湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

飯豊縦走、2日目

2006年08月07日 | 山・山スキーなど
早々と眠りについたものの、昨夜はあまりよく眠れなかった。風がうるさく、また思ったより冷え込んだのだ。今回持っていったシュラフは畳むとかなりコンパクトになる薄手のもの。夏山だからこれで充分と思ったのだけれども、少し考えが甘かったかもしれない。結局夜中の1時過ぎに体を温めるためにレトルトのトマトスープをつくり、強引にもう一度眠りについた。

そして目覚めたのが3時半頃。テントのなかで昨晩の残りの冷や飯を食べてから、朝陽を拝むために外にでる。



だんだんと雲が赤く染まっていき、



そして少しずつ雲のあいだから待望の朝陽が・・・。

テントを片したりして梅花皮小屋を5時25分に出発。本日の予定はここから御西小屋を経由して飯豊本山に登り、切合(きりあわせ)小屋まで。大日岳は縦走路から外れるので様子を見て、もし行けそうであれば御西小屋にザックをデポして往復しようと思う。

今日の最初の山頂である梅花皮岳に立つと、いま出発した梅花皮小屋、昨日歩いた北股岳までの稜線がくっきりと見えた。



また梅花皮岳を越えると、今日山頂を踏む予定の飯豊本山や、



大日岳が素晴らしい姿を見せていた。



とにかく縦走路からの景色は素晴らしかった。暑さもきつくないし、ガスもかかっていない。やはり山は朝が一番だな。お昼近くになるとどうしてもガスって来ちゃうし、暑さもきつくなってくるから。



雪渓越しに眺める、いま歩いてきた梅花皮岳と烏帽子岳。夏山、ほんと爽快です!

こんな景色を眺めながら御西小屋に8時25分に到着。時間的には充分余裕があるので、ペットボトルとちょっとした補給食、それからカメラだけサブザックに入れて、飯豊連峰の最高峰・大日岳に向かうことにする。僕は当初、大日岳は時間的に無理だと思っていたので、この山にも登れることはかなり嬉しかったりする。初日少し無理をして梅花皮小屋まで歩いておいて良かった。

で、御西小屋から大日岳の縦走路がまた素晴らしかった。



雪が溶けてできたような池があり、



斜面に咲くニッコウキスゲがあり、そんな美しい縦走路を重いザックから開放されて快調に歩いて大日岳の山頂へは約1時間で到着することができた。

ただこのあたりから、少しずつ下界からのガスが湧き上がりはじめる。大日岳の山頂には30分ほどいたが、ガスがどんどん上がってくる様子がよくわかった。そして御西小屋に戻り、飯豊本山に歩き始めた頃は近くにあるはずの本山もガスが流れたときにうっすらと



こんな感じに見える程度になってしまった。ただ昨日もそうだったけれど、やはりガスで視界がまったく効かなくなるということはなく、必ずガスが流れるあいまあいまで視界が広がるのでまったく景色が楽しめないということはなかった。また御西小屋から飯豊本山まではお花畑が素晴らしくて、どちらかと言うと花より団子、質より量、技術より体力といった傾向が強く、繊細さに欠ける僕でも、気づくとそうした花々に見とれていたりすることがあった。






今回一番目立ったのがこのマツムシソウ

そしてガスに包まれた飯豊本山には12時38分に到着。



やけにトンボの多い山頂で1時間くらいガスがすっきり晴れるのを待ったのだけれども、残念ながら一面ガスが晴れるような瞬間は結局訪れることはなかった。

さて飯豊本山からはあと切合小屋まで歩くのみ。しかしここからの下りはちょっとした岩稜があったりして、ちょっぴり恐かった。



幼い頃、重度の高所恐怖症だった僕にとっては、こういった鎖場は結構恐かったりするんですよね。とりあえず晴れてたからまだいいけど、これで雨なんか降ってたりしたら相当恐ろしく感じただろうな。

で、切合小屋には15時に着いたのだけれども、ここで問題が発生する。小屋が工事中でテン場が資材置き場になっているので、テントを張っては駄目だと言うのだ。事前にしっかり下調べしていなかった僕が悪いのかもしれないが、これはショックだった。でも小屋の主人は一切の妥協を許さないような表情口調でテントは駄目だと言うし、もうこれはどうにもならないのだろう。ただやはりどうしても人であふれているこの小屋には泊まりたくない。それで、しばらく考えた末、これまで結構な時間歩いてきたけれども、もうひとつ先の三国小屋というところまで行ってしまうことにした。三国小屋もテントを張る場所はないし、水場も不便らしいけれども、中途半端な場所にあるので宿泊者はかなり少ないようだから。それに三国小屋は三国岳の山頂に建っているから景色は良いだろうし。

だいぶ疲労が蓄積されてきていたけれど、そんなふうにして僕は三国小屋に向かって歩きはじめた。結局これで僕はコースガイドにして13時間分の行程を歩くことになったわけだ。イェーイ!と気持ちは半ば自棄糞気味である。

でもそうやって歩いたおかげで、僕はブロッケン現象に遭遇することができた。この珍しい山岳気象現象に遭遇することができたのは、あのいかにも頑固そうな小屋の親父のおかげ大である。



そしてこのブロッケン現象のあとに、僕は今度は目を疑うようなモノに遭遇した。なんと前から金太郎のような赤い前掛け一枚の50前後と思われる男の登山者が歩いてきたのだ。一応普通に「こんにちは」と挨拶したけれど、これには度肝を抜かれた。足元はビーチサンダルだし、持っているザックもデイパックのように小さいもの。後ろ姿を確認すると、一応ふんどしのようなものはしていたけれど、ほとんどお尻は丸出し。いくら山のなかと言ってもありえない姿だった。

切合小屋に泊まっていた人に翌日聞いた話だと、この人の到着で小屋は騒然となったらしい。あの頑固そうな小屋の主人が、「その格好はまずいから着替えてくれ」と言ったら、一応「わかりました、着替えます」と言ったらしいのだが、結局ずっとそのままの格好でいたらしい。前掛けの下も実はふんどしではなかったようで、ちょっと前掛けがずれるとイチモツが露わになってしまって大変だったらしい。いやぁ、切合小屋に泊まらなくて良かったと僕はあらためて思いましたね。小屋はやはりかなり混雑していたようだから、場合によっては肌を触れ合わせて眠るようなハメにもなったかもしれないし(結局彼の隣で寝たのは工事に入っていた大工さんだったとのこと)。いやぁ、良かった、良かった。

その不気味なおじさんと擦れ違って少しして、三国小屋の姿が見えた!



あそこまで歩けば、今日の行程が終わるのだ!

そして結局、三国岳の山頂にあるこの小屋に僕は16時20分に到着した。いやぁ、長い1日だった。でも、残念ながらゆっくり休む暇はないのだ。夕飯の準備もしなきゃいけないし、それにはいつ涸れてもおかしくないという急峻なガケの途中にある水場まで行かないと行けないのだ。

僕はサブザックにペットボトルとチキンラーメン、それからコンロとコッフェルを入れて水場へ向かった。チキンラーメンを持っていったのは、水場から戻ってきた人から1リットルの水筒を満タンにするのに5分くらいかかったと聞かされたからだ。そんな程度にしか水が出ないのなら、そのあいだにラーメンでもつくって食おうと思ったのだ。



で、ロープ伝いにガケを下り、



水場にたどりつく。水は確かにちょろちょろとしか出ていなかったけれど、1リットルの水筒を満タンにするのに5分というのはおおげさで、2リットルのペットボトルは4分で満タンになった。

そして、ガケのわずかなスペースで貴重な水を使ってチキンラーメンをつくる。



ペットボトル満タンの状態で小屋に戻りたかったのだ。こんな落ち着かない場所でラーメンを食べたのは生まれてはじめてだったけれども、疲れた体に味の濃いチキンラーメンはとても美味しく感じた。

小屋に戻り、きちんとした(と言っても簡単な)夕飯を食べ終わった頃にちょうど太陽が沈みはじめた。



小屋にいた何人かの人と一緒に、大日岳の右に沈む美しい夕日を眺めた。



そして太陽が沈みきると、照り返しで空が赤く染まり、薄っすらとしたガスがまた湧き上がりはじめたのだった。

こうして長かった飯豊縦走2日目が終わった。結局この日の三国小屋の宿泊者は13人。おかげでゆったりとしたスペースでそれぞれが眠ることができた。ここまで頑張って歩いてきた甲斐があった。