徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「華麗なるアリバイ」―フランス料理風アガサ・クリスティー―

2010-09-29 12:45:00 | 映画

映画「ランジェ侯爵夫人」の脚本家として知られる、パスカル・ボニゼール監督の6作目の映画になる。
1946年に発表された、アガサ・クリスティーの「ホロー荘の殺人」を下敷きにした、現代版フランス映画
生誕120年だそうだ。
ここでは、名探偵ポワロに代わって、ひどい頭痛もちの警部が登場する。

作品は、総じて洒落たつくりだが、手堅く描かれているわりにどこか軽い。
それは、イギリス版と違ってフランス版だだからなのか。
洗練されたミステリーでありながら、女たちの恋愛模様が中心に描かれている。
確かに、愛は永遠のミステリーとはよく言ったものだ。
・・・それは、9人の男女の楽しく華やかなパーティのはずだったが、一発の銃声と悲鳴が、事件の幕開けを告げることになる。

フランス・パリ郊外の、小さな村が舞台である。
広大な敷地に大邸宅を持ち、上院議員アンリ・パジェス(ピエール・アルディティ)と妻エリアーヌ(ミュウ=ミュウ)は、週末になると、親しい友人たちや親戚をっ招いて、上質なワインに舌鼓をうちながら、おしゃべりに花を咲かせていた。

しかし、この週末は妙な緊張感に包まれていた。
原因は、妻クレール(アンヌ・コンシニ)がありながら、女性関係の絶えない精神科医ピエール(ランベール・ウィルソン)にあった。
彼の現在の愛人は、彫刻家エステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)で、ピエールを真剣に愛し始めたエステルは、クレールと話し合いたいと思っている。
一方のクレールは、周囲から哀れな妻と思われながらも、夫の浮気浮気に関しては沈黙を通していた。

他にも、エステルに思いを寄せている酒浸りの若い作家フィリップ(マチュー・ドゥミ)彼を愛しているマルト(セリーヌ・サレット)ら…、と様々な愛が絡み合う中、さらにイタリア人女優レア(カテリーナ・ムリーノ)ら、サプライズゲストが到着する。
彼女が、ピエールの昔の恋人だと知ったエリアーヌは、彼を驚かそうと秘密にしていたのだ。

こうして、総勢10人が集まる中で、人間関係のごたごたが、いつしかくすぶり始めていた。
そんな中で、まず殺されたのはピエールだった。
しかしまた、全員に“アリバイ”もあった。
犯人が誰なのか、動機が何なのか、操作は暗礁に乗り上げ、互いに誰もが信じられなくなった頃、第2の殺人が起きる・・・。

このドラマは、ミステリーのはずなのに、登場人物の感情や犯罪行為は表から隠れて、加害者と被害者、男と女を追いながら、事件の核心に迫っていく。
ただ、ドラマの細部が甘く、犯罪の陰にいる男や女たちの本性がどこまで描き切れているか、疑問も残る。
登場する人物全員にそれぞれ動機があり、上質で、かなり危険な男女の恋愛模様を描いた作品だ。

フランス映画「華麗なるアリバイは、男女の複雑な恋愛心理と、彼らの駆け引きを描きながら、その下で渦巻く愛と憎しみ、冷静に仕組まれたトリックをひもときながら、真犯人に迫っていくのだ。
それは、しかし危険なひと時なのだが、映画のタッチが軽すぎて、ミステリーとしての物足りなさも・・・。
まあ、複雑な女の性(さが)を表現する、豪華な女優たちの競演が見ものだ。
彼女たちの本心をのぞく怖さもあるが、ストーリーをいまのフランスに置き換えたあたり、一風変わった妙味を醸し出している。


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3 コメント

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それはきっと (茶柱)
2010-09-30 01:12:04
ミステリーとしては作ってないからでは・・・。
クリスティと聞けばミステリー好きなら知らぬ人はいないでしょう。となると、単純にミステリーとしては作らずに「あくまで下敷き」として作ったのでは・・・。
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原作と映像のギャップは (霜葉)
2010-10-01 10:06:42
名作ほど違いが大きいと感じられますね。クリスティーのポアロ、マープルシリーズとも犯行現場は列車の中、ナイルの船の中、牧師館や、いわくありげな古い館など殆ど限定された狭い空間とその場に居合わせた少数の人達の中で展開されるので、素人ながら映画化しにくいものと思っていましたが、先日テレビBS2でマープルものを放送していたようです。このような題材の映画では、配役の個性とか演技力が強く求められるのではないかと、ご紹介いただいた「ホロー荘の殺人」の映画を観たくなりました。
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やはり・・・ (Julien)
2010-10-02 16:38:33
小説は小説、映画は映画のようです。
アガサ・クリスティーはあまり読んでいませんので、なんとも・・・。

この作品は、恋愛模様をミステリアスに描いたというのが本当でしょうか。
原作を下敷きにしたのは、監督も自らそういっているようですから・・・。

部屋の内外とか、限られた場面での群像劇で、登場人物の心理描写にスポットを当てていますし、俳優陣もなかなかの演技です。
やはりミステリーにこだわらないほうがいいようですね。

茶柱様。
霜葉様。
いつもコメントを有難うございます。
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