OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クインシー・ジョーンズ発ブラコン行き

2010-05-03 17:00:14 | Soul Jazz

Body Heat / Quincy Jones (A&M)

昭和49(1974)年頃になると輸入盤を安く販売する店があちこちに開店しましたが、同時に嬉しかったのは洋楽の新譜がこれまで以上に早く聴けるようになったことです。もちろん店内では、そうしたピカピカのイチオシ盤をBGMで鳴らしていましたから、レコードをあれこれ物色する前に、耳でピンッと感じたアルバムを買ってしまうことも度々でしたねぇ~♪

で、本日の1枚もその1974年のちょうど今頃、輸入盤屋の目玉商品となっていたクインシー・ジョーンズの大ヒット盤でしたが、結論から言えば、それまでのモダンジャズ寄りの作りからニューソウル路線に大きくシフトした内容は、イノセントなジャズファンからは敬遠されたのが本当のところだったと思います。

しかし節操がないサイケおやじは、その店内BGMに一発でシビレが止まらなくなり、速攻でお買い上げ♪♪~♪

 A-1 Body Heat
 A-2 Soul Saga (Song Or The Buffalo Soldier)
 A-3 Everything Must Change
 A-4 Boogie Joe , The Grinder
         ~ Reprise:Everything Must Change
 B-1 One Track Mind
 B-2 Just A Man
 B-3 Along Came Betty
 B-4 If I Ever Lose This Heaven

例によって豪華絢爛なメンツが参集していることは言うまでもありませんが、このアルバムで特に活躍しているのが、リアルタイムで有名無名を問わず、クインシー・ジョーンズの目にとまったソングライター&ボーカリストの存在です。

中でも個人的に瞠目させられたのが、アルバムタイトル曲「Body Heat」、さらに「One Track Mind」と「If I Ever Lose This Heaven」の3曲を作り、自ら歌っているレオン・ウェアの素晴らしさ♪♪~♪ もちろんそれにはクインシー・ジョーンズも大きく関与しているわけですが、実は後に知ったところでは、レオン・ウェアは1960年代後半からモータウン系列での仕事として幾つかのヒット曲を書いていた才人だったのです。

そして1972年頃には既にソロ名義のリーダーアルバムも出していて、後追いで聴いたそこには当時の流行だったスワンプロックや元祖AORとしか言えないような、なかなか白人的な音楽が披露されていたのですが、その根底にはもちろん、黒人ならではのメロウなフィーリングと粘っこさが隠しようもなく存在しています。

そうしたレオン・ウェアならではの資質をクインシー・ジョーンズは懐の深いプロデュースで引き出したのが、このアルバムの成功に繋がったんじゃないでしょうか。

それは実際、後のレオン・ウェアの活躍を鑑みれば本当に顕著で、例えば1976年に出たマーヴィン・ゲイの大ヒットアルバム「アイ・ウォント・ユー(Tamla)」は本来、レオン・ウェアがコツコツと書き溜めた曲のデモ録音をマーヴィン・ゲイが強引に横取りしたという裏話は有名だと思いますし、マイケル・ジャクソンやリサ・マンチェスター等々への楽曲提供やプロデュースの仕事の傍ら、時折に発表するリーダーアルバムは全てが黒くてメロウな楽曲揃いという傑作ばかり!

ですからサイケおやじも心底夢中にさせられて今日に至っているのですが、そのきっかけは、このアルバムだったのです。

じっくりと粘着質のビートと新鮮なフィーリングを演出するエレピやシンセのキーボード類が、黒いボーカルやコーラスと最高に有機的な融合を聴かせる「Body Heat」、思わせぶりな演出がたまらないファンク歌謡の「One Track Mind」、そして憂愁の歌姫だったミニー・リパートンと共演した「If I Ever Lose This Heaven」はメロウファンクの極みつきとして、今日までに幅広い支持を得ていると思います。その絶妙の軽さがクセになるんですよねぇ~♪

そして、もうひとり侮れないのが、今ではスタンダード化した名曲「Everything Must Change」を自作自唱しているベナード・イグナーの存在でしょう。もう、ほとんどこの曲だけで音楽史に名を残したといって過言ではないほどの強い印象が残るのですから、幾多の新しいスタアを表舞台に出してきたクインシー・ジョーンズにしても、会心の起用だったと思います。

もちろん、このアルバムはボーカルパートだけでなく、演奏とアレンジも実に秀逸で、唯一のインスト「Along Came Betty」は、ご存じベニー・ゴルソンが書いたハードバップの人気曲なんですが、それをここまでメロウフュージョンに仕立て上げたクインシー・ジョーンズは恐るべし!

ちなみにバックアップのミュージシャンは曲毎のクレジットは無いものの、ビリー・プレストン(key)、デイヴ・グルーシン(key)、ハービー・ハンコック(key)、ボブ・ジェームス(key)、エリック・ゲイル(g)、フィル・アップチャーチ(g)、アーサー・アダムス(g)、デヴィッド・T・ウォーカー(g)、チャック・レイニー(b)、マックス・ベネット(b)、ポール・ハンフリー(ds)、ジェイムス・ギャドソン(ds)、バーナード・パーディ(ds)、グラディ・テイト(ds) 等々、本当にお馴染みの名人達の参加が記載されていますから、濃密な充実感はお約束以上なんですが、特筆しておきたいのが、当時のスティーヴィー・ワンダーのブレーンだったロバート・マーグレフとマルコフ・セシールのふたりが、キーボードプログラマーとして参加していることです。

それゆえに同時期のスティーヴィー・ワンダーが出していた「心の詩」や「トーキング・ブック」あたりの音と共通する感覚が滲んでいるのもムペなるかな! そういう人脈にまで手を伸ばしているクインシー・ジョーンズは流石の目配りだと思います。

あとプロデュースのクレジットがクインシー・ジョーンズと並んでレイ・ブラウンになっていることも要注意でしょうか。もちろん、あのオスカー・ピーターソンの黄金のトリオで活躍しながら、ハリウッドポップスの世界でも確固たる実績を残し、さらにクインシー・ジョーンズが実際に率いていたビックバンドでも1970年前後からプレイしていた天才ベーシストと同じ人物でしょう。

そういうモダンジャズの偉人の名前があるからこそ、このアルバムが現実的にジャズの分野でも無視出来ないものになっているのは確かですし、収められた全てのトラックから立ち昇るジャズ本来の悪魔性が、秘めた魅力になっているのかもしれません。

あぁ、クインシー・ジョーンズは本当に上手いですよ♪♪~♪

作編曲の面では当然ながら自分でやったものに加え、トミー・パーラーとデイヴ・ブルンバーグという子飼の弟子を適材適所に起用したのも、新しさに繋がったところだと思います。

ということで、実に時代にジャストミートした素敵なアルバムでした。

一般的に言われているとおり、クインシー・ジョーンズは確かに「良いとこ取り」のプロデューサーかもしれませんが、所詮はマイナーで終わってしまうはずだった才能を表舞台に引き上げる手腕は、繰り返しますが、最高!

現代に聴けば、このアルバムから流れてくる魅惑の楽曲は当たり前になった感が強いところに、クインシー・ジョーンズの新しさと普遍性の同居があるのでしょうねぇ。

コメント (2)
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