OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

輝いた発掘盤

2007-07-18 17:56:57 | Weblog

地震騒ぎで自粛していましたが、本日から音盤紹介を再開致します。まず――

Poppin' / Hank Mobley (Blue Note)

新録よりも嬉しい発掘盤というのが、ジャズの世界には沢山あります。本日の1枚は、当にそうした代表的なアルバムでしょう。

リーダーのハンク・モブレーは、ご存知、モダンジャズ全盛期の花形プレイヤーで、リーダー盤も数多く出していますし、脇役としても歴史的名盤で賛否両論の演奏を残している偉人ですが、1970年代に入ってからは時代の波に流されたか、あるいは健康問題もあって、第一線から退いてしまいました。

しかし、その人気は地味ながら不滅であり、我国ではジョン・コルトレーンと比較されてダメな見本とされた時期もありながら、実はジャズ喫茶に集うファンやコアなマニアからは愛され続けていたのです。

そして1970年代中頃からのフュージョンブームでは、4ビートだって充分に快楽的であることを証明した「ディッピン(Blue Note)」という根強いヒット盤で、ますますその人気を高めていました。

で、そんな時期の1980年に突如として発売されたのが、このアルバムです。つまり未発表音源集というわけですが、タイトルが「ポッピン」ですからねぇ~♪ どうしても「ディッピン」との関連を期待してしまうのですが……。

おぉ、内容はバリバリのハードバップ! 録音は1957年10月20日、メンバーはアート・ファーマー(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ペッパー・アダムス(bs)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、極上の猛者が揃っています――

A-1 Poppin'
 ハンク・モブレーが書いた典型的なハードバップ曲で、明るさの中に一抹の哀愁を滲ませるソニー・クラークがアドリブの先発ですから、後はもう、お約束の快演が続きます。
 強靭な4ビートを送り出しているポール・チェンバースとフィリー・ジョーは、もちろんマイルス・デイビス(tp) のバンドでは同僚ですから、息もぴったり♪ 煽られて暴走するペッパー・アダムスのバリトンサックスは、長いフレーズを一気に吹ききってしまう恐ろしさです。
 またアート・ファーマーは柔らかな音色を活かした即興演奏の妙技を完全披露♪ ソニー・クラークの合の手も良いですねぇ♪
 そして我等がハンク・モブレーが勇躍登場、と書きたいところなんですが、やや凡庸に始めるアドリブが??? しかし、これがハンク・モブレーの真骨頂とでも申しましょうか、吹くほどに自分のペースを掴んで、クライマックスはフィリー・ジョーとの一騎打ちで場を盛り上げるのでした。 

A-2 Darn That Dream
 暖かいテーマメロディが人気のスタンダード曲です。もちろんハンク・モブレーが得意のタメとモタレでテーマを吹奏してくれますから、ちょっと地味に聞こえても奥が深く、それでいて裏も表も無いストレートな感覚が素晴らしいところです。
 またアート・ファーマーのミュートトランペットが実に良い味ですし、寄り添うポール・チェンバースのベースも名演でしょう。そしてペッパー・アダムスは、力強い中にも白人らしいセンスを感じさせる憎たらしさ!
 結局、ソニー・クラークが伴奏&アドリブで一番印象的な活躍をしているようです。もちろんハンク・モブレーも最後の最後で、もう一度、本領を発揮していますよ。無伴奏のソロが流石です♪

A-3 Gettin' Into Something
 これもハンク・モブレーが書いたアップテンポのハードバップ曲で、とにかくテーマ部分からゴキゲンです♪ 3管の迫力に歯切れの良いリズム隊! このアルバムの目玉演奏です。
 もちろんアドリブパートでは先発のハンク・モブレーが自分だけの「節」を出しまくり♪ このノリ、このフレーズ、最高ですねぇ~~~♪ 続けて出るアート・ファーマーも最初っから好調で、十八番のフレーズを出し惜しみしていません。
 そしてペッパー・アダムスが、また凄いです。アタックが強くて、しかも淀みないアドリブソロには、パリトンサックスの魅力が横溢しています。さらにソニー・クラークが絶好調の「ソニクラ節」なんですから、たまりませんねぇ♪

B-1 Tune Up
 B面は、いきなりマイルス・デイビスの十八番が演奏されますから、フィリー・ジョー&ポール・チェンバースが薬籠中の強烈なグルーヴを提供しています。
 するとアドリブ先発のアート・ファーマーが、マイルス・デイビスっぽく聞こえてしまいます。あぁ、これがジャズの魔力なんでしょうねぇ……。もちろんペッパー・アダムスとハンク・モブレーも好演ですが、耳は完全にリズム隊へ!
 う~ん、ソニー・クラークが、本当に良いですねぇ~♪ ファンキーで歯切れ良く、不思議な哀愁というか、仄かなマイナー調は唯一無二の個性だと思います。

B-2 East Of Brooklyn
 これまたハンク・モブレーが書いたオリジナル曲で、ラテンリズムやカッコ良いリフが交じり合ったグルーヴィな雰囲気が秀逸です。
 もちろんアドリブの先発は作者自身が、思わず唸るブレイクを披露♪ そのまま独自のノリでハードパップの真髄を聞かせてくれます。あぁ、歌心がいっぱいのフレーズが止まりませんねぇ~♪ しかも黒いです!
 そして続くアート・ファーマーがクールで優しいハードボイルドの見本のような名演を聞かせれば、ペッパー・アダムスはバリバリの豪快さに加えて、ミステリアスな雰囲気までも醸し出す、これも名演だと思う他はありません。
 さらにソニー・クラーク! あぁ、なんでこんなにグッと惹きつけられるんでしょう!? ポール・チェンバースも抜群の存在感を示してくれますし、フィリー・ジョーの凄さは言わずもがなです。

ということで、今となっては、ちょっと地味に聞こえるかもしれませんが、フュージョンが爛熟し、新しい4ビートジャズとしての新伝承派が台頭しつつあった1980年には、間違いなく本物の輝きを示すアルバムでした。

しかも日本先行発売だったんじゃないでしょうか? ジャケットも往年のイメージを大切にして、尚且つ、日本のファンを魅了するデザインでした♪

現在CD化されているかは不明なんですが、機会があれば、一度は聴いて損のない出来だと思います。特にソニー・クラークのファンにはオススメですよ。

コメント
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