OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

燃え上がるケッセル

2007-07-25 17:26:47 | Weblog

最近の女性のヘアスタイルは、髪の毛の先がボサボサというか、揃っていないのが、気になります。

まあ、それは流行なんでしょうが、妙に首筋や頬のあたりがヒクヒクしているようで、鬱陶しさを感じてしまうのは、私が古い人間だからでしょう……。

ということで、本日は――

On Fire / Barney Kessel (Emeral)

バーニー・ケッセルはジャズギターの王道をいく名手ですが、同時にハリウッドでのスタジオの仕事でも、音楽史に名を残しているのは有名でしょう。

特に1950年代後期から1960年代半ば頃までは、アメリカ西海岸で量産されるポピュラー~ロック、ポップス系のセッションでファーストコールの実力を発揮していました。尤も、それらのレコードにクレジットが記載される事はほとんどありませんでしたが……。

ちなみにそういう境遇を選んだのも、ケッセル本人が巡業嫌いだった所為と言われています。なにしろそれでオスカー・ピーターソンのレギュラートリオを辞めてしまったほどですから!

で、このアルバムは久々に作られた本格的ジャズのリーダー盤で、製作レーベルの「エメラルド」は、当時のポップス界では大プロデューサーだったフィル・スペクターが立ち上げたとされています。もちろんバーニー・ケッセルは、フィル・スペクターのセッションには欠かせない人材でした。

しかし「エメラルド」で作られたアルバムは、これ1枚しか発見されていません。実はこの作品が発売された1966年頃のフィル・スペクターは、アメリカでは完全に落目になっており、自己のレーベル「フィレス」も消滅寸前でした。

そこで新機軸を狙ってジャズの分野に進出しようとしたのか? はたまた、これまでの功績に報いるためにバーニー・ケッセルのリーダー盤を作ったのか? いろいろな妄想・因縁が尽きないアルバムです。

しかし内容は流石に素晴らしい♪ 録音は1965年、ハリウッドにあった「P.J's」というクラブでのライブセッションで、メンバーはバーニー・ケッセル(p)、ジェリー・シェフ(b)、フランク・キャップ(ds) というトリオ編成です――

A-1 Slow Burn
 バーニー・ケッセルが書いたブルースで、グルーヴィな雰囲気が横溢した名演です。とにかくモダンジャズにおけるブルースギターの解釈としては、これ以上無い素晴らしさとでも申しましょうか、タメとモタレの黒い感覚に加えて、絶妙のアタックを聞かせるピッキングの上手さやフレーズ展開とアドリブ構成の凄さは、他の追従を許さぬものがあります。
 もちろん今日の感覚からは地味でイナタイところも目立ちますが、実はそれこそがモダンジャズ黄金時代の「味」だと思います。
 また野太いジェリー・シェフのベースも素晴らしいですねぇ。この人もまた、スタジオの世界ではトップクラスの名手で、エルビス・プレスリーからドアーズまで、どんなセッシッョンでも確実な仕事をこなした偉人です。エレキベースも最高に上手いんですよっ♪
 それと的確なサポートに撤するフランク・キャップも、やはりセッションドラマーとして、ずぅ~っとトップをとっていた名人であり、ジャズの世界ではアンドレ・プレヴィン(p) とのトリオ盤で有名でしょう。
 そういう3人ですから、まあ、ここでの快演はあたりまえだのクラッカーかもしれませんが、私なんかにすれば、聴くほどに凄いと唸るしかありません。

A-2 Just In Time
 有名スタンダート曲ですが、バーニー・ケッセルは思い切ったアップテンポでバリバリ弾きまくっていて、爽快です。もちろん荒っぽい部分もあるんですが、それこそがライブセッションの醍醐味でしょう。ガンガン鳴らすコード弾きや撫でるようなギャロップ奏法も鮮やかですし、後半でのドラムスとの対決でも、全く怯むことなくブッ飛ばすあたりは、最高です。

A-3 The Shadow Of Your Smile
 1965年に製作・公開された映画「いそしぎ」のテーマ曲で、ボサノバにアレンジした演奏も多いのですが、ここではそれが煮えきっていません。というか、バーニー・ケッセルはスローな解釈に撤しているのですが、ドラムスが妙なラテンビートを使い、間に入ったベースが迷い道……。
 まあ、それでもちゃ~んと纏まっていくんですから、やはり名手は違うんだなぁ……、と思ってしまう私です。ちょっと苦しいでしょうか?

B-1 Recado Bossa Nova
 ハンク・モブレー(ts) でお馴染みの名曲ですが、ここでも痛快なボサロック仕立てになっていて、最高です。フランク・キャップのリムショットが痛快なんです♪
 もちろんバーニー・ケッセルのギターも素晴らしく、あくまでもジャズに拘るフレーズばっかりを弾いてくれます。あぁ、この潔さがバーニー・ケッセルの魅力かもしれません。
 バンドとしての纏まりも申し分なく、ギターのフレーズを読みきって先回りしたようなオカズを入れるドラムスと上手いリフで対抗するベースの凄さ♪ これぞ名手達の競演です。

B-2 Sweet Baby
 バーニー・ケッセルが書いた愛らしいメロディのオリジナル曲です。ソフトな感性とジャズの悪魔性が上手く交じり合った、なかなかの名曲・名演だと思います。
 特にジェリー・シェフのベースが曲の要所をしっかりと押さえているようですし、フランク・キャップの力強いドラムスも地味ながら凄いと思います。
 肝心のバーニー・ケッセルは、絶妙のチョーキングとコード弾きで駆使して、正統派のモダンジャズを聞かせてくれるのでした。

B-3 Who Can I Turn To
 ボーカリストが好んで取上げるスタンダード曲ですから、バーニー・ケッセルも歌心優先のスローな解釈で、真っ向勝負しています。う~ん、それにしても背後でガヤガヤと喋り続けているお客さんは、贅沢の極みですねぇ。グラスや食器の触合う音や笑い声も良い感じ♪ まあ、これがクラブでの日常なんでしょう。素晴らしきアメリカです♪

B-4 One Mint Julep
 レイ・チャールズやクローバーズで有名なR&Bのヒット曲を烈しいモダンジャズにした名演が、これです。
 まず快適なリズムが素晴らしく、シャッフル気味の4ビートに乗って、ジャズギターの真髄に迫っていくバーニー・ケッセル! あぁ、何度聴いてもシビレます。特にチョーキングが絶妙ですし、コード弾きの上手さも凄いですねぇ~~~♪ ちょっと聞きには危なっかしいような早弾きも、ケツがピタッと収まってしまうのは、驚異的です! リフの作り方も上手いですねぇ♪
 それとジェリー・シェフのベースが、これまた最高です。ぜんぜん難しく聞こえないんですが、それでいて、如何にもジャズを聴いてる気分にさせてくれるんです。大団円直前に入るメンバー紹介も、実に良い感じです♪

というこのアルバムは、フィル・スペクター関連ということで、モノラル盤しか出ていないと思いきや、私有盤はステレオ仕様です。というよりも、ジャケットにはステレオなんて単語は無いのに、中身がステレオ盤だったんです。

これはロスの某中古屋で買ったんですが、こんなこともあるんですねぇ~。

ちなみにこのアルバムは、1982年頃に日本盤が出たんですが、音質の酷さは伝説になっているほどです。また後にCD化されたらしいのですが、それはステレオ仕様になっているとか……。

結局、このアルバムはモノラル仕様がオリジナルなんでしょうねぇ。しかし負け惜しみでは無くて、このライブの臨場感は、ステレオ仕様だからこその良さが感じられます。もしかしたら、フィル・スペクターのことですから、そのあたりはオーバーダビングで作ってあるのかもしれませんが!?

まあ、それはそれとして、ジャズギターのアルバムとしては極上品です。バーニー・ケッセルは、ちょうどこの頃からスタジオの仕事をセーブして、再びジャズの活動を本格化させていきますが、1970年代に発表した名盤群に負けず劣らずの傑作だと思います。

コメント
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