OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジェリー・ガルシアのもうひとつの桃源郷

2010-05-28 17:56:23 | Rock

Garcia / Jerry Garcia (Warner Bros.)

私はジェリ・ガルシア、ご存じグレイトフル・デッドの中心人物だったギタリストが大好きで、そのクリアーなギターの音色で演じられる浮遊感溢れるアドリブソロ、時には刹那のムードが強くなる自然体の構成美、そしてグレイトフル・デッドという人生の過ごし方までも証明してみせた音楽魂……。

それらは決して大袈裟ではなく、極めて自己に忠実な生き様だったように、今の私には羨ましく感じられのですが、若い頃にはもちろん、そのギターと音楽性ばかりに夢中になっていました。

ですからグレイトフル・デッドとは別にジェリー・ガルシアのソロアルバムが存在すると知った時には、究極的な気分で聴きたくてたまらなくなり、艱難辛苦の末に、まずゲットしたのが、本日ご紹介のアメリカ盤でした。

これは公式にはジェリー・ガルシア単独名義の最初のアルバムらしく、アメリカでは1972年に出たものですが、リアルタイムでの日本盤事情は勉強不足でわかりません。そして当然ながら、私は後追いの鑑賞でした。

 A-1 Deal
 A-2 Bird Song
 A-3 Sugaree
 A-4 Loser
 B-1 Late for Supper
 B-2 Spidergawd
 B-3 Eep Hour
 B-4 To Lay Me Down
 B-5 An Odd Little Place
 B-6 The Wheel

収録は上記の全10曲ですが、残念ながら演奏メンバーのクレジットがジャケットにはありません。ただし今日の情報によれば、ジェリー・ガルシアが歌とギターの他に各種キーボードやベース等々を担当し、ドラムスはグレイトフル・デッドからビル・クルツマンを助っ人に頼んでの多重録音作品というのが定説のようです。

しかし各々の演奏は充実と意外性に裏打ちされた聴きごたえが満点♪♪~♪

まずはA面ド頭の「Deal」が、まさに哀愁ロックとしか言いようがない、一抹の「泣き」を含んだ名曲にして名演♪♪~♪ 快適なカントリー風味とニューオリンズR&Bの巧みな折衷スタイルを彩るジェリー・ガルシアのギターは、上手く計算されているんですが、それは極めてナチュラルで、あの自由奔放な浮遊感が失われていません。終盤では幾分苦しそうなボーカルも良い感じ♪♪~♪

もう、この1曲を聴けただけで、このアルバムをゲットした苦労が報われたと思いましたですねぇ~♪

そして些かグレイトフル・デッドのアウトテイクっぽい「Bird Song」、まったりとしたカントリーロックの「Sugare」、懐古趣味とフォークロックが混ぜ合わされたキンクス風の「Loser」と続くA面の流れが、とても愛おしいばかりです。

もちろん、ジェリー・ガルシアならではのギターソロは適材適所に配されていますし、なによりもジェリー・ガルシアがほとんどを書いたとされる曲メロが素敵ですよ。ちなみに作詞はグレイトフル・デッドの盟友たるロバート・ハンターというのも、安心感のポイントでしょう。

しかし、そうした和みと喜びはB面に針を落とした瞬間、粉々に粉砕されます。

なんとその冒頭「Late for Supper」は、いきなりガッツ~ンと響くアバンギャルドなピアノや電子楽器の脳天直撃地獄拳! その後の空間優先主義とフリージャズなピアノ、意味不明のつぶやきコラージュンの連続には、頭を抱えるしかない気分なんですが、フッと気がつくと何時しかプレイヤーのカートリッジが次のトラックに移行しているんですから、おそらくは「Spidergawd」も、その続きという構成なんでしょうか……?

それが何とか救われるのが、丸っきりプログレという「Eep Hour」で、エピタフ調のコード進行によるピアノがメインの素敵な演奏です。そして途中から変幻していく「メリー・ジェーン」メロディへの繋がりには、生ギターやシンセによる彩りがあり、ついにジェリー・ガルシアならではの澄んだ音色によるエレクトリックなギターソロが流れ出すにおよんで、あたりは完全に刹那の境地!?!

あぁ、全くトンデモ系の構成美に圧倒されますよ♪♪~♪

そして続く「To Lay Me Down」が、これまたせつない白人R&Bバラードのカントリーロック的な展開で、ほとんどグラム・パーソンズの世界なんですから、ここまでの流れの深淵な企みには茫然自失の歓喜悶絶です。せつせつとしたボーカルと伸びやかなギターのコントラストは、ジェリー・ガルシアの素晴らしい個性のひとつだと思います。

そしてA面からの場面展開にアナログ盤LPならではの特性をここまで上手く活用したアルバムは、本当に少ないんじゃないでしょうか。

ですから再びピアノ中心の短いインスト「An Odd Little Place」で場面転換を図った後、重厚なグレイトフル・デッド調の「The Wheel」で締め括られる大団円も、なかなか不思議な安心感に満ちていて、また最初に針を戻したくなるほど、このB面の構成は強い中毒症状を秘めています。

もう、ほとんどプログレだよなぁ~~~♪

しかもジェリー・ガルシアに抱いているイメージが、それで壊れるなんてことは絶対に無いと思うんですよねぇ。

ということで、和みのA面に刹那のB面という、なかなかその時々の気分に合わせられる秀逸なアルバムです。

本音を言えば、あのスペーシーなギターソロをたっぷり楽しみたいというのが最初の狙いでしたから、特にB面前半の強烈な裏切りは許せない瞬間ではありましたが、それも聴き終わってみれば立派な感動に変幻しているのですから、素直に凄いと思います。

リアルタイムではどうだったのか知る由もありませんが、その後も現在に至るまで、このアルバムが名盤扱いになったことは無かったどころか、忘れられているのが実情じゃないでしょうか……。

これもまた、聴かず嫌いは勿体無い1枚として、ぜひともお楽しみ下さいませ。

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