2008年5月 22日 苗場山 晴天
8時30分、かぐらみつまたスキー場の駐車場からゴンドラに乗る。さらに、シャトルバス、リフトと乗り継いで6合目の下の芝辺りまで上がり、ショートスキーにシールを貼り付け苗場山を目指す。9時30分だ。
ゴンドラやリフトは、登山のみの者には利用できないことになっていて山スキーを持って来ていた甲斐があった。
下の芝から中の芝までは、樹林帯の中を行くのだがトレースがハッキリせず道が分からない。適当に進み、雪が切れハイマツの出ているところは、「ハイマツスキー」で強引に進む。ハイマツの上は、歩くよりスキーを着けたまま乗っかるようにして進んだ方が比較的楽だ。この時期、苗場山、神楽ヶ峰方面へ向かう人は少ないらしく、トレースもあまりない。時折、トレースらしきものを認めるが、すぐに消えてしまう。
ハイマツ帯を抜け、木々の間に今は休んでいるリフトの終点を見る。少し急な雪面を、シールで登り切ると中の芝。雪原の上辺りが神楽ヶ峰の頂上らしい。眺望も開け、いよいよ苗場山が姿を現す。神楽ヶ峰の頂上と思われる辺りは雪に埋もれハッキリしない。
苗場山が見えて来た。左手ピークが神楽ヶ峰。
ピークでシールをはずし、苗場山の鞍部に向かって滑り込み、雷清水の少し上で板をはずす。富士見坂を下り、坂を登り返すと、目の前に白いクジラの腹のような雪の丘が現れ、それを登り切ると突如として遙かに漠とした雪原が展開する。
11時55分、とうとう苗場山の頂に着いたのだ。あこがれの山の頂には、半ば雪に埋もれた山小屋が過酷な冬の試練を乗り越えて静かに佇んでいる。
春霞にぼんやりと浮かぶ山々、穏やかな日射し、天空の憩い、人気の絶えたこの悲しいまでの風景も、雪解けと共に多くの観光客で賑わうことだろう。
苗場山
神楽ヶ峰を振り返る
昼食を済ませ下山とする。途中、タカネアオイの小花を見つける。ここかしこで頭を出しているコバイケソウの花はまだまだだ。
太陽は燦として、雪解け水がせわしなさそうだ。
雷清水で咽をうるおし、神楽ヶ峰を登り返す。ピークからスキー板を着け、下ノ芝まで一気に下り、樹林の間を巧みに切り抜けるともうゲレンデだ。スキーヤーに混じって滑り、シャトルバスの待つ駐車場にたどり着く。15時15分、かぐらみつまたスキー場の駐車場着。
春急ぐ 雪解け水の せわしなさ 悠
23日 快晴
昨夜は、みなかみ町道の駅にて泊し、早朝土合口の有料駐車場に入る。ロープウエイの始発が8時なので1時間以上待たされる。
時間があるので、すぐ上の登山指導センターに行ってみる。若い職員の方が事務を執っておられ、谷川の様子を聞くに、もう雪は少ないらしい。山スキーならまだできないものかと、少なからず期待していたのだが残念。
彼の有名な一の倉へ通じる道路は、今日の10時に開通とのこと。ロープウエイまで帰所在なさにぼんやりしていると、男性が話しかけて来られた。谷川へはよく登られるらしく色々と詳しい。一緒にロープウェイに乗り込みあれこれお話を聞く。穏やかな話しぶりだが、時々小声になり聞きずらいのが気になる。
谷川岳へ
素晴らしい空中からの景色を見ながら天神平に着く。昨年スキーに訪れて以来だが、雪は溶け、様子は一変している。リフトを乗り継ぎ、尾根筋まで一気に上がる。ここまで、ほとんど歩くことが無いのだから、登山と言うよりは観光と言ったイメージ強い。
しかし、ここから登山は始まる。今日も好天に恵まれ、谷川連峰一帯は翌見渡せる。白毛門の眺望も良い。天神尾根をポツポツ歩き始めると、一緒になった男性があれこれ親切に説明をしてくれる。どうやら、道案内をしたいらしい。夏道、冬道、危険箇所等教わりながらのんびりと登る。
今年定年を迎えたが、持病があり薬を服用しているとのこと。その内、薬も効かなくなるかもしれいと、しんみりと話す。手が震える病気らしく、言葉が詰まるのはそのせいらしい。私も、酒をよけい飲んだ後は、手が震えますよと言うと、笑う。
谷川岳3000回登山のおじさんの話などを聞きながら、高度を稼ぐ。間もなく残雪が現れるが、要所にステップが切ってある。登り切るとオキノ耳は目の前、すぐ下に山小屋がある。小屋で缶ビールを求め、頂上で乾杯する。時計は11時を指していた。まだ早いなと、男性が言う。なにせ、360度の大パノラマを貸し切っての谷川岳山頂だ。巻機山からも苗場山からも眺めたあの頂きに、今立っている。谷川岳は、百名山の中では、やはり特殊な山だと思う。
残雪の谷川連峰
頂上小屋
トマの耳
オキの耳
この後、男性は小屋に下り、私はオキの耳まで縦走。11時30分オキの耳。昼食を摂り、しばし山頂に憩う。縦走路は一の倉岳へと延び、その下にあの一の倉沢があるのだがここからはあまり見えない。はるか下方、一の倉駐車場に数台の車を認めた。どうやら、道も開通したらしい。谷川連峰とは何処から何処までを言うのか知らないが、白毛門あたりから、ぐるりとこの谷川岳まで縦走できるらしい。大島亮吉の「近くて良い山なり」と述べた言葉は実によく分かる。
下山を始める頃、幾人かの登山者が登ってきた。私たちは、早い山登りをしていたわけだ。谷川岳は、縦走に限れば楽しい山なのだ。山小屋を覗いたが、誰もいない。先ほど一緒に登った男性は、もう下山したらしい。入り口に、あの男性が置き残したと思われる食料と飲み物が置き残してあった。そう言えば、朝刊を持って登るのが習慣であり、小屋を出るときには持参したウイスキーを残して帰る、と言っていたのを思い出した。独特な雰囲気を持った男性だったが、持病がそうさせていたのだろう。不治の病とも言っていた。
夏道横の雪の斜面を一気に下る。この時、例の男性を追い越してしまったらしい。13時50分、上のゴンドラ乗り場に着く。 14時駐車場着。
谷川の 残雪 青葉 天回廊 悠
マチガ沢、一の倉沢を覗き、湯メテル温泉で湯に浸かり、上州武尊岳へ向かう。
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