1950年生まれの英国人女性ベニシアさんが、19歳で放浪の旅に出て、たどりついた先が日本の京都大原の里であった。
彼女は、築100年以上といわれる古民家で、自然にあふれた生活を送っている。
庭には150種類ものハーブを育て、料理や生活に役立てる、そんな丁寧な暮らしが注目されている。
もともと英国貴族の出身で、身分社会に疑問を抱き、世界を放浪する旅の終着地が日本だったというわけだ。
この作品は、日本の四季にイギリスの伝統を散りばめた、彼女の手作りの生活を綴ったドキュメンタリーだ。
ベニシアさんの暮らしを綴った、NHKドキュメンタリー番組「猫のしっぽ カエルの手」は、2009年4月から4年間にわたって放送されたので、知っている人も多いはずだ。
一見、優雅に羨ましく見える彼女の暮らしの陰には、様々な困難があった。
この映画は、結婚と離婚、3人の子を抱えるシングルマザーとしての苦労、娘の病気、夫の事故等々・・・、これまであまり語られることのなかったエピソードをを通して、波乱の中にあっても失望することなく、ひとつずつ乗り越えてきた一女性のしなやかさに光を当てている・・・。
そこには、四季折々の彩の中で、心穏やかに生きるための知恵も・・・。
菅原和彦監督のドキュメンタリー映画「ベニシアさんの四季の庭」は、草花の美しい映像に英国人女性の語りがマッチして、心地よい余韻が残る。
この作品は、人や花にカメラが優しく寄り添うように描かれているので、四季の映像に心が和む。
作品としては、いろいろともっと詰め込みたかったようで、内容を整理してほしい気がしないでもない。
しかし、驚いた。
この映画、一時行列ができるほどの上映館の賑わいを見て、とても尋常とは思えないものを感じた。
心の癒やされるドキュメンタリーだが・・・。
人生にも、庭にも、季節が巡る。
この家の、庭の春の訪れは、水仙から始まり、チューリップ、矢車草、ジギタリスと咲きほこり、夏は百合、秋は鮮やかに染まる紅葉と虫の音、そして冬は
枯れた花をそのままにしておけば、鳥が花の種を食べにくる。
そう、確かに、自然の恵みは、人間だけのものではない。
秋高気爽、秋はいま少しずつ深まりを見せ始めている。
・・・日本の四季は美しい。
春は花、夏ほととぎす、秋は月
冬雪冴えて冷(すず)しかりけり (道元禅師)
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)