徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「白い沈黙」―ひとりの少女の失踪事件を追う父親の苦悩―

2015-12-23 16:00:24 | 映画


 「秘密のかけら」(2005年)、「クロエ」(2009年)アトム・エゴヤン監督が、冷たく暗いカナダの雪景色を背景に、愛と喪失の物語をミステリアスなタッチで描いた。
 9歳のひとり娘の失踪事件を追って、娘を捜す父親が、事件の隠された真相に迫ろうとするドラマだ。

 しかし、現在と過去をパズルのように組み立てたドラマ構成は、時系列も乱暴で、突然画面の飛躍、省略があったりして、あまり感心できない。
 謎解きや娯楽性も、内在する社会性も、少女誘拐の犯罪組織の描かれ方も中途半端で、せっかくの好奇心まで削がれる。











アメリカ国境に近いカナダの街、ナイアガラフォールズ・・・。

マシュー(ライアン・レイノルズ)とティナ(ミレイユ・イーノス)夫妻は幸せな毎日を過ごしていた。
ある雪の日、スケート場に9歳の愛娘キャス(アレクシア・ファスト)を迎えに行った帰り道のことだった。
行きつけのダイナーに立ち寄った際、ほんの数分の間に、車の後部座席に残したキャスが忽然と姿を消してしまったのだ。
マシューは、何者かによって娘が誘拐されたと主張したが、具体的な物的証拠や目撃情報は一切なく、刑事たちからも逆に疑惑の目を向けられることになった。
娘の失踪に妻ティナも取り乱し、彼女からも猛烈な非難を浴びる始末で、夫婦の間にできた亀裂は収まりそうにない。

・・・それから8年、捜査は完全に行き詰まり、マシューは娘を守れなかった自責の念に暮れ、毎日のようにあてどなく車を走らせ、キャスを捜し回っていた。
そんなある日、刑事がネット上にキャスによく似た少女の画像を発見、その後も彼女の生存をほのめかす手がかりが次々と浮上する。
それは、誰が何のために発したサインなのか。
マシューの行く手に何が待ち受けているのか。
8年もの空白に、一体何があったのか・・・。

突然消えてしまった、娘を捜す父親の不安ははかり知れず、不可解きわまりない陰湿な事件は何が目的だったのか。
詳細な描写や説明はないに等しい。
ドラマの構成にも無理がある。
設定も無茶苦茶(?!)だ。
どうやら、悪の犯罪組織が運営するサイトがあるらしいと分かっても、その狡猾な組織が誘拐した児童を商品に仕立て、何事かをたくらんでいる様子だ。

それにしても、8年間という長い間どんなことが少女の身に降りかかったのか。
謎は謎をはらんだまま、あっけない終盤を迎える。
映像のインパクトもそれなりだから、期待も膨らみ、異常な状況下での父親の苦悩も伝わってくるが、そこまでで、核心の部分が抜け落ちている。
これでは、凍てついた風景の中で観客の心まで凍てついてしまう。
アトム・エゴヤン監督カナダ映画「白い沈黙」は、どう見てもドラマとして雑駁は否めず、期待外れの作品になってしまった。
      [JULIENの評価・・・★★☆☆☆](★五つが最高点
次回は映画「母と暮らせば」を取り上げます。