OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

初期のシカゴへ思い入れ

2009-12-30 13:32:14 | Rock

シカゴと23の誓い / Chicago (Columbia)

ブラスロックの王者というよりも、私の世代では2枚組の王者として屹立したのが、シカゴというグループでした。

ご存じのとおり、シカゴは1969年に正式レコードデビューした時から、完全にアルバム優先で政治的なメッセージも含んだ力強い歌と演奏をやっていたわけですが、同時にシングルカットされたヒット曲のインパクトも絶大な人気バンド!

ですから、どうしてもアルバムを聴きたいというのは人情なんですが、当時の我国の中高生でシカゴの2枚組LPが買えた者は、極僅かではなかっでしょうか。なにしろデビューから3作目までが何れも2枚組、さらに4作目にあたるライプ盤が驚異の4枚組だったのですから、目の前は真っ暗でした。それも1969年から1971年にかけての短期間だったんですよ!?!

で、本日ご紹介はシカゴのセカンドアルバムとして1970年に発売され、忽ち世界中で大ベストセラーとなった初期の傑作なんですが、それは諸外国ではLP2枚組であっても、1枚物とそれほど大差の無い価格で販売されていたという事実を知ったのは、かなり後の事でした。

そしてリアルタイムでは決して買うことの出来なかった、この人気盤を私がゲットしたのも、発売から2年後に開催された某デパートでの輸入盤セールだったのです。

 A-1 Movin' In
 A-2 The Road
 A-3 Pome The People
 A-4 In The Country
 B-1 Wake Up Sunshine
 <Baliet For A Girl In Buchannon>
 B-2 Make Me Smile / ぼくらに微笑みを
 B-3 So Much To Say, So Much To Give
 B-4 Anxiety's Moment
 B-5 West Virginia Fantasies
 B-6 Colour My World / ぼくらの世界をバラ色に
 B-7 To Be Free
 B-8 Now More Than Ever
 C-1 Fancy Colours
 C-2 25 Or 6 To 4 / 長い夜
 C-3 Prelude
 C-4 A.M. Mourning
 C-5 P.M. Mourning
 C-6 Memories Of Love
 <It Better End Soon>
 D-1 1st Movement
 D-2 2nd Movement
 D-3 3rd Movenent
 D-4 4th Movement
 D-5 Where Do We Go From Here

上記の収録演目は邦題どおり、23のパートに分かれていますが、実はLP片面毎の組曲形式であることは、これも記載クレジットから推察出来ると思います。

ですからシングルカットされ、大ヒットを記録した「ぼくらに微笑みを」や「長い夜」も当然ながらシングルバージョンでは決定的な編集が施されていますから、初めてアルバムの流れの中で聴くそれらの楽曲に対する違和感を払拭出来ないものが、私の世代にはあるんじゃないでしょうか。

しかし、そうした功罪は確かに存在するものの、アルバム全体としての完成度と密度は相当なもので、ジャズやR&Bに加えてクラシックや現代音楽のスパイスも効かせた秀逸な曲作りとアレンジが、見事に纏まった歌と演奏で楽しめるのです。

ただし率直に言えば、例えばソウルフルなボーカルでスタートするA面初っ端の「Movin' In」では、中間部の4ビートによるパートが学生バンドっぽかったり、また今となったは些か古くなってしまったアレンジや意識過剰の歌詞が全篇にありますから、相当に感情移入しなければ聴いていられないところが確かにあります。

特に歌詞の内容については、当時のアメリカでは深刻な感心事になっていたベトナム戦争の泥沼状態やロック革命の挫折と個人主義の台頭……、等々がしっかりと歌いこまれている、そうした情熱と意気込みが各トラックからひしひしと感じられ、ちょいと熱い気分にさせられるのも、また確かだと思います。

まあ、このあたりはリアルタイムからのリスナーだけの感傷かもしれませんが、特にD面で繰り広げられる組曲「It Better End Soon」は直球勝負の心情吐露として、当時のライプステージではそのまんまの曲順で演じられていたそうですから、さもありなん!

またB面の組曲「Baliet For A Girl In Buchannon」も同様で、これは1972年の日本公演から作られたライプ盤にも収録されていますから、バンドの意気込みも格段のものがあるのでしょう。

ちなみに初期のシカゴの楽曲には、我国で独自の大仰な邦題がつけられていましたが、例えば「ぽくらの何々」とか、やたらに連帯意識を求めるような部分が、今となっては賛否両論かもしれませんねぇ。ただし、それが時代の気分でもありました。

そして繰り広げられる演奏の密度の高さは、明らかに前作のデビューアルバムを凌いでいるのは間違いなく、テリー・キャス(vo,g)、ロバート・ラム(vo,key)、ピーター・セテラ(vo,b)、ダニー・セラフィン(ds)、リー・ロクネイン(tp,vo)、ジェームス・パンコウ(tb)、ウォルター・パラゼイダー(sax,fl,cl) という7人組の人気は沸騰したのです。

それとバンド名なんですが、デビュー当時は「シカゴ・トランジット・オーソリティ」と名乗っていたところ、同名のバス会社からのクレームがあったとかで、このアルバムからは正式に「シカゴ」に統一され、例の印象的なロゴがジャケットを飾っていますが、それじゃ味気ないと思ったのか否か、日本盤が「シカゴと23の誓い」という邦題になったのは味わい深いところでしょう。尤も現在は「シカゴⅡ」と呼ばれているらしいですが……。

まあ、それはそれとして、中身の熱気はリアルタイムの時代を痛烈に感じさせてくれるものです。特にテリー・キャスのソウルフルなボーカルと熱血のギター、ロバート・ラムの青年の主張みたいな節回し、蠢き系のベースワークとハートウォームな歌唱が魅力のピーター・セテラという個性の確立が、以降のシカゴの更なる飛躍に繋がる萌芽になっています。

また個人的にはジェームス・パンコウの作編曲とトロンボーン奏者としての実力も大好きですねぇ~♪

あと、忘れてならないのは既に述べたようにシングルバージョンとの比較対照という部分で、例えば「ぼくらに微笑みを」では、アルバムB面の組曲「Baliet For A Girl In Buchannon」が実に上手く利用再編集されていることに気がつかれると思いますし、幾つかの異なる編集バージョンが世界各国で実在している事にも要注意です。

もちろん、そうした事情は「長い夜」も同様で、シングルバージョンの編集ポイントが世界各国のシングル盤で異なっているのは周知の事実ながら、個人的には日本盤シングルが一番に耳に馴染んでいる所為もありますが、秀逸だと思います。

ということで、既に述べたように、時代を感じさせてくれ分だけ、今となっては面映ゆく、ヌルイ部分も気になる作品なんですが、この「青さ」が貴重だと思うのは私だけでしょうか。すっかり中年者となった自分には、AORの人気バンドと化したシカゴが正直、物足りなく、その意味では現在の懐メロ路線の方が好きなほどですが、やはり1970年代に発表された熱い作品群には血が騒ぎます。

また同時に、2枚組LPという高価なシロモノが自分の私有となった喜びも別格!

なんと申しましょうか、名盤には「思い入れ」も必要なんでしょうね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする