OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ホノボノとカッコイイ、ロニーとピート

2010-05-01 15:35:41 | Rock

Rough Mix / Pete Townshend & Ronnie Lane (Polydor)

例えばストーンズならばミック・ジャガーやキース・リチャーズのソロアルバムに、サイケおやじはほとんど興味を持ちません。もちろん出れば買っているし、それなりに楽しみますが、絶対と言っていいほど、ストーンズを超えたものは出来ないでしょう。

何故ならばストーンズの主要な部分を作っているのは、ミック&キースの微妙なバランスの上に成立したコンビネーションですから、各々が自分の好きなように作れる世界では、物足りない部分があって当然でしょう。

ですからビル・ワイマンやロン・ウッドの単独名義諸作が逆に面白く聴けるわけです。

そして同様の事は、ザ・フーにおけるピート・タウンゼントのソロ作品に言えることなんですが、ただし本日ご紹介の1枚だけは違います!

それはこのアルバムが決してピート・タウンゼントに主導権があるのではなく、元スモール・フェイセス~フェィセズの中心人物だったロニー・レインとの共同名義というか、むしろロニー・レインのサポート的な立場を強く感じさせる作りになっている所為だと思います。

 A-1 My Baby Givies It Away (vo:Pete)
 A-2 Nowhere To Run (vo:Ronnie)
 A-3 Rough Mix (inst.)
 A-4 Annie (vo:Ronnie)
 A-5 Keep Me Turning (vo:Pete)
 A-6 Catmelody (vo:Ronnie)
 B-1 Misunderstood (vo:Pete)
 B-2 April Fool (vo:Ronnie)
 B-3 Street In The City (vo:Pete)
 B-4 Heart To Hang Onto (vo:Pete & Ronnie)
 B-5 Till The Rivers All Run Dry (vo:Pete & Ronnie)

発売されたのは1977年の秋でしたが、既に録音セッションが始まっていた前年末から洋楽マスコミでは少しずつ話題になっていた記憶があります。それはピート・タウンゼント(vo,g,etc) とロニー・レイン(vo,g,b,etc) という、英国モッズロッカーの大御所が共演という嬉しい現実に加えて、エリック・クラプトン(g,dobro)、ジョン・エントウィッスル(vo,brass)、ボズ・ハレル(b)、メル・コリンズ(sax)、チャーリー・ワッツ(ds)、イアン・スチュアート(p)、ラビット(key)、ギャラガー&ライル(g,key,vo,etc) 等々、ふたりの友人や関係者が豪華な助っ人として名前を連ねていたからです。

もちろんサイケおやじにしても、それに惹きつけられるのは素直に吝かではなく、しかも大好なザ・フーが当時は様々な問題を抱えながら煮詰まっていた最中だったこともあり、もしかしたらピート・タウンゼントは新バンドを結成!?! なぁんていう、些か不謹慎な期待までしていたのが正直な気持でした。

一方、もうひとりの主役たるロニー・レインもご存じのとおり、1970年代に入ってからはロッド・スチュアートというスタアを擁したフェィセズで世界的な成功を果たしながら、その全盛期だった1973年春にグループを脱退! それは自らの意思だったとはいえ、以降の地味なヒネクレとも思える活動は、長年のファンにとっては残念至極……。

ですから、このアルバムに対する期待は局地的だったかもしれませんが、それゆえに熱いものがあったのも確かです。

ところが実際にレコードに針を落としてみると、これが気負いも力みも感じられない、本当にリラックスした内容で、しかもどっかで聞いたことがあるような楽曲ばかりで構成されながら、そのブルースやカントリーロック、ホノボノポップスにしてザ・フーやスモールフェィセス直系のイカシた歌と演奏は、ほとんどがピート・タウンゼントとロニー・レインのオリジナルで占められていたのです。

中でも特にサイケおやじをKOしたのが、ロニー・レインのハートウォームなボーカルとエリック・クラプトンのドブロギターが良い味を出しまくった「April Fool」で、その英国トラッド風味の曲調はロッド・スチュアートにも似合うんでしょうが、ここはロニー・レインならではの、ちょいと内向きの歌唱とエリック・クラプトンのしぶといブルースロック感覚がジャストミート♪♪~♪

もう、これ1曲でアルバムを買った価値があると思うほどですが、ロニー・レインの燻銀の存在感は微妙なレゲエのビートもせつない「Nowhere To Run」やエリック・クラプトンと共作した「Annie」のホノボノフィーリングでも全開♪♪~♪ 聴くほどにシミジミしてくるというか、そこはかとない哀愁の醸し出し方は、アコーディオンやマンドリン、生ギターやバンジョー等々の彩りを効果的に使った演奏パートの仕掛けの完璧さで、ますますたまらない世界を描き出しています。

もちろん、こうした雰囲気はザ・バンドからの影響も大きいわけですが、そこは英国人らしい頑固さが、このセッションを単なる物真似にしていません。

それは負けじと頑張るピート・タウンゼントにも言えることで、オーケストラまで使った「Street In The City」の作風と演奏はザ・フーでも十分な世界ですが、それをあえてここに入れてしまったところに、当時の苦渋と意気込みがあるように思いますし、これがなかなか「らしい」仕上がりでニンマリですよ。

そして同じく、これまたザ・フーからの流用疑惑も濃厚な「Keep Me Turning」でも、その全く憎めない仕上がりがたまりませんねぇ~♪ このあたりはロニー・レイン効果というか、ピート・タウンゼントは相当にその気になっていたんじゃないでしょうか。

ですからLPA面の最初と最後に置かれた「My Baby Givies It Away」と「Catmelody」における2人の本当に楽しげな姿勢には共感を覚えますし、抜群の助演で盛り上げるチャーリー・ワッツやイアン・スチュアートのストーンズ組、あるいはボズ・バレル&メル・コリンズのクリムゾン人脈が何の違和感も無く陽気に振舞っているのも良い感じ♪♪~♪

それはアルバムタイトル曲「Rough Mix」でのデレク&ドミノス風味のインスト演奏で尚更に活性化し、エリック・クラプトンのリードギター、ロニー・レインのフェィセズしまくったベースには泣けてきますよ。ちなみにオルガンはフリー末期のメンバーにして、後にはザ・フーのサポートをやっているラビットですからねぇ~♪ わかっていますよ、本当に♪♪~♪

ということで、ピート・タウンゼントとロニー・レインは全曲に参加しているのは当然ながら、既に述べたように、その比率は4対6という感じでロニー・レイン風味が強いと感じています。

それゆえにピート・タウンゼントがやってしまってザ・フーのネタバレ曲にしてもイヤミになっていませんし、ロニー・レインも当時の些かイジケたイメージが良い塩梅に薄められ、ふたりの資質が上手いバランスで両立した好セッション盤になりました。

ただし過大な期待をして聴くと完全にハズレるでしょう。

何故ならば、ここには特に前向きな意欲はそれほど無く、現在の幸せを大切にしたというか、些か刹那的な気分が横溢しているからです。もちろんそれが大きな魅力になっているのは言わずもがなでしょう。

サイケおやじのような保守的な人間にとっては、思わず続篇を期待してしまうところですが、なんとご存じのとおり、ロニー・レインはこのアルバムが発売された頃に多発性脳脊髄硬化症という難病に倒れ、以降20年間の大部分を空白にした末、五十代で他界……。

またピート・タウンゼントはザ・フー本来の仕事に復帰したものの、キース・ムーンの死やバンド内外の不安定さから、些か煮え切らない活動に……。

まあ、全ては運命という言葉で締め括られのかもしれませんが、それでもこういう何時までも聴き継がれるであろう飽きないアルバムを残してくれたのは、幸せだと思います。

ちなみに前後の事情をもう少し書いておけば、ロニー・レインはフェィセズの同僚だったロン・ウッドと共演した隠れ人気盤「マホニーズ・ラスト・スタンド(Atlantic)」を1976年に出していますし、前述した難病からの逼塞時代にはエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、ビル・ワイマン、チャーリー・ワッツ等々のスーパースタアが一堂に会した支援コンサートが開かれる等、その再起が本当に待たれたのは、ロニー・レインの人徳ゆえのことだと思います。

そうしたホノボノとしたフィーリングも素敵なロックには欠かせないものになったのが、1970年代の素晴らしさだったのかもしれません。

コメント (2)
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