OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マジに聴きたいドアーズ

2009-12-01 11:03:44 | Rock

Hello, I Love You / The Doors (Elektra / 日本ビクター)

ロック史に強烈な足跡を残しながら、一部では「漫画バンド」とさえ言われるドアーズは、おそらくこの曲あたりが、その一因かもしれません。

チャート的には1968年夏にトップを獲得した大ヒットなんですが、聴けば納得というか、実はキンクスの「All Day And All Of The Night」をモロパクリしたリフと曲メロが、いやはやなんとも……。いや、納得出来ない、これは盗作ですよねぇ。

ただし、こういうものが本家キンクスを差し置いて、世界中で大ヒットするところに、リアルタイムでのドアーズの破壊力があったのでしょう。

告白すれば、当時のサイケおやじはキンクスの「All Day And All Of The Night」を聴いたことがなかったので、素直にドアーズの「Hello, I Love You」はカッコイイ! なんて思っていたのですが、このあたりにはアメリカや日本で、キンクスのレコードが一時的に販売されていなかった事情もあるんじゃないでしょうか。

それとドアーズそのものが、デビューアルバムの「ハートに火をつけて / The Doors」、それに続く2作目の「まぼろしの世界 / Strange Days」という、まさに偉大な傑作を連発したがゆえに、失礼ながらネタ切れになっていたのかもしれません。

また後に知ったことですが、ドアーズのメンバー達がキンクスのファンだったというあたりも、なかなか……。

まあ、それはそれとして、このシングル曲を含む3枚目のアルバム「太陽を待ちながら / Waiting For The Sun」を聴いてみると、前2作に聴かれたエキセントリックでジャズっぽいサイケデリックサウンドよりも、相当にポップで美しいメロデイの曲が増えているのですから、この「Hello, I Love You」だけを一概に責めるのも気が引けるといえば、贔屓の引き倒しでしょうか。

このあたりの問題については、さらに翌年の大ヒットになる「Touch Me」が、モータウンをモロパクリという部分にも適用されるわけですが、だからといって、ドアーズの楽曲がパクリや盗作ばかりということでは、決してありません。

メンバーはジム・モリソン(vo)、ロビー・クリーガー(g)、レイ・マンザレイク(key)、ジョン・デンズモア(ds.per) という4人組の知性と音楽性の高さは、決して「漫画」ではないでしょう。

そこにはジャズやクラシック、現代音楽や民族音楽にも通じている演奏能力の奥深さ、そしてジム・モリソンのシュールな詩人としての感性が確かにあって、それゆえにライプでは演劇的な構成や必要以上に観客を煽る演出も、素直に受け入れられたのかもしれません。

ただし、時として、それが行き過ぎた場合は暴動騒ぎも頻発していたそうですし、ジム・モリソンがステージでスポンを下げて云々という、1969年3月の所謂マイアミ事件が象徴するような意味不明な当局の抑圧に繋がるのですが……。

そしてドアーズの人気は一気に衰退し、ジム・モリソンの酒と悪いクスリによる悲報へと続く道は、1960年代ロックのある部分を表しています。

その意味で「Hello, I Love You」は、客観的にドアーズを語る時、必ず引き合いに出されることも多いヒット曲なんですが、個人的には享楽的な洋楽のひとつとして楽しんでいるのでした。

コメント (4)
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