OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

みちづれ盤

2006-10-27 17:54:28 | Singer Song Writer

近頃、何となく自分の葬儀について考えることがあります。

暗い気分ではなく、もちろん特に健康を害しているわけでも無いのですが、自分の人生の最後ぐらいは、自分で演出してみたいような我侭さがあるのです。

それと気になるのは、自分が楽しんだ蒐集物の行方とか……。きっと捨てられてしまうんでしょうねぇ……。

いかん、暗くなってきたので、本日は私が特に和むアルバムを――

Tapestry / Carole King (Ode)

高校時代に始めて聴いて以来、今日まで私の座右の愛聴盤♪ 願わくば、あの世までも持って行きたいアルバムです。

キャロル・キングは1950年代後半から作曲家として、多くのヒット曲を書き、また自分でも歌っていた天才ですが、その活動は決してロックではありません。

キャロル・キングが書いた曲を歌っていたのは、エルビス・プレスリーが兵役についた後からビートルズが登場するまでの間に、アメリカで人気を集めたティーン・アイドル達が中心でした。

それは黒人っぽいものではなく、薄められたロックンロールとそれ以前の白人ジャズソングの変形でしかありません。

つまりユダヤ人モードで作られたスタンダード曲のコードを用いて作られた8ビート曲であり、もちろん歌詞は8ビートに乗って違和感の無い語呂になっていました。

そしてキャロル・キングはゲリー・ゴフィンという作詞家とコンビで、多くのヒット曲を量産したというわけです。

ちなみに彼女は、ビートルズが渡米した時には表敬訪問を受けているほどの才女ですが、そのビートルズや後に続くイギリス勢、あるいはアメリカのモータウン・レーベルの所属歌手達の台頭で、徐々に表舞台から消えていくのですから、皮肉なものです。

そしてサイケ、ブルース~ハードロック、ソウルといったブームが頂点を極めていた1968年になって、キャロル・キングは再び自分が作曲し、歌う姿勢を取り戻し、ついに1971年になって発表したのが、この大ヒットアルバムです。

そのサウンドはシンプルな伴奏にゆるやかな曲という、当時流行のシンガーソングライターの典型ですが、実は根底に、ロックやフォークに留まらず、ジャズやソウルの味付けが濃厚に存在しているのです。

告白すれば、私はシンガーソングライター系の音楽は、それほど好きではありませんが、このアルバムだけは、最初聴いた瞬間から、やられました。

それが何故か、当時は分からなかったのですが、まず曲が私の好きなジャズと同根のコードで作られていたこと、そして演奏にソウルジャズとかニューソウルの味がついていた所為かと、後付で分析しています。

とにかく全曲が素晴らしいとしか言えません。そして結論から言うと、我国の五輪真弓、吉田美奈子、ユーミンをはじめとして、このアルバムの影響下から脱出したシンガーソングライター系の歌手は、ほとんどいない、と思います――

A-1 I Feel The Earth Move / 空が落ちてくる
 彼女の自身のピアノがジャズロックしている派手な演奏ですが、曲そのものは王道ポップスでしょう。しかしブンブン蠢くエレキベースやソウルタッチのギターが最高に心地良く、コーラスも黒っぽくて最高です。

A-2 So Far Away / 去り逝く恋人
 ジャズではクルセーダーズの演奏が名演とされていますが、やはり決定版はこの自作自演のバージョンでしょう。緩やかで力強いキャロル・キングの歌唱も絶品ですが、演奏もシブイです。カーティス・アーミーのフルートの穏やかさ、ジェームス・ティラーの控えめな生ギターが、特に心に残ります。 
 ちなみに、このコード進行と演奏の雰囲気は完全にユーミンや五輪真弓、あるいは山下達郎に継承されています。 

A-3 It's Too Late / 心の炎も消え
 シングルカットされて大ヒットした名曲です。
 この仄かにマイナーな曲調は、私が最も好むものですし、サビの泣きがたまりません。
 もちろんこの雰囲気は、ユーミンや山下達郎に通じるものです。間奏のあたりなんか、モロですよ。

A-4 Home Again / 恋の家路
 これも我国ニューミュージックの元ネタとして、パクリが山のように存在している名曲です。
 穏やかな曲調でありながら、ゴスペル味があり、キャロル・キングの歌いまわしは黒っぽさが自然体で気持ち良い限りです。ラス・カンケルの重いドラムスも良いですねぇ~♪

A-5 Beautiful
 ちょっとジョン・レノンが書きそうなハードな曲調ですが、実は逆もまた真なり! ジョン・レノン十八番のコード進行の元ネタはキャロル・キングなんですから!
 この曲なんか、「イマジン」の中に入っていても違和感ありませんよ。

A-6 Way Over Yonder / 幸福な人生
 これも緩やかなゴスペル調の名曲です。
 絡んでくる黒いボーカルは、ストーンズとの共演でも有名なメリー・クレイトンという黒人シンガーで、演奏もグイグイと盛り上がって山場を作っていきます。

B-1 You've Got A Friend / 君の友達
 ジェームス・テイラーが取上げて大ヒットさせた名曲のオリジナル・バージョンです。もちろん力強く、ほのぼのとした味わいが素敵です。

B-2 Where You Lead / 地の果てまでも
 キュートなカントリー・ロックになっていますが、キャロル・キングならではのコード進行が気持ち良く、コーラスがポップで暖かい雰囲気を醸し出していますねぇ~♪

B-3 Will You Love Me Tomorrow ?
 作曲家時代の彼女にとっては代表的な作品の自作自演バージョンです。
 ここでは非常にシンプルな伴奏で、テンポもゆるやかに味わい深く演じられており、その新感覚が当時の雰囲気と見事に合致しているのですが、今、初めて聴かれる人には、どうなんでしょうか……?

B-4 Samckwater Jack
 クインシー・ジョーンズも取上げているグルーヴィな名曲です。
 キャロル・キングのボーカルは、やや力み過ぎですが、こういうニューソウル系のサウンド作りは、これ以降、白人シンガーソングライターの基本となっていくのでした。

B-5 Tapestry / つづれおり
 アルバムタイトル曲は、初期の吉田美奈子がモロになっています。
 もちろん、これだって逆もまた真なり! つまりパクラれたわけですが、パクリたくなる気持ち、分かりますねぇ~♪ 歌いまわしまで、似ていますから!
 仄かなゴスペル感覚が内包された歌と演奏をお楽しみ下さいませ。

B-6 A Natural Woman
 アレサ・フランクリンが取上げて大ヒットさせた名曲の自作自演バージョンです。
 とにかく落ち着いた中にも力強い仕上がりで、ピアノのゴスペル調が、全ての源でしょう。

ということで、全曲、アルバム丸ごと素晴らしい歌と演奏です!

曲毎の紹介では書きませんでしたが、歌詞が、また素晴らしいんですよ♪ それほど難しい英語ではないし、日本盤なら歌詞カードがあるので、訳詩を味わって下さいませ。

私は自分の葬式で、遺族が「So Far Away」歌ってくれたなら……、と願っているのですが。

ちなみに「猫ジャケット」としても秀逸で有名なアルバムなのでした♪

コメント (4)
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