OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

バド・パウエルの避暑地の思い出

2010-05-02 16:19:30 | Jazz

Hot House / Bud Powell (Fontana)

久々にガッツ~ンとしたジャズが聴きたくて、これを出してみました。

内容はフランス移住時代最末期のパド・パウエルが親しい友人達と過ごした避暑地の思い出ライプで、もちろんプライベート録音ながら、演奏の好調さもあって、なかなか生々しい雰囲気が素晴らしいかぎり♪♪~♪

録音は1964年夏、メンバーはパド・パウエル(p)、ガイ・ハヤット(b)、ジャック・ジェルベ(ds)、そして3曲だけですが、ジョニー・グリフィン(ts) が客演しています。

A-1 Stright No Chaser (Quartet)
 セロニアス・モンクが書いた本当に厳しいビバップのブルースで、作者本人はもちろんのこと、モダンジャズでは他にも幾多の名演がどっさり残されている中でも、この日のパド・パウエルとジョニー・グリフィンの共演は特筆されるべきものでしょう。
 というか、全盛期ジャズ喫茶の人気最右翼のひとつでした。
 それはいきなり豪放にスタートするテーマ演奏のド迫力!
 ブヒブヒに吹きまくるジョニー・グリフィン、ジャカスカ煩いシンバルが逆に最高のドラムス、そして突っ込んでくるベースが存在感を示せば、親分のパド・パウエルは例の呻き声を伴った直截的なピアノで厳しく応戦するという、まさにモダンジャズ本来の魅力が徹頭徹尾に堪能出来ます。
 あぁ、こんなライプの現場に居合わせた観客は幸せですよねぇ。拍手の雰囲気も本当に熱く、また呼応してノリまくるバンドの面々の中では、特にジョニー・グリフィンが、どうにもとまらないという山本リンダ現象! エキセントリックな咆哮の連発から一転してリラックスした有名曲引用フレーズへと流れる十八番のアドリブ構成が、実にキマっています。
 ちなみに企画と録音はパド・パウエルのバリ時代のパトロンだったフランシス・ポウドラであることは言うまでもなく、このふたりの繋がりは後に名作映画「ラウンド・ミッドナイト」へと昇華されるのですが、このアルバムに収められた演奏には、そうした友情と尊敬があってこその良い雰囲気が確かに感じられると思います。

A-2 John's Abbey / Bean And The Boys (Trio)
 これはパド・パウエルが主役のトリオ演奏ですから、なんともたまらない呻き声とドライヴしまくるビバップピアノの確固たるパウエル世界が現出しています。
 確かにそれゆえの好き嫌いはあるでしょう。
 しかし、これほど真っ当に厳しいモダンジャズを弾けるピアニストはパド・パウエル以外に存在しない事実にも愕然とする他はなく、とても2年後の他界は想像出来ないのですが……。

B-1 Wee (Quartet)
 再びジョニー・グリフィンが加わった白熱のビバップ演奏で、まさに速射砲の如く熱いフレーズが連発されるモダンジャズのテナーサックスが魅力の中心! アップテンポで些か単調なドラムスとベースの伴奏が、逆に効果的だと思います。
 それはパド・パウエルの好き放題に十八番のフレーズを弾きまくるという展開にもジャストミート♪♪~♪ 結果的に晩年となった時期にしては、なかなか力強いタッチと音の粒立ちの良さが、決して良いとは言えない録音の中で際立っているのは流石です。

B-2 52nd Street (Trio)
 これはトリオによる短い演奏ですが、パウエルの呻き声が尚更に迫真のピアノと相まって、強烈な印象を残します。というよりも、こうした日常的なリアルさが楽しめた当時のモダンジャズは、やっぱり最高だったという証かもしれません。

B-3 Hot Houes (Quartet)
 オーラスもジョニー・グリフィンが大活躍!
 最初はベースだけをバックに抑えた吹奏ですが、そこへパド・パウエルのピアノが割り込んでからは一転! ド派手なドラムスを従えての猛烈な勢いは、まさにジョニー・グリフィンの真骨頂という白熱のテナーサックスが炸裂します。
 ちなみにこの曲はスタンダードの「What Is This Thing Calles Love?」を元ネタに作られていますが、ジョニー・グリフィンは全く躊躇することなく、その原曲メロディを堂々と吹いてしまう憎めなさ!?! ようやくラストテーマで我に返るというミエミエをやっています。

ということで、バド・パウエルはこの録音を残した直後に帰米し、同年秋にはリーダー盤を作ったり、ライプ出演も頻繁にやっていたようですが、ご存じのとおり、それらは決して芳しいものではありませんでしたから、このレコードに記録された演奏が奇蹟的と言われるのも無理からん話です。

既に述べたように、同時期の音源は他にもフランシス・ポウドラによって私的に録音され、後年になって様々な形で世に出ていますが、最初に纏まったのは、このアルバムからでしょう。ただし我国では一時期、本当に入手が困難で、日本盤でも中古屋の目玉商品となるほどでしたし、バブル期の欧州盤ブーム以降はオリジナルLPがウルトラ級の高値の花!?!

ですから私有は再発盤で、しかも疑似ステレオ仕様の所為もあり、不必要なエコーが効きすぎていますが、それでも演奏の凄みは変わりません。もちろんCDが発売された時には飛びついて買ったのも本音ですが、今はこのアナログ盤を楽しむことが多いです。

またCDには前述した同時期のトリオ演奏が加えられていますが、今は入手が再び困難になりつつあるフランシス・ポウドラのプライベート音源を、ぜひとも集大成して欲しいものです。

最後になりましたが、録音が悪いと書きながら、実は率直な生々しさが如実に出ていますから、ファンにとっては苦にならないと思います。

そのあたりも同時に楽しむのが、所謂ジャズ者の掟というやつじゃないでしょうか。とにかく、これだけの熱演が聴けるのですから、御の字です。

コメント
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