OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

胸焼け解消盤

2007-07-21 17:44:39 | Weblog

お中元にいただいた水羊羹を食いすぎて、ちょっと胸焼け状態……。

そこで軽快なアルバムを出してみました――

Tenors Head-On / Bill Perkins & Richie Kamuca (Pacific Jazz)

ジャズの世界の名物企画、バトル物の1枚です。

演じているのはビル・パーキンスとリッチー・カミューカという西海岸派の白人テナーサックス奏者ですから、そのスタイルはれスター・ヤングを源流とする流麗なノリと歌心を信条とした柔らかなもの♪ しかし基本は2人の対決を主軸としていますから、似た者同志の熱気があります。

もちろん素晴らしい協調性もあって、このあたりはアル・コーンとズート・シムズのコンビと良い勝負でしょう。ちなみにビル&リッチーの2人はスタジオの仕事も多かったので、実際のライブ活動はどの程度やっていたのかは不明ですが、それゆえに、このアルバムでは「作り上げた」という雰囲気が良い方向に作用した傑作だと思います。

ただし欠点はモノラル仕様なので、どっちが誰!? と聴いていてイライラするところでしょうか。まあ、そんな事には拘らずに演奏そのものを楽しめばいいんでしょうが、否、そこに拘るのがジャズ者の哀しいサガということで――

フワフワに柔らかい音色がビル・パーキンス、ちょっと硬めでドライブ感が強いのがリッチー・カミューカと、私は判別しておりますが、それでも分からない部分がいっぱいあります。一応、曲毎にソロの順番を記してみましたが、あやふやなのが本音です。

録音は1956年7月、メンバーはビル・パーキンス(ts)、リッチー・カミューカ(ts)、ピート・ジョリー(p)、レッド・ミッチェル(b)、スタン・リーヴィ(ds) という白人5人組です――

A-1 Cotton Tail
 デューク・エリントンが書いた曲にしては単純な循環コード曲なので、アドリブの競演にはうってつけの素材です。まあ、元々のオリジナルからして、ベン・ウェブスターを吹きまくらせるための目論見でしたから、必然的に熱くなるように作られた名曲というわけです。
 で、ここでもアップテンポで景気良く演奏されています。そのリズム隊の凄さにド肝を抜かれるでしょう。ピート・ジョリーはホレス・シルバーのようでもあり、デューク・エリントンのようでもあります!
 気になるテナーサックスのソロオーダーは、先発がリッチー・カミューカ、ベースソロを挟んで登場するのがビル・パーキンスかと思いますが、いかがなもんでしょう? いずれも素晴らしい好演です♪

A-2 I Want A Little Girl
 あまり有名でないスタンダード曲ですが、実に和んでしまう演奏です。ゆったりした雰囲気で絡み合う2本のテナーサックスには色気があって男気もあるという素晴らしさです。サブトーンを多用するのがビル・パーキンスでしょうか?
 アドリブの順番もビル・パーキンスが先発かと思います。そして続くリッチー・カミューカの素敵な歌心にはゾクゾクしてしまいまうねぇ~♪ そのまんま2人の絡みになるラストテーマの吹奏は、ジャズの真髄かもしれません。
 
A-3 Blues For Two
 レッド・ミッチェルのオリジナル曲なので、必然的にベースが目立つ雰囲気ですが、ファンキーさをモロ出しにするピアノと抑えた感情表現のテナーサックスが面白い効果になっています。
 アドリブパートでは、まずリッチー・カミューカが柔らかな中にも芯のあるドライブ感が素晴らしく、続くビル・パーキンスは足が地についていないようなところが魅力で、この手のレスター派が好きなファンには、たまらないところ♪

A-4 Indian Summer
 スタン・ゲッツの名演が残されていますから、同系のビル&リッチーも負けられないと気合が入ったのかもしれません。この和みの魅惑曲を軽快に、そしてグルーヴィに演奏してくれます。
 アドリブ先発はビル・パーキンスでしょう。ややモタレつつ柔らかにスイングした後には、リッチー・カミューカがドライブ感を強調して続きます。
 またピート・ジョリーとレッド・ミッチェルが短いながらも素晴らしいアドリブを披露すれば、スタン・リーヴィは強力なシンバルとスキッとしたドラムブレイクで、強い印象を残すのでした。

B-1 Don't Be That Way
 ベニー・グッドマンの演奏が歴史的に有名なスイング曲なので、ここでも痛快な演奏になっています。
 ただし、そのキモはリズム隊の豪快なノリであって、肝心のビル&リッチーは、やや精彩がありません。と言うよりも、リズム隊が凄すぎるんでしょうねぇ~♪ ピート・ジョリーは完全にホレス・シルバー化していますし、ベースとドラムスの黒いノリには驚愕させられます。
 気になるテナーサックスのソロ順は、ビル・パーキンス~リッチー・カミューカだと思います。そして後半の2人の絡みは、アドリブの不調をブッ飛ばす爽快さがあって、面目躍如の一撃になっています。

B-2 Oh! Look At Me Now
 今度はトミー・ドーシー楽団の十八番を取上げてくれました。と言っても、メロディの歌わせ方はフランク・シナトラのバージョンに近いような感じです。つまりセンスが良いんです♪
 アドリブの先発はリッチー・カミューカだと思いますが、これは自信がありません。ただし、いずれのアドリブも最高級なんですねぇ~♪ 緩やかなテンポの中で、歌心とソフトなスイング感が絶品です♪ ラストテーマの変奏には、思わず泣けてきます。

B-3 Spain
 もちろんチック・コリアの曲ではありません。一応スタンダードなんでしょうが、これが実にソフトな情感溢れる名曲です。
 アドリブ先発はビル・パーキンスで、背後から絡んでくるリッチー・カミューカが最高です。もちろんリッチー・カミューカのパートでは、それが逆になってビル・パーキンスの絡みが素敵という趣向です♪

B-4 Pick A Dilly
 オーラスはアル&ズートのアル・コーンが書いた痛快曲ですから、ビル&リッチーとしてはメンツに懸けても負けられないところでしょう。
 ところが気合が空回りしたのか、やや???の仕上がりだと思います。アドリブの先発はリッチー・カミューカでしょうが、ちょっと勿体無いところでした……。

ということで、ちょっと評価が分かれる作品かもしれません。個人的には、じっくり演奏されるスローバラードがあっても良いかなぁ……、と昔っから思っているのですが、如何にも西海岸派という軽快なノリを楽しむ分には文句なしです。

それとジャケットが、良いんです。男2人の歌心に酔っているのか、素敵な美女が真ん中で♪ それとも、意外なしつっこさに辟易しているんでしょうか……? 耳を塞いでいるようにも見える、ちょいと気になる彼女の表情が意味深です。

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ジャケ買いモーガン

2007-07-20 16:59:47 | Weblog

相変わらず、節操の無い発言・失言が目立ちますねぇ。

まあ、私も人のことは言えないんです。

今日も古くからの友人を当時のニックネームで呼んでしまって……。もちろん友人は、それなりの地位にあるわけですから、場の空気が固まったというか……。笑ってごまかすしか手がありませんでした。

まあ、ご容赦下さい。

ということで、これを聴いて忘れましょう――

Lee Morgan Allstar Sextet (Blue Note)
   

レコード蒐集には所謂「ジャケ買い」という趣味があります。まあ、私はそれほど熱心では無いのですが、やっぱり、どうしても欲しくなるブツが確かにありますね。

本日のアルバムは、私にとって、当にそれです。

というのも、実は中身はブルーノートが1970年代中頃からスタートさせた未発表曲集で、アメリカでは「The Procrastinator」というタイトルの2枚組アルバムとして発売された中の1枚なのです。

それを我国では、わざわざ1枚物のアルバムとして発売したわけですが、そのアメリカ盤2枚組は輸入されても1980円ほどで買えたのに、日本盤は1枚で2300円というエグイ商売でしたから、当時の私は、なんだかなぁ……。

ところが日本盤はジャケットのデザインが良いんですねぇ~♪ 如何にもジャズ者の琴線に触れるというか、ブルーノートの雰囲気をきちんと感じさせるニクイ仕上がりでしたから、結局、数年後に中古で買ってしまったというわけです。

ちなみにオリジナルの2枚組も、しっかり入手していたんですから、なんとも罪深い話……。

さて、肝心の中身は、ボツっていたとは思えないほどの極上品!

録音は1967年7月14日! おぉ、ジョン・コルトレーンの命日じゃぁないか! メンバーはリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、タイトルに偽り無しのオールスタアズです――

A-1 The Procrastinator
 リー・モーガンが書いた荘厳にして勇壮な名曲です。最初、スローで演奏されるところは、アフリカの広大な草原というか、大自然の情景が浮かんでくる感じですし、テンポアップして同じテーマメロディを演奏するところは、強い意志を持って突き進む感じが最高です。
 もちろんリー・モーガンは迷いが無く、得意のフレーズと緩急自在のノリで圧倒的なアドリブを聞かせてくれます。バックのリズム隊では、抜群の存在感を示すロン・カーターが良いですねぇ♪
 続くウェイン・ショーターは、もちろん素晴らしいのですが、この時期のウェイン・ショーター、そしてハービー・ハンコックとロン・カーターはマイルス・デイビス(tp) のバンドレギュラーであり、そこでは4ビートをやりつくした感がありましたから、ここでの少し違った表情・表現は印象的です。ハービー・ハンコックなんか、こういう正統派モダンジャズを楽しんでいる様子がはっきりと出ています。
 それとリアルタイムでブルーノートの看板だったボビー・ハッチャーソンが、やっぱり強い印象を残します。本当にクールでカッコイイ♪

A-2 Party Time
 これもリー・モーガンのオリジナルで、グルーヴィな雰囲気が横溢した名曲です。いやぁ、ドドンパを敲くビリー・ヒギンズが最高ですねぇ~~♪
 アドリブ先発はウェイン・ショーターですが、十八番の脱力フィーリングが全開で、たまりません。特に3コラース目なんか、悶絶してしまうですよぉ~♪ また、それはリー・モーガンにも伝染していくんですが、そこを怠惰なブルース感覚にしてしまうのが、天才の証でしょうか、流石の素晴らしさに唸ります。
 そしてボビー・ハッチャーソンが、これまた地味に良いんです♪ 持ち味のクールなところを情熱の発露にしていくあたりは、熱血を感じます。アドリブの持ち時間が短いのが残念!
 それとハービー・ハンコックとビリー・ヒギンズの息の合わせ方とか、合の手の入れ按配も、ひとつ間違えると笑っちゃいます状態なんですが、そのギリギリ感にはグッときますねっ♪

A-3 Dear Sir
 ウェイン・ショーターの幻想感覚に満ちたオリジナル曲です。もちろん作者のアドリブが一番優れていますが、リー・モーガンの真摯でハスキーなトランペットやボビー・ハッチャーソンの新鮮な感覚も捨て難い魅力があります。
 全体にはスローな展開ですので、やや難しい雰囲気もありますが、これが当時は最先端のモダンジャズだったということで、納得するしかないでしょう。そういう説得力が確かにあります。

B-1 Stopstart
 ビリー・ヒギンズのドラムスに導かれてスタートする痛快なハードバッブ曲は、もちろんリー・モーガンのオリジナルです。
 アドリブ先発はカッコ良さ全開のボビー・ハッチャーソンで、スピード感満点のクールなヴァイブラフォンには、心底シビレます♪ そして続くリー・モーガンが、これまた突進力があって最高! これぞ「モーガン節」という十八番が連発されるのです。
 しかしウェイン・ショーターのパートになると、やっぱりハービー・ハンコックがハメを外したというか、かなり思い切ったバッキングに変わっていて、演奏全体にアブナイ香りが!? もちろんアドリブでも凄いノリを聞かせてくれますが、実はビリー・ヒギンズの仕業という真相もあったりして……。
 クライマックスではモーガン vs ヒギンズというブルーノート的日常茶飯事が素晴らしい限りです。ラストテーマも、当然のように痛快至極!

B-2 Rio
 ウェイン・ショーターが書いた擬似ボサノバで、なんとも言えない安らぎが素敵です。そのミソはボビー・ハッチャーソンのヴァイブラフォンとビリー・ヒギンズの軽快なドラムスでしょう♪
 そして作者自らがアドリブ先発で見本を示すというか、脱力して爽快なアフターセックスのような名演を聞かせます。するとリー・モーガンまでもが珍しく気抜けのビール寸前というノリで、美メロのアドリブを吹いてくれるんですからねぇ~~♪ 私のような者は、ちょっと絶句です。
 もちろん幻想的なハービー・ハンコックも素敵ですよ♪ 
 
B-3 Soft Touch
 リー・モーガンのオリジナル曲ですが、マイルス・デイビスのバンドのように聞こえてくるのは、ショーター、ハンコック、ロンの3人がいるからに違いありません。
 しかしアドリブパートに入ると、俄然ハッスルするリー・モーガンが強烈です。ミディアムテンポでグルーヴィな雰囲気を出すことにかけては、やっぱり天下一品の存在ですねぇ~~♪ 続くボビー・ハッチャーソンも熱いフレーズを連発してくれます。
 しかしウェイン・ショーターが登場すると、またまたマイルス色が強くなってしまいます。というか、これはショーター色というべきで、ビリー・ヒギンズまでもがトニー・ウィリアムスになっているという節操の無さが、実は最高なのでした。

ということで、内容は如何にもジャズ喫茶がジャズ喫茶らしくなる演奏ばかりです。そして、こういうセッションがお蔵入りしてしまう当時の水準の高さと贅沢には、ただただ感服するのみ……。

ただしリアルタイムでのリー・モーガンはジャズロック調の楽しい演奏を求められていたはずですから、ムベなるかなという感じもします。

時代はサイケロックからハードロックやプログレに進化していった白人ロックの天下でしたから、モダンジャズの砦たるブルーノートであっても、様々な試行錯誤があって当然の時期でしょう。そこを突き抜けんとしていた優れたジャズメンの日常的記録としては、あまりにも勿体無い演奏だと思います。

そしてこれが、リアルタイムで出ていたら、どんなジャケットになっていたか? 今でも興味津々です。

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ソニー・クラーク目当て♪

2007-07-19 18:01:28 | Weblog

今日は熱くてバテ気味だったんで、昼飯は思いっきり辛い冷麺にしました。最後には味覚が麻痺状態だったんですが、食わずにはいられないという中毒的旨さがありましたですね。

ということで、聴くのも熱い1枚を――

Oleo / Grant Green (Blue Note)

昨日に引き続き、本日も日本先行発売で人気を呼んだブルーノートの発掘盤です。というよりも、実はソニー・クラークが聴きたくなって取り出したのが真相です。

もちろんアルバムのリーダーはギタリストのグラント・グリーンなんですが、やっぱり、ねぇ~♪ という気持ちは分かっていただけると信じています。

録音は1962年1月31日、メンバーはグラント・グリーン(g)、ソニー・クラーク(p) というレーベルの看板スタアに加えて、サム・ジョーンズ(b) とルイス・ヘイズ(ds) が、当時のキャノンボール・アダレイ(as) のバンドから馳せ参じたという豪華カルテットです――

A-1 Oleo
 ソニー・ロリンズが書いたオリジナルにしてハードバップの定番曲ですから、このメンツなら快演は間違いなしと思いきや、グラント・グリーンがリードするテーマメロディが少し変奏されていて、煮えきりません。
 しかしアドリブパートに入れば、これぞブルーノートという痛快さがたっぷり! ルイス・ヘイズの躍動的なドラムスが見事です。
 そしてもちろん、ソニー・クラークは期待通りの名演で、まるっきりソニー・クラーク・トリオ状態♪ なにしろグラント・グリーンは何時もどおり、バッキングしませんからねぇ~。それが結果オーライというか、こっちが期待しているところです。

A-2 Little Girl Blue
 タイトルどおり、ちょっとネクラな雰囲気のスタンダード曲ですが、そこに潜む優しいフィーリングを上手く引き出すグラント・グリーンのテーマ演奏が見事だと思います。
 もちろんソニー・クラークは伴奏&アドリブソロで輝きまくりです。サム・ジョーンズの骨太なベースも良い感じ♪ ですからグラント・グリーンもアドリブパートではグイノリ感覚で、例の針飛びフレーズも聞かせてくれるのでした。

A-3 Tune Up
 マイルス・デイビスが書いたとされる、これもハードバップの定番曲なので、メンバー全員が大ハッスル! 特にドラムスとベースが熱くなっているようです。ソニー・クラークのバッキングもたまりませんねっ♪
 肝心のグラント・グリーンはパキパキのピッキングで歯切れの良い単音弾きに撤していますが、要所で入れるチョーキングや執拗な同一フレーズの繰り返しによる得意技も出すという、本当に素晴らしいノリの良さです。ただし、ややインスピレーションが不足気味でしょうか……。
 ところがソニー・クラークは好調です! 小気味良いファンキー感覚と物分りの良さが表出しているのです。まあ、それゆえに物足りなさもあるんですが、贅沢というものでしょうねぇ。

B-1 Hip Funk
 グラント・グリーンが書いた文字通りのファンキー曲です。なにしろテーマ部分はコード弾き主体で演じられるという珍しさですが、何とも言えない泥臭さが漂います。
 しかしアドリブパートには不思議な浮遊感があって、デスコードしているような、あるいはウェイン・ショーター風の異次元モード感覚までも感じられます。つまり、どこか煮えきっていないという……。もちろん演奏そのものは立派に成立していますが……。
 ところがソニー・クラークがアドリブを始めると、あたりは一瞬にしてハードバップに変化しますから、流石です。強引にファンキーへ持って行くような荒業までやってしまいますからねぇ♪
 う~ん、セロニアス・モンクが書きそうな曲だったのか? という疑問までも湧いてくる、これがお蔵入りしていた原因なんでしょうか……? しかしサム・ジョーンズが立派すぎます!

B-2 My Favorte Things
 オーラスはミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」からのスタンダードというよりも、今やジョン・コルトレーンの演奏で有名になったモダンジャズ曲と言って良いでしょう。
 もちろん、ここでの演奏はジョン・コルトレーンのバージョンを大いに意識していますが、ソニー・クラークはマッコイ・タイナーになれるはずも無く、またルイス・ヘイズはあくまでもハードバップに撤していますから、グラント・グリーンも心置きなく自分だけの世界を追求しているようです。
 う~ん、なかなか良いアドリブメロディを弾いてくれますねぇ~♪ もちろん十八番の針飛びフレーズも出ますし、リズム隊との息もぴったりです。
 そしてソニー・クラークは、戸惑いながらの名演とでも申しましょうか、迷い道ながらも纏まりを大切しているあたりが、面白いところです。
 ちなみに、このセッションから3年後1965年になって、グラント・グリーンはエルビン・ジョーンズとマッコイ・タイナーというジョン・コルトレーンのリズム隊を連れてきて、この曲を再演レコーディングしているので、聴き比べも一興でしょう。それは「マタドール」というアルバムに入っています。

ということで、これは1980年になって、ようやく陽の目を見たセッションなんですが、内容は上等ですから、ブルーノートに膨大なレコーディングを残したグラント・グリーンにとっては、恐らく発売の時期を逸しただけの事だと思います。

そして個人的にはソニー・クラークのトリオ物という感覚で入手した1枚です。サム・ジョーンズとルイス・ヘイズというコンビは、様々なレコーディングに参加していますが、ここでのソニー・クラークとのトリオは、なかなか極上の組合せでした♪

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輝いた発掘盤

2007-07-18 17:56:57 | Weblog

地震騒ぎで自粛していましたが、本日から音盤紹介を再開致します。まず――

Poppin' / Hank Mobley (Blue Note)

新録よりも嬉しい発掘盤というのが、ジャズの世界には沢山あります。本日の1枚は、当にそうした代表的なアルバムでしょう。

リーダーのハンク・モブレーは、ご存知、モダンジャズ全盛期の花形プレイヤーで、リーダー盤も数多く出していますし、脇役としても歴史的名盤で賛否両論の演奏を残している偉人ですが、1970年代に入ってからは時代の波に流されたか、あるいは健康問題もあって、第一線から退いてしまいました。

しかし、その人気は地味ながら不滅であり、我国ではジョン・コルトレーンと比較されてダメな見本とされた時期もありながら、実はジャズ喫茶に集うファンやコアなマニアからは愛され続けていたのです。

そして1970年代中頃からのフュージョンブームでは、4ビートだって充分に快楽的であることを証明した「ディッピン(Blue Note)」という根強いヒット盤で、ますますその人気を高めていました。

で、そんな時期の1980年に突如として発売されたのが、このアルバムです。つまり未発表音源集というわけですが、タイトルが「ポッピン」ですからねぇ~♪ どうしても「ディッピン」との関連を期待してしまうのですが……。

おぉ、内容はバリバリのハードバップ! 録音は1957年10月20日、メンバーはアート・ファーマー(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ペッパー・アダムス(bs)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、極上の猛者が揃っています――

A-1 Poppin'
 ハンク・モブレーが書いた典型的なハードバップ曲で、明るさの中に一抹の哀愁を滲ませるソニー・クラークがアドリブの先発ですから、後はもう、お約束の快演が続きます。
 強靭な4ビートを送り出しているポール・チェンバースとフィリー・ジョーは、もちろんマイルス・デイビス(tp) のバンドでは同僚ですから、息もぴったり♪ 煽られて暴走するペッパー・アダムスのバリトンサックスは、長いフレーズを一気に吹ききってしまう恐ろしさです。
 またアート・ファーマーは柔らかな音色を活かした即興演奏の妙技を完全披露♪ ソニー・クラークの合の手も良いですねぇ♪
 そして我等がハンク・モブレーが勇躍登場、と書きたいところなんですが、やや凡庸に始めるアドリブが??? しかし、これがハンク・モブレーの真骨頂とでも申しましょうか、吹くほどに自分のペースを掴んで、クライマックスはフィリー・ジョーとの一騎打ちで場を盛り上げるのでした。 

A-2 Darn That Dream
 暖かいテーマメロディが人気のスタンダード曲です。もちろんハンク・モブレーが得意のタメとモタレでテーマを吹奏してくれますから、ちょっと地味に聞こえても奥が深く、それでいて裏も表も無いストレートな感覚が素晴らしいところです。
 またアート・ファーマーのミュートトランペットが実に良い味ですし、寄り添うポール・チェンバースのベースも名演でしょう。そしてペッパー・アダムスは、力強い中にも白人らしいセンスを感じさせる憎たらしさ!
 結局、ソニー・クラークが伴奏&アドリブで一番印象的な活躍をしているようです。もちろんハンク・モブレーも最後の最後で、もう一度、本領を発揮していますよ。無伴奏のソロが流石です♪

A-3 Gettin' Into Something
 これもハンク・モブレーが書いたアップテンポのハードバップ曲で、とにかくテーマ部分からゴキゲンです♪ 3管の迫力に歯切れの良いリズム隊! このアルバムの目玉演奏です。
 もちろんアドリブパートでは先発のハンク・モブレーが自分だけの「節」を出しまくり♪ このノリ、このフレーズ、最高ですねぇ~~~♪ 続けて出るアート・ファーマーも最初っから好調で、十八番のフレーズを出し惜しみしていません。
 そしてペッパー・アダムスが、また凄いです。アタックが強くて、しかも淀みないアドリブソロには、パリトンサックスの魅力が横溢しています。さらにソニー・クラークが絶好調の「ソニクラ節」なんですから、たまりませんねぇ♪

B-1 Tune Up
 B面は、いきなりマイルス・デイビスの十八番が演奏されますから、フィリー・ジョー&ポール・チェンバースが薬籠中の強烈なグルーヴを提供しています。
 するとアドリブ先発のアート・ファーマーが、マイルス・デイビスっぽく聞こえてしまいます。あぁ、これがジャズの魔力なんでしょうねぇ……。もちろんペッパー・アダムスとハンク・モブレーも好演ですが、耳は完全にリズム隊へ!
 う~ん、ソニー・クラークが、本当に良いですねぇ~♪ ファンキーで歯切れ良く、不思議な哀愁というか、仄かなマイナー調は唯一無二の個性だと思います。

B-2 East Of Brooklyn
 これまたハンク・モブレーが書いたオリジナル曲で、ラテンリズムやカッコ良いリフが交じり合ったグルーヴィな雰囲気が秀逸です。
 もちろんアドリブの先発は作者自身が、思わず唸るブレイクを披露♪ そのまま独自のノリでハードパップの真髄を聞かせてくれます。あぁ、歌心がいっぱいのフレーズが止まりませんねぇ~♪ しかも黒いです!
 そして続くアート・ファーマーがクールで優しいハードボイルドの見本のような名演を聞かせれば、ペッパー・アダムスはバリバリの豪快さに加えて、ミステリアスな雰囲気までも醸し出す、これも名演だと思う他はありません。
 さらにソニー・クラーク! あぁ、なんでこんなにグッと惹きつけられるんでしょう!? ポール・チェンバースも抜群の存在感を示してくれますし、フィリー・ジョーの凄さは言わずもがなです。

ということで、今となっては、ちょっと地味に聞こえるかもしれませんが、フュージョンが爛熟し、新しい4ビートジャズとしての新伝承派が台頭しつつあった1980年には、間違いなく本物の輝きを示すアルバムでした。

しかも日本先行発売だったんじゃないでしょうか? ジャケットも往年のイメージを大切にして、尚且つ、日本のファンを魅了するデザインでした♪

現在CD化されているかは不明なんですが、機会があれば、一度は聴いて損のない出来だと思います。特にソニー・クラークのファンにはオススメですよ。

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いいかげんな原発

2007-07-17 20:06:15 | Weblog
さて大地震の翌日になって、案の定、原発の管理不行き届きみたいな……。

消防隊も上手く機能できず、放射性廃棄物のドラム缶はフタが開いて……。

だいたい、問題の原発と運営電力会社は、これまでにもデータ改ざんやゴマカシ、事故の隠蔽を繰り返していたので、地元の人は誰も最初の言い分は信用していないのです。

本当に総理大臣は視察に原発へ行ったのか!?

地震が何故、恐いのか、それは何時、来るのか、分からないからだ!

これは東宝映画「地震列島」での勝野洋の台詞です。

全く、そのとおりになりました。

ということで、本日も歌舞音曲は自粛させていただきます。
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逃げ帰る!

2007-07-16 17:23:22 | Weblog
実は本日、仕事で地震発生地へ行っていました。

10時前に着いて、ちょっと仕事を進めたあたりでグラグラっと!
転倒した人もいましたが、とりあえず、被災は免れたのですが……。

その後、自分の仕事場へ取って返す道すがら、被害の酷さを目の当たりにしました。

一番驚愕したのは、原発での火災!
かなりの煙が上がっていたようですねっ。

ケイタイも全く繋がらず……。しかし噂どおり、公衆電話は完全OK♪

しかし、これは急いで帰るしかないと、ようやく、さっき辿り着きました。

ということで、本日は歌舞音曲は自粛です。

被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。
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ギターとベースは素敵な仲間

2007-07-15 16:20:54 | Weblog

う~ん、やっばり台風は大きな被害をもたらしてしまいました。被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。

ちなみにこっちも、昨日書いたイベントが中止となり、某公民館にて、用意していた酒とバーベキューをやっていたら、皮肉にも昼過ぎから晴れてきたという……。

そこで、またまた、ひとりジミヘンを演じ、失笑されながらの憂さ晴らしでした。

ということで、本日は地味なギターが味わい深いこれを――

Over The Rainbow / Mads Vinding - Jacob Fischer (cope records)

これも演目買いという悪い虫が出てしまった1枚ですが、内容は期待以上に良かった♪ と独り納得しているアルバムです。

タイトルどおりにベタなジャケットもセンス良いんだか、なんだか分からない雰囲気なんですが……。

とにかく演じているのは、Jacob Fischer という1967年生まれの若手ギタリストと、今や欧州ジャズ界の重鎮ベーシストとなった Mads Vinding のデュオ! 気になる演目は――

01 MASH
02 All God's Children Got Rythm
03 Over The Rainbow
04 Softly As In A Morning Sunrise
05 Love For Sale
06 Polkadots And Moonbeams
07 Waltz In A Minor
08 Come Rain Or Come Shine
09 Jeg Ser De Bogelyse Oer
10 Dannyboy

――という名曲・人気曲揃い♪ そして演奏も極めて正統派なので、聴き易くて骨もある、なかなかの仕上がりです。

まず冒頭「MASH」はアコースティックギターとウッドベースの響きがベストマッチ♪ 両者の絡みで進む演奏にはテーマ曲に含まれている哀愁が滲み出ていますが、あくまでも自分自身のアドリブで美メロを生み出そうとする意気込みが素敵です。

また一転してモダンジャズ本流の演奏を聞かせる「All God's Children Got Rythm」は痛快! ジャケットの解説によると、Jacob Fischer はジャンゴ・ラインハルト系らしいのですが、ここではジョー・パス風のアグレッシブなスタイルで迫っています。ビートに対するノリも素晴らしいですねぇ~♪ もちろん強靭なリズムを担当している Mads Vinding はアドリブパートでも大暴れです! 自然体に聞こえていながら、実は綿密なアレンジとリハーサルがあったのかもしれません。それほどに完成された演奏になっています。

同じ系統では「Come Rain Or Come Shine」や「Jeg Ser De Bogelyse Oer」も、かなりの熱演ですし、クラシックのアレンジを遊びで導入したような「Softly As In A Morning Sunrise」も、実は正統派なんですねぇ~♪

そしてスローな演奏では「Over The Rainbow」がダントツに素晴らしく、生ギターの音色を存分に活かした余韻、さらにテーマの変奏には、心底、和みます。

アレンジ面では、クラシックの有名フレーズを分解して散りばめたようなイントロとか、ボサノバビートの隠し味が素敵ですが、もちろん4ビートも大切にされていて、特に「Love For Sale」は意表を突いた超スローテンポながら、熱いグルーヴと黒っぽいノリが楽しめます。

もちろんオーラスの「Dannyboy」は、哀愁どっぷりのシミジミモードがたんまりと味わえます。

ギターとベースのデュオと言えば、ジム・ホールとロン・カーターによる名盤が幾つか残されているものの、総じて地味なイメージでしょう。このアルバムも確かにそうなんですが、自宅で聴く分には最高の気持ち良さですし、ジャズ魂もジンワリと滲みこんできます。

ちなみにこのアルバムは4年ほど前に入手したものですが、デジパック仕様のデンマーク製CDですので、見つけたら即ゲットをオススメしておきます。

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あれから40年……

2007-07-14 15:43:24 | Weblog

台風接近の中、明日は赴任地の某イベントへ、おやじバンドで出演とあって、午前中は練習とリハーサルに出ました。演目は5月の時と変わりなく、ちょっと新曲も入れましたが、問題は出来の良し悪しよりも、明日の天候……。野外だからなぁ……。

ということで、気がつけば本日はジョン・コルトレーンの命日でした。40年前の1967年7月14日、天国へ召された偉人は、今もってジャズの支柱であり続けています。そこで――

The Coltrane Legacy / John Coltrane (Atlantic)

コルトレーンの没後、確か1970年頃になって世に出た未発表曲集です。しかし銀色インクを使ったモノトーンのアルバムジャケットは、なかなか味があります。

収録された演奏は、もちろんメンツもセッション年月日も各々バラバラなんですが、とりあえずB面はミルト・ジャクソンと競演した「バグス&トレーン(Atlantic1368)」から、またA面は1960年10月と翌年5月のセッションから余り曲を集めて、統一感を出しています――

A-1 26-2 (1960年10月26日録音)
 個人的にはジョン・コルトレーンが絶好調を記録したと思い込んでいる日のセッションですから、余り曲といっても不滅の演奏が聞かれます。
 メンバーはジョン・コルトレーン(ts,ss)、マッコイ・タイナー(p)、スティーヴ・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、お馴染みのカルテット! そして演奏されるのは激烈モード曲ですから、たまりません。エルビン・ジョーンズも爆発していますが、まず最初からピアノを休ませて、ジョン・コルトレーンが好き放題に吹きまくりです。
 で、ようやく次にマッコイ・タイナーが登場して、これまた自由度の高いアドリブを披露すると、再び出てくるコルトレーンは、ソプラノサックスに持ち替えて吹きまくるという、一粒で二度美味しいという仕上がりになっています。

A-2 Original Untitled Ballad (1961年5月25日録音)
 情熱の名盤「オレ(Atlantic1373)」からの余り曲なので、悪いはずがありません。もちろんメンバーはフレディ・ハバード(tp)、エリック・ドルフィー(fl)、ジョン・コルトレーン(ss,ts)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン'(b)、アート・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、当時、バリバリの若手最強軍団です!
 曲調は、タイトルどおりに泣きのバラードなんですが、そこはかとない哀しみと若い情熱が交じり合った力強さが大きな魅力♪ まず、ピアノのイントロに続き、エリック・ドルフィーがフルートでせつなくテーマを吹奏してくれますから、泣けてきます。それを受け継ぐジョン・コルトレーンのソプラスサックス、またフレディ・ハバードのトランペットも味がありますねぇ~。
 もちろんアドリブパートでも3者の個性が存分に楽しめますが、リズム隊の強靭なグルーヴも素晴らしいかぎりで、エルビン・ジョーンズのブラシには何時もながら感服させられます。またビル・エバンスに接近したマッコイ・タイナーも良いですねっ♪

A-3 Untitled Original (1960年10月24日録音)
 再びジョン・コルトレーン(ss)、マッコイ・タイナー(p)、スティーヴ・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) というカルテットによる演奏です。
 曲はミディアムテンポの、なんとなく聞いたことのある雰囲気ですが、ジョン・コルトレーンはソプラノサックスで音符過多のスタイルを貫きとおしていながら、どこか安らぎを求めて止まないところがあります。
 それはマッコイ・タイナーも右倣えですが、これってもしかしたら同日に録音された「Central Park West」の変奏かもしれませんですねっ♪

B-1 Centerpiece (1959年1月15日録音)
B-2 Stairway To The Stars (1959年1月15日録音)
B-3 Blues Legacy (1959年1月15日録音)
 さて上記3曲が入ったB面は、ブルースとハードバップにどっぷりという、これまた別の意味で嬉しいセッションを集めています。メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、ミルト・ジャクソン(vib)、ハンク・ジョーン(p)、ポール・チェンバース(b)、コニー・ケイ(ds) という趣味性豊かな面々♪
 まず「Centerpiece」はちょっと古いカンサスシティスタイルの中間派ブルースか? と思って作曲クレジットをみたら、ハリー・エディソン(tp) の名前がありました。とはいえ、ミルト・ジャクソンのブルースフィーリングは不滅のジャズ魂に彩られ、リズム隊は強靭なハードバップ感覚で粘っこいグルーヴを発散させています。ですからジョン・コルトレーンも既に完成の域に入っていたシーツ・オブ・サウンドを駆使してウダウダブリブリに吹きまくり! ちょっと纏まりが良くありませんが、ついつい惹きこれまてしまいます。
 2曲目の「Stairway To The Stars」は人気スタンダードですから、歌物名人のミルト・ジャクソンがシンプルながら大名演! 余韻と歌心の妙が素晴らしいですねぇ~♪ またジョン・コルトレーンも硬質な音色と素直なテーマ変奏で期待を裏切りません。ゆるやかで短い演奏ですが、こういうのもハードバップの魅力だと思います。いやぁ、和みますねぇ♪
 そしてオーラスの「Blues Legacy」が、思わせぶりたっぷりというブルース大会です。テーマを吹奏するジョン・コルトレーンに合の手を入れるミルト・ジャクソンが、そのまんま、アドリブに流れ込んでいくあたりから、気分はモダンジャズにどっぷりです♪ あぁ、このたっぷりとしたグルーヴは、名人リズムセクションの成せる技でしょう。この控えめな「間」の取り方こそ、ジャズの魅力かもしれません。しかしジョン・コルトレーンは、最初こそそれに従っていますが、少しずつ本性を現しての音符過多症候群に陥っていくあたりが痛快です! またそれを洒落たコードとブルース感覚で中和していくハンク・ジョーンズの素敵なピアノタッチが、素晴らしいですねぇ~~~~~♪

ということで、余り曲集ながら、流石の勢いと本物のジャズ魂に溢れた名演が続出しています。CD時代となった今日では、各曲がそれぞのオリジナルアルバムにボーナストラックとして収録されているのかもしれませんが、アナログ盤時代のこのアルバムには捨て難い魅力があって、個人的にはジャケットを壁に飾っていたこともありました。

本日、あらためて合掌……。

コメント (2)
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一味違うBN作品

2007-07-13 19:20:36 | Weblog

参議院選挙がスタートしましたが、どこの党も根本の解決が出来ない夢物語ばっかりだと感じます。

まあ、それは、何時もお馴染みの光景なんですが……。

ということで、本日は――

Blues In Trinity / Dizzy Reece (Blue Note)

名門ブルーノートレーベルでは珍しい海外レコーディング作品です。

主役のディジー・リースはジャマイカ生まれながら英国を中心に活躍していた黒人トランペッターですが、その評判はアメリカでも広まっていたらしく、プロデューサーのアルフレッド・ライオンが直々に渡英した事実を鑑みれば、その実力は本物だったということでしょう。

実際、残された音源を聴けば、それは明白なんですが、こういう隠れ名手的な存在に逸早く光を当てようとするブルーノートという会社の姿勢は、マイナーレーベルならではの小回りと情熱の賜物として、ジャズ者には嬉しいところです。

録音は1958年8月24日のロンドン、メンバーはディジー・リース(p)、タビー・ヘイズ(ts)、テリー・シャノン(p)、ロイド・トンプソン(b) という地元の精鋭達に加えて、丁度、巡業に来ていたドナルド・バード(tp) とアート・テイラー(ds) が入った興味津々のセッションです――

A-1 Blues In Trinity
 テーマ部分はかなり凝っていて、ハードバップのメロディラインに落ち着きの無いリズム隊……。全然、ノリが良くないです。なんだっ!? このアート・テイラーの三倍速みたいなビートはっ???
 したがってアドリブ先発のディジー・リースは迷い道……。ところが続くタビー・ヘイズが豪快極まりないテナーサックスで、王道のハードバップです。おぉ、するとアート・テイラーのやろうとしていたことが、解るんですねぇ♪ セロニアス・モンク(p) みたいなテリー・シャノンの伴奏とアドリブも味わいが違います。ファンキー味も滲ませた不思議な快演でしょうか。
 ディジー・リースも、ようやくラスマエになって踏ん張りますが、またまたタビー・ヘイズに良いところを持っていかれるのでした。

A-2 I Had The Craziest Dream
 あまり有名でないスタンダード曲ですが、ディジー・リースは優しさが漂うメロディを丁寧に吹奏して、前曲での失地を回復しているようです。抑えた感情表現が見事ですねぇ~♪ 一人舞台を立派に務めています。 

A-3 Close-Up
 ここはドナルド・バードが加わった3管セッションですから、クールなテーマも熱くなっていきます。アドリブパートは、まず先発のディジー・リースが引き締まったブルースフィーリングで健闘すれば、続くタビー・ヘイズは正統派の真っ向勝負です。バックで煽るアート・テイラーも最高に素晴らしいですねぇ~♪
 そして、いよいよ登場するドナルド・バードは、流石の存在感というか、本場のハードバップの真髄を聞かせてくれます。またテリー・シャノンのモンク偏愛も憎めません。
 こうして向かえるクライマックスは、ホーン陣3者によるソロチェンジですが、意地のぶつかり合いというよりも、お互いの手の内を探りつつ楽しんでいる雰囲気が、結果オーライだと思います。
 スバリ、主役はアート・テイラーのドラムスでしょうねっ♪

B-1 Shepherd's Serenade
 アップテンポでカッコイイ、ディジー・リースのオリジナル曲ですが、ここでもアート・テイラーが大暴れ! テリー・シャノンの硬いバッキングも良いですねぇ~♪
 アドリブパートでは先発のディジー・リースが、ようやく本領発揮ですし、タビー・ヘイズも期待を裏切らないハードドライブな好演! モリモリに吹きまくって、あたりを圧していくのです。
 するとドナルド・バードも大人しくはしていません。十八番のフレーズを出しまくりながらも、思い切ったハイノートまで駆使して熱くなっています。もちろん、リズム隊の大ハッスルも最高です!
 さらにクライマックスは、ディジー・リース対ドナルド・バードのバトルです! 間に入るのは、もちろんアート・テイラーとタビー・ヘイズなんですが、右チャンネルがディジー・リース、左チャンネルがドナルド・バードになっているステレオバージョンが、一層楽しいはずです♪

B-2 Color Blind
 ディジー・リースが書いた、これまた快適なハードバップです。
 イカしたテーマに続いて登場する作者のアドリブは、ここでも快調ですが、それ以上に良いのが、リズム隊の張り切ったノリです。またタビー・ヘイズが、グルーヴィで素晴らしいですねぇ~~~♪ ちょうどハンク・モブレーとデクスター・ゴードンを混ぜ合わせたような按配で、スピード感もありますから、個人的には最高に好きなテナーサックス奏者のひとりです。
 それとテリー・シャノンはタビー・ヘイズの盟友で、やはり隠れ名手というか、味わい深い存在だと思います。

B-3 `Round About Midnight
 オーラスはセロニアス・モンクが書いた説明不要のモダンジャズ曲ですから、ここではバンドのお手並みは意見です。
 とはいえ、タビー・ヘイズの雰囲気満点のテーマ吹奏で、まずKOされるでしょう。テナーサックスの魅力がいっぱいという音色、サブトーンを駆使しながらのテーマ解釈には、グッときます♪ もちろんアドリブの素晴らしさは言わずもがなで、夥しく残されている同曲の中でも、私が飛び切りに気に入っているバージョンです。
 肝心のディジー・リースが出てこないのも、嬉し哀しの機微があります。

ということで、実はリーダーのディジー・リースが一番、精彩を欠いているようです。しかしタビー・ヘイズの豪快で温か味のあるテナーサックスとアート・テイラーを核としたリズム隊の素晴らしさは特筆すべきでしょう。

そして録音は、ブルーノートではお馴染みのルディ・ヴァン・ゲルダーが渡英して行ったんですが、やはり何時もと勝手が違ったのか、やや音の雰囲気が違います。しかし、それゆえにアート・テイラーのシンバルがくっきりと入っていて、強烈です。リズム隊の素晴らしさは、そこにあると感じるのですが!?

ということで、名盤でも何でもないアルバムなんですが、こういう珍しい作品も作っていたブルーノートの愛情溢れる仕事に、拍手喝采という1枚です。

個人的には、タビー・ヘイズとアート・テイラーに歓喜感涙しています。またディジー・リースは、この後に渡米、同レーベルに傑作盤を残していますから、やっぱり侮れない存在というわけです。

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幸せのLittleBird

2007-07-12 17:43:24 | Weblog

異常に蒸し暑い所為か、やたらに空腹感があります。

しかも大好きなウナギが中国の食品衛生上の問題で、高値となっているのも、痛いですねぇ。今まで知らずに食っていたわけですから、知らぬが仏で良かったという気も……。

ということで、本日は――

Little Bird / Pete Jolly Trio and Friends (ava)

日本は再発盤天国だと、よく言われますが、こんなブツまで出てしまうのは、幸せです♪ しかも紙ジャケット仕様

主役のピート・ジョリーは西海岸を中心にジャズばかりでなく、スタジオの仕事でも夥しい名演・名盤・ヒット曲に関与していたわけですが、純ジャズのリーダー盤としては、これが最も人気でしょう。

製作した「ava」というレーベルは、フレッド・アステアが1962年頃に起こしたマイナーカンパニーですが、そのカタログは趣味性豊かな作品ばかりです。しかも活動期間が短かった所為で、完全にコレクター泣かせという……。

このアルバムは、その中でも特に洒落たセンスに彩られた最高のピアノ物で、もちろんジャズ喫茶の人気盤でもありますし、一度入手したら、まず絶対に手放せない魅力がありますから、中古市場でも垂涎の1枚になっています。それがCD化されたんですからねぇ♪

録音は1962年11月&1963年1月、メンバーはピート・ジョリー(p)、チャック・バーグホーファー(b)、ラリー・バンカー(ds) というトリオがメインで、曲によってハワード・ロバーツ(g) とケニー・フューム(per) が加わっています――

A-1 Little Bird
A-2 Three-Four-Five
A-3 Never Never Land
A-4 Alone Together
B-1 To Kill A Mockingbird
B-2 Spring Can Really Hang You Up The Most
B-3 My Favorite Things
B-4 Toot Toot Tootsie (Goodbye)
B-5 Falling In Love With Love

上記の演目は、ほとんど同じ趣向なんですが、特にA面ド頭の「Little Bird」が最高です! ハワード・ロバーツとケニー・フュームを加えてのシャープなリズムに支えられ、ピート・ジョリーが哀愁のテーマが歯切れ良く弾いてくれる、それだけで胸キュン演奏です。もちろん力強さもちゃ~んとありますから、ある意味でジャズの楽しさが集約されたトラックだと思います。流行はじめたボサロック系のビートを使っているのも高得点です。

同系では「Never Never Land」も実に楽しい仕上がりです。

また変拍子の「Three-Four-Five」や「My Favorite Things」「Falling In Love With Love」でもグルーヴィな表現に拘るピート・ジョリーのジャズ魂は流石! それは正統派4ビートでじっくりと聞かせる「Alone Together」や小粋な表現の「Toot Toot Tootsie」でも変わることなく、痛快なノリと豊かな歌心には、ただただ、聴き入るのみです♪

そしてスロー物では、なんと言っても「Spring Can Really Hang You Up The Most」でしょう! 作者のトミー・ウルフが、このアルバムをプロデュースしているあたりも味わい深いところで、全く間然することの無い名演が残されました。あぁ、このピアノの豊かな表現力と洒落たフィーリングは、まさにピート・ジョリーでしかありません! 私は死ぬまで聴き続けるでしょう。

共演者も名手揃いですし、とにかく全9曲が究極の洒落たピアノジャズになっていますから、サイケおやじとしては、ノー文句の推薦盤です。なによりもメロディを大切にしているところが、良いですねぇ~♪

ちなみにオリジナル盤は、既に述べたように、中古盤屋のマストアイテムになっていますから、聴くためならばCDで充分でしょう。現在発売中のブツはリマスターも良好です。

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