OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ヤードバーズの最期の名盤

2009-12-26 14:43:29 | Rock

Little Games / The Yardbirds (Epic)

お若い皆様には想像もつきかねる事かもしれませんが、1970年代の我国ではヤードバーズのレコードを聴くことが非常に困難な時期がありました。

その原因はもちろん、音源の権利と契約の複雑な事情によるものですが、それとは逆にヤードバーズと言えば、エリック・クラプトン、ジェフ・ペック、そしてジミー・ペイジという所謂「ブリティッシュロックの三大ギタリスト」が順次在籍した偉大な伝説に彩られたバンドという持ち上げ方が、我国の音楽マスコミでは特に顕著でしたから、当時はほとんどまともに聴けなかったオリジナル音源を収録したLPが、ますます法外に値上がりしていたのです。もちろん散発的に発売されていたシングル盤も、尚更でした。

まあ、このあたりはその頃、ロックの廃盤を扱う店そのものが少なかった所為もあるんですが、それゆえに中古盤のセール大会でヤードバーズのオリジナル音源アルバムが出るという情報が、その催しの目玉として宣伝される騒ぎもあったほどです。

さて、本日ご紹介は、そうした人気のヤードバーズが末期に残したオリジナル音源によるアルバムの1枚ですが、なんとこの体裁によるリアルタイムの発売はアメリカ優先だったという事情が、尚更に伝説と幻想を強くしていた罪作り!?!

そこにはマネージメントの縺れとか、バンド内部のゴタゴタがあったと言われていますが、当時のメンバーはキース・レルフ(vo,hca)、ジミー・ペイジ(g)、クレス・ドレジャ(b,g)、ジム・マッカーティ(ds,vo) という4人組になっており、1967年春頃から制作が開始され、完成したのが、このアルバムでした。

 A-1 Little Games
 A-2 Smile On Me
 A-3 White Summer
 A-4 Thnker, Tailor, Soldier
 A-5 Glimpses
 B-1 Drinking Muddy Water
 B-2 No Excess Baggage
 B-3 Stealing Stealing
 B-4 Only The Black Rose
 B-5 Little Soldier Boy

ところが同じセッションから作られた幾枚かの先行シングルが、いずれも本国イギリスでは不発でしたから、それまで契約のあったEMIはイギリスでの発売を見送り、そこで何とか実績のあったアメリカのエピックからオリジナル仕様で発売されたという経緯は、その後の諸々に影響しています。

ちなみに当時のプロデューサーは敏腕のミッキー・モストでしたが、ヤードバーズの前任ギタリストのジェフ・ペックを引き抜く形で新プロジェクトを立ち上げていた因縁もあり、またグループ内部の人間関係も悪化していたと言われていますから、スタジオでもライプの現場でも雰囲気は決して良好ではなかったそうです。しかし、このアルバムに収録の各トラックからは、それゆえの緊張感とか結果オーライのハイブリットな感覚が上手く表出されていて、なかなかに聴き応えがあります。

まずA面初っ端には英国トラッドとサイケデリックロックをハードに化学融合させたような「Little Games」がすんなりと置かれ、続く正調ブルースロックの「Smile On Me」ではヤードバーズのイメージどおりの演奏が展開され、いずれもジミー・ペイジの本格的なロックギターが冴えまくり♪♪~♪ しかも随所にインドや中近東系のムードがミックスされた裏ワザがシブイところです。

こうしてついにやってしまうのが、「White Summer」における東洋趣味丸出しのインストパートの潔さ! ジミー・ペイジのアコースティックギターからは、なんとなくスティーヴン・スティルスやディヴィッド・クロスビーの十八番を連想させられますが、打楽器はインドがモロですし、これはこれで当時の流行最先端だったサイケデリックのひとつの側面を見事に表現していると思います。

まあ、これは当時を体験した者だけの独善かもしれませんが、実際、不思議な気持良さがあるんですねぇ~♪

さらに痛快ロックな「Thnker, Tailor, Soldier」から幻想サイケデリックな「Glimpses」へと続く流れもまた、1960年代ロック最良の瞬間を記録していると思うばかりです。特に「Glimpses」は様々な効果音やテープ操作、シタールような響きやハードエッジなギター、倦怠メロディのコーラスにドロ~ンとしたベースの存在感がヤミツキになるほどです。

う~ん、何度聴いても、このA面の流れは、たまりませんねぇ~~♪

そしてB面にレコードをひっくり返せば、いきなり始まるブルースロックの「Drinking Muddy Water」が、当然ながら本場アメリカはシカゴの雰囲気を作り直し、イギリス風に軽く仕上げた味わいが素敵です。正直、初めて聴いた時は、もう少しヘヴィなムードも欲しかったんですが、この軽さというか、些か物足りないあたりが、当時のヤードバーズの魅力じゃないでしょうか。

その意味では続く「No Excess Baggage」がハードなフォークロックという趣になっているのが、大正解! ジミー・ペイジのギターはエッジが鋭く、ベースのドライヴ感やドラムスのヤケッパチな雰囲気が如何にもロックです。

さらにラヴィン・スプーフルみたいな「Stealing Stealing」やアシッドフォークな「Only The Black Rose」は、明らかに当時の流行に迎合したものかもしれませんが、後に知ったところによれば、ハードになるばかりのバンドの姿勢に反発を感じていたキース・レルフとジム・マッカーティの主張が通った演奏かもしれません。

ご存じのように、ヤードバーズが崩壊したのは、この2人が揃って脱退したからですし、その後の活動を知ってしまえば納得する他はありませんが、それにしてもオーラスに置かれた英国トラッドが濃厚な歌と演奏は、なんだかなぁ……。一応は立派なロックなんですがねぇ。

ということで、とっちらかった印象も強い内容ではありますが、そこは伝説のヤードバーズ! その後の「鉛の飛行船」へと発展する様々な要素も強く感じられますし、これが制作発表された1967年当時のロック最先端が、間違い無く楽しめると思います。

またリアルタイムのイギリスや我国で発売されなかったのは、犯罪といって過言ではないでしょう。入手に纏わる苦労の諸々を実体験された皆様も大勢いらっしゃるはずです。

で、サイケおやじも当然ながら、これを当時は聴くことが出来ず、しかし存在を知ってからは、ますます主体的に聴きたいと願うようになりました。そして時が流れた1974年、ある幸運からアメリカに行くことが出来た私は、現地の中古盤屋で普通に置かれているこのアルバムを発見し、速攻でゲットしてきたわけですが、値段も全く他の商品と大差が無かったのですから、アメリカって本当に凄いなぁ~、と心底、思いましたですね。

さらにその後の発売状況としては、確か1985年頃にジャケット違いのイギリス盤が登場し、CD時代となってからは1991年頃だったでしょうか、アルバム収録の全曲に加えて関連音源をプラスした拡張版が出ています。

ただし、特にCDに顕著なんですが、オリジナルのアナログバージョンとは明らかに異なるミックスが散見され、またリマスターによって音の雰囲気そのものが変わってしまったのは、賛否両論でしょう。

しかしCDであったとしても、一度は楽しんで下さいませ。おそらくは後悔しないと思います。当然ながらセッションに助っ人参加した名人プレイヤー達を推測するのも、また面白いはずです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする