OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

やっぱり名盤は良い♪

2007-07-06 15:15:28 | Weblog

昨夜は久々に映画館へ行きました。

いやぁ~、やっぱり暗闇と大スクリーンは良いですねぇ。

しかもその前にはジャズ喫茶にも行ってしまったという、贅沢な1日でした。

しかし今日は、反動が出たのか、朝からギュウギュウにキツイ仕事が……。やっと今、昼メシを食っています。

ということで、本日は――

Kelly Great / Wynton Kelly (Vee Jay)

1960年代末のロック界で、ひとつのトレンドになっていたのが「スーパーセッション」でした。これは、色々なバンドに所属しているメンバーが、グループやマネージメントの制約を超えて一緒にレコードを作るという新機軸だったのです。

ところが、そんな事はジャズの世界では当たり前でした。それはジャズメンが皆、腕に覚えの一匹狼というか、個人技の優劣と感性がそのまんま、演奏に繁栄してしまうところでは、当然が必然!

とはいえ、やっぱりワクワクする顔合わせがあるわけで、大物だけのジャムセッションとか、オールスタア編成のバンドとか、それで作られたレコードには、どうしても聴いてみたくなる魅力があるのです。

例えばこのアルバムも、そうした1枚でしょう。なにしろメンバーが凄いです。

録音は1959年8月12日、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) といえば、フロント陣が当時のジャズメッセンジャーズ、そしてリズム隊がマイルス・デイビスのバンドからという、これ以上無い組合せになっています――

A-1 Wrinkles
 ウイントン・ケリーが書いたオリジナル曲で、飛び跳ねるような「ケリー節」が満喫出来るテーマメロディからしてシビレます。骨太なポール・チェンバースのベースとアグレッシブなフィリー・ジョーのドラムスも上手く絡んで、もう、たまりません。もちろんゴスペルファンキーな味付けも最高!
 ですからミュートでジンワリと出て、グイグイと盛り上げていくリー・モーガンのトランペットも味わい深く、間合いを活かした伴奏を心がけながら、ディープなグルーヴを生み出していくリズム隊があればこそ、奇跡の一瞬が続出します。
 ところがウェイン・ショーターは一筋縄ではいきません。ブルースでありながら、吹き散らすアドリブメロディは奇怪なフレーズの連発で、ダークな音色と妙なタイム感覚は、煮え切らないイライラを聴き手に与えながら、不思議な爽快感があります。
 資料的には、これがウェイン・ショーターの初レコーディングかもしれませんが、その際立つ個性と新しさは既に完成されています。
 しかしリズム隊が、そんな思惑に左右されませんから、ウイントン・ケリーのアドリブパートに入ってますます激するファンキー感覚には、心底、夢中にさせられます。粘って歯切れ良く、モタれた弾むピアノの楽しさ♪ これがモダンジャズの真髄か!? と思わせられるところが、たっぷりです。フィリー・ジョーにしても、自身の代表的なセッションが、この日だったと思います。

A-2 Mama“G”
 で、そのフィリー・ジョーの大活躍が、この曲です。
 作曲はウェイン・ショーターによるメチャ、カッコ良すぎるハードパップで、スピード感満点のテーマメロディとフィリー・ジョーのメリハリの効いたドラムスが一体となって疾走していく演奏は、参加メンバーの当時の勢いが良く出ていると思います。
 アドリブパート先発のリー・モーガンは溌剌と吹きまくり、トリッキーなフレーズの妙が最高ですし、続くウェイン・ショーターはジョン・コルトレーン風の音符過多なスタイルに独自のタイム感覚を取り入れて、またまた不思議なスタイルを披露しています。
 そしてウイントン・ケリーが十八番のファンキーさを全開させれば、フィリー・ジョーはリムショットで応戦という、リアルタイムのお約束が楽しいところ♪ ポール・チェンバースのアルコ弾きのバックで素敵なクッションを送り出すあたりも、最高です。
 もちろんクライマックスはホーン陣との掛け合いで炸裂するフィリー・ジョーのドラムス! 瞬発力とタメとブレイクのカッコ良さ! そのまんま、ドラムソロに突入しても流れが変わらない凄さは流石だと思います。

B-1 June Night
 B面に入っては、リー・モーガンが畢生の名演を聞かせてくれます。
 曲は地味なスタンダードなんですが、ミュートトランペットによるメロディフェイクの妙技が堪能出来るのです。バックで絡んでくるポール・チェンバースやフィリー・ジョーも、実に良い雰囲気です。
 このあたりはマイルス・デイビスのバンドで、さんざんやっていた展開なんでしょうが、ウイントン・ケリーも含めてのリズム隊のソツの無さは、他のメンツでは出しえないグルーヴが確かにあると感じます。
 そしてリー・モーガンが、そのマイルス・デイビスが専売特許とも言えるミュートの歌物解釈で、全く独自の個性を発揮しているのは大したもんだと思います。あぁ、何度聴いても飽きません。
 さらにウェイン・ショーターが奇々怪々なアドリブをやってしまうんですから、これは温故知新を超越した、新しいモダンジャズが生まれかかっていた証左かもしれません。現在聴いても、全く古びていませんねぇ~~~♪
 肝心のウイントン・ケリーは飛跳ねアドリブと歌心のバランスも素晴らしいのですが、何故かバンドの中では一番地味な役割を演じてしまったというオチが付いているのでした。

B-2 What Know
 リー・モーガンが書いたウルトラ級のファンキー曲で、当時のジャズメッセンジャーズの演目でもありました。
 ここではそこでの親分=アート・ブレイキーとは一味違ったフィリー・ジョーのドラムスということで、より突っ込んだ雰囲気の演奏になっていますが、リー・モーガンのアドリブからはフィンキー感覚が消えることなく、加えてディープに進化したようなスマートさが漂います。
 またウエイン・ショーターは、比較的分かり易いアドリブフレーズながら、現在と全く変わらない新鮮なフィーリングが横溢した名演です。
 さらにウイントン・ケリーのアドリブに受け渡す際のリフが、最高に黒っぽいファンキーさ♪ それに応えて心の底からグルーヴィに迫るピアノは、まさにウイントン・ケリーの本領発揮でしょう。
 そして些か気持ちの悪いポール・チェンバースのアルコ弾きさえも、フィリー・ジョーのドラムスがあれば、楽しくなるんですから、不思議です。クライマックスのドラムソロとファンキーリフの応酬もモダンジャズの魅力のひとつだと思います。

B-3 Sydney
 ウェイン・ショーターが書いた穏やかな名曲です。
 テーマメロディの安らぎが、なんとも言えません。
 アドリブはウイントン・ケリーだけの短い演奏ですが、アルバム中、個人的には一番好きな曲と演奏になっています。

ということで、これは1959年当時の最先端を記録していたと思われます。もちろんリー・モーガンもウェイン・ショーターも若手の注目株としてグングン伸し上がっていたのでしょう。

現在では名盤として認定されていますが、どっちの面が良いか? なんて論争もジャズ喫茶ではありましたですね。まあ、それほどジャズ者には愛されているアルバムということです。

ちなみに私有盤はモノラル仕様ですが、近年のCD復刻では、どうなっているのでしょう。もしあれば、ステレオバージョンや未発表テイク等々をぜひとも聴いてみたいと思わずにはいられない作品です。

コメント (2)
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