OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

夕陽が泣いていた……

2010-05-05 15:34:58 | 歌謡曲

夕陽が泣いている / ザ・スパイダース (Philips / 日本ビクター)

GSのトップバンドだったスパイダースが、そのブームと人気を決定づけたシングル曲ですが、ジャケットにも記載されているとおり、職業作家の浜口庫之助の作詞作曲によるフォーク・タッチ!?! というのがミソでしょう。

発売されたのは昭和41(1966)年9月で、秋から翌年にかけて本当に大ヒットしています。ただしスパイダースがリアルタイムでこの曲をテレビやステージで演じていたことはそれほど無かった記憶があり、実は後に知ったことですが、その頃のグループは海外にプロモーション巡業に出かけていたそうですから、さもありなん……。

ご存じのようにスパイダースは徹底した洋楽指向で日本のロックを追及していたわけですが、それはトーキョーサウンドと自称するほどの優れた勢いでしたし、音楽面の中心人物は、かまやつひろし! この才人が書いた「フリフリ」「ノー・ノー・ボーイ」「ヘイ・ボーイ」「サマー・ガール「なればいい」といったシングル曲は、今日でも不滅の輝きを放っていると思います。

しかし大衆的なヒットが出せなければやっていけないのが、当時も今も芸能界の掟でしょう。特に地方巡業では前述した名曲群や先端ロックのカパーはあまりウケず、しかもベンチャーズよりはジョン・ミークやブッカーT&MG's をやってしまうバンドの特性が裏目に……。

そこでマネージメントと制作の現場は、スパイダースも出演した映画の主題歌「青春ア・ゴー・ゴー」なんていう職業作家の作品を歌わせていた経緯もあり、おそらくはバンド側も観念して、この「夕陽が泣いている」をレコーディングしたんじゃないでしょうか?

尤も以上はサイケおやじの完全なる妄想なんですが、それにしてもジャケ写にミエミエなメンバーのノリの悪い表情とポーズは、あまりにも印象的じゃないですか!?

しかし流石は大ヒットするだけあって、楽曲そのものの出来の良さ、そして歪み気味のギターやストリングスに混濁したオルガンの響かせ方が印象的な演奏は素晴らしく、幾分下世話なボーカル&コーラスを実に上手くバックアップしています。

ちなみに編曲はスパイダースとチャーリー脇野がクレジットされていますが、なかなか当時のサイケデリックを研究したんじゃないでしょうか。

現在の歴史では、この曲がGSブーム端緒のひとつとされ、それがモロに歌謡曲な所為もありますから、後追いで楽しまれるファンの皆様には敬遠される傾向もあるんですが、やっぱりスパイダースは侮れません。

この「夕陽が泣いている」がバンド不在の間に大ヒットしたのを受けて、帰国後に発売したホノボノタッチのオリジナル「なんとなくなんとなく」のB面には、その作者のかまやつひろしが熱唱するジョン・リー・フッカーの「Boon Boon」が収められているとおり、ロックバンド本来の道行も疎かにしていません。

ちなみに「Boon Boon」はアニマルズの十八番演目でもありましたから、当時のGSの多くがやっていたんですが、レコード化された中ではスパイダースと並んで、テンプターズのバージョンが白眉ですよ。ぜひとも、お楽しみいただきとうございます、

ということで、実は「夕陽が泣いている」を取り上げたのは、昨日の鳩山総理大臣のあまりの情けなさをテレビで見ているうちに、ついつい口ずさんでしまったからなんですが、それはそれとして、ジワジワと胸に迫ってくる哀しみとせつなさ、ある意味での情熱は、あの海の夕焼けに相応しいと思うばかりなのでした。

コメント (4)
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