相変わらず、節操の無い発言・失言が目立ちますねぇ。
まあ、私も人のことは言えないんです。
今日も古くからの友人を当時のニックネームで呼んでしまって……。もちろん友人は、それなりの地位にあるわけですから、場の空気が固まったというか……。笑ってごまかすしか手がありませんでした。
まあ、ご容赦下さい。
ということで、これを聴いて忘れましょう――
■Lee Morgan Allstar Sextet (Blue Note)
レコード蒐集には所謂「ジャケ買い」という趣味があります。まあ、私はそれほど熱心では無いのですが、やっぱり、どうしても欲しくなるブツが確かにありますね。
本日のアルバムは、私にとって、当にそれです。
というのも、実は中身はブルーノートが1970年代中頃からスタートさせた未発表曲集で、アメリカでは「The Procrastinator」というタイトルの2枚組アルバムとして発売された中の1枚なのです。
それを我国では、わざわざ1枚物のアルバムとして発売したわけですが、そのアメリカ盤2枚組は輸入されても1980円ほどで買えたのに、日本盤は1枚で2300円というエグイ商売でしたから、当時の私は、なんだかなぁ……。
ところが日本盤はジャケットのデザインが良いんですねぇ~♪ 如何にもジャズ者の琴線に触れるというか、ブルーノートの雰囲気をきちんと感じさせるニクイ仕上がりでしたから、結局、数年後に中古で買ってしまったというわけです。
ちなみにオリジナルの2枚組も、しっかり入手していたんですから、なんとも罪深い話……。
さて、肝心の中身は、ボツっていたとは思えないほどの極上品!
録音は1967年7月14日! おぉ、ジョン・コルトレーンの命日じゃぁないか! メンバーはリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、タイトルに偽り無しのオールスタアズです――
A-1 The Procrastinator
リー・モーガンが書いた荘厳にして勇壮な名曲です。最初、スローで演奏されるところは、アフリカの広大な草原というか、大自然の情景が浮かんでくる感じですし、テンポアップして同じテーマメロディを演奏するところは、強い意志を持って突き進む感じが最高です。
もちろんリー・モーガンは迷いが無く、得意のフレーズと緩急自在のノリで圧倒的なアドリブを聞かせてくれます。バックのリズム隊では、抜群の存在感を示すロン・カーターが良いですねぇ♪
続くウェイン・ショーターは、もちろん素晴らしいのですが、この時期のウェイン・ショーター、そしてハービー・ハンコックとロン・カーターはマイルス・デイビス(tp) のバンドレギュラーであり、そこでは4ビートをやりつくした感がありましたから、ここでの少し違った表情・表現は印象的です。ハービー・ハンコックなんか、こういう正統派モダンジャズを楽しんでいる様子がはっきりと出ています。
それとリアルタイムでブルーノートの看板だったボビー・ハッチャーソンが、やっぱり強い印象を残します。本当にクールでカッコイイ♪
A-2 Party Time
これもリー・モーガンのオリジナルで、グルーヴィな雰囲気が横溢した名曲です。いやぁ、ドドンパを敲くビリー・ヒギンズが最高ですねぇ~~♪
アドリブ先発はウェイン・ショーターですが、十八番の脱力フィーリングが全開で、たまりません。特に3コラース目なんか、悶絶してしまうですよぉ~♪ また、それはリー・モーガンにも伝染していくんですが、そこを怠惰なブルース感覚にしてしまうのが、天才の証でしょうか、流石の素晴らしさに唸ります。
そしてボビー・ハッチャーソンが、これまた地味に良いんです♪ 持ち味のクールなところを情熱の発露にしていくあたりは、熱血を感じます。アドリブの持ち時間が短いのが残念!
それとハービー・ハンコックとビリー・ヒギンズの息の合わせ方とか、合の手の入れ按配も、ひとつ間違えると笑っちゃいます状態なんですが、そのギリギリ感にはグッときますねっ♪
A-3 Dear Sir
ウェイン・ショーターの幻想感覚に満ちたオリジナル曲です。もちろん作者のアドリブが一番優れていますが、リー・モーガンの真摯でハスキーなトランペットやボビー・ハッチャーソンの新鮮な感覚も捨て難い魅力があります。
全体にはスローな展開ですので、やや難しい雰囲気もありますが、これが当時は最先端のモダンジャズだったということで、納得するしかないでしょう。そういう説得力が確かにあります。
B-1 Stopstart
ビリー・ヒギンズのドラムスに導かれてスタートする痛快なハードバッブ曲は、もちろんリー・モーガンのオリジナルです。
アドリブ先発はカッコ良さ全開のボビー・ハッチャーソンで、スピード感満点のクールなヴァイブラフォンには、心底シビレます♪ そして続くリー・モーガンが、これまた突進力があって最高! これぞ「モーガン節」という十八番が連発されるのです。
しかしウェイン・ショーターのパートになると、やっぱりハービー・ハンコックがハメを外したというか、かなり思い切ったバッキングに変わっていて、演奏全体にアブナイ香りが!? もちろんアドリブでも凄いノリを聞かせてくれますが、実はビリー・ヒギンズの仕業という真相もあったりして……。
クライマックスではモーガン vs ヒギンズというブルーノート的日常茶飯事が素晴らしい限りです。ラストテーマも、当然のように痛快至極!
B-2 Rio
ウェイン・ショーターが書いた擬似ボサノバで、なんとも言えない安らぎが素敵です。そのミソはボビー・ハッチャーソンのヴァイブラフォンとビリー・ヒギンズの軽快なドラムスでしょう♪
そして作者自らがアドリブ先発で見本を示すというか、脱力して爽快なアフターセックスのような名演を聞かせます。するとリー・モーガンまでもが珍しく気抜けのビール寸前というノリで、美メロのアドリブを吹いてくれるんですからねぇ~~♪ 私のような者は、ちょっと絶句です。
もちろん幻想的なハービー・ハンコックも素敵ですよ♪
B-3 Soft Touch
リー・モーガンのオリジナル曲ですが、マイルス・デイビスのバンドのように聞こえてくるのは、ショーター、ハンコック、ロンの3人がいるからに違いありません。
しかしアドリブパートに入ると、俄然ハッスルするリー・モーガンが強烈です。ミディアムテンポでグルーヴィな雰囲気を出すことにかけては、やっぱり天下一品の存在ですねぇ~~♪ 続くボビー・ハッチャーソンも熱いフレーズを連発してくれます。
しかしウェイン・ショーターが登場すると、またまたマイルス色が強くなってしまいます。というか、これはショーター色というべきで、ビリー・ヒギンズまでもがトニー・ウィリアムスになっているという節操の無さが、実は最高なのでした。
ということで、内容は如何にもジャズ喫茶がジャズ喫茶らしくなる演奏ばかりです。そして、こういうセッションがお蔵入りしてしまう当時の水準の高さと贅沢には、ただただ感服するのみ……。
ただしリアルタイムでのリー・モーガンはジャズロック調の楽しい演奏を求められていたはずですから、ムベなるかなという感じもします。
時代はサイケロックからハードロックやプログレに進化していった白人ロックの天下でしたから、モダンジャズの砦たるブルーノートであっても、様々な試行錯誤があって当然の時期でしょう。そこを突き抜けんとしていた優れたジャズメンの日常的記録としては、あまりにも勿体無い演奏だと思います。
そしてこれが、リアルタイムで出ていたら、どんなジャケットになっていたか? 今でも興味津々です。