この本の主役はもちろん「宗達」ですが
主役は3人のような…
「本阿弥光悦」に「烏丸光広」だと。
この3人の見事なばかりの組み合わせなくして「宗達」の
「絵」も 脚光を浴びることにはならなかった。と。
話は 昨日より少し戻りますが、彼(宗達)のデビュー?は
烏丸光広の声がかかったのがそのそもの始まり。
それが「養源院」という建物の内装画から~
この養源院 話せば これまた壮大な物語・・
もともとは、秀吉の側室淀殿が実家・浅井一族の菩提を弔うために
建立した寺。
ご存知のように、淀殿父は 浅井長政、母はお市の方。
そのお市の方は織田信長の妹…。
長政とお市の方の間に三人の娘
長女お茶々(のちの淀殿) お初、お江(おごう)
この三人の人生は、また数奇な運命をたどる~
ここは 省きますが~失火により焼失した養源院再建の話が出て
時の2代将軍秀忠の正室となったお江が執り行うことに。
この寺の物語だけでも 十分に面白い…。
さて、その養源院の内装画依頼までには、数々の曰く因縁が起きるのですが
ここでは飛ばしまして…宗達が引き受けることに。
その指定されたものは? 戸板四枚…
縦180㎝ 横125㎝
これまで宗達は扇を中心に、掛物や短冊、絵巻といった、
こまごまとした画面ばかり~これは異例ともいうべき大画面。
何を描くのか? 助言もなし…そこで光広が
「睨む いうのはどやろ?
宗達いろいろ考え、図柄を探し、頭の中で…
こんなの、 唐獅子と、白象図は、どうどしゃろ?
・・・・
それでいこか。
杉戸という不慣れな素材に描いた 完成品がこれだ!
養源院 白象 俵屋宗達
唐獅子
この 白象 唐獅子図 「動きを出すために」宗達はこれまで
使ったことのない極太の筆を用い さらに、薄い墨で輪郭線を描く
「彫り塗り」の技法を~
見事な仕上がりに。
その後、宗達四十を過ぎての結婚、京で評判の絵屋「俵屋」も順調!
そして 源氏物語から「蔦の細道図屏風」(前回掲載)の完成
宗達の身 大きく変わる。
「法橋」の位を得た。烏丸光広が後水尾天皇にはたらきかけた結果だ。
「*「法橋上人位」 僧位の第三位 法位 法眼に次ぐ。
中世以後、医師、仏師、絵師、連歌師などに僧位に準じて与えられた称号。」
法橋宗達お披露目の席に飾られた六曲一双の屏風絵 「松島図屏風」
*現在は アメリカ ワシントンDC 「フーリア美術館」にある。
もしアメリカに輸出されなくて 日本に残っていれば、間違いなく「国宝」に
指定されていただろう と 言われる作品。
次に手掛けたのが「西行法師行状絵詞」 (前回掲載)
「伏見醍醐寺」 真言宗の古刹である。
よりも、あの太閤秀吉 前代未聞の観桜の宴「醍醐の花見」
と 言った方が分かりやすいでしょう。
その醍醐寺三方院座主覚定よりの依頼
父 義演の折、応仁の乱以降 荒れ果てた寺の再建に
秀吉に接近し再建に成功する。
その覚定から「源氏物語」のフアンであるので 是非にと。
しかし、お寺であるために 全編 色恋物語の源氏物語です
そのままの場面を描いた屏風を寺に置くわけにはいかない。
本根と建前。
分かりやすく表現すれば、今日的には「グラビア写真集」を部屋で
眺めていたい~ そんなところでしょうね。
…女を入れず、人を入れてほしい …
宗達考え 選んだのが 「光源氏と女たちのすれ違いの場面」に。
★光源氏と空蝉がすれ違う「関屋」
★光源氏と明石の君がすれちがう「住吉詣」(「澪標」)
こうして完成したのが
「関屋澪標図屏風」
俵屋の名前が上がり 商品価値が上がったことで宗達に冒険する余裕ができた。
金銀泥をふんだんに用いた豪奢な色紙や短冊もいいが…
墨で描いた掛物や屏風も見てみたい~ という声も聞かれるようになった。
「あれこれ試してみよう…」と思ったのが、さぁ 大変。
いろいろ筆使いを試してみては、納得して見たり、これはアカンか~
墨のにじみ具合に一喜一憂、 周囲のみんなも作業場を覗いて
顔を見合わせる始末。
水を得た魚のごとく、宗達は自在に泳ぎ始める・・・・
ここでまた烏丸光広とのコラボレーションとなった「牛図」
小品で縦95㎝ 横45㎝ 二幅対の掛物。
右幅の座った牛の上に 光広の画賛
”かな文字”を見事な散らし書きに…
「 身のほどに 思へ世の中 憂しとても
つながぬ牛の 安き姿に 」
また時は流れ~ 光悦の死
宗達の衝撃は大きい 失ったことで、光悦の存在がいかに大きかったかを
改めて思い知った。
ドラマは なかなかユニークな膳立てで
「俵屋」をみしらぬ女が 訪ねてきた・・
「俵屋」の主・宗達はすでに亡くなったと聞くと、女は言葉を失い
呆然となった。
そうなんです、このドラマの最初と最後に登場するのが
「出雲の阿国」
盛り上げてくれましたよ 最後の最後に。
この本の終局は お馴染み彼の大作 「風神雷神図」に
誰からの注文なのか? 何を意味するのか?
遺された二曲一双の金地屏風に描かれた「鬼二匹」
右隻に風神 左隻に雷神
「 黒雲に乗って天空を踏み、いままさに地上に風を吹きおろし
雷を投げ下ろさんとする鬼たちの姿だ。」
宗達が死んだあと、仕事場に唯一残っていたのが
この屏風であった。 印はない。
どこを探しても見当たらない。
ただの「宗達」とさえ記されていない。
無印無署名の金屏風だ。
(本書・作者の文より引用)
金屏風
私のゴールデンウイークに相応しい~ すてきな本を読むことができました。
GW 後半は 同じ時代
「信長」と「秀吉」にまつわるもの
この2冊が ページを開いてくれるのを待っているようなので
「信長の棺」 信長の遺骸は なぜ 本能寺から消えたのか… 歴史ミステリー
「秀吉の活」 歴史本ではなく あの秀吉の一生は コミックに読めそう…