アッという間に、もう今年も半分終了!
あまりの速さに絶句する前に、そういう事実に本日、気がつきました。
あぁ、大切にしなければならない時間なのに……。こんなん聴いていて、いいんでしょうか――
■Sophisticated Swing / Cannonball Adderley (Emarcy)
真っ赤なスポーツカーでポーズをきめる金髪美女の、ヒップラインに目が釘付けのアルバムですが、中身はブリブリのハードバップです。
主役は後にファンクの卸商人とまで言われたキャノンボール・アダレイとその一座ですから、全く正統派な演奏ばかりなんですが……。
それにしてもアルバムタイトルといい、ジャケットデザインといい、完全に白人マーケットを意識した作りだと思いますが、それがモダンジャズのひとつの実相かもしれません。
当時の黒人はモダンジャスよりはR&Bとかモダンブルースを聴いていたんでしょうねぇ。ニューヨークあたりでモダンジャズが流行っていたのは、富裕な白人客中心のナイトクラブだったという事実も!
ですから、どんなに黒人がグリグリに真っ黒な演奏をしても、それは自己満足だったのかもしれません。白人客を満足させることよりも……。
しかし、このアルバムの演奏には、オーバープロデュースはあるものの、嘘や気負いが感じられません。ただ、ひたすらに自分達のジャズを演奏する真摯な姿勢は、商業的には上手くなかったようですが、やり遂げた凄みが今日でも感じられます。
録音は1957年2月、メンバーはナット・アダレイ(cor)、キャノンボール・アダレイ(as)、ジュニア・マンス(p)、サム・ジョーンズ(b)、ジミー・コブ(ds) という、当時のレギュラーバンドによるものです――
A-1 Another Kind Of Soul (1957年2月11日録音)
ナット・アダレイが作曲した溌剌ハードバップです。テーマでジミー・コブが張り切るアクセントがカッコイイですねぇ。
アドリブパートは短めですが、アダレイ兄弟のグルーヴィなソロに対し、熱くなっているものの、どこかクールなジュニア・マンスのピアノが、より黒っぽいという、摩訶不思議な結果が面白いところです。
A-2 Miss Jackie's Delight (1957年2月6日録音)
サム・ジョーンズの真っ黒なウォーキングベースに導かれて始る演奏は徹頭徹尾、グルーヴィです。
作曲はデイブ・ブルーベックのバンドでレギュラーだったジーン・ライト(b) というのも意味深で、まあ、こういう曲を書いたって、どーせ親分のディブ・ブルーベックは買ってくれないので、というところでしょう。
タメとウネリの真髄を聞かせるキャノンボールに対し、マイルス・デイビスみたいな弟のナットが泣かせます♪ ストップタイムを使った見せ場も鮮やかですねぇ。
そしてジュニア・マンスが本領発揮です! ちなみにこの曲は自分のリーダー盤でも演奏しているほどですから、よほど相性が良いのでしょう、ソフトな黒っぽさが見事です。
A-3 Spring Is Here (1957年2月11日録音)
有名スタンダードのバラード演奏で、キャノンボール・アダレイが艶っぽいアルトサックスを存分に披露しています。
演奏のキメにはホーンのアンサンブルも使われたりして、けっこう気配りしているのが、微笑ましいところ♪
A-4 Tribute To Brownie (1957年2月6日録音)
タイトルどおり、夭折した天才トランペッターのクリフォード・ブラウンに捧げたファンキー曲ですが、どこかで聴いたような……。ケニー・ドーハムだったかなぁ……。ちなみに作曲にはデューク・ピアソン(p) が絡んでいます。
アドリブパートはスピード感に満ちたキャノンボール・アダレイ、歯切れの良いピチカートで熱演するサム・ジョーンズだけという勿体無さ! こういう贅沢が、許されるんでしょうか!?
B-1 Spectacular (1957年2月6日録音)
アップテンポのハードバップ大会なので、キャノンボール・アダレーの弾けっぷりが強烈です。ツッコミもウネリも天下一品ですが、背後でキメまくりのリズム隊も凄いです。特にジミー・コブが爽快ですねぇ~~♪
またナット・アダレーも大健闘! ジュニア・マンスのアドリブを聞いていると、元ネタが分かったりもします。「恋人よ我に帰れ」でしょうか? それとも「クイックシルバー」? どっちも同じですが♪
B-2 Jeanie (1957年2月8日録音)
これまた軽快なハードバップですが、アドリブ先発のサム・ジョーンズが大活躍! 軋んで歯切れの良いベースソロは最高です。
それとジュニア・マンスとジミー・コブが最高のコンビネーションです。いろいろなキメが出てきますから、飽きません。アダレイ兄弟の気持ち良さそうな吹奏は、その証かと思います。
B-3 Stella By Starlight (1957年2月7日録音)
これはリズム隊だけの演奏で、つまりジュニア・マンスのトリオを聴いているのと同じです。
曲は有名スタンダードながら、けっこう重たいノリがハードバップですねぇ。ちょっと聞きはカクテルピアノなんですが、時折入れてくる真っ黒な装飾音が、当時としては過激だったと思われます。
このあたりが、当時の白人客には、ちょうど良い按配だったんでしょうか……?
B-4 Edie Mclin (1957年2月11日録音)
グルーヴィな雰囲気が横溢したスローなテーマが、なかなか「味」の世界です。そして力強いリズム隊に支えられ、キャノンボール・アダレイがグイグイと吹いていく世界は、もちろん極上のハードバップ! ちょっとダーティな音色で対抗するナット・アダレイも良い感じです。
そして、やっぱりジュニア・マンス! これは最高です!
B-5 Cobbwebb (1957年2月6日録音)
オーラスはタイトルどおり、ジミー・コブのドラムスを中心としたアップテンポ曲です。もちろんキャノンボール・アダレイも大ハッスルで、途中ではナット・アダレイと烈しく絡んだりします。とにかくリフとブレイクのカッコ良さが際立つ名曲・名演♪
ということで、良い演奏ばっかりなんですが、それぞれの演奏時間が短いのが勿体無い限り……。もちろん濃縮された凄さはあるんですが、このあたりのプロデュースが、あきらかに白人向けというか、一般大衆を意識しすぎたところかもしれません。
願わくば、このバンドによるライブ音源の発掘が望まれるところです。