映画「ランジェ侯爵夫人」の脚本家として知られる、パスカル・ボニゼール監督の6作目の映画になる。
1946年に発表された、アガサ・クリスティーの「ホロー荘の殺人」を下敷きにした、現代版フランス映画だ。
生誕120年だそうだ。
ここでは、名探偵ポワロに代わって、ひどい頭痛もちの警部が登場する。
作品は、総じて洒落たつくりだが、手堅く描かれているわりにどこか軽い。
それは、イギリス版と違ってフランス版だだからなのか。
洗練されたミステリーでありながら、女たちの恋愛模様が中心に描かれている。
確かに、愛は永遠のミステリーとはよく言ったものだ。
・・・それは、9人の男女の楽しく華やかなパーティのはずだったが、一発の銃声と悲鳴が、事件の幕開けを告げることになる。
フランス・パリ郊外の、小さな村が舞台である。
広大な敷地に大邸宅を持ち、上院議員アンリ・パジェス(ピエール・アルディティ)と妻エリアーヌ(ミュウ=ミュウ)は、週末になると、親しい友人たちや親戚をっ招いて、上質なワインに舌鼓をうちながら、おしゃべりに花を咲かせていた。
しかし、この週末は妙な緊張感に包まれていた。
原因は、妻クレール(アンヌ・コンシニ)がありながら、女性関係の絶えない精神科医ピエール(ランベール・ウィルソン)にあった。
彼の現在の愛人は、彫刻家エステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)で、ピエールを真剣に愛し始めたエステルは、クレールと話し合いたいと思っている。
一方のクレールは、周囲から哀れな妻と思われながらも、夫の浮気浮気に関しては沈黙を通していた。
他にも、エステルに思いを寄せている酒浸りの若い作家フィリップ(マチュー・ドゥミ)、彼を愛しているマルト(セリーヌ・サレット)ら…、と様々な愛が絡み合う中、さらにイタリア人女優レア(カテリーナ・ムリーノ)ら、サプライズゲストが到着する。
彼女が、ピエールの昔の恋人だと知ったエリアーヌは、彼を驚かそうと秘密にしていたのだ。
こうして、総勢10人が集まる中で、人間関係のごたごたが、いつしかくすぶり始めていた。
そんな中で、まず殺されたのはピエールだった。
しかしまた、全員に“アリバイ”もあった。
犯人が誰なのか、動機が何なのか、操作は暗礁に乗り上げ、互いに誰もが信じられなくなった頃、第2の殺人が起きる・・・。
このドラマは、ミステリーのはずなのに、登場人物の感情や犯罪行為は表から隠れて、加害者と被害者、男と女を追いながら、事件の核心に迫っていく。
ただ、ドラマの細部が甘く、犯罪の陰にいる男や女たちの本性がどこまで描き切れているか、疑問も残る。
登場する人物全員にそれぞれ動機があり、上質で、かなり危険な男女の恋愛模様を描いた作品だ。
フランス映画「華麗なるアリバイ」は、男女の複雑な恋愛心理と、彼らの駆け引きを描きながら、その下で渦巻く愛と憎しみ、冷静に仕組まれたトリックをひもときながら、真犯人に迫っていくのだ。
それは、しかし危険なひと時なのだが、映画のタッチが軽すぎて、ミステリーとしての物足りなさも・・・。
まあ、複雑な女の性(さが)を表現する、豪華な女優たちの競演が見ものだ。
彼女たちの本心をのぞく怖さもあるが、ストーリーをいまのフランスに置き換えたあたり、一風変わった妙味を醸し出している。
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クリスティと聞けばミステリー好きなら知らぬ人はいないでしょう。となると、単純にミステリーとしては作らずに「あくまで下敷き」として作ったのでは・・・。
アガサ・クリスティーはあまり読んでいませんので、なんとも・・・。
この作品は、恋愛模様をミステリアスに描いたというのが本当でしょうか。
原作を下敷きにしたのは、監督も自らそういっているようですから・・・。
部屋の内外とか、限られた場面での群像劇で、登場人物の心理描写にスポットを当てていますし、俳優陣もなかなかの演技です。
やはりミステリーにこだわらないほうがいいようですね。
茶柱様。
霜葉様。
いつもコメントを有難うございます。