OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

レオン・ラッセルの刹那の歌声

2010-05-07 15:48:19 | Rock

Tight Rope c/w This Masquerade / Leon Russell
                                                       
 (Shelter / 日本フォノグラム)

今では広く洋楽ファンに熟知されているレオン・ラッセルも、その実際の貢献とは逆に、我国では日本盤がリアルタイムで発売されなかったミュージシャンのひとりでした。

ここで書いた「その実際の貢献」とは、まず日本で熱烈に紹介されたのが所謂スワンプロック関連の活動で、例のジョー・コッカーやデラニー&ポニーとの連携、またジョージ・ハリスンが主催したバングラ・デシュ救済コンサートにおける圧倒的な存在感等々は、1970年代に公開された音楽映画のハイライトでもありました。

そこでは肩よりも長いシルバーのロングヘア、顔の大部分を覆う髭、そしてその中からの鋭い眼差しは、ある種の偏執さえ感じさせる異様な風体が!?!

ですから、もうひとつの側面として、当時が全盛期だったカーペンターズの大ヒット曲「A Song For You」や「Superstar」、そして「This Masquerade」といった素晴らしいメロディとせつない歌詞の名曲をこの人が作ったと知らされても、それは到底、信じ難いものがありました。

そこでいよいよ昭和47(1972)年になって、ようやくレオン・ラッセルが自ら主宰していたシェルターレコードからの諸作が日本でも発売されることになり、当然ながら洋楽マスコミは挙って大プッシュだったんですが、既に海外では1970年に制作発売されていたソロデビューアルバムの「レオン・ラッセル(邦題はソング・フォー・ユー)」を筆頭に、それはそれは味わい深い充実作ばかりだったことは言うまでもありません。

ただし当然ながら、当時のサイケおやじは小遣いが足りず、それらの名盤は国営FMラジオからのエアチェックや友人から借りて楽しむの精一杯……。

しかしその中で、どぉ~して買わずにいられなかったのが、本日ご紹介の素敵なカップリングシングルでした。

まずA面はリアルタイムの1972年に出た最新アルバム「カーニー」からのシングルカット曲で、自らが弾くホンキートンク風と言われるピアノの響きが刹那的な曲メロを引き立て、さらに独得の悲しい歌声が、たまりません。

またB面収録の「This Masquerade」は今日、カーペンターズやジョージ・ベンソンの代表的なヒット曲のひとつとして、そのメロディは知らぬ人もないはずですが、ここでは作者の強みとでも申しましょうか、なんとイントロから宇宙的な広がりを追及したようなプログレ風の味付けが??? しかし歌声の味わい深さは、まさに絶品! 仮面の夫婦を綴った悲しい歌詞を、こうやって表現するのも、決して演技過剰では無いという証明かもしれません。

ただし、それにしてもジャケ写のポートレイトは悪趣味の決定版で、当時はグラムロックなんていう化粧バンドの流行があったとはいえ、ますます素敵なメロディを書ける天才性とのギャップが!?!

尤も後に知ったところでは、このシングル曲両面が収録されたアルバム「カーニー」そのものが、大衆芸能一座の刹那的日常とか祭りの後の虚しさを表現したものだったというのですから、こういう道化のメイクも狙っていたんでしょうねぇ。

まあ、なんにせよ、レオン・ラッセルは当時の洋楽の世界では裏方から飛び出したスタアとして、その実力者ぶりは今も強い印象を残していると思います。

そして知るほどに凄いと思わざるをえない音楽的キャリアの中では、例えば1960年代のハリウッドポップスの制作現場での活躍として、ピアノやギター、ベースやドラムスまでも巧みにやってしまうマルチプレイヤーとしての存在、また作編曲の腕前も確かだったという実績が、例えばフィル・スペクター関連の音源やザ・バーズ、ハーブ・アルパート、ゲイリー&プレイボーイズ、さらにベンチャーズ等々、数えきれないヒット曲の中で自然に聞けていたという真相にも驚かされるばかりだったのです。

そうしたレオン・ラッセルの名盤名唱は今日でも手軽に楽しめますが、個人的に熱望しているのが、当時のNHKで放送されたスタジオライプの映像復刻です。これは、その頃の仲間達と繰り広げた楽しくも儚い狂熱のパーティという感じで、もう一度、本当に楽しみたいですねぇ。

コメント
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