OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

忘れられないホリーズの魅力

2009-12-11 11:05:45 | Hollies

I'm Alive c/w You Know He Did / The Hollies (Parlophone / 東芝)

誰もがビートルズを追っていた1960年代、その味わいの最も近いところで頑張ったのがホリーズだったと思います。

もちろん所属レコード会社が同じで、しかも当時のホリーズを担当していたプロデューサーがジョージ・マーティンとの関係も深いロン・リチャーズだったという事実もあるわけですが、そんなことを全く知らなかった少年時代のサイケおやじは、ラジオから流れてくるホリーズの歌と演奏に強くビートルズを感じていました。

ですから代表的なヒット曲「Bus Stop」以外にも、ホリーズのシングル盤をポチポチ買っていたのですが、本日ご紹介のシングル盤も、そのひとつとして大切にしている1枚です。

まずA面収録の「I'm Alive」は、クリント・パラード・ジュニアという職業作家が書いた、これぞ疑似ビートルズの決定版ともいうべき名曲で、サビのメロディ展開、それをジョン・レノン味で歌うアラン・クラークの節回しが、もう最高です。

またトニー・ヒックスのギターがジョージ・ハリスン風なのは言わずもがな、意図的に薄めにしたと思われるコーラスワークも憎めません。

しかしイントロからの力強いリズムアレンジとキャッチーなコーラスは、グッとグハム・ナッシュというか、ホリーズが独自の色合いが打ち出されているのですから、1965年初夏にはイギリスのチャートでは初めての首位を獲得した大ヒットになり、もちろん我国を含む世界中の洋楽ファンを狂喜させています。

そしてB面の「You Know He Did」が、これまた侮れず、まさにビートルズのビートバンドとしての本質を煮詰めたような荒っぽいスタイルを、ホリーズならではの洗練されたスマートな感覚で演じきった、ある意味ではパロディかもしれませんが、決して笑えない密度の濃さがあるのです。ちなみに、こちらはホリーズのメンバー共作によるオリジナルというのも、意味深でしょうか。

とにかく本国イギリスはもちろん、また世界中でも、ビートルズを一番自分達のものに転化していたのは、グラハム・ナッシュが在籍したいた頃のホリーズだったと、私は強く思っています。実際、イギリスのヒットチャートではストーンズよりも受け入れられていた事実を忘れてはならないでしょう。

ただしビートルズとストーンズは、完全に別物の魅力というのが当然ですから、一概に比較するのは愚の骨頂ですね。失礼しました。

ということで、ホリーズはやっぱり素敵♪♪~♪

もしかしたらフォークロックの元祖と言われるザ・バーズも、ホリーズを聴いてコピーすることから出発したのかもしれないとまで、私は妄想するほどですし、そのメンバーだったディヴィッド・クロスビーが後にグラハム・ナッシュと結託した事実もムベなるかな!?!

結局、ビートルズよりもザ・バーズが最初は好きになり、またホリーズも大好きだった自分の嗜好は、何かの共通的があるんですねぇ。

あらためて、それに気がついたというのが、本日の結論なのでした。

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永遠のマイケル・ブルームフィールド

2009-12-10 11:13:15 | Rock

Live At Bill Graham's Fillmore West (Columbia)

自分にとってのギターヒーローは大勢いるんですが、中でもマイケル・ブルームフィールドは特別の存在で、このアルバムは、それこそ死ぬほど聴いてもシビレが止まらないブルースロックの私的名盤!

マイケル・ブルームフィールドの最高傑作!

本当にそう思っています。

と、言っても、中身は決してマイケル・ブルームフィールドのリーダー盤ではなく、サンフランシスコにあったロックの聖地のひとつ、フィルモア・ウエストでのブルースロック大会を記録したライプ作品で、それゆえに参加メンバーの自然体の熱気がムンムンと漂う、今の若い皆様には、もしかしたら鬱陶しいアルバムかもしれません。

参加メンバーはマイケル・ブルームフィールド(g,vo)、ニック・グレイヴナイツ(vo)、マーク・ナフタリン(p)、タジ・マハール(vo,hmc)、ジェシ・エド・デイビス(g)、ジョン・カーン(b)、ボブ・ジョーンズ(ds) が中心となり、曲によってはホーンセクションやキーボード&打楽器奏者も加わった密度の高い演奏を楽しめますが、やはりマイケル・ブルームフィールドのギターが全篇で冴えまくりですよっ!

 A-1 It's Takes Time
 A-2 Oh Mama
 A-3 Love Got Me
 A-4 Blues On A Westside
 B-1 One More Mile To go
 B-2 It's About Time
 B-3 Carmelita Skiffle

う~ん、しつっこく繰り返しますが、何度聴いても、マイケル・ブルームフィールドのギターが絶品の極致ですねぇ~~♪

あぁ、ブル~ス! ブルースロックの神髄!

まず冒頭からシカゴブルースのロック的展開という、シャッフルのノリが実に痛快な「It's Takes Time」に血沸き肉踊りますが、最初の失敗スタートをそのまんま残した編集がニクイばかりで、それがアルバム全体のリラックスしたムードを高めます。そして鋭く、毒っ気のあるフレーズを連発するマイケル・ブルームフィールドのギターをさらに煽るホーン隊の楽しさも、素晴らしく良いですねぇ~♪ もちろん必要以上に熱くならないボーカルや冷静沈着なリズム隊の存在があってこそ、エキセントリック寸前にまで心情吐露していくギターソロが印象的なのは言わずもがな、独得のタメとツッコミのブルースギターが堪能出来る至福の瞬間には、グッと惹きつけられます。

ご存じのようにマイケル・ブルームフィールドは白人ブルースというか、ブルースロックの代表選手として歴史に名を残したポール・バターフィールドのブルースバンドに参加し、1965年頃から一躍有名になるのですが、その後もボブ・ディランとのセッション、あるいは自身が結成に大きく関与した新バンドのエレクトリック・フラッグ、そしてアル・クーパーとの一連のスーパーセッション等々で凄いギターを聞かせながらも、実は精神的に脆弱だったのでしょうか、病的な障害や悪いクスリによる諸々があって、その活動は散発的……。

ですから、誰もが認める凄いギターを徹頭徹尾に記録したレコードは、後の発掘音源を除けば、リアルタイムでは必ずしも多くありませんでしたから、1969年に発売されたこのアルバムは忽ち人気盤になったのです。

もちろん我国でも「永遠のフィルモア・ウェスト」なる邦題で昭和45(1970)年に発売され、これはちょうどその頃に営業休止となった同劇場に因んだものでしょうが、同時に幻の彼方へ行ってしまいそうな天才ギタリストの存在をもイメージさせられる部分が私には強くあって、尚更に印象的でした。

ただし、例によって小遣いの乏しかったサイケおやじは、その日本盤LPを買うことが出来ず、友人から借りた後のテープコピーで楽しんでいました。そして後に輸入盤が安くなった頃、迷わずにゲットしたのが、本日掲載のアメリカ盤というわけです。

ついでに告白しておくと、私がマイケル・ブルームフィールドという名前に敏感になったのは、ゴールデン・カップスのエディ藩が好きなギタリストに挙げていたからですし、前述したアル・クーパーのスーパー・セッションに深く感動させらたからです。

そして、このアルバムで完全に虜にさせられ、なによりもマイケル・ブルームフィールドというギタリストが聞かせてくれる、そのエレキギターの神秘的な音色に魅了されました。

これはジャケ写からも一目瞭然、レスポールを使っているわけですが、それまでの私の拙い知識では、例えばエリック・クラプトンで有名なように、レスポールにはマーシャルのアンプというのが、ブルースロックの定番だと思い込んでいたのに、全然、音色が異なり、同時にフレーズの味わいまでも違って感じられたのは、とても不思議な、そして素敵な世界でした。

後に判明したところによれば、マイケル・ブルームフィールドはフェンダーのアンプを使っていたらしく、当然ながら真空管でしょうから、音色の違いもムペなるかな! しかし、それにしても、ディープなフィーリングは圧巻としか言えません。

このアルバムの中では、スローな「Blues On A Westside」や「One More Mile To go」になると、それが一段と鮮明になり、音量までも自在にコントロールしていく神業のピッキングには震えがくるほどです。もちろんエロいブルース魂とか、涙が滲む忍び泣きのフレーズ、また鬼気迫るグイノリ感も満点♪♪~♪

このあたりは同様にブルースへと深く帰依しているエリック・クラプトンとは似て非なる個性だと思いますし、同系には初期のフリートウッド・マックで活躍したピーター・グリーンという私の大好きなギタリストもいるんですが、どちらかと言えばロマンチックなフィーリングを秘めたピーター・グリーンに対し、マイケル・ブルームフィールドは良い意味での思いつめた情感が強く表出されているのかもしれません。

ちなみにピーター・グリーンもマイケル・ブルームフィールドも、その全盛期に活動を休止したりの過去は似ていますが、残念ながらマイケル・ブルームフィールドは悪いクスリで早世したのが、哀しいところ……。

それゆえに、このアルバムで聞かれる溌剌とした部分、例えば前述した「It's Takes Time」と同じ味わいのインスト演奏「Carmelita Skiffle」での、しぶとい熱気♪♪~♪ あるいは自らが歌った歌謡ブルース「Oh Mama」におけるイナタイ雰囲気♪♪~♪

その全てが、せつなくなるほどに眩しいです。

また参加した他のメンバーも、当然ながら素晴らしい熱演で、特にホーンセクションは本格的なジャズフィーリングとテクニックを兼ね備えた名手揃いですから、アンサンブルだけでなく、アドリブソロも十分にジャズ者を満足させるでしょう。

それとゴスペルソウルな「Love Got Me」とか、ファンキーな「It's About Time」で楽しめるR&Bとロックの融合は、如何にも当時という懐かしで、今は素直に楽しむことが出来ると思います。

最後になりましたが、私がレスポールというエレキギターに強く惹かれたのは、このアルバムの存在がひとつの要因です。しかし当時は本物のレスポールが、日本国内では高嶺の花どころから、ほとんど幻の逸品でした。そして国産のコピー物が、例えばトーカイとかグレコとか、いろいろと出回っていたという事情を、あらためて書いておきます。

あぁ、それにしても、これを書きながら聴いていても、やっぱりゾクゾクするアルバムですねっ! 皆様も、ぜひっ、お楽しみ下さいませ。

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ジャガーズの哀愁ロックも好き

2009-12-09 09:39:55 | 日本のロック

君に会いたい / ザ・ジャガーズ (フィリップス)

GSのヒット曲は、もちろんロックを意識していますから、激しいビートと狂熱のリズムは欠かせませんが、しかし一方、あくまでも日本のロックという観点から、著しい歌謡曲モードと哀愁路線も捨て難い魅力がありました。

例えば本日ご紹介の「君に会いたい」はジャガーズのデビューヒットにして、お若い皆様も一度は聞いたことがあるに違いない、エバーグリーンの胸キュンメロディ、そしてせつない歌詞がグッと胸に迫って来る名曲です。

演じているジャガーズは宮ユキオ(ds) をリーダーに、岡本信(vo)、沖津ひさゆき(g)、宮崎こういち(g)、佐藤安治(key)、森田巳木夫(b) という6人組ですが、実は昭和42(1967)年のデビュー以前から別なバンド名でエレキインストをやっていたキャリアがあったようです。

このあたりは、全く個人的な印象ですが、ジャガーズを最初に見たとき、その妙に玄人っぽい雰囲気や垢ぬけたフィーリングが、明らかに同時代の新人グループの中では際立っていた事と無関係ではないと思います。

というか、所謂プレイボーイっぽいムードが感じられたんですねぇ。

しかし、歌っていた「君に会いたい」は、青春のやるせない恋心と悔悟の情……。

 若さゆえ~♪ 苦~しみ~♪
 若さゆえ~♪ 悩み~♪
 心の~、いたみに~♪
 今宵~も~ ひとり泣くぅ~♪

というような、ある意味ではネクラな歌なんですが、それを彩る曲メロが、これまた哀愁どっぷりの素敵な旋律ということで、これがヒットしないわけがありません。

ただし告白すると、リアルタイムのサイケおやじは、歌詞どおりの若さゆえ、インパクトがイマイチで、同じ頃に同じレコード会社からデビューしていたカーナビーツの方が好きでした。

それが齢を重ねるうちに、今では「君に会いたい」を自然に歌えるほど、これは大好きな歌になっているのですから、時の流れは偉大です。そしてもちろん、おやじバンドでもやることになって、景気の良い曲の合間に哀愁路線♪♪~♪

ちなみにこのシングル盤で楽しめるジャガーズの歌と演奏は、ラガロックっぽいリードギターや口笛系の裏メロ、また薄いコーラスとサビの力強さがジャストミートの傑作プロデュースが冴えまくりですから、まずはイントロのギターとオルガンのコンビネーションをがっちり練習しないと、後が続かなくなるでしょうね。

また終盤のクライマックスで聞かれる英語の歌詞フレーズと演奏のノリは、完全にロックしていますよねぇ~♪ 本当に侮れません。

う~ん、気合いが入ってきました!

ということで、やっぱりGS期の歌と演奏は聴いても、やっても楽しいですね♪♪~♪

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バン・バン・バンで、やりぬこう!

2009-12-08 09:08:23 | 日本のロック

バン・バン・バン / ザ・スパイダース (フィリップス)

先週末から練習に入ったおやじバンドは結局、ノリの良い曲がモットーですから、まずはスパイダースの「バン・バン・バン」から始めました。

というか、以前にもやっていたので、肩慣らしの意味もあったんですが、弾いているこちらが楽しくなるギターのリフ、ドンツカのラテンビートも入ったリズムパターン、そしてグルーヴィに歌える歌詞が、実に良いですよねぇ~♪

ご存じのような、かまやつひろしが書いた和製ロックの傑作曲は、その元ネタがイギリスのビートバンドとして今でも人気が高いマインド・ベインダーズのシングル曲「Love Is Good」というエピソードは有名とはいえ、スパイダースの軽快にして強いピートを強調した演奏は、所謂ガレージパンクの味わいも鋭いところです。

実際、その本家とスパイダースを聞き比べても、明らかに私は後者が好きですねぇ~♪

また、そのスパイダースのバージョンにしても、初出のオリジナルテイクは昭和42(1967)年に発売された4枚目のアルバム「風が泣いている」に収録された「バン・バン」なんですが、その痛快さゆえに映画やテレビ出演時には必須の演目となって、B面収録ながら、ついに新バージョンを録り直し、同年秋に発売されたのが、本日ご紹介のシングル盤というわけです。

もちろん、両バージョンのお好みは十人十色だと思うのですが、個人的にはシングルバージョンの方が僅かにノリが良くて、好きです。

最初のリードボーカルは堺正章、そして間奏の後には、かまやつひろしが歌うというスタイルも最高で、実際のライプ演奏ではモンキーダンスやギター合戦が披露されるという、まさにR&Rの楽しさがたっぶり♪♪~♪

ですから、おやじバンドでも、そのあたりをやりたいですねぇ~。

さえない顔して、ババン、バ~ン♪

というような我国の総理大臣に捧げたいわけですが……。

あいつにゃ、とっても、かなわな~いぃ♪

というパートになると、闇将軍や某女党首の顔が浮かんだり……。

いやはや、なんともの結果にならないよう、とにかく享楽的に演じたいものです。

こんな世相にはジャストミートの歌が、バン・バン・バン!

ちなみにA面に収録の「いつまでもどこまでも」にしても、その諦観が滲む永遠の愛を歌った内容が、これまた現状に即した名曲名唱ですよねぇ~♪ これもやってみましょうか。

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デスモンド、ブルーベック、そしてマリガンの復刻映像

2009-12-07 12:22:22 | Jazz

Live In Berlin 1972
    / Gerry Mulligan, Paul Desmond & The Dave Brubeck Trio (Standing Oh!vation = DVD)

本日も最近出ました発掘DVDのご紹介ですが、これはパッケージを見ただけでグッと惹きつけられましたですねぇ~~♪ なにしろデイブ・ブルーベックを中心にポール・デスモンドとジェリー・マリガンですよっ!

ご存じのように、ブルーベック&デスモンドと言えば、1950年代中頃から1967年頃まで、世界最高の人気を集めたモダンジャズのトップバンドをやっていましたし、その2人が別れて後はジェリー・マリガンを準レギュラーとしたデイブ・ブルーベックの活動が、やはり同じ味わいを維持しつつ、さらに時代の要求に呼応した新しい展開を繰り広げていた時期が1970年代初頭までの流れでした。

もちろんその過程では、デスモンド&マリガンによるレコーディングも名作セッションとして残されていたのですから、実は1972年秋の欧州巡業から作られた再会セッションのライプアルバム「We'er All Together For The First Time (Atlantic)」が人気盤となったのも当然が必然!

そしてこのDVDは、その拡大映像版という演奏が、たっぷりと楽しめます♪♪~♪

収録は1972年11月4日のベルリン、メンバーはポール・デスモンド(as)、ジェリー・マリガン(bs)、デイブ・ブルーベック(p)、ジャック・シックス(b)、アラン・ドウソン(ds) という豪華な面々が、真摯で熱いプレイを繰り広げています。

しかも画質はAランクのカラー映像ですし、モノラルの音声もなかなかバランスが良好ですから、トータル約93分という長尺もアッという間の夢見心地でしょう。

01 Blues For Newport
 ブルースとはいえ、デイブ・ブルーベックの作曲ですから、そのテーマメロディは硬質に構築され、それゆえに各人のアドリブも油断がなりません。
 まず先発のジェリー・マリガンが椅子に腰かけながらも、あの独得のタイム感覚とドライブしまくったフレーズの中に歌心が満載のバリトンサックスを披露すれば、続くポール・デスモンドは何時に変わらぬ浮遊感たっぶりのクール節を颯爽と吹いてくれます♪♪~♪
 あぁ、この展開だけで幸せになりますねぇ~♪
 ちなみにステージの照明もカメラワークも、またメンバー各々の衣装も、全てが如何にも1970年代初頭のムードなんですが、ポール・デスモンドだけがネクタイ姿というのも頑固な姿勢というか、全く観てのお楽しみとはいえ、ちょっとキメのフレーズを吹く時に体を斜に構えるあたりが最高にカッコイイですよ。
 そしてデイブ・ブルーベックが、これまた頑固というか、最初はグルーヴィなノリを聞かせていながら、中盤からは唯我独尊の怖い変態ビートのアドリブを展開し、最終盤に再び絶妙の4ビートへ戻っていくところは流石です。また、それに呼応してリズムとビートのパターンを変えていくドラムスとベースも名手の証でしょうねぇ~♪
 演奏はこの後、ジャック・シックスのベースソロを経てアラン・ドウソウのドラムスと対決するフロント陣という見せ場に入りますが、決して無暗に熱くならず、適度にリラックスしたアラン・ドウソウの余裕も見事だと思います。

02 All The Things You Are
 モダンジャズでは定番演目のスタンダードですから、良く知られた曲メロが名人達によってどのような歌心に変換させられるか、その点だけでも嬉しくなるはずです。
 実際、テーマアンサンブルのパートからポール・デスモンドはジェントルにスイングし、ジェリー・マリガンは歌心優先主義を貫いていますから、これはアドリブパートに入っても継続されるのが当然の流れということで、全てが「歌」の大名演♪♪~♪
 しかもバックのリズム隊が、特にアラン・ドウソンのライトタッチのドラミングに顕著なように、様々なパターンを細かく演じることによって醸し出される新しい感覚なんですねぇ~♪ そのあたりを百も承知で伴奏していくデイブ・ブルーベックのニンマリ顔も印象的ですし、疑似対位法を用いたような得意技を出しまくるピアノの固いタッチも良い感じなのでした。

03 For All We Know
 十八番を演じるポール・デスモンドの独演会♪♪~♪
 当然ながら、あのクールなアルトサックの音色で演じられる浮遊感満点の曲メロ変奏からアドリブの桃源郷へと、本当に酔わされてしまいますよ♪♪~♪
 繊細なリズム隊の伴奏も実に上手いと思います。

04 Line For Lyons
 ジェリー・マリガンの代表曲ともいうべき、メロデイの魔法とウキウキの気分に満ちたテーマが私は昔っから大好きなんですが、それがここではポール・デスモンドを主役に据えて披露されるんですから、たまりません。流麗なアドリブフレーズに絡んでいくジェリー・マリガンの控えめな至芸も最高ですし、続く自身のアドリブにしても、全くツボを掴みきった名演になっています。
 それと地味ながら芯の強いビートを送り出しているリズム隊も侮れません。
 さらに終盤の疑似対位法的なアンサンブルは、デイブ・ブルーベックのバンドの証として、嬉しくなってしまいますね♪♪~♪

05 Blessed Are The Poor
06 Mexican Jumping Bean

 この2曲はポール・デスモンドが抜け、ジェリー・マリガンとデイブ・ブルーベックが中心となった新しい感覚の演奏で、そこにはモードや民族音楽の味わいに加え、微妙なロックフィーリングさえ導入されているようです。
 実際、重々しくて暗い「Blessed Are The Poor」は如何にも当時の感性として、似て非なるものが我国のジャズ喫茶でも人気を集めたレコードが数多ありました。そして今となってはデイブ・ブルーベックの深淵な企みが理解出来たというか、全く「らしくない」ディープなところは貴重かと思います。
 一方、「Mexican Jumping Bean」はタイトルどおりに明るめな躍動曲なんですが、そのキモはモードですから、ジェリー・マリガンもついに椅子から立ち上がっての熱演を聞かせてくれます。これが、なかなか良いんですねぇ~♪ アラン・ドウソンが控えめながら、ついつい熱くなっていくドラミングが正直です。

07 Song Off
 そして再びポール・デスモンドが戻っての演奏は、如何にも白人らしいブルースのモダンジャズ的解釈! その典型が楽しめます。もちろん即興による、その場だけのインスピレーションが大切されているのは言わずもがな、ブルースという様式美を追及すると言うよりも、お約束のフレーズばっかり演じてくれるメンバーのサービス精神は、気恥ずかしくも嬉しいプレゼント♪♪~♪
 なんとなく白人ブルースロックにも似た快感なんですが、中でもデイブ・ブルーベックが腰を浮かせての大熱演には、思わずイェ~~~♪ なんて拍手喝采ですよ♪♪~♪
 また意図的にブリブリやってしまうジェリー・マリガンに対し、落ち着いた思わせぶりを演じるポール・デスモンドのクールな貫録が、実にカッコイイです。

08 Someday My Princ Will Come
 演目表記を見た瞬間から、これは楽しみにしていたトラックで、もちろんポール・デスモンドが在籍中のデイブ・ブルーベックのカルテットでも至高の名演が残されている人気曲♪♪~♪
 そして定石どおり、ピアノによるシンプルなテーマの提示から浮き立つようなポール・デスモンドのソフト&クールなアルトサックスがアドリブに入って行けば、そこは完全なるモダンジャズの桃源郷♪♪~♪ 手堅いジャック・シックスのベースワークとアラン・ドウソンの地味~なブラシが、逆に強い存在感になっているのも不思議ですが、妙に納得してしまいます。
 ちなみにジェリー・マリガンが当然の顔で休んでいるのは、ちょっと勿体無いような気もしますが、リユニオンであれば、正解かもしれませんね。
 その分だけデイブ・ブルーベックのピアノも冴えまくりなのでした。

09 These Foolish Things
 ジャック・シックスのペースを主役としたピアノトリオ演奏で、正直、個人的にはあまりグッとくるものはありませんが、まあ、いいか……。

10 Take Five
 そしてお待たせしました!
 もう、このメンツで、これが出なければ納まらないというモダンジャズでは畢生の大名曲が、極めて当時最前線のジャズフィーリングで演じられていますから、イントロのピアノが出た瞬間、客席からは盛大な拍手が沸き起こります。
 あぁ、それにしても、この素敵なメロディとビートは不滅だと思いますねぇ。もうテーマ部分だけで満足させられてしまうんですが、それゆえに幾つか残されている同曲のテイク&バージョンを聞いてみても、アドリブがテーマメロディを越えられないという宿命が、ここでも表出しています。
 しかしリズム隊ゆえでしょうか、幾分の新しい感覚の中では、歌心の可否が不明なポール・デスモンドの浮遊感表現が、それなりに気持良く、またジェリー・マリガンの些かネクラ気味のアプローチも、実に新鮮だと感じます。
 さらにデイブ・ブルーベックのピアノが、これまた曲者! 意図的に伴奏をしないパートがあったり、アドリブにおいては、これも恣意的な表現が新主流派っぽいベースとドラムスを伴っていることもあるのでしょうか、なかなか熱い興奮を呼び覚まします。
 現実的に言えば、こういう展開は賛否両論でしょうし、実は前述したアルバム「We'er All Together For The First Time (Atlantic)」にも、この演奏が少しばかり編集されて入っているのですが、やはり映像で接すると味わいか違うなぁ~、なんて思います。
 また、その意味でアラン・ドウソンのドラミングは、どうしてもデイヴ・ブルーベックのバンドではレギュラーだった天才のジョー・モレロと比較される運命にあるんですが、ここでのドラムソロは、アラン・ドウソンの面目躍如たる素晴らしさ! これだったら、演奏全体で、もっと叩きまくって欲しかった場面が多々あることを思えば、ニクイ限りですよっ!

11 Take The“A”Train
 オーラスはバンドテーマとも言うべき、大サービス演奏で、メンバー達が自ら楽しんでいる様子も微笑ましさに嬉しくなります。特にデイブ・ブルーベックのニンマリ顔は印象的♪♪~♪
 これがモダンジャズの楽しさだっ!
 という主張が見事なのでした。

ということで、とにかく画質は最高クラスに鮮やかですし、音声はモノラルながら、ドロップアウトも少ない良好な復刻です。

なによりも、こういうセッションが映像で楽しめるだけで、嬉しくなる皆様が大勢いらっしゃると推察しております。

演奏面ではアラン・ドウソンという比較的過小評価のドラマーが動いてる、それも貴重でしょう。大方の印象は新主流派っぽいハードバップのドラマーというところでしょうから、ここでの些か控えめなドラミングは物足りないかもしれませんが、それもここでは正解の仕事じゃないでしょうか。実際、この名手の小技の冴えが映像で確認出来るのは、もうひとつの楽しみだと思います。

もちろんポール・デスモンドという大スタアに接することが出来るのも高得点♪♪~♪

機会があれば、ぜひともお楽しみいただきとうございます。

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クール派ギタリスト三人衆の復刻映像

2009-12-06 12:00:06 | Jazz

Guitar Masters Live In Germany 1973 & 1980
                          / Jim Hall, Jimmy Raney & Attila Zoller (Jazz Vip = DVD)


これも先日、発見して即ゲットしてきたDVD♪♪~♪

タイトルどおり、白人ジャズギタリストの名手3人が存分に披露した至芸を収録していますが、結論から言うと、和みのある演奏ではありません。

しかしテレビ放送用に収録されたと思われる画質は最高のカラー映像ですし、もちろん音質も一部で微細なドロップアウトもありますが、総じてバランスが良い優良なブツでした。

そして中身は後述するふたつのパートに分かれています。

1980年10月10日、フランクフルトで収録
 01 Scherz
 02 A Common Nightmare

 まず最初のパートはジミー・レイニーとアッティラ・ゾラのデュオ演奏で、左にアッティラ・ゾラ、右にジミー・レイニーが定位したステレオ音声で約20分ほど、2曲が披露されますが、そこに明確な曲メロテーマはありません。つまり同じクール派ギタリスト同士の魂の交感ともいうべき即興的な展開になっているのです。
 極言すれば各々が好き勝手にコードやフレーズを弾いていながら、何時しかどちらかのギタリストが相手に合わせるような瞬間が出現し、またそれが自己満足的な演奏に戻っていく流れなんですねぇ。
 ですから曲名がつけられいますが、それは便宜的なものでしかありません。
 しかし、そこには何時か、どこかで聞いたことのあるスタンダードなメロディの断片が浮かんでは消えていくという至福がありますし、その過程で生み出されていく緊張感満点の意地の張り合いやフレーズとコードの応酬は、鳥肌と恐怖心さえ呼び覚ますほどです。
 う~ん、実は会場にはお客さんが入れ込まれているんですが、演奏が終わっても、呆気にとられた拍手しか……。
 またDVDで鑑賞しているこちらにしても、全然和めないですねぇ……。
 ただしギターを弾く様子というか、2人のクール派ギタリストが織りなす巧みの技の競演は、その指使いや音の選び方、和音構成の魔法、さらにピッキングの秘密等々が、鮮明な映像でじっくりと観察研究出来ますから、その奥の深さと凄みには、またまた鳥肌がっ!
 ちなみにジミー・レイニーは説明不要のクール派として、その流麗なギターワークは定評がありますが、アッティラ・ゾラも欧州をメインに活動している同系のギタリストとして、しぶとい人気がある名人ということで、その似て非なる個性を存分に楽しめるわけですが、時代的には2人とも既に老境でありながら、こんなに凄い老人がいる!?! というだけでも圧倒されると思います。

1973年9月14日、ハノーバーで収録
 03 My Romance (Hall - Zoller Duet)
 04 Eztension (Quartet)
 05 All Across The City (Jim Hall Solo)
 06 Ballad (Hall - Mitchell Duet)
 07 Free Mood (Trio)
 08 Blues In The Closet (Quartet)
 こちらのパートはジム・ホール(g)、アッティラ・ゾラ(g)、レッド・ミッチェル(b)、ダニエル・ユメール(ds) という、今では夢の顔合わせ♪♪~♪ ただし演目の後につけた注釈どおり、全てがカルテットの演奏ではないのが賛否両論でしょう。
 しかし中味の濃さは本当に凄く、まず有名スタンダードを素材に2人のギタリストが自己研鑽を披露する「My Romance」からして、震えがきます。特にジム・ホールは、一般的なイメージである「優しい歌心」なんて置き忘れたような鋭さで、クールなフレーズと熱いジャズ魂を徹頭徹尾、追及していると感じます。
 もちろんそれは相方のアッティラ・ゾラの音楽性に合わせた結果かもしれませんが、完全ソロギターによる「All Across The City」にしても、自作曲という以上の何か、憑かれたような情念がジワジワと漂ってきます。また、レッド・ミッチェルとの二人芝居的な「Ballad」に至っては、幽玄のメロディが空間を浮遊しながら、不思議な増殖を繰り返すような、ちょっと私の稚拙な筆では表現不可能な世界! これは皆様にも、ぜひとも接していただきたいところで、個人的には、このセットの中で、一番にジム・ホール的なイメージの強い、聴き易い演奏だと思います。
 しかしカルテットによる「Eztension」は、本当に激ヤバというか、1973年という時代を考慮しても、相当に進んでいた演奏で、今日ではパット・メセニーあたりがやったとしても、ここまでの密度は、ちょっと難しいかもしれません。しかもメンバー各々が、全くの自然体というところが、映像作品ならではの確認ポイント♪♪~♪ なんか、ここらあたりにも圧倒されるものが確かにありますよ。
 その意味ではオーラスの「Blues In The Closet」は題材がビバップの古典ですから、グイノリの楽しさを期待してしまうのですが、それを意図的にはぐらかしていく展開がニクイばかり! う~ん……。
 それとおそらくはジミー・レイニーとのセットでもそうでしたが、この映像集ではホスト役と思われるアッティラ・ゾラが、やはり時代的にも先鋭的な感覚を完全披露! 自分中心のトリオ演奏となった「Free Mood」では、ジプシーモードのクール派的な展開に絶妙のロックジャズ感覚も交えながら感度良好♪♪~♪
 ちなみに音声はモノラルですが、こちらも各楽器のバランスは問題ありません。

ということで、繰り返しますが、和みを期待して鑑賞するとハズレます。

しかしギタリストいう現代の魔法使いが、その奥義を出し惜しみせずに披露した素晴らしい時間が、全篇約81分間堪能出来るだけでも、私には至福でした。

惜しむらくは3人の合同演奏が無かった点で、これはタイトルからして誤解を招くところではありますが、正規発売としては初DVD化ということで、高得点の復刻だと思います。

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尖がりファンクな1973年のマイルス

2009-12-05 11:33:55 | Miles Davis

Miles Davis Vienna 1973 (Jazz Vip = DVD)

昨夜はおやじバンド再開に備えて楽器屋へ行ったついでにソフト屋も物色していたら、いろいろと衝撃的なブツを発見してきました。

その中で、まず本日ご紹介するのは、電化期のマイルス・デイビスが一番に尖がっていた1973年当時のライプ映像! これが物凄い悶絶演奏でした。

収録されたのは1973年11月3日のオーストリア巡業から、メンバーはマイルス・デイビス(tp,key)、デイブ・リーブマン(ss,ts,fl)、レジー・ルーカス(g)、ピート・コージー(g,per)、マイケル・ヘンダーソン(b)、アル・フォスター(ds)、ムトゥーメ(per) という7人編成のバンドで、これはもちろん同年6月に来日した時と同じメンツです。

 01 Turnaroundphrase
 02 Tune In
 03 Ife
 04 Right Off
 05 Funk
 06 Calypso Frelimo

収録演目は上記のようなチャプターが入っていますが、皆様がご存じのとおり、当時のマイルス・デイビスのバンド演奏は、特にライプの現場ではブッ通しの切れ目無しでしたから、ここでも約63分間の電撃ゴッタ煮ファンクが楽しめます。

正直に言えば、このバンドが1973年に来日した時にNHKがライプの会場からテレビ中継を行い、それに接した若き日のサイケおやじは、なんだか凄いことをやっているけど、ほとんど???の世界だったのです。

なにしろマイルス・デイビスはミュートのトランペットに電気のアタッチメントとワウワウを装着し、うつむいて意味不明のフレーズしか吹きませんでしたし、それを支えるリズム隊が作り出すビートはファンクとアフロとカリブラテンとフリーのドロドロギトギトの世界でしたから、唯一の王道ジャズっぽいのがデイヴ・リーブマンの存在だけというのでは……。

しかし、それが自分なりに凄い興奮に結びついて理解出来たような気分にさせられのは、次なる来日となった1975年のステージから作られた2組のライプ盤「アガルタ」と「パンゲア」を聴いてからです。そして追々、リアルタイムでは問題作としてジャズ喫茶やイノセントなファンからは異端の扱いを受けていた「オン・ザ・コーナー」や「マイルス・イン・コンサート」あたりの先端ファンク作品が楽しめるようになったのですから、このDVDにも期待があったとはいえ、ここまで緊張感と熱気が激ヤバだったとは、最高に嬉しいプレゼント♪♪~♪

実は前述したNHKの放送もブートとしてCDやアナログビデオが1980年代から出回っていましたが、今回のブツは当然ながらカラー映像として画質も「A」ランクですし、音質もバランスが良く、低音がド迫力に出ていながら、各楽器のバランスも実に分離が明確という優れものです。ただし演奏中のクレジットで、ピート・コージーを「レジー・ルーカス」と字幕を入れているのは大間違いの減点です。

まあ、それはそれとして肝心の演奏は、いきなりドカドカうるさいゴッタ煮ファンクビートがスタートし、例によって下ばっかり向いているマイスル・デイビスがワウワウ、ピッカビカのミュートトランペットで電気増幅させたフレーズを撒き散らしますが、パックではとにかくファンキーなリズムカッティングが至芸の域に達しているレジー・ルーカス、ジャズっほいキメなんか使わないマイケル・ヘンダーソンのエレキベース、ロックジャズに邁進するアル・フォスターのドラムス、さらにアフロとカリブの汎用打撃に集中するムトゥーメのパーカッションが、とにかく強烈な存在感!

そしてモードジャズに拘り抜くデイヴ・リーブマンのソプラノサックスが痛快ですし、ピート・コージーのデタラメ寸前なスケールがハナからケツまで暴走する展開には、完全に血沸き肉踊りますよ。

このパートが最初のチャプターで示される「Turnaroundphrase」でしょうが、ちなみにマイケル・ヘンダーソンはバンド加入以前はモータウンレコードのセッションプレイヤーでしたし、レジー・ルーカスはスティーヴィー・ワンダーの巡業バンドメンバーだったと言われていますから、完全にモダンジャズとは別世界で培われたキャリアが、ここでの新風となったのでしょう。

もちろん摩訶不思議なウネリに徹したギターソロを聞かせるピート・コージーにしても、本来はシカゴのチェススタジオをメインに活動していたセッションプレイヤーでありながら、同時にフリージャズをやっていたそうですから、そのスタイルの混濁性はムペなるかな!

一方、デイヴ・リーブマンは白人ながらエルビン・ジョーンズ(ds) のバンドレギュラーも務めた若手の実力派として、正統派モダンジャズの中では特にジョン・コルトレーンを信奉するスタイルを押し通しますし、ここでは濁った8ビートを叩きまくるアル・フォスターにしても、本来は4ビート派ですから、決して妥協は許さない親分の意図を裏切りません。

またリズムとビートの立役者になっているムトゥーメも、かつてはマイルス・デイビスと一緒にハードバップをやっていたジミー・ヒース(ts,ss) の実子ですから、本来のジャズフィーリングは体に染み込んでいるんじゃないでしょうか。どんなにハチャメチャな展開になっても、実に芯のしっかりした演奏が爽快至極です。

そして、そうした子分達を率いるマイルス・デイビスは、例え電気増幅の世界に飛び込んで、しかも意味不明のフレーズを独り言的に撒き散らしても、それが完全にマイルス・デイビスでしかないという唯我独尊が、まさに帝王の証明でしょう。

そういえばマイルス・デイビスを我国で「帝王」の称号で奉ったのは、この時期以降じゃないでしょうか?

ですから、そのファッションにしても、所謂ロンドンブーツ系の踵の高い靴、白いロングスカーフにベルボトム、さらに大きなサングラスとアフロなアクセサリーが、ロックスタアにも負けないド派手なフィーリングで、このあたりは黒人フッションのロック的な表現としても若い皆様には見逃せない楽しみかと思います。

もちろんバンドメンバーのフッションと佇まいも同様に凄いですよ♪♪~♪

ほとんどがアフロファンキー、そしてサイケデリックの残滓ともいうべきセンスの塊なんですが、中でもピート・コージーの怪人的な風貌は、椅子に座りっぱなしでエレキを抱え、トンデモ系のスケールを駆使した痛烈なアドリブソロを披露しまくる全篇において、もはや天下無敵の独演会!

そんなこんなが混然一体となったステージでは、演奏そのものがハイテンションの極みとはいえ、決して全員がデタラメをやっているわけではなく、おそらくは暗黙の了解によるアドリブのやり方があるんでしょう。聴いていて圧倒されるそこには、親分の指示で突如として急ブレーキ的にストップするリズム隊、しかしそこには留まらないアドリブソロの演奏者の独り善がり、またキーボードまでも弾きながら、バンドメンバーを自在に泳がせ、締め付けるマイルス・デイビスの存在感が恐ろしいばかりに際立っていくのです。

それは終盤の「Calypso Frelimo」のパートへと収斂し、怖いほどの緊張感と不安定なカタルシスの提供によって、演奏は唐突に終了するのですから、観客は呆気にとられて拍手するのがやっと……。

これが当時、ロックをも超越していたジャズの最先端!

今にして思えば、そう納得するほかはありませんねぇ~~♪

例えリアルタイムで気がつかなくとも、こうして当時の映像と演奏が楽しめるのですから、天国のマイルス・デイビスは「してやったり」でしょうか。

最後になりましたが、レジー・ルーカス、マイケル・ヘンダーソン、そしてムトゥーメはマイルス・デイビスのバンドを辞めた後、堂々とブラコンやポップスの世界で大輪の花を咲かせていますし、デイヴ・リーブマンとアル・フォスターはモロジャズやジャズフュージョンへの拘りを強め、ピート・コージーはアングラな活動へと舞い戻って行ったのが、今日の歴史です。

その意味で、全員が尖がりまくっていた頃が実際に追体験出来るのですから、これは素敵な復刻でしょう。決して万人向けではありませんが、熱い、本当に熱い演奏は最高♪♪~♪

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タイガースの地味な曲が好き

2009-12-04 14:56:23 | 日本のロック

僕のマリー / ザ・タイガース (ポリドール)

GSブーム全盛期を象徴する存在として、やはりタイガースは外せません。

ブームそのものが社会現象の中にあって、タイガースこそが芸能ビジネスの頂点となっていた時期が確かにありましたし、また女性を中心としたファンの狂騒もまた、当時が日本のロックにとって最高の時期だったと思うばかりです。

また音楽的な面においても、すぎやまこういち、橋本淳、山上路夫、村井邦彦……、等々の有能な作家達やスタジオミュージシャン&優れたアレンジャーという、所謂「縁の下の力持ち」の存在が、これほど成功したプロジェクトも稀有だったと、今は感銘を受けるほどです。

もちろん、それを強く推進していたのは、マスコミや各種業界の力を上手くコントロール出来る大手の渡辺プロダクションだったわけですが、さりとてタイガースというバンドそのものは、決して操り人形とは決めつけられないほど、メンバーの個性が際立っていた、まさにスタアグループに相応しいバンドでした。

結成されたのは昭和40(1965)年頃だと言われていますが、当時は京都の高校生だった加橋かつみ(vo,g)、森本太郎(g,key,vo)、岸辺おさみ(b,vo)、瞳みのる(ds,vo)、そして沢田研二(vo) という黄金のメンバーが揃ったあたりから地元では人気が高まり、スパイダースの事務所だったスパイダクションや前述の渡辺プロダクションとの争奪戦があった末、後者に所属が決定し、東京でのデビューは昭和41(1966)年末頃だったようです。

ちなみに当時のバンド名はファニーズでしたが、関西出身ということで、タイガースへと強制変更というエピソードは本当でしょうか? 命名者は、すぎやまこういち!? という説が、以前にテレビで明かされていましたが……。

まあ、それはそれとして、とにかく翌年春先に発売されたのが、本日ご紹介のシングル盤というわけですが、後年の大ブレイクと狂騒を鑑みれば、あまりにも地味~なフォーク歌謡がA面曲「僕のマリー」です。

皆様がご存じのとおり、この曲はリアルタイムでは大して売れることがことなく、しかし次いで発売された2枚目のシングル「シーサイド・バウンド」が、まさに昭和元禄の夏向きR&Rになって大ヒットしたことにより、急激にブレイク! さらに続く「モナリザの微笑み」「君だけに愛を」「花の首飾り」といった名曲の連発があって、ついにGSのトップに躍進!

そこには如何にもスタアらしい華やかさ、芸能界ど真ん中の胡散臭さ、またロックの猥雑な魅力が横溢していましたから、ファンの過熱熱狂は完全に社会現象となり、それゆえに例えばNHKには出演出来なかったとか、とにかく反GSの標的にさえなったのです。

もちろん現実的にはコンサート会場での事故、チケット詐欺事件、メンバーの失踪等々、トラブルとゴタゴタが全盛期には当然の陰りとなりました。

しかしタイガースの演じていたことは、今となってはロックの本質だったと思います。

音楽的にはライプ演奏が上手くないとか、特に後期になって顕著となるスタジオでの作り込み過ぎたクラシックの様式美的歌謡曲路線、あるいは映画やテレビ出演によるフヌケのような姿勢……等々が、特に野郎どもには嫉妬の気持もあって、批判と憎悪の対象にもなっていました。

それでも私は、リアルタイムでやっぱりタイガースを否定出来ず、「シーサイド・パウンド」は日本語のロックの名曲名演だと思っていますし、後期の様式美作品で聴かれる洗練されたコーラスワークや曲メロを活かしきった沢田研二の歌唱力は、後追いで聴けば聴くほどに素晴らしいと感じています。

また、あんまり言われませんが、岸辺おさみのペースワークは完全にメロディ優先主義で、個人的には大好き♪♪~♪

そしてライプステージそのものについては、私が接した昭和43(1968)年の絶頂期、なんと森本太郎のギターアンプが壊れたのでしょうか? 音が出なくなり、窮余の一策としてベースアンプに繋ぎ直して演じられた現場の音が、当時としては異様にバリバリした轟音系の迫力だった記憶が今も鮮烈です。

というように、相当に激しい部分を持っていたのもタイガースの本質の一部分ですが、何故かサイケおやじが今でも時折に口にするタイガースのヒット曲メロディは、「僕のマリー」とか「青い鳥」、「花の首飾り」等々の優しいものばかりです。

告白すれば、リアルタイムでサイケおやじが好きだったのは「シーサイド・バウンド」系のアップテンポ曲を演奏するタイガースでしたから、それほど自然に刷り込まれていたといえば、全くそのとおりでしょう。

つまりタイガースは大衆芸能の中に咲いた毒気の強い華だったかもしれませんし、それが時の流れの中で懐かしさとか、青春の思い出になったとしても、決して枯れてしまうことの無い輝いた存在だと思います。

こうした想いは、別にGSでなくとも、様々なものにあることでしょう。しかし、やっぱり私の世代では、あの「昭和元禄期」が強い影響力として残っているはずです。

ちなみに掲載した私有のシングル盤は、実は買ったものではなく、高校の時の同級生だった女子から貰ったものです。なんでも彼女はタイガースのファンだったそうですが、途中からテンプターズに乗り換えた浮気娘で、この時は他にもシングル盤を永久貸与されましたです。

ありがとう、今でも感謝していますよ♪♪~♪

ということで、タイガースについては、いくら書いても終りがないほどですが、特に印象深いのがメンバーが各々、ジュリー、ピー、トッポ、サリー、タローというニックネームで親しみ易く呼ばれていたも、そのひとつです。

そして私は、熱狂したファンのお姉さま達が連呼する、そうした狂騒を忘れていないのでした。

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銀色のグラスでブッ飛ばせ!

2009-12-03 08:25:17 | 日本のロック

銀色のグラス / ザ・ゴールデン・カップス (東芝)

なんか、ハズミで、またまたおやじバンドをやることになりました。

で、昨夜は演目を決める算段となりましたが、こんな時勢をブッ飛ばす、とにかく景気の良い曲をやろうよっ!

ということで、様々に挙がった候補のひとつが、本日ご紹介の「銀色のグラス」です。

ご存じ、GSでは高い人気を集めていたゴールデン・カップスがデビューから2作目のシングル曲として、昭和42(1967)年の師走から翌年にかけて大ヒットさせた、日本のロックの大名曲! 初っ端から歪みまくりのファズギターと全篇で躍動疾走するルイズルイス加部の強烈なエレキベースが、世界でもトップクラスの猛烈ロック!

もちろん美味しい部分は歌謡曲モードで、一緒に歌えるところが作詞:橋本淳、作曲:鈴木邦彦の黄金コンビが職人技の冴えでしょう。

しかしやっぱり魅力の中心はアップテンポで激走するバンドの勢いですよねぇ~♪

いやはや、もう、これを最初に聴いた時には血が騒ぐどころか、全身沸騰状態となった少年時代のサイケおやじは、後に実演ライプでも圧倒された記憶が生々しく、これが当時最先端のロックとして、洋楽なんかにも決して負けていないことは、今でも確信するほどです。

ただし、これを自分達でやることについては、正直いって、無理だろうなぁ……。

だって、まずベースが至難のワザですし、バンド全体のノリが、今の私達の年齢では前ノリが苦しいので……。あんまりテンポを落とすとダサいのは言わずもがなです。

う~ん、それにしても、いくら高度成長で景気が良い時期だったとはいえ、ここまで突発的にロックしたバンドが当時は毎月のようにレコードデビューしていた、まさに昭和元禄は素晴らしい時代でした。

今は、それを取り戻すことも非常に難しい状況ではありますが、ささやかな抵抗として、この「銀色のグラス」をダメモトでやってみましょうか。

なんて昨夜は話あっていたのでした。

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ボルテージは最高の勢い

2009-12-02 11:49:56 | 歌謡曲

汐鳴りの幻想 / ザ・ボルテージ (ユニオン)

所謂、もののハズミってやつは勢いがつくととまりませんよねぇ。

本日ご紹介のシングル盤は、GS全盛期に本格的なR&Bフィーリングで勝負していたボルテージの最後のレコードと言われるものですが、もちろんヒットしていません。

ただし、これを始めて聴いた昭和44(1969)年のサイケおやじは、そのあまりの異様さに圧倒されたというか、当時のメモを読み返しても、その時の気持の高ぶりが今もって強烈に残っています。

なにしろ、やっていることが日本民謡と黒人R&Bをゴッタ煮として、さらに歌謡曲に仕上げた様なと書けば、まだ救いがあると思います。

実は告白すると、この「汐鳴りの幻想」を聴いた時、私はボルテージがコミックバンドだと思ったほどでしたが、当時は本物のコミックパンドが、それなりの歌のレコードを出していた時代だったことを御承知願いたいところです。

とにかく強いインパクトを残した歌だったんですが、もちろん当時の乏しい小遣いでは、このシングル盤を買うことは出来ず、時が流れました。そして昭和50(1975)年になってようやく、馴染みの床屋のマスターが、これを所有していたことから、礼を尽くして譲っていただいたのです。

主役のボルテージは昭和42(1967)年頃に結成されたらしく、当時から相当に黒っぽいフィーリングを強調した歌と演奏は知る人ぞ知る存在だったようです。

で、このシングル盤を出した時のメンバーは橋洋介(vo)、富永ジロー(vo)、柴田こうじ(g)、曽根譲二(org)、鳥海敏雄(b)、金剛文裕(ds) と言われていますが、結成当初には後にアニメソング等々で痛烈にソウルフルな歌唱を披露して、今やカルト的な人気がある串田アキラも在籍していたと、ネットで調べたら記録に残っていました。

また山下達郎が後年、ボルテージの大ファンだったことを公言するようになったこともあり、唯一残されたアルバム「R&Bビッグヒッツ」が復刻再発されたり、音源のCD化も進んでいるようです。

ちなみに前述の床屋のマスターは自身が「踊りの会」に入っている所為で、このレコードをバックにステージで踊ったこともあるそうですが、もちろんそれは日本舞踊系の発表会だったそうです。

う~ん、わかりますねぇ~♪

この一件から、「汐鳴りの幻想」とポルテージの音楽性を皆様もご想像願えれば幸いですが、それにしても、こうした感性のレコードが作られてしまうあたりに、昭和元禄の爛熟があったように思います。

不景気ど真ん中の現状を鑑み、本当に当時は素敵な時代でした。まさに「勢い」があったんですねぇ~♪ 今、最も求められているのは、そうした「勢い」が極北までいくエネルギーかもしれません。

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