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「ジャッキー・ブラウン」─タランティーノのオトナ向け映画

2005-09-19 | ■映画
「レザボア・ドッグス」、「パルプ・フィクション」に続くクエンティン・タランティーノ監督の第3作。若さと、それに伴う暴力性がはじけ飛んでる前2作とはうって代わって、オジさん、オバさんを描いています。しかも「恋」もあるし。といっても、もちろん、「カネ」をめぐる駆け引きがストーリーの根底にあるのですが。

「ジャッキー・ブラウン」というのは、主人公である44歳の黒人女性の名前です。主人公の名前そのものをずばりタイトルにしている映画といえば、「バリー・リンドン」、「キャリー」、「アメリ」、「エリン・ブロコヴィッチ」、「テルマ&ルイーズ」、「マイケル・コリンズ」、「アレキサンダー」…。思いつくまま挙げてみると、結構「女性の名前」の方が多いような気がします。しかも、男性の名前がタイトルになっている映画って、「歴史映画」が多い。

ジャッキー・ブラウンを演じるのは、パム・グリアー。タランティーノの憧れの女優だったらしく、原作の『ラム・パンチ』(エルモア・レナード)では主人公は白人なのですが、彼女に主演してもらうために、黒人に設定を変えています。

冒頭から、ジャッキーを、というよりパム・グリアーをカメラは執拗に追い続けます。注目のオープニングテーマソングは、ボビー・ウーマックの「110番街交差点」! この曲、昔、同タイトルの映画でも使われていましたね。それから、中盤では、ランディ・クロフォードの歌う「ストリート・ライフ」をBGMに現金の受け渡し場所にクルマを走らせるジャッキーを追う。ラストももちろん、運転するジャッキーを正面からひたすらとらえ続けるタランティーノ。カーステレオから流れる「110番街交差点」に合わせて、ジャッキーの唇が動くのが印象的です。そんなこんなで、最初はさほど美しいとは思えなかった彼女が(失礼)、不思議と最後には「忘れられない女性」にすらなってしまう!

ジャッキー・ブラウンは、ロスに住み、メキシコの航空会社に勤める中年スチュワーデス。安月給をしのぐため、ひそかに武器の密売人オデール(サミュエル・L・ジャクソン)の隠し金の運び屋をしています。オデールの逮捕を狙うロス市警は、ジャッキーに目をつけ、彼女と取引しようとします。ジャッキーは、警察の言いなりになったフリをしながら、オデールともその裏をかく作戦を練ります。そこに関わってくるのが、保釈金融業者のマックス(ロバート・フォースター)。彼は年甲斐もなく、ジャッキーに一目惚れしてしまい、彼女の「策略」に手を貸すことになる…。

「寡黙な中年女性」のジャッキーが、ここぞというところでものすごい迫力を見せます。裏切りそうな部下はいとも簡単に殺してしまうほど冷酷なオデールでさえ、ジャッキーの策略に見事にはめられていくのです。

おっと、忘れてはならないのが、この映画にはロバート・デ・ニーロも登場するのだった! 役どころはオデールの昔の刑務所仲間で、出所したばかりのルイスという男。決して「主役」ではないけれど、この役はやっぱりデ・ニーロだろうなーと思わせるところが彼のすごいところ。で、この映画では「デ・ニーロらしさ」はなかなか見せてくれないのですが、でも、やっぱり出てきます! うわぉー!という感じです。

それにしても、前作でもそうですが、タランティーノの「ストーリーのつなぎ方」は絶妙です。たとえば、ショッピングセンター内の「高級婦人服店」での現金受け渡しの場面。同じ時間帯に起こった出来事を、最初はカネを持ってくるジャッキーの視点で見せ、次にカネを受け取る側のルイスとメラニー、最後に一部始終を傍観しているマックスと、それぞれの視点から順番に見せてくれるのです。確かにそのくらいしつこく描いてくれないと、この映画の「おもしろみ」はわからないのです。そういうタランティーノの「親切心」が何ともいえない。

この映画、設定は1995年らしいのですが、どうも全体的に70年代の雰囲気が漂っています。使われている音楽も、70年代のソウル・ヒットばかりだし、「CD」じゃくて「レコード」「カセットテープ」だし。あの時代に「青春」を過ごしたおオジさん、オバさん(特にオバさんか?)の郷愁を微妙にくすぐりながら、最後はスカっと爽快感の残る映画です。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
みましたよ (romi)
2005-09-24 03:48:36
こんばんわ。

私も以前にジャッキーブラウンみました。

展開のリズムの良さが好きです。「え?どないなってんの?」って引き込ませ方も良かったです。

同じようなイメージを持つ映画は「DINNER RUSH」です。ミュージックムービーのような、リズムと旋律のある映画で好きです。
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リズム (やっぴ)
2005-09-25 10:05:21
romiさん



映画のリズムって大事ですよね。音楽と同じように、その時の気分によって見たい映画も違ってきます。静かな夜にはじっくり考える映画がいいし、落ち込んでる時に「オースティン・パワーズ」を見たくなる人もいます。



ディナーラッシュ、探してみます。
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