OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ネッド・ドヒニー登場

2010-05-17 17:00:03 | Singer Song Writer

Ned Doheny (Asylum)

今ではAORの人気者となったネッド・ドヒニーの、これは1973年に発売されたデビューアルバムです。

 A-1 Fineline
 A-2 I Know Sorrow
 A-3 Trust Me
 A-4 On And On
 A-5 Lashambeaux
 B-1 I Can Dream
 B-2 Postcards From Hollywood / ハリウッドからの葉書
 B-3 Take Me Farawqy
 B-4 It Calls For You
 B-5 Standfast

結論から言うとリアルタイムでは全く売れなかったものの、業界や同業者からは好評を得ていたようですし、実際、我国でも同じ年に発売され、一部の評論家の先生が絶賛していましたから、若き日のサイケおやじも欲しかったアルバムのひとつでした。

しかし度々述べてきたように、小遣いの乏しさは致命的で、同じ頃に出たストーンズの「山羊の頭のスープ」やザ・バーズのリユニオンアルバムを買ってしまったため、しばらくは我慢の子……。

ちなみに当時はシンガーソングライターのブームが真っ盛りでしたから、ネッド・ドヒニーもジェームス・テイラーあたりの追従者として語られていたんですが、同時にイーグルスやアメリカといったウエストコーストロックやハリウッドポップスの味わいもあるらしいという洋楽マスコミからの情報により、ちょっとミステリアスな存在に私は思えていました。

で、実際に聴いてみると、これがなんとも新しいフィーリングというか、当時の感覚からすればフォークとR&B、さらにはウエストコーストロックの幸せな結婚という、実に素敵な歌と演奏ばかり♪♪~♪

とにかくいきなり歓喜悶絶させられたのがA面初っ端の「Finelin」で、それはアコースティックギターがメインでありながら、シンコペイトしたドラムスやソウルジャズっぽいエレキベースが如何にも印象的な、まさにサイケおやじ好みのファンキーロックがど真ん中! もちろんエレキギターの使い方は、しなやかなグルーヴを増幅させるという匠の技が憎めませんし、独得の抑えたウネリを全面に出した曲メロとネッド・ドヒニーの歌いっぷりが、本当にジャストミートしています。

ちなみに演奏メンバーはネッド・ドヒニー(vo,g) 以下、デヴィッド・パーラッタ(b)、ゲイリー・マラバー(ds,per,vib) をメインに、マイク・ユニティ(key) やグラハム・ナッシュ(vo)、そしてドン・メンザ(ts) 等々が部分的に参加するといった、クレジットだけでは地味なセッションと思われがちですが、それゆえにアットホームな雰囲気が横溢した充実度は最高♪♪~♪

もちろん収録の全曲がネッド・ドヒニーの自作自演によるオリジナルですから、本当に好きなように作ったんでしょうねぇ。そこはかとない哀しみとせつなさが滲む「I Know Sorrow」、やさしく繊細な「Trust Me」、シミジミモードが元祖AORの「ハリウッドからの葉書」、ジャジーでミステリアスな美メロが光る「Take Me Farawqy」、アコースティックギターの弾き語りによる「It Calls For You」等々は、ほんとうにお洒落な雰囲気も併せ持った名唱・名演で、何度聴いても飽きません。

一方、デイヴ・メイソンもやっている「On And On」、イーグルスも真っ青な「Lashambeaux」や「I Can Dream」における力強いロックの表現は、哀愁と爽やかさが両立したウエストコーストロックの典型とも言うべきスタイルですから、腑抜けたAORなんかお呼びじゃない!

それゆえにオーラスの「Standfast」が幾分ヘヴィなアプローチになろうとも、その基本には繊細な表現が失われていませんから、決して退屈することなくアルバム全篇を聴き通せるのです。

ご存じのようにネッド・ドヒニーは1976年に「ハード・キャンディ(Columbia)」というAORの大名盤を発表し、時代の寵児となっていますが、その栄光も長続きせず、なんと次作アルバムとして用意された音源が本国アメリカでは却下されるという異常事態……。それは我国独自で発売されたLP「プローン」となって聴くことが出来ますが、歌詞に幾分の自閉症気味のところはあるものの、音楽性そのものは全く素晴らしいのですから、完全に???の気分になるばかりです。

今では有名な事実ではありますが、ネッド・ドヒニーはビバリーヒルズの名門良家のおぼっちゃまで、所謂ボンボン育ちでありながら、それに縛られない自由な生き方をしていたようです。もちろんそこには経済的な裏付けがあってのことなんでしょうが、ある意味では我儘な完全主義者?

しかし作りだされた歌は珠玉の名品ばかりで、その数々は多くの歌手やミュージシャンにカパーされていますし、AORやウエストコーストロックのファンにとっても、ネッド・ドヒニーは常に気になる存在だと思います。

そしてこの最初のアルバムこそ、原点であり、中には最高傑作と評されることも少なくありません。

CD化されているか否かは確認しておりませんが、ぜひとも皆様には楽しんでいただきたい名盤だと思います。

まずはA面の「Fineline」と「I Know Sorrow」の二連発を聴いてくれっ!

ファンキー&美メロ好きなら、絶対にKOされるはずです。

コメント
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