OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

タイガースの地味な曲が好き

2009-12-04 14:56:23 | 日本のロック

僕のマリー / ザ・タイガース (ポリドール)

GSブーム全盛期を象徴する存在として、やはりタイガースは外せません。

ブームそのものが社会現象の中にあって、タイガースこそが芸能ビジネスの頂点となっていた時期が確かにありましたし、また女性を中心としたファンの狂騒もまた、当時が日本のロックにとって最高の時期だったと思うばかりです。

また音楽的な面においても、すぎやまこういち、橋本淳、山上路夫、村井邦彦……、等々の有能な作家達やスタジオミュージシャン&優れたアレンジャーという、所謂「縁の下の力持ち」の存在が、これほど成功したプロジェクトも稀有だったと、今は感銘を受けるほどです。

もちろん、それを強く推進していたのは、マスコミや各種業界の力を上手くコントロール出来る大手の渡辺プロダクションだったわけですが、さりとてタイガースというバンドそのものは、決して操り人形とは決めつけられないほど、メンバーの個性が際立っていた、まさにスタアグループに相応しいバンドでした。

結成されたのは昭和40(1965)年頃だと言われていますが、当時は京都の高校生だった加橋かつみ(vo,g)、森本太郎(g,key,vo)、岸辺おさみ(b,vo)、瞳みのる(ds,vo)、そして沢田研二(vo) という黄金のメンバーが揃ったあたりから地元では人気が高まり、スパイダースの事務所だったスパイダクションや前述の渡辺プロダクションとの争奪戦があった末、後者に所属が決定し、東京でのデビューは昭和41(1966)年末頃だったようです。

ちなみに当時のバンド名はファニーズでしたが、関西出身ということで、タイガースへと強制変更というエピソードは本当でしょうか? 命名者は、すぎやまこういち!? という説が、以前にテレビで明かされていましたが……。

まあ、それはそれとして、とにかく翌年春先に発売されたのが、本日ご紹介のシングル盤というわけですが、後年の大ブレイクと狂騒を鑑みれば、あまりにも地味~なフォーク歌謡がA面曲「僕のマリー」です。

皆様がご存じのとおり、この曲はリアルタイムでは大して売れることがことなく、しかし次いで発売された2枚目のシングル「シーサイド・バウンド」が、まさに昭和元禄の夏向きR&Rになって大ヒットしたことにより、急激にブレイク! さらに続く「モナリザの微笑み」「君だけに愛を」「花の首飾り」といった名曲の連発があって、ついにGSのトップに躍進!

そこには如何にもスタアらしい華やかさ、芸能界ど真ん中の胡散臭さ、またロックの猥雑な魅力が横溢していましたから、ファンの過熱熱狂は完全に社会現象となり、それゆえに例えばNHKには出演出来なかったとか、とにかく反GSの標的にさえなったのです。

もちろん現実的にはコンサート会場での事故、チケット詐欺事件、メンバーの失踪等々、トラブルとゴタゴタが全盛期には当然の陰りとなりました。

しかしタイガースの演じていたことは、今となってはロックの本質だったと思います。

音楽的にはライプ演奏が上手くないとか、特に後期になって顕著となるスタジオでの作り込み過ぎたクラシックの様式美的歌謡曲路線、あるいは映画やテレビ出演によるフヌケのような姿勢……等々が、特に野郎どもには嫉妬の気持もあって、批判と憎悪の対象にもなっていました。

それでも私は、リアルタイムでやっぱりタイガースを否定出来ず、「シーサイド・パウンド」は日本語のロックの名曲名演だと思っていますし、後期の様式美作品で聴かれる洗練されたコーラスワークや曲メロを活かしきった沢田研二の歌唱力は、後追いで聴けば聴くほどに素晴らしいと感じています。

また、あんまり言われませんが、岸辺おさみのペースワークは完全にメロディ優先主義で、個人的には大好き♪♪~♪

そしてライプステージそのものについては、私が接した昭和43(1968)年の絶頂期、なんと森本太郎のギターアンプが壊れたのでしょうか? 音が出なくなり、窮余の一策としてベースアンプに繋ぎ直して演じられた現場の音が、当時としては異様にバリバリした轟音系の迫力だった記憶が今も鮮烈です。

というように、相当に激しい部分を持っていたのもタイガースの本質の一部分ですが、何故かサイケおやじが今でも時折に口にするタイガースのヒット曲メロディは、「僕のマリー」とか「青い鳥」、「花の首飾り」等々の優しいものばかりです。

告白すれば、リアルタイムでサイケおやじが好きだったのは「シーサイド・バウンド」系のアップテンポ曲を演奏するタイガースでしたから、それほど自然に刷り込まれていたといえば、全くそのとおりでしょう。

つまりタイガースは大衆芸能の中に咲いた毒気の強い華だったかもしれませんし、それが時の流れの中で懐かしさとか、青春の思い出になったとしても、決して枯れてしまうことの無い輝いた存在だと思います。

こうした想いは、別にGSでなくとも、様々なものにあることでしょう。しかし、やっぱり私の世代では、あの「昭和元禄期」が強い影響力として残っているはずです。

ちなみに掲載した私有のシングル盤は、実は買ったものではなく、高校の時の同級生だった女子から貰ったものです。なんでも彼女はタイガースのファンだったそうですが、途中からテンプターズに乗り換えた浮気娘で、この時は他にもシングル盤を永久貸与されましたです。

ありがとう、今でも感謝していますよ♪♪~♪

ということで、タイガースについては、いくら書いても終りがないほどですが、特に印象深いのがメンバーが各々、ジュリー、ピー、トッポ、サリー、タローというニックネームで親しみ易く呼ばれていたも、そのひとつです。

そして私は、熱狂したファンのお姉さま達が連呼する、そうした狂騒を忘れていないのでした。

コメント (4)
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