OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

こんなパウエルも♪

2007-07-07 17:08:44 | Weblog

某オーディションに立会という幸運に恵まれた日でした。

美女がいっぱい♪ 「壁女」「山女」が、どっさり♪

という中に、後輩のお嬢さんが紛れ込んでいました。どうやらグラビアアイドルになりたいらしいです。まあ、それはそれで良いんですが、グラビアアイドルなんて所詮は女優かタレントに成るための修行の場ですから、それが分かっているのか……? 儲からないよぉ~。

巨乳だけじゃ、ダメなんですよ。和みの笑顔も必要とだけ、言ってしまった偉そうな私です。女は愛嬌? いや、気持ちだって大切です!

ということで、本日は――

Strictly Powell / Bud Powell (RCA)

バド・パウエルは間違いなく20世紀音楽界の天才ピアニストでしたが、残された音源が全て最高とは言えません。それは精神と肉体の好不調がダイレクトに出た結果でもあり、それこそが瞬間芸たるジャズの真骨頂ではありますが……。

このアルバムは、そんな波乱の真っ只中を記録した1枚で、正統派ジャズファンには不必要とさえ言われるのですが、内容は決して悪くないですし、個人的には生身のバド・パウエルが哀しくも身に染みる愛聴盤です。

録音は1956年10月5日、メンバーはバド・パウエル(p)、ジョージ・デュビビエ(b)、アート・テイラー(ds) という、これは当時のレギュラートリオだと思われます――

A-1 There'll Never Be Another You
 個人的にも大好きなスタンダード曲ですが、バド・パウエルにしても十八番でした。そして幾つかのバージョンが残されていますが、その基本パターンは、この演奏で出来上がっています。つまりキメのフレーズとかアドリブの展開が、ほとんど同じなんですねぇ。
 もちろん鬼気迫る、なんていう部分は皆無に等しいのですが、ミディアムテンポで暖かい歌心を披露するバド・パウエルは、本当に素敵です。当時のLPは、一番良い演奏をド頭に持ってくるのが常套手段でしたから、さもありなんと、ひとり納得しています。
 ミスタッチか、あるいは確信犯なのか、不協和音風の音の使い方が、なんとも言えない快感でもあります。

A-2 Coscrane
 バド・パウエルのオリジナルブルースですが、ビバップの語法を正当に解釈し、セロニアス・モンクの影響も消化しながらの演奏は、ジャズの真髄が垣間見えるものだと思います。
 ちょっと覇気が無いようなところが、逆にブルースっぽいです。

A-3 Over The Rainbow
 ミュージカル「オズの魔法使い」で有名なスタンダード曲ですから、良く知られたメロディラインをバド・パウエルがどのように解釈していくか、楽しみな演奏です。
 それはかなりカクテルピアノ風なアプローチながら、所々に用いられる不協和音がエキセントリックなモダンジャズの醍醐味でしょうか。ほとんどテーマメロディの変奏ですが、和みよりはバド・パウエルの深遠な心の内が吐露される瞬間があるようで、せつなくなります。

A-4 Blues For Bessie
 あまり正統派のブルースを弾かないバド・パウエルにしては、ストレートな黒っぽさを堪能出来るオリジナル曲です。
 あぁ、このネバリとタメは、やっぱり天才の証でしょう。誰にでも出来そうで、実は難しいところがあると感じます。なによりも聴いている私には、ブルース演奏の魅力がグリグリに伝わってきます。
 スローな演奏をダレさせないジョージ・デュビビエの力強いベースも良いですねぇ♪

A-5 Time Was
 これは全盛期のバド・パウエルを彷彿とさせるスローな演奏で、幻想の中へ落ちていく感覚が素敵です。個人的には、こういうバド・パウエルが大好きですから、この曲が締め括りになっているA面を愛聴しています。

B-1 Topsy Turvy
 共にモダンジャズを創成したピアニストのセロニアス・モンクから、モロに影響を受けた証という演奏です。曲はバド・パウエルのオリジナルですが、アドリブパートも含めて、あちらこちらにセロニアス・モンク的な不協和音や同じタイム感覚のフレーズが出まくりです。
 しかし最終的にはバド・パウエルの音楽にしてしまっているのは、流石というか、当たり前なんでしょうねぇ。後年は指が縺れてミスタッチが多くなっても、それが意図的と解釈されるのは、こういう演奏を残していたからかもしれません。

B-2 Lush Life
 デューク・エリントン楽団のヒット曲というよりも、今では有名ジャズオリジナルですから、このバド・パウエルのバージョンにも興味津々! で、結果はドラマチックに盛り上げてゴスペル感覚も入った秀逸な出来栄え♪
 短い演奏で、ほとんどがテーマメロディの変奏に終始するのですが、かなり自由度の高い演奏だと思います。

B-3 Elegy
 快調な「パウエル節」が楽しめるオリジナル曲です。実際、快適なテンポで繰り出されるアドリブフレーズは、全盛期の猛烈なドライブ感は失せていますが、味と温か味に溢れています。
 アート・テイラーのブラシによる堅実な伴奏も好感が持てますし、更なる自由を求めて果せないバド・パウエルの苦闘が、かなり心に染み入る名演♪ 後半の濁ったようなブロックコードの響きが印象的です。

B-4 They Didn't Believe Me
 相当な迷い道から少しずつ自己主張していくトリオ全体のノリが素晴らしい演奏です。と言っても、これはあくまでも私個人の感想であって、万人が褒めることは無いはずです。
 ブロックコード主体で穏やかにテーマを変奏していくバド・パウエルには、心底、グッと惹き込まれる私ではありますが……。

B-5 I Cover The Waterfront
 正直言って、かなりボロボロに成りかかった演奏なんですが、イントロの素晴らしさは特筆すべきだと思います。しかし、まあ、後は???が多くなって……。
 ただし演奏全体に漂う哀愁は不思議なほどです。緩やかなテンポの中で不協和音やエキセントリックな音選びは、決して偶然ではないはずで、これこそ、当時のバド・パウエルだけが持つ魅力かもしれません。個人的には大好きです。

B-6 Jump City
 オーラスはバド・パウエルのオリジナル曲ですが、それにしてもこの快適さは一体、何でしょう!? アート・テイラーのブラシも力強くドライブしていますし、ジョージ・デュビビエのベースも堅実ですが、バド・パウエルは唸り声をあげながら完全にトリオを仕切っています。
 このあたりは、もちろんリーダーとしての力量なんですが、腐っても鯛なんて諺は決して使って欲しくない! そんな素敵さが確かにあります。

ということで、世評はよろしくないアルバムなんですが、聞いていて間違いなく心地良い仕上がりです。これは大手レコード会社によるプロデュースとか録音バランスの良さもあってのことでしょう。曲の流れも最高だと思います。

しかし期待して聴いていただいては、困ります。ちょっと矛盾した言い方かもしれませんが、人によってバド・パウエルに何を期待するかが、このアルバムを聴く時の心構えかもしれません。

1950年前後の凄みや神憑りは当然の如くありませんし、晩年の悲哀もそれほど滲み出ていません。しかしジャズピアニストとして自然体に構えた演奏は、凡百のピアノトリオ物とは一線を隔す存在感があります。

このあたりは、本当に不思議なところで、下り坂の中で漂う独特の佇まいをレコードの中にまで滲ませてしまうのは、やはり天才だけが持ちうる風格だと思います。

ちなみにジャケットには、鍵盤を見ているバド・パウエルが写っていますが、晩年に残された動く映像では、天空を仰ぐようにして弾きまくっていますから、どっちが本来の姿なのか、ちょっと興味があります。

コメント
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