターと同じ感覚で大学へ通っている、我儘でリッチな女子大生ということなんでしょうか……。

このあたりは、休日のOLの生活かもしれませんが、それにしても、こんな朝に起きてくれない女と結婚する気にもなれない男の心情は、如何ばかりか……。

うん、別れて正解だぞっ!

なんて、当時から強く思っているサイケおやじではありますが、一方、失恋の喪失感は、やっぱり辛いものがありますから、ユーミンの書いた詩の世界は男女共通でしょう。男だって、自分から去っていった女を布団の中で想うことがあるのですから。

さらにキメになっているのが、「時はいつも日にも、親切な友達」という名フレーズ♪♪~♪

本当に「すぎていくきのうを物語にかえる」という、素晴らしい力があるんですねぇ~♪

ということで、ユーミンの歌は、何を表現しても、実に「せつない」世界があると思います。それは男にも確実に感じることの出来るものというか、少なからず男の心の中にある少女趣味を、くすぐるものかもしれません。それをユーミンは、最高の職人技で綴っていた天才だったと思います。

またユーミンの作る曲から個人的に感じる技法というか、詩の中の言葉の発音がひとつに、音符がひとつ、ということがあります。

つまり「あ・ま・お・と・に・き・づ・い・て~」という風に、発音と曲メロがシンプルに結びついていますから、所謂「字余り」のフレージングは他のユーミンの楽曲同様、極力使われていないのです。

これはユーミンの失礼ながらヘタウマの歌唱力と無縁ではなく、コブシを使わない歌い方が優先されるところに、その味わいがあるんじゃないでしょうか。逆に言えば、そういう作りの歌であればこそ、コブシも必要無いということかもしれません。

そうした特徴も、ユーミンの新しさだったような気がします。

最後になりましたが、当然ながらキャラメルママによるバックの演奏は素晴らしいかぎりですし、妙に懐かしくてポップなコーラスは、最初に聴いた瞬間から実に印象的だったんですが、それは山下達郎や大貫妙子がやっていた、シュガーベイブと名乗るバンドの面々という新たな出会いが、このシングル盤だったというわけです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユーミンがデビューの初々しさ

2009-12-18 10:41:54 | Singer Song Writer

返事はいらない c/w 空と海の輝きにむけて / 荒井由美 (東芝)

発売から約1年遅れて聴いたデビューアルバム「ひこうき雲」によって、忽ち気になる存在となったユーミンの、実は本当のデビュー曲が本日ご紹介のシングル盤でした。

これが世に出たのは、なんと「ひこうき雲」よりもずっと早い昭和47(1972)年7月だったわけですが、そこまでの経緯やユーミンの音楽体験、そして様々な交友関係については、後年に書かれた自伝「ルージュの伝言」で知ることが出来ます。

もちろん私も、それを読んでからユーミンの凄さを再認識したわけですが、中でも既に中学生の頃から作曲家の村井邦彦に認められ、子飼のソングライターとして活動していたという事実は、まさに天才の証明でしょう。

また同様にハーフの友人達と米軍基地中に出入りしていたとか、六本木にあった某レストランで、当時の芸能界や芸術の世界のお洒落な人達と交流していたことについても、一般的な見方からすれば、その頃は不良少女の証明なんですが、もうひとつ、そういうことが許される環境というのも、見過ごせないと思います。

ご存じのように、ユーミンの実家は使用人や出入りの商人も多い老舗の呉服店でしたから、所謂リッチな生活だったと思われます。彼女が作る歌が、それまでの貧乏ったらしいものとは無縁なのも当然だなぁ~、と納得する他はないでしょう。

しかしユーミンがそうした環境で育ったとしても、彼女が自らの感性を培ったのは、やはり自己の天才性を活かす努力をしていたからだと確信しています。

そうじゃなければ、四十代になっても、少女の気持を歌い続けることは出来なかったはずです。

さて、そこで本日のデビュー曲ですが、もちろんアルバム「ひこうき雲」でも聴ける歌でありながら、これは完全なる別バージョン! なんとユーミンがアレンジを自ら手掛け、ピアノやキーボードを多重録音して仕上げたという、なかなかイナタイ魅力が良い感じ♪♪~♪ ちなみに他の参加メンバーとしては、かまやつひろし(プロデュース)、高橋幸宏(ds) 等々の名前があるようですが、これには諸説があるので、ここでは確定はしておきません。

で、私がこのシングル盤をあえて買ったのは、もちろんユーミンが気に入っていたからですが、もうひとつの真相はシングルバージョンの存在に気がついたからに他なりません。

それはラジオで聴いた瞬間、うっと呻いた記憶が今も鮮烈なんですが、その昭和48(1973)年末頃になると、深夜放送が中心ではありましたが、ユーミンの歌が頻繁に流れるようになっていました。特にTBSのパックインミュージックでは、ほとんどタイアップしたかのようなオンエア率の高さ!?! 中でも林美雄は洋楽ノリの和物ロック&フォークを積極的に流していましたが、そこでは石川セリとユーミンがイチオシ状態! 私はその頃にやっていたバイトの関係で、林美雄のDJは毎週聞いていましたから、このシングルバージョンの存在を知ったのも、その番組だったというわけです。

もちろんB面に収録の「空と海の輝きにむけて」も、アルバムバージョンとは異なっています。

う~ん、それにしてもジャケットスリーブに写るユーミンの初々しい姿は、なんともいえませんねぇ~。もちろん歌も演奏も、新鮮というよりは、初々しく、可愛いです。

それと、これは「ひこうき雲」を最初に聴いた時から感じていたことですが、後の大ブレイク以降、教祖にまで祀り上げられたユーミンの全盛期からすれば、デビュー当時の「歌声の暗さ」は特徴的だと思います。

だからこそ、リッチな新感覚で売り出されたユーミンが、それ以前の青春四畳半物語的な歌謡フォークに馴染んでいたファンにも、それなりに受け入れられたんじゃないでしょうか?

本日も独断と偏見、失礼致しました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブライアン・オーガーの危機脱出

2009-12-17 12:55:27 | Rock Jazz

Closer To It / Brian Auger's Oblivion Express (Ghost Town / RCA)

最近はコメントを書きこんでいただける皆様の温かいご厚情に甘え、初期ニューミュージックの女性シンガーとブライアン・オーガーを交代アップしておりますが、そういうウケ狙いもサイケおやじの本性ということで、本日も続けているわけです。

で、このジャケットが死ぬほどダサいアルバムは、ブライアン・オーガーが自らお気に入りと公言している名盤として、もちろんファンにも認識された1枚です。

制作されたのは1973年、前作の大傑作盤「セカンド・ウインド」に続くアルバムですから、本来は最高の状況でレコーディングされるはずが、実は当時のバンドは主要メンバーが大量離脱した逆転どん底期……。

しかし何んとかバンドを存続させんと踏ん張ったブライアン・オーガーは唯一人、自分に追従してくれたベース奏者のバリー・ディーンの人脈を頼りに新メンバーを集めたと言われています。

そしてここに新生オブリヴィオン・エクスブレスを構成したのは、ブライラン・オーガー(org,el-p,key,vo)、ジャック・ミルズ(g)、バリー・ディーン(b)、ゴッドフリー・マクレーン(ds)、レノックス・レイトン(per) という5人組なんですが、気になる点は専任ボーカリストが居ないという点でしょう。

これについてはブライアン・オーガーが自ら歌うという苦肉(?)の策をメンバーに納得させるため、レコーディング直前まで巡業ライプを続けていたそうですから、その意気込みは大いに共感を覚えるところですし、実際、このアルバムに記録された演奏からは、個人的に以前に気になっていたブライアン・オーガーの歌唱力のトホホな雰囲気が、それほど感じられません。

否、それが逆に濃厚な演奏の中にあって、不思議な和みを醸し出しているとさえ、思えるのです。

A-1 Whenever You'er Ready
 いきなりセッションが開始される前のリラックスした雰囲気までも録音されているムード良さが、そのまんま自然に発展していく展開がたまりません♪ そしてグルーヴィにして熱気溢れるファンキーハードロックのムードが、ブライアン・オーガーの本来持っているモダンジャズの素養にジャストミート!
 加速した演奏の中から浮かび上がって来るボーカルパートもイヤミなく、なによりもドラムスとパーカッションのテンションが高いですから、続くブライアン・オーガーのオルガンアドリブも鋭く突進していくのです。
 また如何にものリズムギター、土台を固めるベースとエレピの安定感も流石だと思います。そして当然ながら、これは当時はクロスオーバーと呼ばれたフュージョンですが、随所に正統派モダンジャズの味わいが滲み出ているのにも、ニヤリ♪♪~♪ おぉ、至上の愛!

A-2 Happiness Is Just Around The Bend
 初っ端からブライアン・オーガーのエレピがハービー・ハンコックではありますが、パックのラテングルーヴが当然ながら、リアルタイムで人気のサンタナになっているは潔いかぎりです。
 そしてボーカルパートに入っては、スティーリー・ダンがブリティッシュロックしたような、実にマニア泣かせの展開にシビレがとまりません♪♪~♪ 彩りに使われるシンセのエグイ雰囲気は、やりすぎ寸前の危険信号でしょうか。
 う~ん、それにしてもブライアン・オーガーはエレピを弾いても気持良いグルーヴを提供してくれますねぇ~♪
 ちなみに、これはスティーリー・ダンの最初のヒット曲「Do It Again」との類似性も指摘されるところだと思いますが、ほとんど「鶏と卵」かもしれません。

A-3 Light On The Path
 これまたサンタナとスティーリー・ダン、さらにハービー・ハンコックあたりがゴッタ煮となった演奏ですが、ブライアン・オーガーのオルガンからはブリティッシュロックの香りが立ち昇ってくるという、なかなか魅力的なインスト曲♪♪~♪
 しかも、そこにはウケを狙った美味しいフレーズなんか、ひとつも出さないという、本当にハードコアな姿勢が潔いかぎりです。
 それはギターのジャック・ミルズにも言えることで、あくまでも個人的な感想では決して超一流のプレイヤーではないと思うのですが、しかしここでの思いつめたようなアドリブソロは幻想的な味わいも強い、正統派プログレ風ロックジャズになっています。 

B-1 Compared To What
 これは基本が一発録りの魅力というか、素晴らしく自然体のグルーヴが楽しめるアドリブ主体の快演です。ヒーヒー泣きまくるブライアン・オーガーのオルガンは、本当にモダンジャズですよ。
 しかし要所に配されたキメ、強いビートを叩き出すドラムスとベースのコンビネーション、熱いアクセントを隠し味としたパーカッションが侮れません。
 そして、いよいよ出てくるブライアン・オーガーのダブルトラックによるボーカルが、なかなか根性の入った憎めないスタイルですし、ジャック・ミルズのギターソロも健闘しています。
 特に中盤以降、後半へ向けての熱気は煮詰まった美味しさでしょうね♪♪~♪

B-2 Inner City Blues
 ご存じ、マービン・ゲイの代表曲のひとつとして、今や1970年代ソウルやレアグルーヴの枠に留まらない認識度がありますから、後追いで楽しまれる皆様にも気になる演奏でしょう。
 ここではオリジナルのダークでメロウな、ある意味では心地良い倦怠感を活かしつつ、さらに如何にもジャズ優先主義でありながら、実はロック感覚の加味も忘れていない秀逸なバージョンに仕上げられています。
 ただし、それゆえに物足りない部分も確かにあって、もう少しアドリブパートのエグ味が欲しいところなんですが……。
 実はこの演奏は本来、シングル盤を作るためのものだったらしく、実際に発売された7インチのバージョンを聴くと、その音圧の強さとメリハリの効いたミックスが最高に魅力的なんです。ちなみにアルバムバージョンは約4分半、シングルバージョンが約3分半なんですが、もちろん基本は同じながら、幾分の演奏の違いも散見されていますので要注意!
 CDでの復刻については未確認ですが、機会があれば、このシングルバージョンはなかなか気持が良いんで、お楽しみ下さいませ。

B-3 Voice Of Other Times
 そして前曲の些か煮え切らないムードを上手く引き継ぎ、これぞっ、メロウファンクの極みつきといも言うべき、実に素敵なグルーヴが放出される、このオーラス!
 無機質なドラムスのイントロが、最高に心地良いコード進行の響きに溶け込んでいく最初のパートから、ツボを掴みきった短いギターソロ、脱力系のボーカルにグッと気分を高揚させるベースの定型パターン♪♪~♪
 このあたりは今で言う「ハウス」系の味わいでもあり、それゆえにブライアン・オーガーのエレピとオルガンが琴線にふれまくりですよ♪♪~♪ あぁ、この浮遊感♪♪~♪ さらにパーカッションが素敵なアクセントになっているのは言うまでもありません。

ということで、なかなか魅力的なアルバムとして、私は発売当時から夢中になったのですが、実は今となってはブライアン・オーガーの諸作の中では、それほどの名作ではないと思います。

ただし1973年という時代からすれば、これは当時のクロスオーバーからフュージョンへの懸け橋的な評価もあるわけですし、何よりも英国のロックミュージャンとしてしか見られなかったブライアン・オーガーが立派にジャズの本流を演じていたという認識が、特に我国の評論家の先生方やイノセントなジャズファンに芽生えたというあたりは、今さら隠しておく話でもないでしょう。

また当時の現実として、このアルバムはイギリスではCBS、アメリカではRCAという大手から配給されながら、特にアメリカでは、このフヌケたジャケットデザインが象徴するように、レコード会社からは全く期待されていなかったようですし、実際、業界での評判は芳しいものではありませんでした。ちなみにそれは、イギリス盤の素敵なジャケットデザインと比較すれば、まさに一目瞭然! 呆れるほどです。

そしてグループそのものの状況も厳しく、このレコーディングも低予算を逆手にとったスタジオライプ形式だったと言われていますし、プロモーションを兼ねた巡業も完全に自腹だったというのですから……。

しかし、それが好転したのが、アメリカでの地道なライプ活動だったそうで、主に大学を巡ったツアーから人気がジワジワと沸騰していったのは、ほとんど大衆的ではないブライアン・オーガーの音楽性と上手くリンクしていた当時の若者の「ロックに飽きた気持」だったのかもしれません。

時代はフュージョン全盛期に入り、またポップスもジャズ風味が感じられるAORが流行の兆しとなっていれば、ブライアン・オーガーが提供するイケイケのハードロックジャズと心地良いメロウグルーヴのゴッタ煮は、とても美味しかったというわけです。

最後にもう一度、このジャケットのダサダサの話を書いておけば、これを新譜として発見したサイケおやじは、もしかしたら、そのあまりの酷さゆえ、これは未発表作品集かと思ったほどです。それが実際に聴いてみれば、当時としては本当に画期的に熱い演奏ばかりでしたから、忽ち私は各方面に素晴らしさを喋りまくり、このアルバムも仲間達の間を転々と貸し出されていきました。

掲載したジャケ写の傷みも当然ですよね。

そして後に、全く別なデザインのイギリス盤を発見して、そのあまりの違いに愕然とさせられたわけですが、実際の音に関して言えば、アメリカ盤の方が音圧が高くて結果オーライだと思います。

このあたりはCDで聴けば、何の問題もないはずですから、お楽しみ下さいませ。

あぁ~、それにしても、こうして書いていながら、私はブライアン・オーガーのグルーヴ天国にどっぷり♪♪~♪ 抜け出せなくなりました。

お詫び
現在、イギリス盤が手元にありません……。
それゆえ、ジャケットを比較掲載することが叶いませんでした。
ご容赦下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

扉の冬を押し開けて

2009-12-16 12:15:27 | Singer Song Writer

扉の冬 / 吉田美奈子 (ショーボート)

我国の女性歌手で、私が最も好きなひとりが吉田美奈子です。

そして本日の1枚は彼女のデビューアルバムとして、リアルタイムでは売れませんでしたが、いつまでも新鮮な空気が封じ込められている、サイケおやじには永遠の愛聴盤♪♪~♪

今日までのプロフィールとして、彼女は昭和48(1973)年秋に発売された、このデビューアルバムが芸能界への登場とされていますが、実はそれまでにも様々なセッションに参加し、密やかにレコーディングも残していたのは言わずもがなでした。

そして私が初めて吉田美奈子の歌に接したは、某大学のサークルが主催したイベントで、ピアノの弾き語りだった歌からは、サイケおやじが大好きなローラ・ニーロと同じ雰囲気が濃厚に表出されていたのですから、たまりません。もちろん今に繋がるソウルフルにして静謐な歌の上手さも強烈でした。また、この時の彼女はフルートも聞かせてくれたのですが、後に知ったところによると、吉田美奈子は高校の時、きちんとした音楽教育を受けていて、フルート科に在学していたそうです。

で、これからしばらく後に発売されたのが、本日のデビュー盤ということで、ほとんど出た瞬間に買った日本人歌手のレコードとしては、これが初めてぐらいだと自分でも自覚しています。

 A-1 外はみんな
 A-2 待ちぼうけ
 A-3 扉の冬
 A-4 ねこ
 A-5 綱渡り
 B-1 変奏
 B-2 かびん
 B-3 ひるさがり
 B-4 週末

収められた楽曲は全て、吉田美奈子の作詞作曲によるもので、当然ながらピアノも自ら担当していますが、それを支えるバックの面々は鈴木茂(g)、松任谷正隆(key)、細野晴臣(b)、林立夫(ds,per) というキャラメルママなんですねぇ~♪

そうしたところから、このアルバムはユーミンの最初のアルバム「ひこうき雲」と否が応でも比較される運命にあるわけですが、発売されたのはこちらが先でした。

ただしプロとしての活動は明らかにユーミンの方が早かったようで、なんと中学生だった頃からソングライターとして裏方ながらメジャーな芸能界に関わっていたユーミンに対し、吉田美奈子はアングラだったと思います。

またレコードデビューにしても、ユーミンは昭和47(1972)年にシングル盤「返事はいらない」を既に出していたのです。

しかしキャラメルママという、ある意味では後の日本のボップスの在り方を決めてしまったセッショングループとの成果という点では、明らかに吉田美奈子の「扉の冬」が最初だと思います。

これはあくまでも個人的な感想で、独断と偏見ではありますが、ユーミンの「ひこうき雲」やそれに続く「ミスリム」で成し遂げられている歌と演奏は、ユーミンの楽曲を上手くアレンジしたところに彼女の歌があるのに対し、この「冬の扉」に収められた楽曲は、吉田美奈子が自作自演のピアノの弾き語りが最初から強くあって、それにキャラメルママが彩りを添えている雰囲気だと思います。

もちろん曲によって使われているストリングスのアレンジにしても、吉田美奈子が主に手掛けているわけですから、さもありなんです。

そして、このあたりは言わずもがなですが、彼女の歌の上手さ、力強さ、ソウルフルな感性と、決して無縁ではないでしょう。

肝心の歌と演奏では、まずA面ド頭の「外はみんな」からいきなり飛び出してくるファンキーポップな世界に、ドッキリ! 幾分やぼったいメロディと彼女の歌いっぷりが、如何にもニューヨークっぽいアレンジで包まれているのですが、しかし細野晴臣の動きまくるエレキベース、さらに林立夫のビシバシのドラミングが、それをきっちりと支えている周到な計算は流石!

ちなみに細野晴臣のペースワークがチャック・レイニーという、アメリカの音楽業界では超有名な黒人セッションプレイヤーから影響を受けているという事実を知ったのも、この頃でしたが、個人的にはジェームス・テイラーの傑作アルバム「マッド・スライド・スリム」でバックを務めていたリー・スクラーからの影響も否定出来ないと、僭越ながら思っています。

そのあたりは続く「待ちぼうけ」や「週末」での、早すぎたジャコ・パストリアス風味のプレイや、低い重心とビートの芯の強さが凄い「綱渡り」、しなやかなコードの解釈が流石の「かびん」等々、まさにベース奏者としての細野晴臣が存在証明!

ですから主役の吉田美奈子を含む纏まりは、これがレギュラーのバンドと同じフィーリングで最高ですよ♪♪~♪ 特に「綱渡り」の千変万化で躍動的な演奏が、最終パートで強烈な変拍子に変転していくところは、どんなプログレバンドよりも過激で進歩的だと思います。スティーリー・ダンも真っ青でしょうねぇ♪♪~♪

そして吉田美奈子の作る楽曲は、決してポップなメロディがあるわけでもなく、詩だって抽象的で前衛芸術のような、シュールな余韻があるのですが、ただしそれが吉田美奈子の凄い歌唱力で歌われる時、例えようのない無垢な世界が現出するのです。

なんたってアルバムタイトル曲からして「冬の扉」じゃなくて、「扉の冬」ですからねぇ~。

確かにローラ・ニーロのクールな部分の影響も色濃く、またゴスペルやジャズスタンダードの雰囲気も滲み、さらに歌謡フォークの一番暗い部分も取り込まれていることは否定出来ません。しかし、これだけダークで冷静な描写をされた歌であるにもかかわらず、聴き終えた時の妙な安堵感は、本当に不思議な魅力です。

ご存じのように、吉田美奈子は一般ウケしたヒット曲やバカ売れしたアルバムは出せませんでしたが、その歌声の強さは大勢の人を捕えて離さないものがあります。それは山下達郎やユーミン等々、多くのセッションにコーラスで参加した結果として、聴けば一発でわかる「声」の素晴らしさ!

また山下達郎と組んだ楽曲での作詞の素晴らしさは言うまでもないでしょう。極言すればユーミンの詩の世界は女性優位の理解度だと思いますが、吉田美奈子は極めて女性的な表現でも、しっかりと男に共感を与えるんじゃないでしょうか? これはあくまでも私見ですが。

ということで、このアルバムもまた、日本の歌謡芸能史に屹立する名盤!

と、言いきって、私は後悔しません。

ちなみに掲載した私有盤は、既に2枚目のレコードですが、最初に買ったLPは以前に飼っていた猫に盤面を傷つけられ、それがなんと「ねこ」のところだったというのは出来過ぎた話でしょうか。いや、これは本当なんですよ。そして聴けなくなって中古で再入手したというわけです。

機会があれば、皆様にもぜひ、聴いていただきたい傑作盤!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブライアン・オーガーの意地は痛快!

2009-12-15 11:53:51 | Rock Jazz

Definitely What / Brean Auger & The Trinity (Marmalade)

最近は我国でも人気が著しく安定したイギリスのキーボード奏者、その名もブライアン・オーガー&ザ・トリニティの2枚目のアルバムですが、実はデビュー盤だった前作「オープン」、および関連シングル曲がバンドメンバーだった女性歌手のジェリー・ドリスコール名義で売り出されたことから、ブライアン・オーガーは怒り頂点!

そこで当時のプロデューサー兼マネージャーだった凄腕興行師のジョルジォ・ゴメルスキーと大喧嘩の末に、ようやく実質的なリーダー盤として制作されたのが本作の真相という逸話は有名なところでしょう。

そしてもちろん、中身は秀逸なロックジャズ♪♪~♪

というか、如何にも1960年代末のイギリスという、爛熟したポップサイケとモダンジャズが最高に上手く融合した傑作だと思います。

メンバーはブライアン・オーガー(org,p,vo)、デイヴ・アンブローズ(b)、クライヴ・サッカー(ds) というトリオを中心に、ジャズ系のビッグバンドやストリングスのセッションオーケストラ、また男女混声のコーラス隊が大きく参加していますが、ブライアン・オーガーのボーカルはともかく、オルガンのアドリブや演奏全体の熱気、さらにツボを押さえたアレンジの妙が実に秀逸!

A-1 A Day In The Life
 ご存じ、ビートルズが至高の名曲として、その楽曲の完成度の高さもありますから、モダンジャズでもウェス・モンゴメリー(g) やグラント・グリーン(g) 等々、ソフトロックとソウルジャズの巧みな折衷名演が多数残されていますが、このブライアン・オーガーのバージョンも素晴らしいです♪♪~♪
 いきなりオルガンがリードしていく曲メロの背後には重厚にしてメリハリの効いたオーケストラが配され、しかもボサロックなドラムスにソウルフルなエレキベース! もう、ここだけで完全にサイケおやじが大好きな世界です。
 ちなみにアレンジャーとしてジャケットにクレジットされているのはリチャード・ヒルとブライアン・オーガー本人ですが、両者共に当時のヴァーヴやCTIあたりの所謂イージーリスニングジャズを相当に研究したと思われる仕事は、流石に目配りが秀逸だと思います。
 そして肝心のブライアン・オーガーのオルガンは、そのクールな雰囲気と押さえ気味のアドリブがバックのオーケストラと自然に融合し、中盤からの盛り上がりには血が騒ぎますよ。さらに最終盤のピアノの一撃は、オリジナルへの敬意でもありますが、次曲への繋ぎとしても最高の効果になっています。

A-2 Geoge Bruno Money
 で、そのピアノの一撃を合図に、間髪を入れずスタートするのが、このスピード感が心地良すぎるオルガンジャズの決定版! ほとんどジミー・スミス&オリバー・ネルソンの世界を疑似体験する痛快な潔さです。
 しかも、これは賛否両論でしょうが、ブラアン・オーガーが自ら歌ったと思われるボーカルは正直、オトボケとしか思えないものがあります。しかし、その一生懸命さゆえに可愛くもあり、憎めません。
 まあ、それはそれとして、ここではやっぱりオルガンジャズの楽しさを徹底的に楽しめることを楽しみましょうね。スバリ、楽しいんですよ♪♪~♪

A-3 For Horizon
 これまたモードジャズにどっぷりのボサロック系サイケデリック演奏で、その幻想的で深みのある曲メロが一瞬、ハービー・ハンコック?
 と思った次の瞬間、心地良く脱力したボーカルが聞こえてくる展開が、如何にも当時の最先端を狙ったものでしょう。しかし、ここでも演奏パートの方が魅力的なのは言わずもがな、全体のアレンジの綿密にして分かり易いところは、後のフュージョンに繋がるものかもしされません。

A-4 John Brown's Body
 あまりにも有名なメロディを素材にソウルフルなロックジャズが遠慮なく楽しめます。
 ファンキー&ゴスペルなブライアン・オーガーのオルガン、セカンドラインまでも叩いてしまうドラムス、そして重心をさらに低くして蠢くエレキベース! 本当に最高♪♪~♪
 おまけに大コーラスとオトボケのホーンセクション、各種のお遊び風効果音が、最後の最後で正体を現すという仕掛けも憎めませんねぇ。

B-1 Red Beans And Rice
 スピード感満点に突っ走るロックジャズのインストですから、当然ながらブッカーT&MG's のオリジナルバージョンをブリティッシュロックで解釈したと書くべきなんでしょうが……。
 率直に言えばハードロックと4ビートの味わいばかりが強調され、個人的には、もう少しソウルフルなムードを望みたいところです。
 しかし爽快感は抜群で、これを聞きながら車の運転をしていると、完全にスピードオーバーでしょうね。アブナイ、アブナイ!

B-2 Bumpin' On Sunset
 これは嬉しい選曲で、もちろんウェス・モンゴメリーが秀逸なオリジナルバージョを残しているイージーリスニングジャズの素敵なメロディ♪♪~♪ それをブライアン・オーガーは実に愛情溢れる解釈で、まさに薬籠中の快演を聞かせてくれます。
 リズム隊の定型ビートを土台に、まるっきりそのまんまのアレンジが逆に潔いオーケストラを従え、ブライアン・オーガーのキーボードが冴えわたりアドリブパートは、要所にキメを入れつつも、極めて自然体の計算が働いているようです。
 そして本人にとっても会心の仕上がりだったのでしょう、後々までライプでは人気の演目となり、また再演バージョンも残されていますが、ここでのテイクは流石に素晴らしいと思います。

B-3 If You Live
 ブライアン・オーガー流儀のジャズブルースというか、ピアノを弾き語るようなムードは失礼ながら本人のヘタウマボーカルによって、なかなか十人十色の好みが魅力的かもしれません。
 ただし結論から言うと、次曲の「Definitely What」が些か凝り過ぎのところがありますから、その前段として、こういうリラックスした演奏が配置されたアルバム構成は用意周到でしょう。実際、間奏でのピアノは実にグルーヴィなアドリブを聞かせてくれますから、私はそれなりに楽しい気分にさせられてしまうのですが……。

B-4 Definitely What
 土人のリズムと原始の響きを思わせるフルート、それがフリージャズなペースソロに繋がり、またまたフルートによる素朴なメロディが流れてくるという、ちょいと???の展開ですから、う~ん……。
 実はブライアン・オーガーの、これが悪いクセというか、自分のリーダー作では、ほとんど毎回、ひとつはやってしまう毎度の凝り過ぎなんですよねぇ……。おそらく何かの意地か、失礼ながら勘違いの創作意欲なんでしょうが、個人的には楽しくありません。
 しかしアルバム全体の流れからすれば、オーラスに意味不明の進歩(?)的な演奏を入れるというのは、当時のロックでもジャズでも、はたまたポップスの世界でさえも、ひとつの「お約束」になっていた売れセンの歴史もありましたですねぇ。
 そのあたりを覚悟して聴けば、これも悪くないという苦しい言い訳なのでした。

ということで、このアルバムもまた、今日ではCD化されていますので、機会があればお楽しみ下さい。

また同時期に出していたシングル曲も、今日では様々な形で復刻されていますが、そこには尚更に大衆的なロックジャズやソウルジャズが刻まれていて、このアルバムには収めきれなかった快楽主義が楽しめますので、要注意だと思います。

ちなみに私は当然ながら後追いで聴いたわけですが、これが世に出た1968年はロックもジャズもR&Bもポップスも、ある意味ではひとつの頂点にあった時期でしたから、その狭間で揺れながら様々にクロスオーバーを試みていたブライアン・オーガーの奮闘は十分に価値のある仕事だったと思います。

それゆえに今日の人気もムペなるかな、1970年代のフュージョンブームでのブレイクも含めて、残された作品群は好きな人には好き! そういう頑固さを弁護してくれるのが、ブライアン・オーガーの魅力のひとつかもしれません。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユーミンとの出会い

2009-12-14 11:28:33 | Singer Song Writer

ひこうき雲 / 荒井由美 (東芝)

既にして我国の大衆芸能史にその名を刻んだユーミンが、まだ荒井由美と名乗っていた頃のデビューアルバムが、本日の1枚です。

 A-1 ひこうき雲
 A-2 曇り空
 A-3 恋のスーパーパラシューター
 A-4 空と海の輝きに向けて
 A-5 きっと言える
 B-1 ベルベット・イースター
 B-2 紙ヒコーキ
 B-3 雨の街を
 B-4 返事はいらない
 B-5 そのまま

発売されたのは昭和48(1973)年11月で、その歴史的、音楽的な意味合いは言うまでもありませんが、私が、このアルバムに出会ったのは、その翌月のことでした。

と言っても、自ら聴きたかったとか、自腹で買ったとかいうことではありません。

実はその時、私はちょうど封切りになっていた池玲子主演の東映映画「恐怖女子高校・アニマル同級生(志村正浩監督)」を観に行った劇場で、忘れ物になっていた、このLPレコードを見つけたのです。ちなみに同時上映は「実録安藤組・襲撃篇」というヤクザ映画で、実際には「アニマル同級生」は添え物のB面作品だったのですが、青春の血が滾っていた当時のサイケおやじは、どうしても池玲子や衣麻遼子、他の女優さん達が銀幕の中で繰り広げるエロスとピンキーなバイオレンスを求めていたというわけですが……。

まあ、それはそれとして、その2本立を観終わって、ふっと足元に気がつくと、そこには紙袋に入ったLPレコードが2枚、さらにその中には封筒がひとつ、入っていた忘れ物に気がつきました。

どうやら右横に座っていたお客さんのものだったと思います。

で、件の中味を確認してみると、どうも封筒の中にお金が入っているようなので、映画館を通して警察へ遺失物の届けを出したわけですが、同じくそのひとつとしてあったのが、ユーミンの「ひこうき雲」のLPだったのです。ちなみに、もう1枚はフランシス・レイのベスト盤でした。

また、気になるお金は万札が2枚と硬貨が数枚、その他に意味不明のメモ書きもありました。

で、結局、持ち主が名乗り出ず、それは半年後に私へ所有権が移りました。

しかし、その時になっても私は、「ひこうき雲」を聴いたわけではありません。

実は当時、私はある幸運から3ヵ月ほどアメリカへ行けることになり、その準備等々に忙殺され、肝心の遺失物を警察に受け取りに行くことが出来ず、後事を妹に託していたのです。

そして9月になって帰国した私は、その間の諸々を片付けている中で、その忘れ物になっていたレコードを思い出し、妹に尋ねたところ、「あの、荒井由美っていう人のレコード、最高♪♪~♪」とか、簡単に言われて、???の気分になりました。

なんと妹は、私が居ない間に、その「HIKO-KI GUMO」と題されたLPを毎日のように聴いていたそうで、おいおい、そんなに良いのなら!?!

こうして自分に所有権がありながら、現実には妹に頼んで聞かせてもらったのが、私と「ひこうき雲」、つまりユーミンとの本当の出会いになったのです。

そして聴いてみて、最初に思ったことは、荒井由美っていう人は、きっとムーディ・ブルースやプロコル・ハルムのような欧州系プレグレが好きなんだろうなぁ~、ということでした。つまり自らが書いたとされる曲メロからは、とてもヨーロッパ趣味が濃厚に感じられたのです。

例えばアルバムタイトル曲の「ひこうき雲」にしても、極言すれば、例の「青い影」症候群から生まれた素敵なメロディだと思います。またフランス風ボサノバ歌謡の「曇り空」とか、気持良く倦怠した「ベルベット・イースター」、転調ばっかりでもイヤミになっていない「きっと言える」等々、完全にそれまでの日本の歌謡フォークやアイドルポップスからは遊離したセンスが濃厚に滲み出ていました。

さらに凄いなぁ、と思ったのはバックの演奏で、これって、もしかしたらジェームス・テイラーがその頃にやっていた、ソウルジャズフォークの味わいと同じかもしれない!? ということです。

些か穿った独断と偏見ですが、欧州系ポップスとアメリカ色が強いソウルジャズの融合が、これほどの成果を生み出したのかもしれませんし、ユーミン独自の透明感を持った歌と詞が見事に記録されたのも、バックを務めた鈴木茂(g)、松任谷正隆(key)、細野晴臣(b)、林立夫(ds) という、キャラメルママの面々がスタジオに揃っていればこその歴史的な結論です。

もちろん、そんな人脈とか裏事情を当時は知る由もありませんでした。

ただ自分が好きなソウルジャズでポップなフォークが、日本でも生み出されていた事実には嬉しくなりましたですねぇ~~♪

実はそれまでにも、そうした流れの中では五輪真弓吉田美奈子を既に聴き、好きになっていた私ではありますが、それは個人的に大好きだったキャロル・キングやローラ・ニーロの「和製」というイメージが基本にあったからに他なりません。

しかしユーミンには、彼女達と同様に自作自演でありながら、ちょいと異なるムードが確かにありました。

はっきり言えば、ユーミンは失礼ながら歌唱力がイマイチですから、ここに発表された楽曲は、なにもユーミンが歌わなくとも、他の歌手ならもっと上手く……、なんて思わざるをえないものがあり、それが逆に個性というか、新しい魅力だったのかもしれません。

ちなみに妹に言わせると、ユーミンは「詩」が良いんだそうで、まさに少女の気持とか、ナイーブでお洒落な女性の心を歌っていたんでしょうねぇ。ガサツな男である私には、その完全なるシンパシーを感じることが出来ず、残念……。

正直に告白すれば、私はユーミンのボーカルよりも、バックの演奏の気持良さに心を惹かれていたのです。

しかし確かに、それまで若者を中心に共感を集めていたフォークの、所謂「四畳半」という私小説的な貧乏臭さが、ユーミンの歌からは感じられませんでした。

ということで、ユーミンのデビューアルバムは、リアルタイムではそれほど売れなかったものの、ジワジワと人気を集めていったのが、昭和40年代末頃の事情でした。そしてご存じのとおり、昭和50(1975)年になって、あの歌謡ボサノバの大名曲「あの日にかえりたい」でウルトラブレイク! その後の活躍は言うまでもありませんが、個人的にはデビューから、そこまでの間のユーミン、つまり荒井由美の時代がとても好きです。

また後に知ったことですが、そこまでの経緯で表出してくる様々な人脈や裏話は、まさに今日に至る我国の大衆芸能界を象徴する美しき流れでしょう。

そのあたりについても追々、個人的な感慨と生意気な妄想で書いていきたいと思います。

最後になりましたが、そうした経緯から、このLPは実質的に妹の所有物となり、それが本当に私の手元にやって来たは、妹が結婚して家を出た後なのでした。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

和製キャロル・キングだった五輪真弓

2009-12-13 12:17:16 | Singer Song Writer

少女 / 五輪真弓 (CBSソニー)

シンガーソングライターのブームの中でも、特に実力が認められていたのがキャロル・キングで、代表作のアルバム「つづれおり」は世界遺産になっていますが、その影響を我国で最初に強く感じさせるデビューとなったのが、五輪真弓でした。

実際、アメリカで敢行されたレコーディングにはキャロル・キングがピアノで参加し、また本人も「和製キャロル・キング」として売り出されたのですが、確かに自作自演、そしてピアノを弾きながら力強く、同時に繊細さと情感溢れる表現は、その正統派の歌唱力があってこそだったと思います。

そして本日ご紹介のシングル曲「少女」は、昭和47年秋に発売されたデビューヒット♪♪~♪ 最初はラジオの深夜放送で人気を集め、忽ち五輪真弓の存在を強くアピールしてしまいましたですね。

現在では、同時期にデビューしたと思われがちな荒井由美=ユーミンや吉田美奈子との比較もありますが、実は五輪真弓のブレイクが最初にあったのです。

そして個人的には、ユーミンや吉田美奈子のデビューアルバムを聴くと、そのレコーディングセッションが相当にファジーというか、その場の雰囲気を大切にしたような感じなのとは対照的に、五輪真弓はデビュー作から、かなり綿密なアレンジや企画があっての成果かもしれないと思います。

そうしたムードは、作品を発表する度に強くなり、我国では誰よりも早くフュージョン系のミュージシャンを起用したAOR系LAポップスを実現させたり、所謂ニューミュージックが全盛期には、欧州系大衆音楽を通過した歌謡曲路線へ踏み込んだりして、ちょっと自らファンの期待を避けていったような……。

そのあたりは美空ひばりも認めた「恋人よ」の超特大のヒットで証明されたわけですが、やはりデビュー期の「和製キャロル・キング」を愛した私のような者には、ちょいと辛いものがありますねぇ……。

しかも残念なことに、そうした初期の五輪真弓の諸作品の大部分がオリジナルどおりにCD化されていないという不可解な実情も!?!

そんなこんなが不条理ではありますが、とにかくピュアな五輪真弓の世界は、このシングル曲から始まったということで、何時聴いても新鮮な気分になれるのでした。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JTのソウルジャズフォーク

2009-12-12 11:02:31 | Singer Song Writer

Mud Slide Slim And The Blue Horizon / James Taylor (Warner Bros.)

発売された当時、高校生だったサイケおやじに大衝撃を与えたアルバムが、本日の1枚です。

その昭和46(1971)年といえば、我国ではGSブームの衰退と入れ替わるように歌謡フォークやアイドルポップスが急激な人気を集めていた頃でしたから、所謂フォークギターと呼ばれたスチール弦の生ギター、通称アコギを使った音楽が流行していました。

もちろんそれは洋楽におけるシンガーソングライターと呼ばれた自作自演歌手、中でもフォークやカントリー系の音楽に強い影響を受けたミュージシャンがヒットを飛ばしていた事実に裏付けられたものでしたから、特にフォークっぽい日本語の歌の内容は、自意識過剰とネクラなムードが強く、また恋に恋して、失恋するような雰囲気は、サイケおやじの感性にはイマイチ、合っていませんでした。言葉だけの反戦・反体制も、また、しかりです。

そして本日も告白しておくと、その頃のサイケおやじは高校にあった同好会のバンドに入れてもらい、しかも時代錯誤なエレキのバカ大将を目指していたのですから、フォークなんて軟弱だっ! と強く決めつけていたのです。

ところがそんな頑迷な私に、「これを、聴いてみろ」とばかりに先輩のWさんが貸してくれたのが、本日ご紹介のジェームス・テイラーが通算3枚目となるLPでした。

実はジェームス・テイラーについても、そういえばビートルズのアップルレコードからデビューした新人フォーク歌手だったかなぁ……、というようなイメージが残っていましたし、またラジオからは「きみの友だち / You've Got A Friend」という、穏やかなヒット曲が流れていた印象しかありませんでした。

しかし、この「マッド・スライド・スリム」は、まず針を落とした瞬間から、ウッと唸らされたほどのショックを私に与えたのです。

 A-1 Love Has Brought Me Around / 強きものは愛
 A-2 You've Got A Friend / おまえには友だちがいるよ
(きみの友だち )
 A-3 Place In My Past / 過ぎ去ってしまった場所
 A-4 Riding On A Railroad
 A-5 Soldiers / 兵士たち
 A-6 Mud Slide Slim
 B-1 Hey, Mister, That's Me Up On The Jukebox / ジュークボックスの歌
 B-2 You Can Close Your Eyes / 目を閉じてごらん
 B-3 Machine Gun Kelly
 B-4 Long Ago And Far Away / 遠い昔
 B-5 Let Me Ride
 B-6 Highway Song
 B-7 Isn't It Nice To Be Home Again / なつかしきわが家

まず、何気なく歌いだされるA面冒頭の重いリズムとビート、その中心となっているエレキベースが演奏が進むにつれ、雄弁に蠢いていくという、私の最も好きな展開にハッとさせられました。しかも何時しかバックの演奏がエレキギターやドラムス、ピアノやブラスが堂々と入っていることにも、私が思いこんでいたフォークのイメージを覆す何かがあると気がつかせられる要因でした。

しかし、そう思った次の瞬間、巧みなフィンガービッキングが冴えまくりのアコギが演奏をリードする「きみの友だち」が歌い出される流れの良さ♪♪~♪ しかも演奏パートは決してアコースティックな所謂アンプラグドではなく、ほどよいビートを提供するセンスの良いドラムスや打楽器、蠢くエレキベース、控えめなエレキギターに彩られているのですから、たまりません。ハートウォームなコーラスも良い感じ♪♪~♪

というように、このアルバムには、ジェームス・テイラー(g,vo) を主役に、ダニー・クーチ(g)、リー・スクラー(b)、ラス・カンケル(ds,per)、キャロル・キング(p.vo)、リチャード・グリーン(vln)等々の盟友&名手が参加していて、中でも既に述べたようにリー・スクラーのエレキベースが、当時のフォーク系セッションとしては珍しいほどのソウル&ジャズフィーリング♪♪~♪ その蠢きまくるスタイルは、私の大好きなザ・フーのジョン・エントウィッスルやゴールデンカップスのルイズルイス加部にも共通する味わいを強く感じました。

また全篇に横溢する不思議なジャズっぽさは、本当に新鮮!

いきなりユーミンが出てきそうなピアノに導かれた「過ぎ去ってしまった場所」の、本当にせつない和み♪♪~♪ ちなみに初期ユーミンのバックをやっていた細野晴臣は、はっぴいえんど時代からジェームス・テイラーが大好きだったそうですから、さもありなんでしょう。

まあ、そのあたりは今後に取り上げる所存ですが、とにかくアルバムタイトル曲「Mud Slide Slim」に至っては、シミジミ系のアコースティックメロディがジャズっぽいバックと融合した、本当に何度聴いても、そこはかとない胸キュン感が秀逸の極み♪♪~♪ 意図的にシンプルに歌うリードボーカルと倦怠したようなゴスペルっぽいコーラス、さらに演奏パートのソウルジャズ味は絶品で、中でもキャロル・キングのピアノがキメに弾くフレーズの素敵な情感、アドリブと定型リフを自然に化学変化させていくエレキベース、ワウワウをイヤミなく使ったエレキギター、そしてジェームス・テイラーの歌とギターの上手さ! そんなこんながゴッタ煮となった展開は、これが永遠に続けば良い! としか言えません。そしてタイミングの素晴らしい打楽器やドラムスも最高です。

またB面に移っては、似たような味わいの「Machine Gun Kelly」やジェームス・テイラーの上手すぎるギターをメインにした弾き語り風の「目を閉じてごらん」、それをポップに展開し、キャロル・キングのバックボーカルも冴える「遠い昔」あたりが今では定番になっていますが、個人的にはブラスも大胆に導入したファンキーロックな「Let Me Ride」が大好きです。ちなみにここではジェームス・テイラーのボーカルが、必ずしも黒っぽい力強さがないところを逆手にとったお洒落感覚が、後のAOR路線へと繋がるものかもしれません。またダニー・クーチのファンキーエレキも痛快ですよ。

ということで、このアルバムを聴いた後のサイケおやじは、こういうフォークなら、良いかもねぇ~♪ なんて節操も無く言い放ち、それは今でも顰蹙だったと思いますねぇ……。

また同じ頃に発売されたキャロル・キングの大名盤「つづれおり」にも、この頃に邂逅し、忽ち好きになったのは言わずもがな、ジェームス・テイラーにしても来日公演の素晴らしいステージに接し、そのアコギから出まくるビートの効いた音こそが、新しい感動を呼ぶと確信しましたですね。

それまでアコギで私が認めていたというか、知っていたのはPPMに代表されるようなスリーフィンガーとか、ポール・サイモンのような英国フォーク系の奏法、あるいはCSN&Yのブレイクによって当然となった変則チューニング等々でしたから、ジェームス・テイラーのような正統派でありながら、ジャズ&ソウルっぽいアコギは、最高に新鮮な驚きだったのです。

もちろん練習もしましたが、挫折……。なにしろスリーフィンガーにしても、私は今でも苦手ですから、エレキに逃避していた真実は隠せません。

まあ、それはそれとして、やっぱりジェームス・テイラーは良いですねぇ~♪

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする