あちらのほうから、若い女性が、わき目も振らずにこちらへ歩いてくる。
携帯電話を手にしていて、いまにも顔にくっつきそうだ。
前の方を見ようともないで、歩きながら、電話の操作に集中している。あれで、大丈夫なのかな。
人にぶつからないのかな。
このままだと、どちらかが右と左によけないと、間違いなくぶつかる。
当たり前の話だ。こちらも直進、あちらも直進だ。
よくある光景で、その中に自分が直面しているという構図だ。
女性がよけるか、こちらがよけるか、どちらかだ。
こういう場合、大体は無意識のうちに、日常何事もなくすれ違い、何事もおきないものなのだ。
でも、その慣れが心配だ。逆に何もないと思っていると、何かあったりする。
もしものことがあったら・・・?
絶対に何もないとはいえまい。
相手を制止するために、こちらが立ち止まって、一歩も譲らなかったら・・・?
(相手は、こちらがよけるだろうと思っているかもしれない。それとも相手がよけてくれるか・・・?)
いや、多分二人はぶつかるだろう。その時、相手のどこかにもしも触れたら・・・?
変な事件に、巻き込まれないとも限らない。
この時、すれ違う瞬間に、肩先が少しだけ触れたが、こちらが左へ身をよけた。
それで、やっぱり正解だった。
あちらは、通り過ぎてから、こちらを振り返った。
目が合った。あちらは、一瞬にやりと笑ったように見えた(?)。
少し、腹立たしかった。
歩きながらの携帯は、やめた方がいいでしょう。電話には電話のマナーが・・・。
いつだか、満員電車の中で、接触した女性が、相手を訴えて刑事事件になった。
無実なのに、有罪になった。まったく恐ろしい理不尽な話である。
こんなことがあっていいのか。
明らかに、冤罪事件である。
このごろ、多い。
ありえようのないことが、現実にはおきているのだ。
閑話休題・・・。
満員電車が駅のホームで、急行の通過を待っていた。
高齢の女性が、シルバーシートに座っていた。
突然、うめくような苦痛を訴えたのだ。
何事が起こったのかと思った。
女性は、ペースメーカーを装着しているのだった。
幸い、近くにいた人と駅員、車掌の連携で、この時は大事にはいたらなかった。
最初どうなるかと思ったけれど、ほっとした。
携帯の電源を、切っていない乗客が近くにいたのだった。
その女性は、隣りの駅の病院に通っている人だった。
なければなくたっていいという人から、いや絶対に必要だという人まで・・・。
いま、ほとんどの人が、携帯電話をもっている時代である。
一人で、複数の携帯を持ち歩いている人もいる。
確かに、とてもとても使い切れないほどの多彩な機能を持っていて、便利で重宝だからだ。
そんなこと、分りすぎるほど分ってる。
たかが携帯と侮ってははならない。
・・・便利であればあるほど、その使い方が問題なのだから。
時と場合によっては、これ程の文明の利器も、人の生命にかかわる、危険な凶器ともなりかねない。
やはり、梅雨は梅雨・・・。昨夜遅くなって激しい雨となったが、明け方にはあがった。
今日は、晴れて暑い日になるだろう。