ダイヤモンドに秘められた謎とは、何か。
偽りと裏切りの連鎖の中で、緊迫の1時間半があっという間に過ぎる。
「リービング・ラスベガス」のニコラス・ケイジと、「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマンという、アカデミー賞主演賞二大スターの競演が見ものである。
二人が初共演で、夫婦役を務めている。
「オペラ座の怪人」の名匠ジョエル・シューマカー監督のアメリカ映画だ。
家族がお互いに隠していた、秘密までが浮き彫りにされていくのだが、邸宅に押し入った強盗一味との息詰まる心理戦で、彼らを翻弄する二人の主役の白熱の演技に期待したかったが・・・。
緑生い茂る森に囲まれて、その豪邸はあった。
ダイヤモンド・ディーラーとして成功を収めている、カイル・ミラー(ニコラス・ケイジ)は、美人の妻サラ(ニコール・キッドマン)、反抗期を迎えた10代の娘エイヴリー(リアナ・リベラト)と3人で、何不自由のない生活を送っていた。
今日も帰宅すると、パーティーへ行くというエイヴリーと、反対するサラとがリビングで言い合っていた。
大事な商談を控えたカイルは書斎に引きこもり、いつものように、自宅の防犯システムを夜間モードに切り替える。
屋外の照明が庭を照らし、赤外線装置と防犯カメラが作動する。
仲直りのために、サラは夕食をトレイに乗せてエイヴリーの部屋に向かうが、部屋の中から返事がない。
やがて、チャイムが鳴って、カイルが防犯モニターを覗くと、そこに2人の警官が立っていた。
カイルが警官を招き入れようとドアを開けると、途端に武装した覆面の4人組が押し入ってきた。
カイルは彼らに捕えられ、リーダーのエライアス(ベン・メンデルソーン)から銃を突きつけられる。
カイル邸に、大金とダイヤモンドが隠されていると確信していた彼らの、計画的な襲撃だった。
サラも一味に捕えられるが、エイヴリーは襲撃前に家から抜け出していた。
エライアスは、妻子の命と引き換えに金庫を開けるようカイルに告げる。
しかし、金庫を開けたら用済みになった自分たちは殺されてしまうと思い、カイルはそれを拒否する。
さらに、カイルにはどうしても金庫の中身を渡せない事情があった。
極限状態の中で、カイルは家族の命を守るため、ビジネスで磨いた交渉テクニックを駆使して、一味に心理戦を仕掛けてゆくのだった。
その一方で、サラも、カイルに打ち明けられない秘密を抱えていた。
緊迫した時間が、刻々と過ぎてゆき、想像を絶する衝撃の結末へと向っていく。
家族を守るべく、強盗犯に果敢に立ち向かうカイルと、その美しさを武器に心理戦を仕掛けるサラ・・・。
息詰まるような、スリルだ。
名匠と二大オスカー俳優のコラボレートが見ものだが、犯人たちの仲間割れ、一味の中にサラと通じている者がいたり、家族同士の秘密が隠されていたり、嘘と狂気が交錯し、ドラマの細部は錯乱と混濁で、あまり整理されているとは言い難い。
緻密に計算されているように見えて、結構粗っぽいのが気にかかる。
家族、たとえばサラの抱える秘密の暴露は、おざなりではなく、もう少しわかりやすい描き方はできなかったか。
4人組の強盗犯たちにも、あまり恐さを感じなかった。
ドラマの中に幾つかのエピソードがあるのだが、それらを詰め込みすぎて、この上映時間ではいかにもきつい。
もっと絞ってもよい。
それでも、ジョエル・シューマカー監督のアメリカ映画「ブレイクアウト」は、テンポと緊張感でそれなりに楽しめる一作だ。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)