人生の中にはこんなことがと驚かされることがある。ベルリンの壁崩壊。

人生の中では、こんなことが起こるのかとびっくりさせられることがある。私の驚きの一つはベルリンの壁の崩壊である。ちなみにあと残りの二つはケネデイー大統領の暗殺とNYの貿易センタービルの崩落である。もちろん、自然災害にはそれらを凌駕するものは多いのだが、ここでいう驚きは人のやったことである。さて、ベルリンの壁の崩壊から50年がたつのだという。つまり、赤ん坊にはこのニュースをはっきりと認識できなかったであろうことを考えれば、この地球上の60歳以下の人たちは、身近な問題ということから離れて、過去も過去、歴史上の話でしかなくなってしまって、そこに至る経緯よりも、事実だけが存在するだけなのだろう。60歳以下ともなれば、明らかに現存する人類の8割以上で、社会を仕切っている人たちだ。記念日にあたる11月9日には盛大な祝典が開かれるというが、その式典を主宰する人たちの大半は身をもって、ベルリンの壁の崩壊を経験した人たちではないのだ。頭でわかっていることと、身をもって感じたこととは大きく違う。それまでの数年間、東ベルリン市民の多くが西ベルリンに脱出しようとして、その前で射殺されていたのだ。不思議なことに、朝鮮でも、ドイツでも、戦後間もないころには東側陣営の方が豊かなように思えた。東ドイツなどはオリンピックで数多くの金メダルを獲得していた。しかし、それが薬漬けのまやかしであることが分かり、経済のメッキもはがれて、自由を求めて、ベルリンの壁も超えたいと思うようになったのである。そして、人々の気持ちが巨大なうねりを起こすとあの壁さえも壊されたのである。（くちなし亭、11月6日）

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