OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

今日は12月の雨

2009-12-19 10:50:12 | Singer Song Writer

12月の雨 / 荒井由美 (東芝)

と、タイトルを書きながら、久々に舞い戻った以前の赴任地、雪国は大雪でござんす。しかし、いままでが冬とは思えぬ暖かさだったし、本来はこれが当然という季節なんですよね。

まあ、それはそれとして、本日ご紹介のシングル盤はユーミンが未だブレイクする前の昭和49(1974)年10月に発売した1枚で、歴史的には2枚目のアルバムとなった傑作「ミスリム」からのカットでした。

既に「ひこうき雲」のところでも述べたように、私がユーミンの魅力に惹きつけられたのが同年9月でしたから、これは私にとってはピカピカの新曲♪♪~♪

ちなみに妹は私よりも先にユーミンの虜になっていて、本来は私に所有権があるはずのLP「ひこうき雲」を連日聴いていた事実も既に述べたとおりですが、ユーミンにしても実は「12月の雨」を出す以前の4月、3枚目のシングルとして「やさしさに包まれたならc/w魔法の鏡」を発表しており、妹はそれも確実にゲットして、私に聞かせてくれていました。

ちなみに2枚目のシングル盤は昭和48(1973)年11月に発売された「きっと言えるc/wひこうき雲」で、両面ともアルバム「ひこうき雲」収録のバージョンと同じだと思われます。

ですから本来ならば、この「12月の雨」と同時期に発売のLP「ミスリム」も買うはずだったようですが、もちろんそこには経済的な事情がありましたから、兄としてはシングル盤を買って良い顔をしよう! というセコイ計算と、実は、これもまた、シングルバージョンではないか? という希望的観測があったのです。

なにしろデビューシングル盤の「返事はいらないc/w空と海の輝きにむけて」も、また前述した「やさしさに包まれたならc/w魔法の鏡」も、結果的にアルバムバージョンとは異なっていましたからねぇ。

ところが現実は厳しく、これはアルバムに収録バージョンと基本的には同じものでした。

しかし、それにしても楽曲の素晴らしさは言うまでもありません。

ピアノがメインのシンプルにしてキャッチーなイントロから、ミディアムテンポで実にメロディアスな曲メロの連なり、せつなくも甘い胸キュンな歌詞♪♪~♪

雨が降っている12月の冬の朝、ベッド中でウトウトしている彼女が想うのは、自分を捨てていった男への未練……。

あぁ、これは完全にそれまでの歌謡フォーク等々で歌われいた「私小説」と同じなんですよねぇ。しかし、明らかに歌と演奏から感じられる雰囲気は、それとは無縁の世界というか、従来の歌謡フォークがモノクロならば、ユーミンの世界はカラーという感じです。

しかも、雨音に気づいて目が覚めるまで寝ていられるという、有閑な環境……。

遅く起きた朝であるはずなのに、まだペッドの中でウトウトしても許されるという……。

これは全く大学生の生活でもありますが、別に午前中の講義へ出席する真面目さとは無縁ですし、つまり総合レジャーセンターと同じ感覚で大学へ通っている、我儘でリッチな女子大生ということなんでしょうか……。

このあたりは、休日のOLの生活かもしれませんが、それにしても、こんな朝に起きてくれない女と結婚する気にもなれない男の心情は、如何ばかりか……。

うん、別れて正解だぞっ!

なんて、当時から強く思っているサイケおやじではありますが、一方、失恋の喪失感は、やっぱり辛いものがありますから、ユーミンの書いた詩の世界は男女共通でしょう。男だって、自分から去っていった女を布団の中で想うことがあるのですから。

さらにキメになっているのが、「時はいつも日にも、親切な友達」という名フレーズ♪♪~♪

本当に「すぎていくきのうを物語にかえる」という、素晴らしい力があるんですねぇ~♪

ということで、ユーミンの歌は、何を表現しても、実に「せつない」世界があると思います。それは男にも確実に感じることの出来るものというか、少なからず男の心の中にある少女趣味を、くすぐるものかもしれません。それをユーミンは、最高の職人技で綴っていた天才だったと思います。

またユーミンの作る曲から個人的に感じる技法というか、詩の中の言葉の発音がひとつに、音符がひとつ、ということがあります。

つまり「あ・ま・お・と・に・き・づ・い・て~」という風に、発音と曲メロがシンプルに結びついていますから、所謂「字余り」のフレージングは他のユーミンの楽曲同様、極力使われていないのです。

これはユーミンの失礼ながらヘタウマの歌唱力と無縁ではなく、コブシを使わない歌い方が優先されるところに、その味わいがあるんじゃないでしょうか。逆に言えば、そういう作りの歌であればこそ、コブシも必要無いということかもしれません。

そうした特徴も、ユーミンの新しさだったような気がします。

最後になりましたが、当然ながらキャラメルママによるバックの演奏は素晴らしいかぎりですし、妙に懐かしくてポップなコーラスは、最初に聴いた瞬間から実に印象的だったんですが、それは山下達郎や大貫妙子がやっていた、シュガーベイブと名乗るバンドの面々という新たな出会いが、このシングル盤だったというわけです。

コメント
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